第141話 1日お部屋デート 灯月の場合①
ついに…ついに…ついにぃ~!。この日が来ました!。
待ちに待った、にぃ様とのお部屋で1日デートの日。
私を含め、クラブの皆さんも女の子。
大好きな!。にぃ様を独り占めしたい!。されたい!。…っと思うのは当然の感情です!。
ですので、私は提案したのです!。
そして、厳選なる…厳選なるくじ引きの結果(多少スキルを発動しましたが)、私が一番目になりました!。トップバッターです!。
今日は早めに寝ましょう。朝早く起きて、にぃ様を迎えにいきましょう。
えへへぇ~。寝て、起きたら~。にぃ様とデート~。デート~。1日ずっとデート~。
楽しみすぎて寝れるでしょうか?。いえ、寝ます!。寝不足では、にぃ様に最高のご奉仕…パフォーマンスができません!。絶対、メイドとして…恋人として、にぃ様に満足して貰うんです!。
『では、にぃ様~。お休みなさ~い。ちゅっ。』
枕元に置いてある、にぃ様の写真に軽く口付け。明日はいっぱい本物のにぃ様にするんです!。キスも!。ちゅーも!。接吻も!。
私は、数分で眠りにつきました。
ーーーーーーーーーーーーーーー
『ん?。』
深い眠りから僅かに浮上する意識。
私の体内時計は正確で、生まれてこのかた一度も目覚ましをセットしたことはありません。
無意識下でも起床設定した時間通りに起きることが出来ます。
今朝は、4時半に起きることにしていました。そろそろ、時間のようですね。待ちに待った1日の始まりです。
早速起きて、にぃ様の部屋に行きましょう。ついでに少し添い寝なんてしたりして…。
私はおもむろに目を開けた。
『おっ。起きたか?。』
『え?。ええっ!?。』
『おはよう。灯月。今朝も早いな。』
目を開ければ、眼前に広がるにぃ様の凛々しいお顔。
ドキッ、と高鳴る心臓。
目覚めに、にぃ様のお顔は破壊力がありすぎます。
優しい目付きで私を見つめるにぃ様に戸惑いながら現状を把握するために視界を動かします。
どうやら、場所は私の部屋、ベッドの上。寝る前と変わらない部屋の内装。寝る前との違いは私のベッドで、私に寄り添うように横たわるにぃ様のお姿だけ。
『あ、あの…にぃ様…どうして?。』
『ん?。何で一緒に寝てるのかってか?。』
『あ…はい。』
『灯月の寝顔が可愛かったから、一緒に寝たくなった。』
『ひゃぁぁぁ…。』
にぃ様が私のおでこにキスを!?。
胸のドキドキが更に加速しています。
『俺を迎えに来ようとして早く起きたんだろ?。安心しろよ。お前の側に居てやるから、もう少し寝てな。』
私の身体を抱き寄せて頭を撫でてくれるにぃ様。
ああ、もしかして…夢ですかね?。これ?。
私があまりにも1日デートを楽しみにしたせいで、私の理想の遥か上をいく夢を見てしまっているのかもしれません。
『ほら、ゆっくりお休み。』
『はい。にぃ様。』
夢の中でも、にぃ様に包まれて眠れるなんて…幸せ過ぎですね。にぃ様の匂いと温もりに包まれて私は再び眠りにつきました。
ーーー
チュンチュン…。チュンチュン…。
『ん?。』
沈んでいた意識が浮上する。
耳には、外から聞こえる鳥のさえずり、瞼の裏には外から射し込む光を感じます。
あれ?。明るい?。明る過ぎませんか?。何時ですか?。予定では早朝に…4時半前に目覚める筈でした。こんなに光を感じるなんて…有り得なくないですか?。
そうです。早く起きて、にぃ様の部屋に行かないと…。行かないと…。行かなくちゃ!。
これ完全に寝過ごしてます!。
『あっ!?。』
勢い良く上半身を起こす。
周囲の確認、真っ先に飛び込むのは窓から射し込む太陽の光。明るいっ!?。完全に陽が昇っていますっ!。
