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第156話 挿話②

【神騎士】アイシス。

【女王】メリクリア。

 2柱の神が突然来訪した事実は既にギルド内にいる全ての仲間達に知れ渡っている。

 そして、現在。

 クロノフィリアメンバー全員を集めた緊急会議が行われていた。


『あれは、やべぇな。神無や光歌達の結界を意図も容易く抜けてきたぞ?。』

『はい。私のスキルは反応すらしませんでした。いえ、反応した瞬間に破壊されていたのです。』

『こっちも同じだし。魔力を感知して警報がなるようにしてたのに感知した魔力が強すぎて壊れてたし。』

『リスティナさんの魔力で試しながら作ったのにね。』

『ということは…女王はリスティナよりの強いってことか?。』


 全員の視線がリスティナへ集まる。


『直接、対話した妾の意見では五分五分…といったところだな。女王は【神力】を使用していたようだ。』

『神力…。』

『神力って何だっけ?。』

『【神力】とは神が結果を欲した時に各々の性質で過程をコントロールする力だ。神が望めば結果は必然。確定される。そこに至るまでの過程が神の性質で異なるのだ。』

『女王…メリクリアは【宇宙の神】って言ってたな。どんな性質何だ?。今一…ピンと来ないんだが?。』

『難しいな。妾クラスになると一貫した能力ではなくなるからな。おそらくだが…宇宙環境の再現…ではないか…と思う。』

『宇宙環境の再現?。』

『ああ。自分の周囲を他の惑星の環境に変化させたり、小規模な宇宙空間を作り出したりだ。重力なども操れるかもしれぬな。』

『能力の規模が違いすぎるんだが…。』


 最高神の1柱。

 女王の性格が穏和で本当に良かったと安堵するべきか、その力が自分達に向けられることに恐怖すべきか…。


『アイシスって女も相当ヤバかったな。』

『そうですわね。私、アイスクリームを落としそうになってしまいましたわ。』

『あのガキの魔力…俺の戦った黒いコートの男が可愛く見えたぜ?。ありゃぁ化け物だぜ。旦那。』

『ああ。皆悪いな。俺がもっと上手くやれていれば、もっと情報を引き出せたかもしれないのに…。』


 あの時は兎に角アイシスの機嫌を損ねないことに集中してしまったからな。


『いや。突然の訪問だ。閃君の対応は正しかったよ。』

『そうだね。戦闘になる方が最悪の状況だからね。避けられるなら、それが最善だよ。』

『ああ。そうだな。それで、さっきも少し話したが女王と会ったことで敵の内部事情も少し見えてきた。』


 この場にいる全員に俺は女王と出会ったことを告げていた。


『まさか、女王と閃が邂逅するとはな。妾と別れた後にそんなことが起きていたとは…。』

『ああ。何と言うか…戦いたくない性格だったな。』

『そうなのか?。狂暴で蛮族みたいな性格とかか?。』

『いや。アイシスがあれだ。その上の存在となると出会った瞬間に斬りかかって来るような奴だろう。情緒は常に不安定で見境なしに襲ってくるとか。』

『そうだったのか?。』

『いや。違った。』

『え?。じゃあ、どんな性格だったんだ?。』


 全員の視線が俺とリスティナに集まる。

 

