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第152話 女王

『面を上げよ。』

『はっ。』


 【宇宙(ソラ)の神】メリクリア。


 顕現した女王は用意された玉座へと腰を下ろした。

 放たれる底知れぬ魔力と、その威光に頭を垂れる面々。

 

【神騎士】

 【白騎士】イルナード

 【黒騎士】ノイルディラ

【神兵】

 【万能の神】レジェスタ

 【生命の神】ライアゼク

 【同調の神】キーリュナ

 【流動の神】コルン

 【音響の神】ハールレン

 【大地の神】アーニュルィ


『して、【万能の神】よ。』

『はっ。』


 クリエイターズのリーダーであるレジェスタに向け女王が問う。


 返事を返すレジェスタ。

 その声には緊張が窺える。

 無理もない。自分達が恐れる存在であるアイシスやイルナード。【神騎士】と呼ばれている神の更に上の存在なのだ。


 クリエイターズ。【神兵】が力を合わせ全員で挑んでも敵うことなく殺されるであろう存在【神騎士】。

 その【神騎士】が4柱、全員で挑んでも敵わない存在…それが女王。


 【神王】と呼ばれる2柱の内の1柱なのだ。


 しかし、レジェスタは僅かに 安心 を感じていた。

 その理由として、女王の性格が比較的温厚で穏やかなことが挙げられる。

 あの狂犬のようなイルナード。自分本意に殺戮を繰り返すアイシスとは違い、女王は戦闘行為をあまり好まない。


 先程もそうだ。

 仮にアイシスによるクリエイターズに対しての謁見の機会が用意された場合、誰か1人でもその場に居なければ 理由に関係なく 誰かが殺されるのだ。


 しかし、女王はそんなことはしない。見たことがない。


『【略奪の神】はどうした?。姿が見えぬが?。』

『アイシス様は自由奔放の身。我々では止めることは出来ず…今も何処に居られるかは…。』

『そうか…。まぁ、良い。それが【略奪の神】の本質だ。好きにさせよ。』

『はっ。』


 そうだ。これが女王の反応だ。

 決して責めない。責任を負わせない。

 女王の寛大さはクリエイターズの面々にとって救いなのだ。


『流石、女王。寛大なお心に感謝致します。』

『よせ。イルナード。そのような賛辞は好まん。』

『はっ。失礼致しました。』


 僅かに顔を反らした女王。

 その表情を窺うことが出来ないが、あの狂犬のような性格のイルナードが忠犬と化しているのだ。女王には感服せずにはいられない。

 女王がいる限りイルナードが暴走することはなく、クリエイターズは安全なのだ。

 ただし、女王の機嫌を損ねなければ…だが。


『…ふむ。なぁ。【万能の神】よ。』

『はっ!。』


 再び、女王からの問い掛け。


『【言霊の神】と【空間の神】。あの2柱はどうした?。姿が見えぬが?。』


 クリエイターズの面々を見渡し女王が疑問を告げた。


『はっ!。その2柱は、我々を裏切り、敵である【創造神】に我々の情報を与えたことで、アイシス様により処刑されました。』

『ふぇ!?。なんでぇ!?。……あっ……こほん。処刑とは、また大層な罰を与えたモノだな。』

『アイシス様です。あの方が動けば生か死か…2つに1つかと…。』

『そうか…。………2柱が欠け、さぞ、手間取ったことだろう。これからは妾と騎士も動く、安心せい。』

『はっ。有り難き幸せ。心遣い痛み入ります。』

『して、現状の報告を聞かせて貰おうか?。』

『はっ。』


 レジェスタが立ち上がり説明を始める。


『現在。我々は、この仮想世界に外部から侵入したウイルス。【創造神】リスティナの魔力と分身体、そのリスティナの影響を受けた連なるモノ達と交戦しています。』