直ぐ様、時計を確認すると、時刻は…7時30分…。ああ…やってしまいました。人生初めての寝坊です。まさか、こんな大切な日に寝坊するなんて…。
『いえ…取り乱している場合ではありません。にぃ様の部屋に急がないと!。』
落ち込んでいる暇はありません。
一刻も早く遅れた分を取り戻さなくてわ。私はベッドから飛び起きようと全身の力を入れ…ようとしました。
『灯月。おはよう。随分気持ち良さそうに寝ていたからな。起こすのが可哀想で声かけなかったんだ。』
私の部屋に備え付けてあるキッチンから姿を現したのは、エプロン姿のにぃ様。手には、ジューーーっと音を立てるフライパンが。
ああ。エプロン姿のにぃ様…格好いい…。って、見惚れてる場合ではありませんっ!。
『にぃ様…な、何を?。』
『ん?。朝食を作ってるんだ。冷蔵庫の食材、悪いが勝手に使わせて貰ったぞ。構わなかったか?。』
『え?。あ、はい。ご自由にお使いください…あれ?。』
何がご自由にですか!?。私!?。何言ってるんですか!。メイドとして、にぃ様に朝食を作らせるなど言語道断!。早く交代せねば。
『灯月。』
『はえ?。』
私が思考している間に、手に持っていたフライパンをガス台に置いたにぃ様が目の前にいました。
『ほら、そんな格好じゃ風邪をひくぞ?。』
私の肩にカーディガンを掛けてくれました。
そういえば、今の私の姿…。薄い透け透けのネグリジェ…。私は普段、下着を着けて寝ないので…にぃ様には私の色んな箇所が透けて丸見えという訳で…。
カアアアアアァァァァァァ………。
顔が…いえ、身体中が一気に熱くなる。
あれ?。おかしいですね?。普段の私なら、自分の自慢の身体を、にぃ様に見て欲しいと思うのに…今日のにぃ様には…恥ずかしさを感じている?。
『俺の部屋用のカーディガン。持ってきておいて良かった。ほら、身体冷やさない内に顔でも洗っておいで。』
『あ…その…はい…。』
『良い娘だ。あっ、あと、今日は化粧とかは…しないで良いからな。』
『ひゃぁっ!?。』
『素顔のお前と過ごしたい。』
ちゅっ…と軽い口付けがおでこに…。
不意打ちの一撃は私の心臓に一際大きな音を上げさせました。
少し大きめな、にぃ様のカーディガン。
さっきまで、にぃ様が着ていたんでしょう、にぃ様の匂いがする…。抱き締められて、包まれてるみたいです…。
ーーー
シャーーーーー。バシャバシャ。
シャーーーーー。バシャバシャ。
シャリシャリシャリシャリシャリ。
シャリ。シャリシャリシャリシャリ。
シャーーーーー。モギュモギュ。ぺぇっ。
シャーーーーー。モギュモギュ。ぺぇっ。
『ふぅ…。』
顔を洗って、歯を磨いてスッキリです。
火照った顔も身体も冷め、冷静さが戻ってきました。
『はぁ…。』
何故でしょう…今日の、にぃ様はいつも以上にドキドキします。あんなに積極的に迫られたことが初めてで…どうすれば良いのか分かりません…。
こんなことではいけない。…そうです!。今日はメイドとして、恋人として!。にぃ様にご奉仕するって決めたのです。
『よしっ!。行きましょ…。』
コンコン。
『ひゃい!?。』
『灯月。顔は洗い終わったか?。』
『は、はい…。』
『そうか。少し失礼するな。』
扉越しのにぃ様の声。
ガチャリと扉が開いた。
『気に入るか分からないが、これ。着てみてくれないか?。』
『これは?。』
手渡される衣服。
見覚えの無い可愛らしいデザインですね。
『灯月の為に作った部屋着だ。いつまでもメイド服じゃ窮屈だろ?。まぁ、メイド服の灯月も可愛いから好きなんだが。一応、俺の好みを含めた灯月の好きそうな服に仕上がったと思うんだ。だから、着て欲しい。ダメか?。』
え!?。この服をにぃ様が!?。
