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第129話 仲間とこれから

 リスティナの話は続いていた。

 事の発端から俺達が経験し体験した出来事までが遂に繋がった。


『その後の顛末はソナタ達の知っての通りだ。妾の子達は、お主達を鍛えるために身を犠牲にした。奴等に負けぬ為の力を与えるためにな。種族の性質、能力のコントロール。皆喜んで死んでいったぞ。希望を託してな。』

『………。』

『そして、妾の元に辿り着いたお主達は見違える程強くなっていた。その強さは妾を倒すまでに至っていたのだ。正直、嬉しかったぞ。』


 ラスボス クティナを倒した時に出現した隠しダンジョン。

 ダンジョン内は巨大な迷宮となっており、多種多様な強力すぎるモンスターで溢れ返っていた。

 あれが、リスティナの仲間達…俺達を鍛えるために倒されて行ったのか…。


『まさか、1度の戦闘で妾を倒せるとは思ってなくてな、その時、妾の判断は間違ってなかったと確信したわけよ。妾の魔力を宿した閃を中心に、この者達ならば全てを委ねられるとな。』


 リスティナは強かった。

 正直、ギリギリも良いところだ。

 今にして思えば、リスティナは俺達を試していたんだと思う。彼女の仲間達のように、導き成長させ、強く育ててくれていたのだ。

 強大な敵に立ち向かえる力を与えるために。


『確信した妾は、最後の引き金を引いた。』

『引き金?。』

『妾は、お主達を媒体に妾の魔力を暴走させた。お前達に与えられた擬似的な肉体を構成する情報と奴等の使用していた、お主達とこの世界への繋がりを利用して情報の上書きを行ったのだ。目論み通り妾の魔力は世界を逆に侵食させることに成功した。どのような事態が発生するのかは妾自身でも想像できなかったがな。』


 その結果、この世界はゲームの使用していた能力が反映された世界に変化したということか。


『まぁ…後はお主達が知っている通りだ。』


 能力を利用した犯罪や事件が増え、徐々に拡大していった。秩序が乱れ、公共機関が停止し、能力者が支配する世界へと変化していった。


『今の妾は、本体が閃を介して、この世界に送った魔力の残留だ。能力も1割にも満たない…が、それでもそこら辺にいる能力者よりは強いぞ!。』


 身体を反りふんぞり返るリスティナ。


『さて、妾が知っていることはここまでだ。真実しか話しておらぬが信じるか信じないかはお主達に委ねる。これからのこともな。それを踏まえた上で言わせて欲しい。』


 そう言ったリスティナが俺達全員に向け頭を下げた。


『妾は…妾達はお主達に運命を委ねるしかなかった。だが、お前自身の運命をねじ曲げたのは間違いなく妾だ。本当に申し訳なかった。許してくれとは言わぬ。けれど、どうしても謝罪がしたかったのだ。』


 リスティナが介入しなければ、この世界に能力者が生まれることもなく、平和な日常が続いていたのかもしれない。

 しかし、滅びと再生を繰り返すこの世界で俺が生まれることもなかったのだ。リスティナがいたから俺が生まれた。俺に人生をくれたのは間違いなくリスティナだ。だから、ここにいる大切な仲間達とも出会うことが出来たしな。


 俺は…リスティナに感謝している。


 けれど、それは俺個人の考えだ。

 リスティナによって生み出されたのは俺だけ。他の仲間達は文字通り巻き込まれたのだ。皆はどう考えているんだろうか?。俺は皆の顔色を窺った。


『私は、にぃ様に出会えたことを後悔なんてしません。むしろ、感謝すらしていますよ。』

『ぼ、僕もだよ。閃に会えてから、僕の人生は大きく変わったんだ。』


 灯月を筆頭に皆が声を上げた。


『俺も後悔はしてねぇ。旦那に会う前は兎に角退屈な毎日だったしな。今の日常に満足してるぜ?。』

『そうだね。ここに集まったメンバーは、皆、【今】が好きなんだ。それは僕もそうだ。皆で勝ち取る【未来】は決して悪いものじゃないんじゃないかな。』


 無凱のおっさんの言葉に全員が頷いた。

 どうやら、誰もリスティナを責めてはいないようだ。それは、元六大ギルドのメンバーも同じだ。

 実際、美緑や赤皇のギルドの崩壊させる切っ掛けを作ったのはクリエイターズだろうし、まぁ、黒璃の場合は違うが…そもそも、リスティナとは初対面だ。今の会話だけで判断を下すのは難しいのだろう。


『だが、そのせいでお主達は強大な敵に狙われることとなるのだぞ?奴等の目的は妾の魔力を宿した存在をこの世界から排除することだ。ここにいる全員がその対象になってしまっている。』

『それこそ、関係ないさ。俺達はクロノフィリアだ。どんなに強大な敵だろうが必ず勝ってきた。仲間がいれば、どんな敵が攻めて来ようが乗り越えてみせるさ。』


 ゲーム時代から、それは変わらない。

 俺達が、クロノフィリアが揃っていればどんな敵とでも渡り合えると…俺達は信じているんだ。


『そうか…。』

『頭を上げてくれリスティナ。』

『ああ。』


 下げていた頭を上げたリスティナの瞳は涙がにじみ出ていた。

 余程、自分に対する俺達の反応を懸念していたのだろうか。

 チラリと無凱のおっさんを見ると、微笑みながら小さく頷いた。それは、クロノフィリアの全員がそうだった。

 俺に任せてくれるということだな。


『リスティナ。お前の話を聞く限り…いや、実際に俺がクリエイターズと対峙した感想だ。奴等は強大な力を持っている。俺達だけでは、これからの戦いで苦戦を強いられるかもしれない。だから、頼む。俺達にリスティナの力を貸してくれないか?。』