 まぁ、そうだよな。敵の…しかもトップの性格とか性質とか知りたいよな…。


『優しかったんだ。』

『すっげぇ。苦労人気質だった。』


 全員の目が点になる。


『マジか…。』

『信じられんな…。』

『優しくて…苦労人ですか…。敵でなければ仲良く出来そうですね。』

『そうだよね。僕も思った。戦いとかなければ会ってみたいね。どんな感じの人なの?。』


 代刃の質問に俺とリスティナは同時に代刃を指差した。


『ふぇ?。僕?。』

『そうなのですか?。にぃ様?。代刃ねぇ様。敵だったのですね。』

『いや。違うから。僕に似てたってことでしょ?。性格が。だよね?。』

『いや。性格を含めて殆ど代刃だった。』

『ええっ!?。どういうこと?。』

『声の質も性格も、魔力の質も殆どが代刃と似てたぞ?。けど、見た目はお前の方が俺は好きだ。いや。愛していると言っても良いなっ!。』

『あぅ…閃…こんな場所で…言わないでよぉ…。恥ずかしいよぉ…。』


 照れる代刃。

 本当に俺の好みドストライクなんだよな…。


『閃…お前。最近、代刃の見た目を褒めるの隠さなくなったよな。』

『くっ…顔かっ!?。胸かっ!?。ワシも閃に褒められたい。』

『何言ってんだ?。睦美?。お前の見た目だって俺は大好きだぞ?。俺を常に立ててくれる性格も全部愛おしくて今すぐにでも抱きしめたいくらいだ。』

『…はぃ…旦那様…お褒めのお言葉…とても嬉しいです。どうぞ…。』

『どうぞ。じゃないよ…睦美ちゃん…。陥落が早いよぉ~。』

『何言ってるんだ美緑。』

『え?。』


 何故か、この流れで俺は恋人たち全員を褒めることとなった。

 最後の灯月を褒めたところで、他のメンバーの視線が身体に突き刺さった。


『こほん。話を戻そうか。女王と代刃ちゃんが似ている。僕は女王に会っていないから分からないけど。僕が会った2人の神。アイシスとカナリアも確かに魔力の性質がここにいる人物に似ていた気がするんだ。どうだろう?。リスティナさん。』


 おっさんの発言を受けリスティナが答える。


『おそらく、奴等はこの世界の住人のデータの中に自分達のデータから生み出した人間を混ぜたのではないだろうか…と、妾は見ている。』

『その可能性は高そうだね。』

『それは、どうして?。』

『おそらく、人類を導く存在を作りたかったのではないか。自分達が直接干渉できない世界。ならば、自分達の…神の性能を持つ人間を生み出せば必然的に其奴等の性能は他の人間よりも高くなる。人間の社会ではそういう存在が王など他者や国を統治する者になるだろうからな。』

『そ、そうなんだね…じゃあ、僕が女王のコピーなの?。』

『そういうことになるな。』

『ふぇ~。』

『確かに代刃のスキルやステータスは他の奴等より高いもんな。神具も強力だし。』

『ぅぅ…でも…僕にリーダーは無理だよぉ~。』

『何を言ってますの!。代刃!。』

『そうッスよ!。代刃ッチ!。』

『え?。急に何さ?。2人して…。』


 同時に代刃に詰め寄る春瀬と白。


『クロノフィリア裏組。そのリーダーは間違いなく貴女でしたのよ?。』

『そうッス。代刃ッチが白達を引っ張ってくれたから、この世界でも3人でやっていけたッスよ!。』

『春瀬…。白…。』


 涙で2人抱き付く代刃。

 やっぱ仲が良いな。コイツ等は。


『では、アイシスとカナリアのコピー体もこの中に居るのかい?。』

『うん。居るね。カナリアは灯月ちゃんと似た魔力をおじさんは感じたけど。どうかな?。リスティナさん。』

『間違いないと思うぞ?。カナリアの視線はチラチラと灯月へ流れていたしな。』

『そ、そうなのですか?。』

『ああ。』

『そうですか…もう少し、コミュニケーションを取るべきでしたね。はっ!。ということはっ!。カナリア様もお兄ちゃん好きということですね!。』

『いや…それはないだろう。流石に…。』

『相手は創造された神だしな。兄妹という概念があるのか分からぬ。妾のように星の神ならまだしもな。』

『くっ…もし、そうなら色々とノウハウをお聞きしたかったのに…。』

『何のだよ!?。』

『それはもう…色々なことですよ?。にぃ様ぁ~。』

『はいはい。』


 丁度良い位置に灯月が近付いて来たので頭を撫でる。


『こほん。じゃあ、アイシスは?。』

『流石にあんな性格の奴なんていないよな?。』

『性格は環境なども影響してくるからな。一概に一緒になるとは言えんぞ。何処と無く似ているようにはなるだろうが?。』

『じゃ、じゃあ、彼女は誰の…。』


 無凱のおっさん、リスティナ、俺…あと、勘の良い奴が数人、ゆっくりとした動作で黄華さんを見た。


『え?。わ、私?。』


 一同。こくりっ。


『がーーーん!?。』


 本人は会ったことないしな。


『話だけは聞いてたわよ?。閃君と彼女のやり取りも映像で観てたし…。けど、気に入らないことがあったら殺しに掛かる危険人物なんでしょ?。私、そんなんじゃないわよ?。』