『だ、ダメじゃ…ない…です…。』
『そうか。ありがとう。』
『ぃ…え…そんな…。』
ダメです…ドキドキしっぱなし…。にぃ様が私の為に服を作ってくれるなんて…最高のプレゼントじゃないですかっ!。
『あの…にぃ様…着ました。』
『おお。良いな。似合ってる。どうだ?。着心地は、窮屈にならないように仕立てたつもりなんだが?。』
にぃ様から渡された洋服は完成度が高かった。それは、お店で売っているような出来栄えであり、光歌ねぇ様や豊華ねぇ様が全力で作った服と肩を並べられるレベルです。
可愛らしいヒラヒラとした装飾のショートパンツと華やかで色とりどりのレースがあしらわれたブラウス。決してキツ過ぎず、着やすい、さらさらとした肌触り。非常に上品な出来です。
極めつけは、胸の下にある背中部分から伸びる紐状のリボン。結びを解けば、背中が開く仕様です。私の翼が出しやすいように配慮までされていました。
『あの…これ、にぃ様が?。』
『ああ、光歌に作り方を聞いてな。灯月に着て欲しくて作ったんだ。気に入ってくれたか?。』
『は、はい。とても、気に入りました。サイズまでピッタリで…素敵です。』
『そうか。なら良かった。ほら、こっちに座りな。』
そう言って、優しく微笑んでくれたにぃ様に誘導されて私は椅子に座らされました。椅子まで引いてくれて…。テーブルの上には既にいくつかのお皿が並んでいました。でも、何で片方側だけに置かれてるのでしょう?。
『もう少しで出来るからな。それまで、これでも飲んでてくれ。』
『これは…ココアですね。』
にぃ様がテーブルに置いたマグカップにはココアが注がれていました。キッチンに消えるにぃ様を見ながら私は少しずつココアを飲んでいきます。
はぁ…。甘くて美味しいです。落ち着きますね…。何か…大事なことを忘れているような気がするのですが…。
『お待たせ。じゃあ、食べようか。』
あっ、やってしまいました…結局、にぃ様に朝食作りを全て任せてしまいました…。
ベーコンエッグ、ソーセージ、サラダ、ポテト。そして、飲み物にミルク。
そして、小さなかごの中にはバゲットが2本。小さく切り分けられています。
『凄いです。これ、全部にぃ様がお作りに?。』
『ああ。灯月に食べさせてやりたくてな。いつも美味しい料理を作ってくれてるし感謝を込めて…な。』
『にぃ様…。』
『さぁ、食べようぜ。』
『はい。』
………………………………。
『あのぉ。にぃ様?。』
『ん?。何だ?。何が食べたい?。』
『あっ、では、そこのサラダを。』
『ああ。良いぞ。ドレッシングは俺のオリジナルだ。甘辛い味付けなんだ。気に入ってくれると良いが。あ~ん。』
『あ~ん。モグモグ。』
口の中に広がる野菜のしゃきしゃきとした瑞々しい食感と癖になるドレッシングの甘辛さ。
『美味しいです。』
『そうか。どんどん食べろよ。灯月の為に作ったんだからな。』
再度、口に運ばれるのはポテト。カリッと揚げられケチャップとマスタードで味付けされています。
『モグモグ。これも、美味しいです。』
はぁ…幸せです。にぃ様の手料理が食べられるなんて……あら?。流れに身を任せていて気付くのが遅れましたが…この状況は?。
『次は、これなんてどうだ?。昨日から生地を作って今朝焼いた出来立てのバゲットだ。マーガリンを塗ってあるから食べてみてくれ。あ~ん。』
『あ~ん。』
『灯月は小柄だからな。これなら丁度良い位置に口があるから食べさせやすいな。』
私が居るのは、にぃ様の足の間。正確には左足側に座っています。にぃ様の大きな手が背中に回され左肩を優しく掴んで身体を支えてくれている状態です。
そして、次々に口に運ばれる料理の品々。
