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第142話 1日お部屋デート 灯月の場合②

『あぁっ!。あん!。んあっ!。』


 自室にあるモニターの画面の中から部屋中に響き渡る女性の喘ぎ声。


 にぃ様との1日お部屋デート。現在の時刻は11時30分を回ったところです。

 朝食を食べ終えた私とにぃ様は映画を観ることにしました。

 今、この崩壊した世界では、テレビ番組が放送されていません。もちろん、レンタルショップや通販なんて数年前に消えてしまいました。

 娯楽が少ない現状を打破するため、1年前に私は昔住んでいた家を訪ねました。もちろん、家は崩壊し家具や当時大事にしていた物は無残な残骸に成り果てていました。

 ですが、辛うじて小さな故障で済んでいたテレビと数十枚の当時集めていた映像ディスクを発見し持ち帰りました。

 テレビは光歌ねぇ様が修理してくれました。

 ディスクを読み取る機能も直してくれて、今では回収したディスクでの映画鑑賞が私の趣味の1つになりました。

 その後も、行動可能なエリア範囲から集めた視聴可能な映像ディスクは、優に500を越えるくらい枚数が集まります。年代も巻数もバラバラなアニメやドラマ、同じく統一性の無いジャンルの映画などなど。

 綺麗に研磨し、汚れも取り除き丁寧に保管するそれらは、数少ない私の娯楽の1つです。

 まぁ、半数が私の部屋のあった場所から発掘されたモノですが…。

 当然、様々なジャンルに精通する私ですが…当時の私は、にぃ様と結婚することしか考えてなくてですね…その…なんと言いますか…集めていた映画やアニメもその影響を少しばかり受けていまして…早い話が、ジャンルに偏りがあるわけです。

 主に、『血の繋がった兄妹の禁断の恋』という方面のタイトルが増えていったのです。


『なぁ。灯月。映画観ようぜ?。確か結構な数持ってたよな?。』


 …の、言葉から始まった映画鑑賞。

 ディスク選択時に、にぃ様が手に持ったのが…あろうことか、【禁断の愛】というタイトルのディスクでした。

 当然、私は内容を知っています。よりによってそれを選ぶなんて。

 その内容は、様々な困難を乗り越えた兄妹が結ばれ、幸せを手にするも更なる苦難に襲われ、最後は死を持っての永遠の愛を手に入れる…というモノ。

 多少過激な内容が含まれる作品なのですが…。まさに今、2人の男女が肌を重ねているシーン、つまりは濡れ場に突入したわけですよ。

 今までの私ならば、にぃ様を振り向かせる為に、もしくは、その気にさせる為に躊躇いなく観せたことでしょう。しかし、今日のにぃ様は、積極的に私を愛してくれています。戸惑い、困惑、混乱に支配された今日の私の心では、この何とも言えない空間が堪らなく居心地が悪いのです。


 私達は今ソファーの上にいます。

 にぃ様の足の間に座っています。後ろから私を抱き締める形ですね。俗に言うあすなろ抱きです。

 にぃ様はこの体勢が好きなようで、2人きりの時はこの体勢になります。私もにぃ様の体温と温もりを直に感じられるこの体勢が好きです。

 チラリとにぃ様の横顔を御拝見。

 はぁ…格好いい…。って…そうではないでしょ!。私!。

 にぃ様は真剣に映画に集中しています。男女が交わるシーンを…。やはり、にぃ様も男性。こういう映像は好ましく思っているのでしょうか?。こんな映像に頼らなくても私ならばにぃ様のお望みをいつでも叶えてあげますのに…。