『分かってるよ。黄華さんはリーダー気質だからね。良い感じに彼女の要素が出たんじゃないかな?。』

『そう?。』

『そうですっ!。お姉ちゃんは優しいですよ!。』

『うんっ!。ママは優しいのっ!。大好きっ!。』

『マイ…エンジェルズ…。』


 翡無琥と瀬愛を抱きしめる黄華さん。


『ああ~。でも、黄華さんは、気に入ったモノを持ち帰る癖があるからね。その辺は…。』

『はぅ!?。確かに…そうね…。』


 おっさん…何故追い討ちを掛けた…。


『…さて、本題だが。女王は2週間後に動き出すと言っていた。それが、戦いの最終局面になることは間違いないだろうな。』

『2週間…。』

『具体的にどんな風に攻めてくるのかは?。』

『全力で攻める…そう言っていた。女王が本気を出せば、この星すらも容易く消し去れるだろう。だが、それでは意味がないらしい。』

『どういうことですか?。』

『女王はその辺も教えてくれた。奴等は【バグ修正】のプログラムを宿した攻撃でないと我々を殺せないのだという。いや、そうでないと意味がないらしい。』

『………。そうか。僕達はこの世界にとってのバグ。そして、奴等は僕達を完全に排除するのが目的だ。』

『ああ。成程。普通に俺達を殺すのは…奴等にしてみれば簡単だ。だが、それだとバグそのものを排除したことにならないってことだろ?。』

『そうだ。【バグ修正】を宿した肉体、及び武器で我々を攻撃し、殺さなければならない。それが奴等の最終目的だ。』


 バグ、つまりは…この世界に蔓延した本体のリスティナの魔力だ。

 それを媒体にしたのが俺達クロノフィリアのメンバー。【バグ修正】のプログラムは対象に直接打ち込まないと効果が得られないってことで、要するに奴等は直接的な攻撃でしか俺達を殺せないってことか。


『それも女王が教えてくれたの?。』

『そうだ。』

『もしかして…女王って仲間なの?。相手側にしたら裏切り行為じゃないの?。それ?。』


 光歌が問う。確かにそう思われても仕方がない。そう思わせる程、女王の行動は危ういのだ。


『いや、それはない…。と、思う。』

『ああ。俺もそれはないと思う。性格が優しいだけで、女王は敵だ。』

『どうして?。結構大事な情報を私達に与えてると思うけど?。』

『それでも、女王からすれば容易いことなのだろうさ…。妾達を排除することなどな…。』

『………。』


 光歌が黙る。

 他のメンバーも同じだ。


『女王だけ…ならば手は残されていた。』

『ん?。【神騎士】達のことか?。』

『いや、違う。女王だけならば、妾のこの身と引き換えに相討ちに持ち込むことを考えていたのだ。』

『おい…初耳だぞ?。』

『言っておらぬからな。だが、この作戦は使えん。』

『使わせる気はないが…何でだ?。』

『女王の半身もこの世界に現れるそうだ。』

『半身?。』

『前に話したであろう?。【神王】は2柱いると。女王の対の存在…つまり、【王】もこの世界へ顕現すると女王が教えてくれたのだ。強さは女王と同等だ。本体でない妾では2柱を同時に相手にするのは難しい。』

『………。』


 女王と同等の力を持つ存在が来る。

 女王1柱ですらリスティナ無しでは勝てない相手だ。


『すまぬ…。』


 リスティナが頭を下げる。


『何か…手は無いのかい?。』

『…妾の力で一時的に全員を【神騎士】に迫るくらいの強さは与えられる。いや、もう与えているのだ。お主達全員に。』

『そうなのか?。』

『ああ。それが【神化】というスキルに施された効果だ。元々、閃達が持っていたスキルは妾が与えたモノなのだ。それが妾と契約したことでより強大な効果となっている。』

『そうだったのか…。』


 【神化】はゲーム時代。レベル120、クティナを倒した後に獲得できたスキルだ。ラスボスを倒した特典だと思っていたんだが…。


『現在のお主達が【神化】をすればレベル180相当に強化される筈だ。この状態であれば【神兵】であれば倒せるであろう。』

『すげぇな。クリエイターズよりも強くなれるのか?。』

『ああ。そうだ。だが、【神騎士】クラスには一歩及ばぬ、それに弱点として持続時間が短いのだ。魔力も湯水の如く消費していくこととなる。真面に戦闘が出来るのは精々が5分と言ったところだ。』


