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第159話 神力

ーーー瀬愛ーーー


 目の前でママが力が抜けたように崩れ落ちた。お腹と口から沢山の血を流して…。


『ママっ!。』


 倒れるママに火車って男の人がパンチしようとしていました。

 まだ、ママを虐めるの?。

 瀬愛は走ってママに近付いて糸を出します。


『させんっ!。【炎翼転盾】!。』

『【蟲神糸砡盾】!。』


 睦美お姉ちゃんの炎の盾と瀬愛の糸の盾が男の人の腕を止める。


『吹っ飛べ!。神技【竜皇閃砲神光】!!!。』


 瀬愛と睦美お姉ちゃんのスキルでパンチを防がれた男の人の身体が基汐お兄ちゃんの神技に呑み込まれて見えなくなった。

 口から放たれた極大の光線はそのまま端骨っていう気持ち悪いおじさんの方向に飛んでいったの。


『ひっ!?。まさか私もろともとは!?。』

『はぁ…しゃあねぇな。邪魔だ。一歩下がんな。』


 その時、別の人の声が小さく聞こえた気がしたの。


『ふん。』

『な!?。斬られ?。』


 基汐お兄ちゃんの光線が突然歪んだ空間から現れた男の人に斬られて左右に割れちゃった。


『っ!?。』


 何…この感じ?。

 

『瀬愛…あまり、ヤツに近付くなよ…。』


 睦美お姉ちゃんも男の人に警戒してる。

 身体中が寒くなるような、勝手に震えて…怖い…。


『睦美、瀬愛ちゃん。子供達と黄華さんを頼む。』


 基汐お兄ちゃんが瀬愛達全員を守るように前に出た。


『っ!。』

『ママっ!。』


 睦美お姉ちゃんに抱き抱えられてママの元に行く。


『あぁ…ママ…。ママっ!。』

『はぁ…。はぁ…。せ…あ…ちゃん…。はは…は…失…ぱぃ…しちゃ…た。』


 お腹と口から凄い量の血が出てる。

 今も、沢山流れて…止まらない。


『睦美お姉ちゃん!。』

『分かっておる!。【転炎光】!。』


 ママの傷口を3本の光が包む。

 これで、大丈夫だよね?。ママの傷…治るよね。


『ぬっ!?。何じゃ!?。この傷は!?。』


 慌て出した睦美お姉ちゃん。

 え?。何?。どうしたの?。自分の心臓の鼓動が大きくなった。

 ママの傷口は睦美お姉ちゃんのスキルを使っているのに治っていなかった。それどころか、傷口は少しずつ広がって…まるで…腐っていってる?。悪臭を放ちながら変色してる…。


『な、何…これ?。』

『へぇ~。なるほどぉ~。まともに喰らうとそうなるのねぇ~。』

『っ!?。』


 さっきの怖い男の人。


『どういうことだ?。』


 基汐お兄ちゃんが男の人を睨んでる。

 怒ってるんだ。


『この人間が俺達の技術を基に生み出した【バグ修正】って技術の完成品らしいんだわ。』


 端骨っていう人を指差した男の人は、何が可笑しいのか笑いながら…楽しそうに話し始める。


 【バグ修正】…閃お兄ちゃん達が言ってた。

 瀬愛達を排除する為のプログラム。


『俺ッチの撃った弾丸にはなぁ。その技術が使われてんのよ。あんた等がこの攻撃を受けたら、その傷は治療不能、傷口は徐々に広がっていき、やがては全身に回る。そして、最後には肉体が崩れ落ちて、この世を去るってな。』

『っ!?。』


 ママ…が…死んじゃう?。


『ついでに俺ッチの【神力】も上乗せしてやったぜ?。精々苦しんで逝けよ。』

『【神力】…お前はいったい…。』

『ん?。俺ッチか?。ああ、どうせ全員殺す予定だし名乗らんでも良いかなって思ってたんだが…ははは、名乗った方が展開的に盛り上がるか?。良いぜ。名乗ってやる。俺ッチは【絶対神】グァトリュアル様より生み出され【女王】メリクリア様に仕える【神騎士】にして【白騎士】。【感染の神】イルナードだ。よろしくしないで良いぜ?。どうせ、この場で殺すからな。ははは。』


