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第127話 世界の真実②

ーーー閃ーーー


 リスティナの語る真実。

 つまり、それは…。


『俺達が 生物 ではない?。』

『ああ。お主達は、奴等が生み出した巨大な機械の一部。人工知能…いや、この場合は神が作っていたから、【神工知能】と言った方が良いのかもな。でだ。その神工知能が組み込まれた機械チップ。AIと言った方が良いのか?。なかなか難しい分野だな。大きさは…1つ、5ミリくらいだった。それが何重にも重なり機械の表面を埋め尽くしていたんだ。』

『………。』


 ご丁寧にリスティナは、この場に居る全員に見えるように立体映像まで出現させ、自身が見た映像を流している。

 そこには、彼女が言うように巨大な2つの球体型の機械が浮かんでいた。


『あれが…俺達の住む…この世界…。』


 つまりは、今俺達がいる場所。

 そして、その周囲に浮遊している8つの小さな球体型の機械が…俺達…人間だと?。


『なぁ。旦那。コイツの言っていること信じられねぇんだが?。』

『俺もそう思う。兄貴。この女。信頼できるのか?。』


 矢志路と煌真がリスティナを指差す。

 確かに、余りにも非現実過ぎる内容だ。真実を知る為にリスティナを呼び出したのに、その内容を真実と確定する手段が俺達にはない。


『光歌はどう思う?。』


 ここは、頭の良い奴に聞いてみるか。


『私に振るの!?。まぁ…良いけど。』


 光歌が携帯端末をいじりながら、話し始めた。


『まぁ…可能性はあるんじゃない?。何て言うんだっけ?え…っと、ああ。【仮想現実説】とか【シュミレーション仮説】とか言うヤツに近いんじゃないかな。今の説明はこれらに該当するわ。この世界が、別の高度に発達した文明によって構築されたバーチャル世界って考え方よ。』

『おお!そうだ!それだぞ!。』


 リスティナが興奮気味に光歌に抱きつく。


『ちょっ!?やめてよ!キモ…くはないけど…凄く柔らかくて気持ちいけど…いい匂いがするし…最高かよ!てか、スタイル良すぎだし!意味わかんないんですけど!今度服作らせて!。』