 5分間の切り札か…。


『ありがたい。無いよりは全然マシだ。』

『なら、これからは1人での行動は避けて、必ず複数人で行動するようにしよう。そうすれば、【神兵】【神騎士】が相手でも遅れは取らないしね。』

『ああ。そうだな。それが最善だな。』

『警戒網の強化は必須だね。残り2週間でどれだけの強化が出来るか…光歌ちゃん。神無ちゃん。機美ちゃん。大変だけど中心になってよろしく頼むよ。』

『任せろだし!。』

『はい。了解しました。』

『うんっ!。皆の為に頑張るよっ!。』


 そうだ。俺達の力を合わせれば、どんなに敵が強大でも負けはしない。


『皆…すまん。な…。』


 突然、泣き出したリスティナ。


『どうした?。急に…。』

『妾は…心の底からお主達を愛している。…それだけは…信じて…ほしい…。』


 リスティナは、俺達をこの戦いに巻き込んでしまったことを悔いていた。

 きっと、この涙も…。

 俺は他のメンバーに目配せた。

 全員が俺の意図を察して頷く。

 そうだ。誰もこの選択に後悔なんてしていない。


『分かっている。リスティナ。俺達はお前にこの力を貰ったことを感謝しているんだ。だから、泣かないでくれ。』

『閃…。』

『俺達は最後までお前と戦い続ける。そして、平和な日常を取り戻すっ!。』

『っ!?。ぅ…ありがとう…皆。すまぬ…。』


 リスティナは暫くの間、静かに泣いていた。


ーーーーーーーーーー


 王の玉座。

 そこに帰還した女王が鎮座していた。

 相変わらずの威風堂々とした佇まい。凛々しくも美しい表情。それでいて、全てを包み込むような慈愛に似た包容力を有する雰囲気を魔力に乗せ放出しているので彼女の周囲はとても居心地の良い空間となっている。


『決行の時刻になりましたら、例のポイントにて待機をお願い致します。』

『ふむ。そうしよう。しかし、なかなか良い作戦ではないか?。【万能の神】よ。敵の戦力を分散させ、各々の適性に合わせた環境に誘い出し各個撃破する。急拵えの作戦にしては上手く作れたではないか。』

『はっ!。称賛のお言葉。嬉しく思います。』


 現在、女王の間にてクロノフィリア殲滅作戦の最終確認が行われていた。

 この場には女王とクリエイターズの6柱が揃っている。

 【白騎士】と【黒騎士】は協力者との別作戦に赴いている。


『期待しているぞ。』

『はっ!。』


 閃君~。閃君~。閃君~。

 はぁ~。短い時間だったけど楽しかったな~。

 僕の悩みとか愚痴とか嫌な顔しないで、ちゃんと聞いてくれたし、優しくフォローしてくれたし。

 はぁ~。もっとお話したかったな~。


『【神騎士】の方々の行動は、こちらに記載しています。』

『ふむ。概見しよう。』


 また、会う約束も出来たし。

 もう、今から楽しみで仕方がないよっ!。


『ふむ。成程。』

『敵勢力で要注意の警戒対象が別紙に記載されています。』

『ふむ。』


 ああ。でも、閃君はこの世界で人間として生きてきたんだもんね。

 僕も人間の社会とか、生活について勉強しておいた方が良いよね?。

 そうだ。僕の部屋とかに呼んで2人きりでお話とか良いんじゃないかな?。

 閃君に僕のこと、沢山知って貰いたいしね。


『ほぉ。【創造の神】以外にもなかなか面白そうな個体がいるではないか?。』

『はい。特に個体名【閃】と呼ばれているデータは要注意です。創造神リスティナの魔力を直接受けたデータですので。』

『成程な。』


 あっ。もしかして、これって噂に聞くデートってヤツかな?。

 確か男型と女型の人間が互いの関係を深めるとか何とかアイシスが言ってたよね?。

 アイシスに頼んでそういう映画を観せてもらおうかな?。


『この【代刃】と言う人間は?。何故、妾の姿に似ている?。』

『はっ!。それは、この世界に人間を創造する際に、人間を導く存在として我々の情報を内包した個体を用意したからです。そこに記載されている上位の人間達は我々のデータを持つコピー体なのです。』

