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第128話 世界の真実③

 ゲーム エンパシスウィザメント。

 プレイヤーは己の分身である種族を与えられたアバターに意識を宿しゲーム内を駆け巡る。

 発売直後から、その広大なマップと自由度で話題をさらっていった。

 様々なモンスターとの戦い。自身を自由に強化。現実に存在するモノは勿論のこと、物語の中にしか存在しないような能力や武器だって作ることが出来た。また、村を始め、町、そして国に至るまで全てがプレイヤーの自由に設定が可能だった。

 ゲーム開始からイベントも充実。

 特に24時間、いつ如何なる時に発生するか分からない【緊急クエスト】の存在は、やり込みを行っているプレイヤー達が最も攻略に苦しまれたイベントだった。


『緊急クエストというモノがあっただろう?。』


 リスティナの言葉に皆首を縦に振った。

 当然、忘れるわけがない。

 あれは、いつ発生するのか、どれくらいの攻略難易度なのか、どんなモンスターが出現するのかなどの前情報が一切公開されることなく唐突に発生したという告知が送られてきたんだ。

 そして、何よりも発生するイベントの全てが高難易度ばかりのレイドだったということだ。


『あれは、難しかったな…。』

『皆さん、生活がありましたからね。時間的にイベントに参加できない方も多い時がありました。』


 真夜中、午前2時過ぎ。早朝、学校に登校中や会社に出社中。兎に角、突然に発生したんだ。


『当然だな。あれは、妾が直接創造した仲間達だったからな。』

『仲間達か…。フィールドに生息していたのとは違うのか?。』

『あれは既に奴等が出現させたコピー体達だ。妾が創造し育んだ生命達は、あの頃にはもう数える程しかいなかった。』

『では…僕達は、コピーを倒すことでレベルを上げ素材を手にしてオリジナルの君達と戦わされていた…ということかな?。』


 無凱のおっさんが間に入り捕捉の質問をする。


『ああ。そうだ。お主が言う緊急クエストとは、オリジナルの妾達との戦いを意味していた。数を減らし疲弊して抗っていた同志達は何も知らぬ、お主達によって討伐されていった…。』

『…そうか。知らなかったこととはいえ、申し訳ない…。』

『いんや。良い。お主達に罪はない。全て奴等の手の平の上で踊らされただけなのだ。』


 リスティナの仲間達…【創造神】のリスティナにすれば自らが生み育てた子供達が次々に殺されていったのだ。その心中は、複雑だろう。


『奴等はコピー体を使い、お主達をレベルという形で成長させていった。何も知らぬお主達は、瞬く間にレベルを上げ、強大な能力を身に付けていったんだ。妾達は劣勢だったがな、お主達が進行を始めてから数年単位…はギリギリ持ちこたえたのだがな。驚異的な速さで成長するお主達は妾からすれば化け物だったぞ?。』


 俺達は、ゲームとして…娯楽として楽しんでいたモノはリスティナ達にとっては侵略そのものだったということだ。


『休み無しに連続で押し寄せるお主等は脅威でしかなかったぞ?何せ殺しても幾度も復活を繰り返し、昼夜を問わず攻め立ててくるのだからな。』

『は?いや、流石に毎日ログインはしてもリスティナの仲間達を討伐するような緊急クエストなんて頻繁には無かったぞ?攻略するにしても色々準備があるしな。』


 俺だって現実で用事がありログインしか出来なかった時も少なくない。世界規模でもログインし尚且つ攻略する人数が少ない時だってあるだろう。

 最前線で戦っていた俺達でさえ、全員が揃ってプレイした日なんて限られる。

 休み無しに攻めた記憶なんてないんだが…。


『奴等は、この中の世界の時間を早めたのだ。』

『この世界の時間を?。』

『お主達の時間。リスティールへ…いや、ゲームを起動していない時の時間を早め、ゲームにログインしている時だけリスティールの時間に合わせたようだ。そうすれば、リスティール側からすれば世界から去った次の瞬間には再び侵略に現れるということだ。ご丁寧にログイン時に出現する場所は毎回同じだっただろう?その時に継続してログインしている側と改めてログインした側に疑問が生じないように記憶まで操作してな。』