 【感染の神】…イルナード…。


『【神騎士】…コイツが…それに感染?。』

『あん?。ああ、俺ッチの能力が気になるか?。冥土の土産だ。聞いてけ。俺ッチの魔力は他の存在にとって猛毒なんよ。それは生物だけに留まらない。土も水も空気さへも感染させることが出来るんよ。そして、そこの女には【死】という 結果 を込めた【神力】を撃ち込んだ。ははは。意味は分かるだろう?。』

『………。』

『お前達の治癒能力程度じゃ進行は遅らせても治すことは出来ない。むしろ、ははは。余計に苦しめるだけだねぇ。』

『ぅ…。ママ…。』

『神の決定は絶対なんだわっ!。』


 ママが…死んじゃう…。


『てめぇ!。』

『おっと?。竜種ねぇ~。向こうじゃ大した強ぇ奴は居なかったな…。お前はどうかねぇ。』


 竜の姿の基汐お兄ちゃんがイルナードに攻撃した。


『【竜皇覇気】!。』

『ん?。魔力が乱れる?。』

『【竜神爪牙】!。』

『強化した爪と牙。それに周囲の魔力を乱して相手の能力を封じる…か。どれ?。どれ程のモンかねっ!。』


 イルナードの武器は右手の刀と左手の銃。

 基汐お兄ちゃんの爪と牙がぶつかり合う。


『へぇ。なかなかの硬度じゃん?。俺ッチの武器で傷付かないなんてな。』

『たりめぇだ!。負けられねぇからな!。』

『あ~。良い忘れてたが、【神力】は発動した神が消滅すれば発動中のモノは最初から無かったことになるぜ。』

『っ!。へぇ。つまり、てめぇを倒せば。』

『ははは。そうだ。あの女の腐蝕は止められるぜ?。』

『ああ。そうさせて貰うぜっ!。【鋼竜鎧装】!。』

『面白いな。更に硬くなんのか?。』


 試し、という感じで銃を乱発するイルナード。


『効かねぇ。』

『本当だな。ビクともしねぇわ。ははは。楽しくなってきた。お前なかなか強ぇな。』

『がぁぁぁぁぁあああああ!!!。』


ーーー


 竜の咆哮。

 鋼の竜と化した基汐とイルナードの攻防は数分間続く。イルナードの攻撃は基汐の硬質化した鱗の鎧に阻まれる。

 対して、基汐の攻撃をイルナードは余裕で躱している。

 攻防は互角でも余裕の面ではイルナードが完全に優位に立っていた。


『ははは。キリがねぇ。まぁ、十分楽しめたし、お前はもう良いや。てか、飽きた。』


 後ろを向きヒラヒラと手を振るイルナード。


『っ!?。舐めるなっ!。神技【竜皇閃砲神光】!!!。』


 基汐の神技が炸裂する。

 全身の魔力を集束した最強の一撃が放たれた。


『へぇ。さっきより強いな。それが切り札ね。けど、もうお前は終わってんぜ?。』

『っ!?。』


 基汐の放った光線とイルナードとの間に突然現れ割って入った少年いた。


『【流動の神】コルン。【神力】…【命中】に設定。』


 神技の光線は少年の翳した指の方向。即ち、真上に軌道を変えた。


『何っ!?。』

『はははははは。何驚いてんの?。ここに来てんの俺ッチ達だけな訳ないじゃん。』

『3体目の神…だと…。』

『ははは。言っただろう?。お前はもう終わりだってさ。確かにお前の身体は硬い。傷付けることも難しい。しかも、他者の魔力を乱すことで自身の身体をその影響から防いでいるのも防御力に拍車を掛けている…と。けどな。』