『ほぉ。そういうことか…。』


 はぁ~。閃君ともっと仲良くなりたいなぁ~。

 こんなことならもっと早くこの世界に来るんだったね。


『失礼するわ。』


 突然、入室してきたアイシス。


『!?。こ、これは…アイシス様!。』


 【神兵】が驚きの声を上げた。


『あら?。誰の許可を得て話し掛けているの?。』

『っ!?。』


 また、アイシスの悪い癖が出そうになる。

 アイシスも【神兵】を見下す傾向が強いんだよね…。はぁ…。


『よせ。【略奪の神】。』

『?。あら?。女王様。要らしたのね?。失礼しました。【略奪の神】アイシス。只今戻りました。』


 僕の存在に気付いたアイシスはその場で跪いた。


『この場での【神兵】への粛正の許可は出さぬ。その怒りは収めよ。』

『ええ。そうするわ。』


 はぁ…。何でこうなるのかなぁ~。


『ふふ。女王?。』

『ん?。どうかしたか?。』

『私…この世界が気に入ったわ。』

『ほぉ。何か良いことでもあったか?。』


 珍しいね。

 アイシスは基本的に映画以外のことに興味を示さない。

 まぁ、その映画も何となくで観ている感じなんだけどね。


『ふふ。この世界にダーリンがいたの。』

『む?。知らぬ単語だ。何だ?。それは?。』


 ダーリン?。

 何かの名前かな?。


『ふふ。旦那様よ?。未来永劫愛し合う定められた運命を持つ男性のことよっ!。』


 嬉しそうに喜びを身体全体で表現するアイシス。


『つまり、番か。人間の世界ではそういう習わしがあると聞いたな。』

『ええ。そうよ。もう、デートもしてきたわ。』


 えっ!?。デートっ!?。

 僕がこれから閃君としようと思ってるアレのこと?。


『ほぉ。どのようなことをしたのだ?。』

『あら?。興味がおあり?。』

『無論だ。ソナタがそこまで嬉しそうに話すのだ。少し内容が気になった。』


 そうだよっ!。デートに詳しいアイシスがどんなことをしたのか教えて欲しいんだよっ!。


『ええ。女王も女型の神だものね。恋愛に興味があっても可笑しくないわよね。良いわ。教えて差し上げるわ。』


 わくわく。どきどき。


『まずは、腕を組んで人間の作った街の中を歩いたわ。』


 腕を組んでっ!?。


『密着する身体。互いに感じる体温に、僅かに聞こえる鼓動。身を寄せているだけで幸せな気分になるわ。』


 わわわわわ、大胆だねっ!。


『ふふ。殿方は女性の身体が好きなの。私が少し密着を強めて、胸を腕に押し付けるだけで殿方の顔が赤くなって、とても可愛らしいの。』


 む、胸をっ!。

 は、恥ずかしいよ…。凄いね。アイシスは…。


『その後は、出店…と呼んでいたわね。外に出ているお店でアイスクリームという食べ物を食べたわ。』


 アイスクリーム?。可愛い名前だね。どんなモノなのかな?。


『冷たくて、甘くて…何度も食べたくなってしまったわ。』


 食べ物かぁ…。あんまり何かを食べる習慣がないから表現が難しいね。

 冷たいは分かるけど、甘いって何だろう?。

 閃君なら分かるかな?。


『恋人同士の男女が行う儀式。あ~んも体験したわ。』

『あ~ん…とは、何だ?。』

『ふふ。それはね。食べ物を口に運んで貰うの。ダーリンの唇が触れたモノを自分の口に運ばれるのよ。とても幸せな気分になるわ。』

『そうか。体験がないせいか。想像が難しいな。』


 何それ!?。凄いドキドキするねっ!?。

 あれだよね?。何だっけ?。

 キスって行為の3歩手前みたいな?。


『色んなお話をして、ダーリンが何を好きなのか。ダーリンがどんなことをすれば喜ぶのかが少しずつ分かってくるの。楽しくて、嬉しくて、けど、胸のあたりがムズムズして…凄く、幸せな時間だったわ。』