 リスティナに握手を求める。

 リスティナは、俺の差し出した手をじっと眺め小さく笑うと…。


『無論だ。その為に妾はここにいるのだからな。』


 俺の手を握り返してきた。


ーーー


『さて、では出来ることから始めるか。』


 リスティナの説明が終わり、今後についての話を始めていた。

 敵は強大。だが、俺達は余りにも敵に対して情報不足だ。

 敵がどのような存在かは、リスティナの説明で理解した。しかし、この世界で敵が何処に潜んでいるのか。どれ程の規模の戦力を保有しているのか。等々、分からないことばかりだ。

 実際な話。俺達がやれることは今までと変わらない。情報収集を起点に準備を整えていくしかないのだ。戦力の増強、物資の確保。やることは多い。


『出来ることって?。』


 そんな話をしている途中でリスティナが立ち上がり俺に話し掛けてくる。


『まずは戦力の増強だろう?それなら妾は力になれるぞ。まずは…そうだな。仲間を増やそうか。』


 自身の胸に手を当て目を閉じるリスティナ。

 全身が眩いばかりの光に包まれた。次第に光は2つに分裂し、その輝きを徐々に弱めていった。

 2つに分かれた輝きの内1つはリスティナだった。

 そして、もう1つは…。


『クティナ…。』


 空中に浮かび眠っている幼い少女。

 その姿は見間違う筈はない。エンパシスウィザメントのラスボス【クティナ】だ。


『そうだ。クティナにも手伝って貰おうと思ってな。』

『どうやって、クティナを呼び出したんだ?。』

『何を言う。元々、今妾が依り代としている肉体はクティナのだ。妾は今、クティナの肉体をコピーし7つの宝石を持って顕現しているのだ。つまり、クティナが本体なのだ。』


 そうか。確かに、リスティナを呼び出すのに使ったのは【クティナの肉体】と【クティナの宝核玉】だ。クティナの身体と心。


『話した通りクティナは妾の情報を元に奴等が生み出した、謂わばコピー体。それを利用したという訳だ。今は妾の方がコピー体だがな。』


 クティナ。数多くのプレイヤーを退けてきた最強の敵キャラクター。ラスボスの名に恥じない強力な力を見た目の幼さとは裏腹に内に秘めている。

 その存在が味方になる。そんな心強いことが他にあるだろうか。


『ん…。ここ…どこ?。』


 目を擦りながら周囲を見渡すクティナ。

 どうやら、目覚めたようだ。


『おお。こうして話すのは初めてだな。妾はリスティナ。お主の…そうだな。姉といったところか。』

『リスティナ…。姉…。ん?。』


 そんなクティナと目が合った。

 じっと見つめるその大きな瞳に俺の姿が映し出される。


『閃?。』

『あ、ああ。そうだが…何で俺の名前を?。』


 ゲーム時代に戦ったとはいえ、クティナと俺は初対面だ。話したことすらない。


『閃。大好き。』


 俺の話を聞かず、その小さな身体は光の粒子となり俺の中へ入っていった。

 ドクン…。とクティナの脈動に似た存在感を身体の中に感じる。


『クティナは、生まれたばかりのような状態なのだ。右も左も分かっておらん。だが、お主達、プレイヤーと戦った記憶はしっかりと覚えているようだな。』

『だとしても、俺がクティナに好かれている理由が分からん。』

『それは妾にも分からん。まぁ、その内閃の身体の中から出てくるだろうさ。その時にでも本人に確認すれば良い。』

『あ、ああ。』


 クティナとの記憶なんてトドメを刺してHPを0にしたモノしか無いぞ…。


『クティナのことは閃に任せる。どうやら相当気に入られている様だからな。さて、次だ。後ろの面々。』


 リスティナの視線が元六大ギルドのメンバーへ向けられる。それは黄華さん達、黄華桜扇のメンバーも含めてだ。


『私たちですか?。』


 黄華さんが立ち上がる。


『ああ。見たところお主達は、閃達と親しいようだが、クロノフィリアという訳ではないようだな。レベルも低く、身体に刻印もない。』

『はい。私たちはゲーム時代ではなく、この世界で彼等の仲間になった者達ですから。』

『成程。そういうことか。ならば、力をやる。』

『え?。』

『今、この場にいるクロノフィリア以外の人間全ての心の形を確認した。皆がクロノフィリアを信頼し、閃達の力になりたいと心の底から思っていることを感じた。閃。いい奴等を見付けたな。』

『…ああ。コイツ等はもうクロノフィリアの一員だと思っているからな。』

『うむ。ならば、敵に寝返りや裏切りは無いだろう。まぁ、妾の魔力が移っているのだ。心が通い合っているのは間違いないか。良し決まりだ。お主達全員に【限界突破2】のスキルをやろう!。』

『え!?。それって…つまり…。』

『ああ。全員のレベルを150にする。そして、【神化】も授けよう。』


 高らかに宣言するリスティナ。

 今ここに、創造神による大改造計画が幕を上げた。

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