たった今もバゲットが口に運ばれてきます。仄かな甘味とマーガリンの酸味が混ざり合い、モチモチした食感と相まってとても美味しいです。
にぃ様はパンも作れたのですね。流石です。
私が美味しいと言うと嬉しそうに笑って私の頭を撫でてくれるにぃ様。
その度にフワフワとした感覚に襲われ思考が鈍ってしまいます。
おかしいですね。私がにぃ様にやろうと計画していたことが何も進行していない…。
『あ、あのぉ~。にぃ様?。』
『ん?。何だ?。嫌いなモノでもあったか?。そう言うのは言ってくれると助かるぞ?。』
『え?。いえ、違います。好き嫌いはないです。』
『そうか。灯月は昔からそういうの無いから偉いよな。』
『はふっ…。』
また、頭を撫でてくれる。
はうぅ…気持ちいいです。…はっ!?。
『あ、あの。そうではなくてですね。その、今日のにぃ様は、いつもより…凄く積極的だと思いまして…理由を知りたく…なったと…言いますか…。』
『………ああ。その事か?。』
『はい。あっ!?。その、別に嫌だとか、そんな理由ではなくて…その、急にどうしたのかなぁ~って、思いまして…。』
『そんなの簡単な理由さ。』
『簡単?。』
『お前達が言ったんだろ?。この1日は、選ばれた奴だけを恋人として見て欲しいって、他の奴等はいないモノとして扱って目の前の恋人だけを愛して欲しいってさ。』
『はい。今日は私の番ですので…私だけが、にぃ様の唯一の恋人として扱って欲しいとお願いしました。』
『俺が灯月 だけ を恋人として選んだ未来を体験したいってことだろ?。』
『は、はい。その通りです。』
『なら、分かるだろ?。今のこの状況こそが俺がお前に捧げる愛の形だ。』
『っ!?。そ、そうなのですね…。』
このドキドキしっぱなしの状況がですか!?。にぃ様が思い描く私だけを見てくれた未来の形!?。
『あと、最初に言ったよな?。』
『え?。』
『後悔はするなよ、ってな。』
『あっ…。』
そう言えば言っていましたね。どういう意味なのか分かりませんでしたが。
『お前も俺の為に色々スケジュールを考えて来てくれたと思う。』
『はい。たくさん…たくさん考えていました。』
『俺がお前だけを愛すると決めた以上、今日1日は、お前の思い通りには絶対ならないからな。存分に愛して、甘やかしてやるから覚悟しろよ?。』
耳元で囁かれるように放たれたにぃ様の言葉に、背中からゾクゾクとした感覚が走りました。マズイです。今の私…絶対、顔真っ赤です。にぃ様に迫られるという前代未聞の出来事に思考が追い付かない…。追い付かないどころかキャパオーバーです。ショート寸前ですよぉ~。
ダメです。ダメです。こんな顔…にぃ様見せられない…。私は両手で自分の顔を隠します。顔は自分が思っている以上に熱を持ち熱くなっていました。
『ダメだ。灯月。顔は隠すな。』
『はぅ…。にぃ様…。恥ずかしいです…。』
『照れた顔も可愛いからな。隠すなんて勿体ない。』
両手を退けられ、目の前ににぃ様の顔が…私の顔を至近距離で見つめています…。にぃ様…格好いい…。そして、は、恥ずかしい…。
『灯月。』
『は、はぃ…。』
『今日…1日だけ。俺との約束を守ってくれるか?。』
『ふぇ?。な、何ですか?。』
『今日1日、にぃ様呼びと、敬語禁止だ。』
『ひぇっ!?。』
また、耳元で!?。
『では、ど、どうすれば?。』
『昔みたいにお兄ちゃんで良い。後は敬語無しだ。これは譲らない。もし、この2つの約束を守れたら。』
『守れたら?。』
『後で、ご褒美をやる。』
『ひゃぁぁぁあああ。』
耳元はダメですぅ~。気絶しちゃいますぅ~。ご褒美?。ご褒美ですか?。何をしてくれるんですか?。何されちゃうんですかぁぁぁあああああ!?!?。
『分かったか?。』