 はぅ…。デート最高だよっ!。

 ヤバい。デート。早くしたいなぁ。


『最後は観覧車という乗り物に乗ったわ。』

『観覧車?。』


 聞いたことないね。

 どんな乗り物なの?。


『ええ。箱のような部屋が幾つもついている丸い乗り物なの。その部屋に入って空中を1周するという乗り物だったわ。』

『む?。それが…楽しいのか?。』

『ふふ。部屋の中は完全な密室なの。ダーリンと1周するまで2人だけの空間と時間を楽しめたわっ!。』


 なん…だと…。


『ほぉ。興味深い。中で何をしたのだ?。』

『ふふ。女王?。私は【略奪の神】よ?。良い機会だもの。ダーリンの心も身体も奪おうとしたわ。』


 心も…身体もっ!?。


『ふむ。』

『男性は女性の身体が好きと知っていたから、ダーリンに胸を揉んで貰ったの。』


 むっ!?。胸を!?。


『ダーリンの大きくて逞しい手のひらに収まった私の胸はダーリンの手のひらの動きに合わせて形を変えたわ。』


 わわわわわわわわわわjうぃえvhぢwぼbづwkあこhdじぇlsんをbどえm……………。


『不思議なの。ダーリンに触られた部分が熱くなって、ピリピリ痺れる心地よさが全身を駆け抜けたわ。』


 ぷすぅーーーーーーーーーー。


『そのまま。押し倒して貰おうと【神力】まで使用したのに、ダーリンは紳士的に私の【略奪】の力を払い除けたわ。』

『?。押し倒して?。すまぬ。知らぬ知識だ。』

『あら?。そうなの。そうね…。女王…少しお耳を拝借しても良いかしら?。』

『構わぬ。』

『ゴニョゴニョ…ゴニョゴニョ…。』

『ふむ。ふむ。ほぉ…。』


 なっ!?。男女が!?。1つに!?。裸でっ!?。えっ!?。ひゃっ!?。にゃぁぁぁああああああ!?。


『っという行為をしようとしたのだけど…ダーリンは私の肩を優しく抱きしめて頭を撫でてくれたわ。きっと…「1つしかない君の身体だ。もっと大事にした方がいい。俺達は出会ったばかりで互いのことを、まだ良く知らないのだから。今はこれで我慢しておくれ。」という意味が含まれていたわ。』


 何て…優しいんだ。そのダーリンという方はっ!?。

 閃君と同じくらい優しいんじゃないかな?。

 はぁ…僕も閃君とデートした時にアイシスの真似をしてみようかなぁ~。


『楽しい時間はあっという間に過ぎてしまったの。別れる際に1日のお礼を伝えた私にダーリンは優しく微笑んでくれたわ。我慢できなくて最後にキスをしてサヨナラをしたの。はぁ…最高の1日だったわぁ。』


 キキキキキキスをしたのぉぉぉぉぉおおおおお………!?。

 お、大人だ…。

 キスってアレだよね?。

 あ~んの3歩前方にあるっていう………。


『なかなか。興味深い話だったな。で?。最後に問うが?。』

『あら?。何かしら?。』

『そのダーリンという者は、名前なのか?。』

『ふふ。ダーリンっていうのは女性が最愛の男性を呼ぶ時の言葉よ。』

『ふむ。ならば、その者の名は何というのだ?。』


 敵って言ってたし、このリストにある人かな?。

 閃君の仲間だもんね。きっと全員素敵な人なんだろうなぁ~。


『ふふふ。ダーリンの名前はね。』


 誰かな~。

 この人かなぁ。この人かなぁ。


『閃様よっ!。』


 ピキーーーーーーーーーーンッ!?。


 その瞬間、僕の中で硝子のような音を立てて何かが崩れ落ちた。

次回の投稿は30日の日曜日を予定しています。

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