『ゲームにログインをする際に、奴等はその都度帳尻合わせをしてたってことか?。』

『おそらくな。お主等は自分等で考えて行動していたのだろうが、その実、何から何まで奴等の思惑通りに動かされただけだった…という訳だ。』

『そんな都合の良いことが出来るのか?。』

『それが出来るから奴等は【神】を名乗っているのだろうな。神の力は【結果】だけを先に現実に出現させる。そして、その【結果】へ向かう【行程】は神の性質によって変化するのだ。』

『ん?どういう意味だ?。』

『例えばな。妾は創造神だ。妾が神の力を使い、この場に閃の服を出現させようとする。すると、創造神の性質で魔力が実体化し必要な素材が現れ自然に服が出来上がるのだ。』


 実際にリスティナが能力を使い服が出現した。


『これを時間や物体を操る神が行った場合、第三者が何かしらの理由で素材を集めるか、既に出来上がっている服をこの場に持ってくるという流れで服が出現する。極々自然な流れでな。破壊や殺害の神なら、この場で殺人が起こり、たまたま着ていた服がその場に捨てられるとかな。』

『成程。結果は同じでも、そこまでの道筋が神によって違うということなんだね。』

『そうだ。結果を自在に操作する力。それが【神力】だ。』


 敵は全員がその力を持っているということか。


『ん?ふふ。安心せい。妾の力が働いている今、もう、お主等は別の神からの直接的な干渉は受けぬ。』

『そ…そうなのか?。』

『ああ。あの【絶対神】以外の…な。アレは妾ですら無理だ。』

『……………。』


 安心出来ないんだが…。


『この世界はクリエイターズという奴等が支配している。あのゲームを作ったのもアヤツ等が製作した。』

『そう言っていたな。白蓮にもそう伝えていたらしいし…。』

『プレイヤーの中にレベル100に至ったモノが最初に現れたタイミングで、奴等はクティナをラスボスとしてリスティールに解き放ち、プレイヤー達に最後の調整を始めたのだ。』

『それは…。』

『そうだ。クティナを倒させることで神の力の一端【限界突破】をプレイヤーに与え、種族の性能を最大限に引き出させた。』

『なぁ、ちょっと良いか?。』

『ん?え…っと煌真だったか?何だ?。』

『その種族が、あんたの生み出した生物だというのはわかった。だが、何故俺達にその種族が与えられたんだ?。』


 煌真がした質問は俺も何となく疑問に思っていたことだ。わざわざ、俺達に種族を与えた理由が分からない。


『それは、機械の中のデータだけの存在であるお主等に肉体を与えるのに都合が良かったんだろうな。妾が生み出した生物達は種族としての能力も優秀だったからな、種族の能力を扱えれば即戦力となり早い段階で侵略に取り掛かれるからな。』

『…そうか…。』


 単純な答えだった。

 結局はクリエイターズの思惑通りに力を付けた俺達が様々な緊急クエストのモンスターを倒し、更にクティナを倒したんだからな。


『妾はクティナを見ていた。何故、妾を助けてくれたのかを知りたかったからな。ずっと観察を続け、そしてクティナに挑むプレイヤー達を見ていた…その時にお主達…クロノフィリアを知ったのだ。そして、閃。妾の魔力を受けた子が立派な姿でクティナと戦っているのを発見したのだ。』


 リスティナの話が真実ならば、俺もクティナも彼女の魔力データから生まれたことになる。


『兄妹だな。』

『なっ!?。』


 ガタッ!っと飛び上がる灯月を無視し話を続けた。


『…私がぁ…私こそがぁ…妹なんですぅ…。』


『妾は、その時に思った。閃なら…閃達なら妾達を…妾を助けてくれるかもしれないと…。』

『それが…クティナを倒した後に出たメッセージか…。』

『奴等の目を盗み、妾の元にクロノフィリアを呼び寄せることにしたのだ。その時も、クティナが空間に魔力崩壊を発生させたことでクリエイターズの連中に知られずに済んだのだ。』


 クティナ…か…。

 リスティナを助ける敵が生み出した少女。


『そこから先が、妾の生み出した空間…閃達の言葉で言えばダンジョンか。ダンジョンに閃達を招き入れ、鍛えたという訳だ。』

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