『っ!。てめぇ…。』


 イルナードの銃口が子供達を守る睦美へと向けられた。


ーーー


 睦美は現在、彼女の【神化】形態である【転輪炎女神化】を使用し、その翼を最大に広げ15人の子供達と横たわる黄華を身を挺して守っている状態だった。

 基汐とイルナードとの戦いを眺めながら突破口を探し頭をフル回転させていた。

 そして、1つの疑問が生まれた。


 この場で戦闘が行われて数十分が経過した。

 火車の攻撃で大規模な爆発が起きた。基汐も神技を発動し極大の光線放った。

 なのに援軍が未だに駆け付けない。広範囲に索敵能力を持つ神無や光歌、転移出来る閃や無凱、世界樹から全てを見渡る美緑。

 誰も助太刀に来ないのだ。有り得るか?。

 いや、もしかしたら…襲撃されているのは…。


『ここだけじゃないのか?。』


 その考えに至った時、イルナードと名乗る神の銃口が睦美へと向けられた。


『っ!?。』


 奴の魔力を喰らえば黄華の様になってしまう。何の抵抗力を持たない子供達が受ければ、その猛毒に抗う術はない。

 だが、自分は不死鳥だ。

 猛毒に侵されようと回復出来る筈。ならば、この身を盾にしてでも子供達を守る。


 自分の身体も大切にしてくれ。


 こんな状況でいつの日か閃…旦那様に言われた言葉を思い出した。


『申し訳ありません。旦那様…。私、約束を…破ります。』


ーーー


『これならどうするよ?。』


 ダン。ダン。ダン。

 複数の弾丸が、睦美を含めた子供達に発射された。


『させねぇ。』


 基汐がその硬い鱗を盾とし腕を睦美の前に差し出した。


『防ぐねぇ。けど、自分の攻撃ならどうよ?。』

『何?。っ!?。』


 その言葉の後、すぐのことだった。

 先程、上空に軌道を変えられた基汐の神技が時間差で跳ね返された。

 頭上からの光線による不意打ちにより基汐は為す統べなく自身の最強の攻撃に呑まれたのだった。


『僕の【神力】で光線の 流れ を変えた。必ず君に 【命中】 する。』


 【流動の神】コルンが言う。


『がぁぁぁぁぁあああああ!!!。』

『基汐っ!。』

『お兄ちゃんっ!。』

『がっ…。』


 数秒後、閃光が止み、全身を纏っていた鱗の鎧も爪も牙も翼も僅かに形を保っているという状態の基汐が土煙の中から力無く倒れた姿で現れた。


『待っておれ。今治す!。』

『させるわけないよね?。』


 透かさず銃を乱発するイルナード。

 狙いは睦美と子供達。 


『ぐっ!。』

『基汐!?。』


 そのボロボロな身体で弾丸を受ける。


『その弾丸を受ければお前も!。』

『へっ。どうせ、不死鳥の自分なら…ぐっ…いくら攻撃されても…がっ…復活できるかも…っとか思ってんだろ?。ぐぁっ…そんな不確定なことで大事な親友の大切な人に傷付けさせるかよ!。』 

『基…汐…。だが、お前だって…。光…歌が…。』

『友情良いねぇ。ぶち壊したくなる。』


 ドンドン。ドンドン。ドンドン。ドンドン。

 鳴り止まぬ銃声が響き渡る。


『ぐっあっ!。ちっ!。』


 尚も撃ち込まれる弾丸を尻尾や翼…腕、胴体で防ぎ続ける。

 既に最初に命中した弾丸に込められた【バグ修正】が基汐の身体を蝕んでいるのだろう。

 本来なら耐えられる弾丸の威力でも防御した箇所が破壊され崩れ落ちていく。


『もう止めよ!。この傷はワシでも治せん!。死んでしまうぞ!。』

『ああ。死ぬな。だが、この巨大な身体を役立てるには…ぐっ…もうこれしかねぇんだ…。ぐぁっ!。』

『お兄ちゃん!。』


 大量の血を吐いた基汐が遂に倒れ込んだ。

 巨大な音と土煙を上げて…。


『ふう。やっと力尽きたか。78発ねぇ。存外にしぶとかったねぇ。そんなことしなくても全員排除するのは決定事項なのにねぇ~。無駄な頑張りご苦労さん。』

『き、貴様!。このっ!。神具展開!。』


 5体の獣が連結し合体した巨大な砲身。 


『神技!。【極炎転輪五獣葬砲】!!!。』


 激情に任せた睦美の神技が発動。

 灼熱の炎の砲撃が神々へ放出された。


『喰らえ。【グライラード】!。』

 

