表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/425

第162話 分岐(後編)

話が長くなったので2つに分割しました。

ーーー無凱ーーー


 周囲を警戒しマッピングを続けながら地図を作成していく。

 運が良いのか敵に遭遇すること無く進めている。

 この建造物…相当広いな…。

 高さは、外から見える窓の数だけでも100階くらいはあるか…。


『順調ですね。』

『このまま、何事もなく睦美ちゃん達を見付けられれば良いのですが?。』


 柚羽さんと水鏡さんも周囲を見渡しながら僕の後ろをついて来ている。


『おかしい…。』

『無凱さん?。』


 足を止めマッピングした地図を見つめる僕に柚羽さんが心配の声を掛けた。


『ん?。ああ、あまりにも何も無さすぎるのが気になってね。』


 柚羽さんと水鏡さんに地図を見せる。

 外から調べたこの建物の広さと照らし合わせてみた広さと高さを考えると、既に3分の2が完成している。

 現在は70階にある階段近くにある踊り場付近。

 途中、複数の部屋を確認したが、これといったモノもなく。監視カメラなどの警戒用の道具も発見出来なかった。

 世界樹だった頃、全20階という話を美緑ちゃん達から聞いていたんだけどね…。全然違う建物だ。

 それに、人っ子一人いないのも気になる。

 相手は神だ。僕達の想像の上をいく存在と仮定し、更に深読みしても足りないくらいだろう。

 確実に僕達の潜入はバレている。

 そう考えて行動しているのだが、一向に反応の気配はない。不気味すぎるな…。


『階段ですね…。』

『僅かですが魔力を感じます。』

『そうだね。しかも、この感じは…睦美ちゃんかな?。』

『っ!。じゃあ、この階段の上に?。』

『いる…可能性はあるね。…まぁ、罠の可能性もだけど。』

『どうしますか?。』

『一先ず、僕が上の階の様子を確認してくるよ。』

『そうですか。では、私達はここで待機しています。』

『うん。じゃあ、行ってくる。』


 僕は階段をゆっくりと上がっていく。

 罠…はない。普通の階段。今までの階層で見たのと同じだ。

 一段一段、警戒しながら進み、結局何事もなく登りきった。71階に到着。


『良いよ。上がって来て。』


【箱】を使い、下で待っている2人を呼ぶ。


『階段も特に何も無かったですね。』

『うん。この階も調べよう。2人共、僕から離れないで…っ!?。』


 瞬間、直感が働く。


『柚羽さん!。水鏡さん!。避けろっ!。』

『『っ!?。』』

『失礼いたします。』


 僕達の間を剣線が走る。それと同時に チンッ! という納刀時に発せられる聞き慣れた音がした。


 僕達の間に舞い降りた影。その姿は、シスター服の目隠しをした女性で、手に身の丈ほどの長さの杖が握られていた。


『くっ!。』


 追撃されるのはマズイ。

 柚羽さんも水鏡さんも状況を把握しきれていないし体勢も悪い。

 女性を【箱】に閉じ込めようと魔力を展開した。


『無駄です。』


 しかし、次の瞬間。魔力は【箱】の形を形成する前に泡のように霧散した。


『なっ!。これは翡無琥ちゃんの!?。』


 【神眼】っ!?。

 しかも、【神化】した際に使うことが出来るようになる 世界の綻びに干渉する スキルだ。

 そうか。この女性が翡無琥ちゃんの基となった神か。


『私達の 王 が貴方をお待ちしていますので、お急ぎください。』


 杖の先端で身体を軽く押されただけの筈なのに僕の身体が異常な速度で吹き飛ばされた。

 抵抗空しく、良く分からない広い空間に投げ出された僕は落下中に【箱】を巧みに使い無事に着地する。

 50メートルくらいは落ちただろうか?。


『ここは…。また、広い場所だね…。』


 戦闘の実験でもしていたのか。それか、コロシアムのような戦いに用いられていたのか…壁や床に染み込んだ大量の血の臭いがする、だだっ広い空間に迷い込んだみたいだ。

 柚羽さんと水鏡さんが心配だ。早く脱出しないといけないんだが…。

 どうやら、それも容易い話じゃないみたいだ。

 目の前にとんでもない気配が現れたぞ…。


『よくぞ来た。余の写し身よ。』


 はぁ…。ヤバイな…。あれ…。

 高い天井が開き、そこからゆっくりと降りてくる存在。


『余の退屈を紛らわし、適度な興奮と愉悦を与えし者よ。期待しているぞ。』


 魔力を全身から放出し、その魔力を椅子のように形作ったそれに深々と座る男。

 組まれた足を投げ出し、肘で顔を支える。

 その威風堂々とした佇まいは、【クリエイターズ】や【神騎士】がそれこそ生まれたての赤子に見える程の凄味と貫録を宿していた。


『はて?。話せぬ男か?。』

『ん?。ああ。これは失礼したね。敬語の方が良いかな?。』

『ははは。気にするな。お前の好きな言葉で話すが良い。余は寛大だからな。細かいことは気にせん。』

『じゃあ。普通に話すね。僕はクロノフィリアリーダーの無凱という者だ。君の名前を聞いても良いかな?。』

『ほぉ。無凱か。良い名ではないか。我が写し身よ。それに、ははは。余の名を知りたいか?。よい。余はお前のお陰で気分が良いのでな。特別にお前の問いに応えてやろう。』


 椅子の形に放出していた魔力を今度は足場のように平らにし、その上で腕を組んで仁王立ち。


『その五感にこの名を刻むが良い。余は【絶対神】グァトリュアルが最初に創造せし神!。【王】なる運命をこの身に刻む原初なる神!。【無限の神】 ガズィラムっ!。』


 無限の神…ガズィラムか。

 神の性質を示す名が【無限】…。

 すまない…閃君…これは完全にハズレくじだ。


ーーー


ーーー柚羽ーーー


 無凱さんが別の空間に吹き飛ばされた後、目の前の女性が手に持つ杖を地面に立て頭を下げた。

 目隠しの布からは表情が読みづらい。それにあの杖は仕込み刀になっていた。

 まるで、翡無琥ちゃんじゃない…。


『突然の不意打ち失礼致しました。お嬢様方。お怪我はありませんか?。』

『…ええ。大丈夫よ?。貴女は?。』

『………。』


 水鏡さんも警戒してる。

 周囲の水分が集まって水の玉が浮かんでいる。


『名乗りもせずに申し訳ありません。私は【絶対神】グァトリュアル様より創造された神が1柱。仲間達からは【白姫】や【神騎士】と呼ばれております。【静寂の神】リシェルネーラと申します。』

『【神騎士】…。』

『【静寂の神】…ですか…。』


 無凱さんが教えてくれた。

 クリエイターズの上に位置する上位の神の名だ。


『はい。お嬢様方のお名前をお聞きしても?。』

『柚羽よ。』

『水鏡…。』

『柚羽様と水鏡様ですか。気配と魔力の照合が完了しました。申し訳ありません。私は目が見えませんので魔力で周囲の状況を感知しているのです。これで、貴女方の魔力は覚えました。』


 その瞬間、今まで感じたことの無いような魔力が通路を包み込んだ。

 その魔力は、翡無琥ちゃんのモノに似ていた。しかし、魔力の底が見えない。絶対的な強さを感じた。


『我が王の命により、貴女方をここで排除させて頂きます。【静寂の神】の名において、苦しまずにお眠り下さい。』

次回の投稿は21日の日曜日を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