『なぁ。灯月。』

『ひゃいっ!?。』


 そんなことを考えていると突然にぃ様が話し掛けてきました。ビックリしてにぃ様の腕の中でもビクッてなってしまいました…。


『なぁに?。お兄ちゃん?。』


 にぃ様との今日1日のお約束。

 にぃ様呼びと敬語の禁止。昔に戻ったみたいです。


『この映画に出てくる兄役の男…本当に妹のことが好きなのか?。』

『え?。どういうこと?。好きだから…その…今…こんなシーンを…してるんだよ?。』

『んー。なんか納得いかねぇな。』

『納得?。』

『いや、前半あんなに愛を確め合ってた2人だぞ?。その割には、やることが淡白というか…義務でやってるというか…。』

『それはこの俳優さんの演技力だよ。きっと。』

『んー。もっと…そうだな。今まであれだけ我慢してたような描写を描いていたのにな…。普通だったら、もっと…相手の妹を滅茶苦茶にしたいと思う気がするんだよなぁ。』


 にぃ様が疑問に思っているのは、営みの内容ですか!?。つまり、もっと激しく獣のように交われと?。そう言うのですか?。


『まぁ、俺だったら灯月が俺しか見れなくなるまで徹底的に愛してやるけどな。長年かけて念願叶った2人の愛だ。最低でも3日は外に出ないな。いや、足りないか?。1週間は滅茶苦茶にしたいな。』


 い、1週間も!?。滅茶苦茶に!?。私、何されちゃうんですか!?。嬉しいっ!。にぃ様…素敵…っ!?。

 

 いやいや。灯月。そうじゃないでしょ?。


 どこからか代刃ねぇ様のツッコミが聞こえたような?。


『まぁ。映画なんだ。俺が何か言っても仕方がないか。ごめんな、灯月。変なこと言った。』


 私を抱き締める腕に力が入る。

 はぁ…にぃ様…。あったかい…。

 にぃ様の温もりを感じていたら、いつの間にか映画はクライマックスを迎え、結ばれた男女は崖から飛び降りて命を絶ちました。エンディングのテロップが流れ、最後に海辺に打ち上げられる2人の愛の証。偶然か、奇妙にリング同士が結びついた結婚指輪でした。


『はぁ…終わったな。全体的に物足りなかったが、話の流れは理解できた。』

『そうだね。私も同じ感想かな。もう少し愛し合ってる描写が欲しかったね。』

『こんな風にな。』

『っ…。』


 後ろから抱き締められて身動きを封じられた私の頬にキスをするにぃ様。私が振り返ると今度は唇にキス。


『よし。時間も丁度良いしな。昼飯にしよう。』

『あっ…。』


 立ち上がるにぃ様。

 不意に身体に感じていた温もりが離れ、肌寒さと寂しさが押し寄せてきました。思わず、にぃ様を見上げ声を出してしまいます。


『すぐに、準備するから待っててくれ。』

『っ!。』


 もう一度唇に軽いキス。離れ際におでこにもキスをするにぃ様。

 はぁ…。にぃ様ぁ。正直、お昼ごはんとか、家事とか放置で良いので、ずっと、くっついて…イチャイチャしていたいです…。


『ぅん。お兄ちゃん。早く戻ってきてね。』

『ああ。待ってろ。』


 キッチンに向かうにぃ様の姿を、近くに置いてあったクッションでにぃ様の温もりを誤魔化しつつドキドキしながら眺めることにしました。完全ににぃ様のされるがままになってますね…。メイドとしての私は、いなくなってしまいました…これ。にぃ様が恋しい乙女になってしまっています。…元々ですが。