 しかし、睦美の砲撃は突然乱入した黒い騎士の持つ漆黒の剣により掻き消されてしまった。

 いや、 喰われた のだった。


『何っ!?。お主は…いったい。』


 間髪入れずに睦美との距離を詰めた黒い騎士は、すれ違い様に語る。


『【黒騎士】、【吸収の神】ノイルディラだ。貴様等に恨みはないが、排除させて貰う。』


 その言葉を聞いた直後に睦美は意識を失った。

 気を失った睦美を持ち上げたノイルディラがイルナードの元へ跳躍する。


『遅い。いつまで遊んでいるつもりだ。イルナード。』

『いや、そっちが速すぎるでしょ黒ちゃん?。何?。アイツ等の抵抗、そんなに激しかった訳?。』

『ああ。思いの外な。おそらく…後、数分でここに駆け付けるだろうな。時間切れだ。』

『へ~。もしかして、また兵隊がヘマしたかい?。』

『いや、完璧な結界だった。兵を責めてやるな。奴等の力が予想以上だっただけだ。』

『へい。そうかい。』


 無言で端骨に睦美を渡すノイルディラ。

 力無く気絶している睦美を火車の身体に押し当てた。すると、膨張した筋肉が睦美の身体を取り込み顔だけを出した状態で閉じ込めたのだ。


『では、急ぎ残りの捕獲対象を確保しましょうか。』


 端骨、火車、イルナード、ノイルディラ、コルン。

 敵の視線が子供達を背に身構えている瀬愛に注がれる。


ーーー


『睦美お姉ちゃん…。基汐お兄ちゃん…。ママ…。』


 瀬愛の視界に倒れた大切な家族が映る。


『ははは。仲間が殺られて泣いちゃうのかな?。お嬢さん。けど、安心しなよ。君は死なない。連れて行くだけだからさ。』

『よせ。イルナード。手負いの獣を煽るな。』

『良いじゃん。どうせ何もできないっしょ?。』

『どうして…瀬愛の大切な家族を…虐めるの?。』


 静かな声で瀬愛が尋ねた。


『ははは。虐める?。そんなことしてないさ。神に逆らった愚か者共に天罰を与えただけ。それに気付いていたかい?。何でここまで暴れているのに仲間が助けに来ないのか?。』

『………。』

『それはねぇ。別の空間に閉じ込めたからなんだぜ?。この意味が分かる?。お前達が何をして、どんな準備をしようが俺ッチ達。神の前じゃ何の役にも立たないってことさ。』

『イルナード。』

『何さ黒ちゃん。さっきから?。』

『手間賃は貰うぞ?。』

『は?。』


 瀬愛の魔力が増大する。


『ええ。何?。キレたの?。たった1人で俺ッチ達に挑む感じ?。』

『この魔力…。』

『マジか…コイツも【神人】かよ…。さっきの3人もそうだったよな?。』

『ど、どなたのでしょうか?。』

『この感じは…キーリュナだろう。』

『ああ。なら問題ないかねぇ~。』

『はぁ…。手間だぞ。』

『何でさ。』

『見ていれば分かる。時間が無いと言ったのだがな…。これは…。』


 瀬愛の身体が急速に成長していく。

 

『【神化】…【蜘蛛蟲女神化】。』


 瀬愛の神化が発動した。

 その姿は。まさに蜘蛛の女王…いや、女神と呼ぶに相応しい神々しさを有していた。

 長い金髪。赤い瞳。美しい容姿。白い糸によって織られた種族衣装。


『スキル【眷族召喚】、【蟲神蜘蛛糸庭園】。』


 糸によって紡がれる聖域。

 張り巡らされる糸は周囲と同化し、糸によって作られた庭園が作られた。

 そして…。


『うわっ…。何匹いんのよ…あれ。気持ち悪っ。』


 目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。目。

 群がる幾つもの赤い目が神々を見つめる。

 最も小さいので数ミリ。

 最大で50メートルを越える。

 何匹いるのか…。数は万か億か…いや、それ以上か…。

 数の暴力。物量の化身が神々の前に立ちはだかった。

次回の投稿は11日の木曜日を予定しています。

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