 リスティナの魔力が仮想世界に及ぼした影響。そして、今後引き起こされる可能性が説明されていく。


『うむ。このまま、【創造の神】の魔力を放置することは、この仮想世界の存在意義そのものに影響を与える。そういうことか?。』

『はい。その通りです。』

『それは…芳しくないな。して、ウイルスはどのようにして排除することが可能だ?。』

『はっ。我々の開発したプログラム。【バグ修正】をウイルスを有するデータに打ち込むことで排除することが出来ます。』

『具体的に排除とは何か?。』

『この世界から消滅します。』

『うむ…。』


 暫く、何かを考える素振りを見せる女王。

 沈黙が続く。


『【創造の神】はどうするつもりでいた?。』

『…それは…。』


 言葉を濁すレジェスタ。

 【創造神】リスティナ。彼女をこの世界から切り離すにはクリエイターズ全員の力を合わせても…アイシスを含む【神騎士】の力を持ってしても敵わない。リスティナを排除するには更に上の存在、そう【神王】の力が必要なのだ。


『はぁん。そういうことかい?。自分達で手に負えないから女王の力を借りたいと。そんな、くだらねぇ理由で?。女王を動かした訳だ。』


 話を聞いていたイルナード。

 彼は顔を上げるとレジェスタを睨み付けた。


『…その通りです。』

『はぁ…。これだよ。これですよ?。使えねぇ兵隊だ。…で?。仕舞いにゃ。裏切り者が2体出たぁ?。ふざけてんの?。』

『いえっ!。そのようなつもりはありませんっ!。この度は、女王様には多大な…。』

『いや、もうそういうの良いから。はぁ…決めた。俺ッチ決めたわ。【神兵】全員。役立たず。…ここで死ね。』

『っ!?。』


 イルナードが立ち上がりレジェスタ達に向かって一歩を踏み出した。


『待て。』

『…はっ。』


 いつの間にか立ち上がった女王がイルナードとレジェスタの間に割って入っていた。


『もう忘れたか?。イルナード。妾は 気にしていない と申した筈だが?。』

『…しかし、王女。コイツ等の行動は目に余る。』

『くどい。』

『はっ。』

『これ以上、妾の前で醜い争いを繰り返すならば、イルナード。妾自らお主を黙らせることになるが?。』


 女王から放たれる魔力に乗せた殺気に空間が凍りついた。


『誠に申し訳ございません。このイルナードが愚かでした。』

『分かれば良い。妾は怒っても、迷惑だとも思っておらぬ。むしろ、ここまで主の意図をくみ取り完成された世界を造り出したことを誇らしく思っておる。良くやった。【神兵】の諸君。我等が主も満足することだろう。』

『勿体無き。お言葉です。』

『ふふ。気にするな。話を戻そう。…では、妾は【創造の神】をこの世界から排除すれば良いのだな?。』

『はい。御身自ら動いて頂くことになり…大変申し訳あり…。』

『もう十分だ。【万能の神】。ソナタの気持ちは伝わっておる。謝罪は不要だ。』

『はっ。』


 再び、玉座に戻る女王。


『この場…いや、この仮想世界の指揮権は【万能の神】。お主が主から任されている。よって妾もお主の作戦通りに動こう。何なりと申してみるが良い。』

『なっ!?。』

『んっ!?。』

『っ!?。』


 女王の発したその言葉に、イルナードを含めクリエイターズの面々。更には今まで沈黙を続けていたノイルディラすら驚愕の表情で女王を見た。


『よ、宜しいのですか?。』

『当然であろう?。この世界を任されたのはお主だ。妾ではない。ならば、妾の自由にすることなど出来んよ。それは主の命令に背くことに繋がるからな。違うか?。イルナード。ノイルディラ?。』