『お待たせ。』


 私の位置は朝食の時と同じで、にぃ様の足の間。もう、驚くことはありません。自然に向かってしまいましたから。


『ホットケーキと、フレンチトーストだ。メープルシロップとハチミツ。どっちが良い?。』

『メープルシロップが良いなぁ。』

『あいよ。』


 いい具合にバターが溶けたホットケーキにメープルシロップがかけられていく。甘くていい匂いが食欲を刺激します。

 丁寧に1口サイズに切り分けられて、フォークで私の口へ。

 もう、あーん。とかの掛け声なしです。にぃ様が食べ物を口の近くに運んできたら自然に口が開いてしまいます。

 ああ。調教されてしまっています。幸せぇ。


『モグモグ。美味しい。』

『そうか。次はこっちも食べてみてくれ。』

『あーん。モグモグ。』


 1口サイズのフレンチトーストが口の中に。


『こっちも美味しい。』

『そっか。沢山食べろよ。』


 私…太っちゃうかも…。


 昼食後、私は再びソファーの上。クッションを抱いて、キッチンで洗い物をするにぃ様を眺めています。

 世界がこんな状況にならず、にぃ様と…もし、結婚した未来があったのなら…。

 結婚… if として私の夢が叶っていたら…。


『こんな感じ…だったのかなぁ。』


 そんなことを考えながら、物思いに耽っていると…。


『お待たせ。何がこんな感じなんだ?。』

『結婚っ!?。』

『結婚?。』

『あ。えっと…何でもないよ。ちょっと考え事してたの…。ビックリして、ごめんなさい。』

『そうか。なら、灯月の悩みを吹っ飛ばすためにゲームしようぜ?。』

『うん。良いよ。やるぅ。』


 にぃ様との結婚生活のことを考えてたなんて言えません…。気付かれないで良かったです。


 私が元自宅の残骸から救出出来た物の1つが当時のゲーム機です。機械類に強い光歌ねぇ様が居てくれたお陰で修理も成功。数本のゲームソフトと一緒に私の部屋の娯楽の1つです。


『よし、これやろうぜ。』


 にぃ様が選んだゲームは、当時人気だったレースゲームでした。世界中で大人気キャラクターが入り乱れるレースゲーム。自分の好きにカスタマイズ出来るキャラクターの自由性が人気となり、オンラインを利用した世界大会まで行われていたゲームです。

 現在はインターネットが普及していないので、オフラインの対人戦となります。


『よし、勝負だ。灯月。』

『うん。負けないよ。お兄ちゃん。』


 懐かしいです。昔は2人で良く遊んでました。このゲームも、もう数え切れないくらい2人でプレイしたのは良い思い出です。

 私は勝負事には手加減しません。それが、例え…最愛のにぃ様だったとしてもです。容赦しません!。


 私の身体は、にぃ様に包まれています。

 にぃ様の前、足の間で体育座りです。

 もう完全に定位置となっていますね。にぃ様に言われる前に自分から座ってしまっていますし。はぁ…幸せです。落ち着きます。


 そして、レースが始まります。

 スタートダッシュを互いに決めた私達。にぃ様は数年振りのプレイの筈なのに、時間がある時に遊んでいた私に全く引けを取っていません。ショートカットもほぼ同時に成功させて来ます。アイテムの使用するタイミング、コーナーリングでの加速とテクニック、コース取りと全く無駄がありません。

 流石です。にぃ様。


 ゴール!!!。

 

 と、画面に大きく流れる文字。

 結果は…私の勝利で終わりました。

 ですが。嬉しくありません。私は勝負事には真剣です。手を抜かれることは嫌いですし、許しません。

 先程のレース。最後の1周。にぃ様は明らかに手を抜きました。途中まで互角と言っても良い勝負を繰り広げていたというのに…。


『………。にぃ様…。』

『ん?。』

『今、手加減…しました…よね?。』


 私は怒っています。ですので、にぃ様呼び復活です。敬語も復活させましょうか?。

 にぃ様をジト目で見つめる私の頭を何故か嬉しそうに撫でてくるにぃ様。


『あ。あのぉ。にぃ様?。』

『すまんな。真剣な灯月があまりにも可愛くて、綺麗で…レースそっちのけで見惚れてた。』

『にゃう!?。んー!?。』


 振り向いて見上げる私にキスをするにぃ様。怒っていた感情が吹き飛んでしまう衝撃が私の中を駆け抜けました。


『ごめん。ごめん。次は真面目にやるから。』

『むー。約束だよ?。お兄ちゃん。』

『ああ。だが、一個、賭けをしようぜ?。』

『賭け?。』

『全力で勝負する代わりに勝った方が負けた方に、今日1日1回だけ使える【お願い権】を得られるってどうだ?。』

『お願い…権?。』

『ああ。灯月が勝ったら、このデート中に一回どんなお願いでも叶えてやるよ。ああ。もちろん、俺が叶えられるお願いにしてくれよ?。』

『お兄ちゃんに…お願い…何でも?。』

『ああ。』

『だが、灯月が負けたら俺のお願いきいて貰うからな?。』


 さて、やるか。


 私は無言で自分が使用していたコントローラーの接続を切り、別のコントローラーを棚から取り出します。このコントローラーこそ、私の人生と共にあらゆる高難易度のゲームを乗り越えてきた相棒です。