『…うん。お兄ちゃん。分かったぁ~。』
私…にぃ様には勝てません…。
ーーー
朝食が終わり、にぃ様が洗い物を片付けています。私はその様子を部屋にあるソファーの上で眺めていました。
家事をしているにぃ様は、いつもよりも更に格好良く見えます。まぁ、今までがカンストしてる好感度なので、新しいゲージに突入するだけなのですが。
『お待たせ。灯月。』
『はい、にぃさ…『灯月。』あっ!?。』
つい、いつもの癖でにぃ様呼びと敬語を使いそうになりましたが、途中でにぃ様が制しました。
『ぅん。お兄ちゃん。ありがとう。片付けまで。』
『良く言えたな。偉いぞ。』
『ん!?。』
今度は、唇に軽いキスをされました。
え?。え!?。にぃ様!?。大胆過ぎです!?。
『さっきは食事中だったからな。ほら、こっち来い。髪を梳かしてやる。寝起きから綺麗な髪が乱れたままだぞ。』
『ひゃい!?。』
ソファーの上に座っていた私をお姫様抱っこで抱き抱えたにぃ様は、鏡のあるドレッサーの椅子に私を移動させた。
こ、これが…にぃ様の愛…なのですか!?。
私…幸せすぎて…今日死ぬかもしれません。
『灯月の髪はサラサラで触り心地が良いな。』
にぃ様の手に握られた櫛が私の髪を撫でる。人にやって貰うのは久し振りですね。小さな時に、かぁ様にして貰って以来です。かぁ様と違うのは、にぃ様はくすぐったさを感じます。優しい手付きは一緒ですね。安心できます。
『あれ?。』
目を閉じて、身を委ねていた私は、ふと…にぃ様の手が止まっていることに気が付きました。
『お兄ちゃん?。ん!?。』
目を開け振り返ると、にぃ様にまた唇を奪われてしまった。
今日のにぃ様…ヤバい…です…。
『目を閉じていた顔が可愛くてな。つい、キスしちまった。すまんな。』
『んーーーーーっ!?。』
ドキッ!。って…また、ドキッって心臓が高まったんですけどぉぉぉおおおおお!!!。
『髪はこれくらいで良いか。うん。普段の髪を結んでいる灯月も可愛いけど、髪を下ろしてるのも大人っぽくて良いな。可愛いと美人の中間って感じだ。』
髪の流れに沿うように撫でながら、可愛いや美人という単語を私に向けて発するにぃ様…。
にぃ様…私を褒めても私の出せるモノしか出ませんよ?。
『それが、欲しいんだ。』
『はえ!?。』
心、読まれました!?。
『何年兄妹やってると思ってるんだ。お前の考えてることくらいお見通しだ。皆には分かりづらいだろうが。意外と表情に出やすいしな。』
『はぁ…はぁ…。うぅ…。』
後ろから私を抱き締めるにぃ様。そのお顔が私のすぐ横に…吐息がかかって…私の匂いを嗅いでる?。私の反応見て楽しんでる?。ドキドキが治まりません…。
『俺はお前が欲しいんだ。他なんていらないよ。まぁ、こう言ってはなんだが…恋人になった時点でお前は俺のモノになったわけで、他の奴に渡す気は無いんだがな。』
『はぅ…。』
ドキッ!っと心臓が跳ねる。
私をキュン死させる気ですか?。にぃ様にとって代刃ねぇ様の見た目がドストライクのように、にぃ様の顔は私のドストライクなんですよ?。それを知っていて、こんな至近距離で私に微笑むんですね…。
『ほら、こっちおいで。お部屋デートなんだろ?。もっと、一緒に居よう。』
『っ………。お兄ちゃん…。』
『おいで。』
『ぅん。好きです…。』
『ああ。俺は大好きだ。』
『はぅ…。』
トコトコと、にぃ様に近付いていく私。
近付く度に心臓の鼓動は高鳴り、加速していくのが分かります。
今日1日。メイドの私は死にました。
お兄ちゃん…にぃ様の本気に振り回される一人の女の子になってしまったようです。
あのぉ…まだ、午前中なんですよ?。この後、どうなっちゃうんですか?。