『いえ。仰る通りです。』

『女王の意のままに。』

『この件は妾の独断だ。彼等を責めるなよ?。』

『『はっ!。』』


 跪く白騎士と黒騎士を見て納得した女王がレジェスタを見る。


『そういうことだ。問題あるまい?。』

『はっ。お力添え。感謝致します。』


 その場にいたクリエイターズ全員が女王に感謝した。


『さて、作戦会議を始めようか?。』


 そして、始まる。

 クロノフィリアを世界から排除するための…神々の話し合いが…。


ーーー


『ほぉ。面白いモノを造ったではないか?。』

『お褒めに預り光栄です。』

『しかし、これではこの世界が滅びてしまうだろう?。』

『はい。元より承知の上です。【創造神】を排除した後は、この世界を修正しリセットします。もちろん、今回のイレギュラーも含めた新世界です。』

『そうか。正しき周回へ戻る。そういうことか?。』

『はい。』


 レジェスタの説明を受け納得した女王。


『ああ。すまぬ。1つ伝え忘れていた。』

『はっ。どのような?。』

『もう暫し時が経つ頃、妾の半身と【静寂の神】も、この世界に降り立つだろう。』

『なんとっ!?。王自らも?。』

『手透きなのだ。暇潰しなのだろうな。』

『そうですか…。』

『これは妾からの忠告だ。半身には好きに行動させよ。あれは妾程穏和ではない。』

『はっ!。』


 女王の半身。

 【神王】の1柱。王。

 その存在の自由さ。奔放さ。強大さ。恐ろしさはクリエイターズであるレジェスタには恐怖の対象でしかない。

 とてもではないが、今回の作戦に参加させることなど頼める筈もない。


『会議は終わりだ。妾の部屋は?。』

『彼方に用意しております。』

『そうか。久し振りに行動したのでな。少し疲れた。イルナード。ノイルディラ。』

『『はっ!。』』

『【神兵】と争うな。これは命令だ。力を合わせ事に当たれ。』

『『はっ!。』』


 女王は【同調の神】キーリュナと【大地の神】アーニュルィに連れられ用意された部屋に入っていった。


『さぁて、女王に命令されちゃった以上俺ッチの感情の高ぶりは二の次だ。』

『…申し訳ありません…。』

『いんや。良いよぉ。全然。女王が許すって言ったんだ。俺ッチがどうこう言うのも、おかしな話だし。なぁ。ノイルディラ?。』

『無論だ。女王がお前達の案に乗ると言ったのだ。我等はそれに従うのみ。』

『ありがとうございます。イルナード様。ノイルディラ様。』

『で?。どういう流れで始めるわけ?。俺ッチ。つまんないのは勘弁だよ?。何か面白そうな奴はいないわけ?。』

『面白い…ですか…。ああ。あの人間はどうでしょう?。』

『あの人間?。』

『実は我々に協力している人間が1人おりまして。』

『人間って、データのことだろう?。何でまたそんな奴を?。』

『彼の研究が我々にプラスに働くと考えたからです。あのアイシス様にお会いして尚生き残っている幸運の持ち主です。もしかしたらイルナード様にもお気に召すかも…と。』

『へぇ。姫にまで。確かに面白そうだ。俺ッチ、ちょっと会って来るぜ!。』

『どうぞご自由に。場所は此方の地図に記載していますのでご確認下さい。襲撃の予定は先程お伝えした通りとなります。』

『わかった。わかった。遅れないから安心しなよ。』


 薄気味悪い笑みを浮かべ王の間を出ていくイルナード。

 僅かにレジェスタは安堵する。


『私も失礼する。この世界の情報を自分の目で確かめたい。』

『はい。お部屋は用意してありますので、其方をお使い下さい。』

『ああ。』


 続いてノイルディラも出て行った。


 残されたクリエイターズの4柱。

 レジェスタ、ライアゼク、コルン、ハールレン。


『やれやれ。恐ろしい旋律だったな。』

『お疲れ。レジェスタ。』

『ああ。寿命…はないが、何かしらは縮まった気分だよ。』

『我々の上をいく存在だ。彼等が暴れれば我々など為す術もあるまい。』

『そうだな…だが、来て頂けたのが女王で本当に助かった。』

『ああ。王が相手であれば戯れで我々は死んでいた可能性の方が高い。』

『女王様。好き。』