 さぁ!。にぃ様!。覚悟してください!。私にこのコントローラーを出させた以上、にぃ様に突き付けられるのは 敗北 の2文字だけだということ!。その逞しい御体に刻んで差し上げます!。


 ゴール!!!。


『俺の勝ちだな。』

『そんなぁ…。』


 無慈悲なゴールの文字が画面に流れます。

 おかしくないですか?。

 さっきのレース…あれで手加減じゃなかったのですか?。私…周回遅れになってますよ?。


『約束だ。後で【お願い】するから、覚悟しとけよ。』

『は、はい…。あの、お手柔らかに…ね?。』

『善処する。』


 その後も、にぃ様は手を抜くことはせず徹底的に私を負かして行きました。

 ここまでの力の差があるなんて…。流石です!。にぃ様!。


『さて、そろそろ夕飯の準備だ。また、待っててくれよ。』

『はい。』


 私はもう徹底的に、にぃ様に甘えます。私の思考など本日のにぃ様の前には薄い紙に鉛筆で書かれた設計図に過ぎません。にぃ様の厚紙に油性マジックで書かれたシナリオの前には無意味!。つまりは…。


『夕食~。楽しみ~。』


 にぃ様に全てを委ねます。


 テーブルには次々に手作り料理が並べられていきます。って、これ懐石料理です。凄いですね。旅館で出しても遜色ない出来栄えです。


『あ、あれ?。』

『さぁ。灯月はこっちだ。』

『あっ…うん。』


 違和感に気付きます。

 運ばれてきた料理の位置は対面。

 にぃ様の前の椅子に私が座る形です。朝食もも昼食もにぃ様の足の間に入る形だったのに?。温もりを感じられないことに寂しさを感じながら、夕食を食べ始めました。


『さあ、食べよう。』

『いただきます。』


 あっ…美味しいです。

 この野菜の酢の物も、煮物も。さっぱりしてて。お刺身も、焼き魚も美味しい。漬け物も白米に合いますね。


『和菓子にも挑戦してみたんだ。食後に食べような。』

『和菓子っ!?。うん!。楽しみ~。』


 和菓子ですか!。私、大好きです。


 夕食は、にぃ様と談笑しながら進められました。他愛のない兄妹の会話。思い出話から最近の出来事。仲間の皆さんのこと。いくら時間があっても全然足りません。

 私は、にぃ様とお話出来るだけで満足なのですから。


『ご馳走様でした。とっても美味しかったです。お兄ちゃん。』

『お粗末様。喜んで貰えて良かったよ。』


 楽しい時間はあっという間に過ぎていきます。

 にぃ様が洗い物を済ませて戻って来たのが20時を回った頃です。もう、夜ですか…早いですね。


『さてと。』

『お兄ちゃん。この後は何しますか?。』

『ん?。決まってんだろ?。』

『え?。』

『一緒にお風呂だ。さっき掃除して沸かしといた。』

『え!?。えぇぇぇぇぇえええええ!?!?。』


ーーー


 ちゃぽん…。


 私の部屋の浴槽は2人で入っても足が伸ばせる程度の余裕があります。

 にぃ様に誘導され、現在は最早本日の定位置となっているにぃ様の足の間で座っています。

 ただ1つ…今までとの違いは…と言いますと…私も…にぃ様も…一糸まとわない姿、まぁ、全裸なわけで…もう、2人共丸見えなんです。

 お風呂なので当然ですし。既に…その…経験は済んでいるのですが…改めて、明るい場所で見られるのと、今日の積極的なにぃ様に見られるというのが重なりますと…ドキドキが激しさを増して正常な判断が出来なくなってしまいます。