『ああ。美しい旋律。奏でる声は全盛期のカナリアをも凌ぐであろう。可憐さと儚さが融合しているようだった。』

『兎に角、女王には全身全霊で御使いしなければならんな。』

『ああ。この世界を堪能していただこう。』

『時間は僅かだがある。キーリュナとアーニュルィを同行させこの世界を、その目で御覧いただこう。』

『うん。それ良いアイディア。』

『決まりだな。』


 今回の一件で女王に対するクリエイターズの評価が上がり信仰に近い形へと変化していくこととなった。


ーーー


『では、何かあれば私共をお呼びください。別室にて控えておりますので。』

『ああ。用があれば呼ぼう。しかし、妾にばかり構っていてはソナタ達も疲れるであろう?。必要な時だけ呼ぶ。それ以外は寛いでおれ。』

『はっ。』

『お心遣い感謝します。』


 部屋を出ていくアーニュルィとキーリュナ。

 カチリッと扉が完全に閉まるのを確認した後、念のため気配を探る。どうやら、他のメンバーの元に戻ったようで気配が遠退いていく。

 一応、魔力を周辺に放ち音漏れや盗聴の可能性を探り安全を確認する。

 魔力を周囲に張り巡らせ簡易的な結界を造り出した。


『ふむ。監視の目はないようだな。』


 今自分を見ている目がないことを確認し終えた王女は用意された特大のベッドへ頭からダイブした。


『はぁぁぁぁぁあああああ!!!。疲れたぁぁぁぁぁあああああ!!!。』


 先程までの冷静で凛々しく美しい旋律のような声が嘘のように見た目の若々しさ、それ相応の少女の叫び声が部屋中を響き渡った。


『何なんだよぉ~。何で皆あんなに喧嘩っ早いんだよぉぉぉおおお!!!。僕は怒ってないし~。イルナードの奴ぅ…自分が怒ってるのを僕のせいにしてさぁ。宥める身にもなれって言うんだっ!。』


 ベッドの上をゴロゴロ転がる姿は、最早女王の威厳や威光など皆無のただの少女だった。

 だが、髪を振り乱し、だらしなく着ている衣服がはだけている姿にも関わらず、その身に宿す美しさは一片の曇りもない。人間の持つ美しさとは一線を画す。それが彼女が神、故…なのだろう。


『はぁ…。もう、寝ようかな。疲れたよぉ。』


 何気無く天井を眺めながら、つい先程まで話し合っていた内容が脳裏に甦る。


『殲滅…か…。嫌だなぁ…。』


 彼女は…まだ、この世界を知らない。

 しかし、情報は得ている。

 データ状にのみ存在する生物【人間】。


 【神に最も近い】と称される生き物。


 主から受け取った生物情報を基礎とし【神兵】が仮想世界で創造した彼等は、この世界で仮初の輪廻を繰り返し、数え切れない滅びと再生を体験した情報体だ。


『リスティナちゃんの影響…多分、生物として確立されちゃってるよね…。』


 リスティナ。女王達が今現在、侵略を進めている惑星…【リスティール】の神だ。

 【創造神】である彼女は特に生物の創造に特化した神だと女王は考えている。

 その彼女の魔力の影響を受けたとなれば、元々、神の作り出した機械…【AI】だったとしても、【命】に書き換えられ【魂】を得ていると考えて間違いない…と女王は考えている。


『肉体のない。魂か…。』


 クロノフィリア。

 女王は殲滅対象の名をそう聞いている。

 彼等は今、この世界で生きている。

 その【命】を摘み取ることに抵抗を感じているのだ。


『はぁ…はっ!。それより、アイシスだよ!。何でカナリアちゃんとナリヤ君を殺しちゃうんだよぉ…あんなに良い子達なのに…。はぁ…。』


 溜め息だけが、静かな部屋の中に溶けていく。


『もうっ!。向こうに戻ったらちゃんと生き返らせてあげるからね。待ってて。』


 手近にあったふかふか枕を抱き寄せ決意を固める女王。

 その時、女王に閃きが。


『あっ!。そうだ!。アイシスを探しだして怒れば良いんだ!。そうすれば反省してくれる筈!。』


 上半身を勢い良く起こした女王。


『そうだよ!。リスティナちゃん!。彼女ならこの世界の現状を説明すれば、もしかしたら、この世界から居なくなってくれるかも!。そうすれば僕達と争いにならないで済むよね!。よしっ!。早速、行動開始だ!。』


 乱れた服を整え、至急部屋を後にした。


ーーー


『メリクリア様!?。お休みになられたのでは!?。』


 通路に出た女王を発見したクリエイターズが驚愕する。


『用事が出来た。外へ出る。』

『はっ!。至急、お伴の準備を!。』

『いらぬ。』

『は!?。』

『妾。1人だけで十分だ。伴は不要。』

『しかし…。』

『この世界に妾が敵わぬ敵が存在するか?。』

『…いえ。【創造神】以外は問題ないかと。』

『【創造の神】の魔力は覚えておる。安心せい。不用意に近づいたりせぬし、【万能の神】。ソナタ達の計画の邪魔はせぬ。』

『女王…。』

『掻い摘んで話すとだな。【略奪の神】に説教だ。』

『っ!?。そういうことですか…。でしたら、私共は邪魔になりますね…。』

『【略奪の神】のことは妾に任せよ。ソナタ達は準備の続きを進めよ。』

『はっ!。』


 アイシスの暴走は時として計画の破綻を招く可能性があった。

 しかし、女王は自ら動き、その不安要素を取り除こうとしてくれている。

 …と、クリエイターズの面々は思ったのだった。


『ではな。行ってくる。』

『はっ。どうかご無事で。』

『ふむ。計画遂行の期限までには戻る。後のことは頼むぞ。』

『はっ!。』


 女王は建物の外へと出ていった。


『まさか、女王自らがアイシス様を止めるために動いてくださるとは…。』

『有り難いよね~。女王様。大好き。』

『私も好きです。お優しい方…。』

『僕も~。』

『これで計画は順調に進められる。良い前奏だね。』

『皆。気を抜くなよ。我々に失敗は許されん。女王様が動いて下さるのだ。女王様の為にも全身全霊を持ってリスティナ。そして、クロノフィリアを殲滅するぞ。』


 ここに来て、女王の神性によりクリエイターズは活気に満ち溢れるのだった。


ーーーーーー


ーーー閃ーーー


 その日の俺は、ギルド 黄華扇桜の商店街を1人で歩いていた。

 いや、正確には1人と1神。


『ダーリン!。あれは何かしら?。あそこだけ気温が低いわ。』

『あれは、アイスクリームだ。食べたことないのか?。』


 俺の腕に抱きついている白いドレスに身を包んだ絶世の美少女が嬉しそうに微笑み、アイスクリームが売っている出店を指差した。


『ええ。無いわ。食べ物なのね?。ああ。映画で観たことあるわ。美味しいのかしら?。』

『ああ。甘くて冷たいぞ。なら、食べようぜ。買ってやるよ。』

『あら?。嬉しいわ。ダーリン。ありがとっ。』


 嬉しそうに俺の腕を引いていく美少女。

 見た目通りの可憐さとは裏腹に彼女の纏う魔力の異常性が俺に…いや、俺達に緊張を与えてくる。


~~~


 事の始まりは2時間前。

 時刻は朝の8時頃。

 黄華扇桜内に突然出現した強大な気配。

 俺を含めクロノフィリア全員がその異常な気配の発生源へと向かった。


 ギルドの境界入り口。そこに立っていた1人の…いや、一柱の神。

 

『お久し振りね。ダーリン。会いたかったわ。』


 白蓮との戦いの時に現れた異質な神。

 名を…確か…アイシスと言ったか。


 俺を含めクロノフィリア全員が駆け付け、真正面から物陰から、あらゆる場所からアイシスの行動を観察している。


 無凱のおっさん達も居るが、アイシスは俺以外が言葉を発すると攻撃を仕掛けようとしたことがある。言葉を発さず、様子を窺っている。


『ああ。身構えないで欲しいわ。戦いに来たわけではないのだから。』

『?。じゃあ。何をしにここに来たんだ?。』


 僅かに頬を赤らめ摺り足で俺に迫るアイシス。


『ダーリン!。デートしましょう!。私に恋を教えて欲しいわ!。』

『…………………………は?。』


 その言葉に、この場にいる全てのメンバーの口が開いた。

 今、いつ爆発するのかすら分からない爆弾がクロノフィリアに投下されたのだった。

次回の投稿は16日の日曜日を予定しています。

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