『灯月は柔らかいな…。』

『ひゃぃ…。ぅ~。』


 普段の私なら、にぃ様に触って貰いたくて自分から行くんですが…。ダメです。恥ずかしさで身体が硬直してしまいます。

 後ろから抱き締めてくれる、にぃ様の硬くて逞しい御体は湯船のお湯の温かさとは別の熱を感じさせてくれます。


『灯月。』

『ぅん。な、なぁに?。』

『それ。ずっと付けてくれてるよな。ありがとう。作った甲斐があった。』


 にぃ様が指摘したのは私の左手の薬指にはめられた指輪。にぃ様がバレンタインデーのお返しとしてホワイトデーにくれたモノです。

 付加効果で、冷たい水に触っても魔力の膜が手を包み込んでくれるので冷えなくて済みます。


『うん。とっても嬉しかったから。お兄ちゃんと恋人になれて、初めて貰ったプレゼント。私の宝物だよ。』

『そっか…。大切にしてくれて嬉しいよ。』

『うん。』


 暫くの沈黙。

 互いの温もりを感じ合います。私…今、凄く幸せです。


『なぁ。灯月。』

『んー?。』

『2年後。灯月が成人したら。今度は本物の指輪を贈るな。』

『え?。あ、お兄ちゃん?。それって?。』

『結婚指輪だ。』

『っ!。』

『お前の夢を叶えよう。』

『お兄ちゃん…。』


 その言葉に涙が流れてきました。

 私の夢…覚えててくれていたんですね…。


『この現状じゃ、お前が思い描いた夢とは程遠い結果かもしれないが…。だが、俺がお前を大切に想っているという心は形にしたいんだ。』

『ぅん。』

『だから、灯月の指に俺の想いを着けさせてくれな。』

『うん。待ってるね。』

『ああ。』


 私の頭を撫でて、優しくキスをしてくれるにぃ様。

 その後、私達は互いの身体を洗い合いました。恥ずかしかったですが、にぃ様の優しい手つきは気持ち良かったです…。


『灯月。コーヒー牛乳とフルーツ牛乳どっちがいい?。』


 お風呂から上がり、にぃ様は冷蔵庫で冷やされた2本のビンを持ってきました。

 飲み物まで作ったのですか?。にぃ様の万能っぷりが凄すぎます。


『フルーツ牛乳がいいなぁ。』

『あいよ。』


 にぃ様から受け取ったフルーツ牛乳。にぃ様と並んで飲みます。

 火照った身体に冷えた飲み物が身体に染み渡ります。最高です。極楽浄土はここにありました。


『さて、灯月。』

『ぅん。』


 1日が終わりを向かえようとしています。

 2人は今、同じベッドの上。恋人同士が一緒に寝るのです。心の準備は出来ています。


『俺は今日1日、灯月のために自分の時間を使ったわけだ。』

『うん。色々ありがとう。お兄ちゃん。とっても嬉しかったよ。』

『そこで、灯月にゲームで勝って手に入れた【お願い権】を使おうと思う。』

『え?。』


 このタイミングで?。

 そんなことしなくても私の身体は、にぃ様の自由ですよ?。


『俺が灯月に時間を使ったように【お願い権】では、この時間から翌朝までのお前の時間を貰う。』

『ん?。どういうこと?。』

『つまり…。』

『きゃっ!?。』


 にぃ様が私を押し倒して身体を被せてきました。心臓の高鳴りが一気に跳ね上がります。


『お兄ちゃん?。』

『今夜は寝られると思うなよ?。』

『ひゃぅ!?。』


 耳元で囁かれたその言葉に、私は完全に堕ちました。

 その後、私はにぃ様に朝まで愛して貰いました。もう無茶苦茶です。

 目が覚めると、昨日と同じくにぃ様の腕の中。私を見つめるにぃ様のお顔。この1日で一生分の心臓が高鳴ったのではないでしょうか?。

 私にとってそれだけ、濃厚な1日でした。


『おにぃちゃん。』

『ん?。何だ?。』

『大好きぃ。』

『ふふ。愛してるぞ。』


 目覚めのキスをしてくれるにぃ様。

 最初からですが、もう私はにぃ様がいないと生きていけない身体になってしまいました。


『えへへ…おにぃちゃん、好きぃ~。』

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