『おい…色んな感情がごちゃ混ぜだぞ…。』


 そんな光歌を放置し、今度は機美姉に話を聞く。


『機美姉は、今の話をどう思った?。』

『え…私?えっ…とね。………。』


 機美姉が【思考加速】【並列思考】【高速演算】のスキルを発動したようだ。


『我々が置かれている状況。今まで戦っていた敵の言動や行動。彼女…リスティナの発言。可能性は0ではありません。』

『やっぱ。そう思う?。』

『はい。閃様を【バグ】と呼称し、我々を【バグの仲間】と呼んだクリエイターズと名乗る黒い男とその仲間達。そして、決定的なのは…謎の少女が放った言葉ですね。』

『あのヤバそうなヤツか…。』

『私の!にぃ様をダーリンと呼んだ不埒者ですね!。許せません!。』

『良いなぁ…僕もいつか…閃を…。』


 今まで黙っていたのに、こういう話しには入ってくる灯月と代刃。


『旦那様…空気を読まない私をお許しください。旦那様…ではなく。ダーリンと呼んだ方が嬉しいですか?。』

『む…睦美まで…いや、恥ずかしいが今まで通りで…。』

『はい。畏まりました。』


 すると、何故か基汐が俺の肩に手を置いた。


『どうした?。』

『ダーリン呼びも良いもんだぞ?。』

『うるせぇ…。』

『もうっ!ダーリン最高!。』


 リスティナから解放された光歌が基汐に抱きついた。


『話が逸れたな。おっさん。どう思う?。』


 ずっと黙り込み、何かを考えていた無凱のおっさんに話し掛ける。

 因にだが。既に話しに付いて来れなくなっている無華塁や瀬愛、豊華さんは夢の中だ。神無も目を擦っている。


『ん?。そうだね。ねぇ。リスティナさん。』

『おう。確か無凱だったか。何だ?。』

『いや、この話しには続きがあるんでしょ?。』

『ああ。そうだ。』

『なら、それを聞いてからでも結論を出すのは遅くないよ。』

『ああ。そうだな。すまん。リスティナ。続きを頼む。』

『了解だ。』


ーーーーーーーーーー


ーーーリスティナーーー


 巨大な機械を発見した妾は、魔力を通して解析し、その物体がある事柄を繰り返し行っているシミュレーターだということがわかった。


『ある事柄を繰り返す?。』

『何を繰り返していたんだい?。』

『人間の歴史…いんや。生命の歴史と言った方が良いかもしれん。』


 【地球】と呼ばれる星の誕生から、生命の爆誕。誕生し進化を重ねて絶滅を乗り越えた先に行き着く【人間】への道。歴史を重ね【知識】を増やし、学び、科学技術へと発展させていく。そして…。消えず、終わらぬ【争い】の果てに訪れる種としての絶滅。


『何度も…何度も…繰り返される【人間】という現実に存在しない仮想生物の【誕生から滅び】までを永遠と繰り返す装置が、アレの正体だ。』

『何の為にそんなものを?。』

『それは妾にも、わからん。』

『では、僕達の未来は滅びへと向かっていると?。』


 仁が口を挟む。


『いや、今回に限っては、そうは決まっておらん。』

『何故だ?。』

『それは、妾が干渉したからだ。あの機械の塊を見た瞬間閃いたのだ!散々我らの平和を乱した輩に復讐する機会が訪れたとな!。』


 神工知能が密集するチップを一通り観察した。

 数十億が点灯を繰り返し、生物の鼓動のように光、脈打っておった。

 ふと、妾の眼に1つのチップが映った。何故か興味を惹かれたそれを良く見ると、その1つだけ他とは違う異質な魔力を宿していた。


『魔力?元々、この世界には魔力が無かったみたいなことを言ってなかったか?。』

『ああ。この世界ではそうだ。妾が言っているのは、チップそのモノに魔力が感じられたということだ。』

『他のと違う…神工知能?。』

『魔力を宿していたのは、全部で15個あった。その中で最も強大な魔力を感じたチップに刻まれたデータが…。』


 リスティナの瞳が俺を見る。


『俺…なのか?。』

『そうだ。』

『流石!にぃ様です!。』

『最初から特別だったんだね!。』


 妾はそのチップのデータを読み取った。

 すると、タイミングが良かったのかデータ内の人物はちょうど転生の時を向かえていたのだ。


『転生?。』

『この中の住人が死ぬと、必要なデータ以外が初期化され新たなデータとして生まれ変わる。それが、おそらく生命の輪廻転生を模して作ったシステムなのだろう。』

『成程。白蓮の奴が言っていたことがようやく理解できた。クリエイターズの奴等、そのシステムを白蓮に話したんだな。』

『紫柄君達にも話していたみたいだね。』

『チャンスと言ったのは ソコ でな。転生間近のデータになら妾の魔力で干渉できるやも、と思ったのでな!おもっっっいっきりっ魔力を流し込んでやったわ!。』


 元々、宿していた強大な魔力に妾の全力魔力が融合した結果、誕生したのが閃だ。

 干渉は成功。しかも転移先まで設定できたからな、幸せな生活が送れるように比較的裕福な家庭を選んで転生させた。


『それが!私のお家だったのですね!リスティナ…いえ、リスねぇ様!ありがとうございます!にぃ様を…ありがとうございます!。』

『すげぇ…灯月の中の色んな行程をすっ飛ばして、ねぇ様呼びになったぞ…。』

『そうよ~!閃ちゃんに~!辛い思いなんてさせたことないんだからね~!。』


 つつ美。だったか…閃の育ての親として妾が選んだ女だ。確かに妾の選択は間違っていなかったんだと自覚した。なのだが…。

 目の前で閃に抱きついている姿を見せられると…胸の中にグツグツと煮えたぎるマグマのような何かが込み上げてくるのだが…。


『ええい!離れぬか!閃は妾のだ!。』

『ふ~ん!。閃ちゃんは~。私のだもん!。』


 つつ美…認めよう。貴様は妾のライバルとな!。


『話が逸れてるぞ~。』


 妾とつつ美に挟まれた閃が声をあげた。

 むぅ…もう少し甘えられたい…。


『ああ~。コホンッ。つつ美よ。決着はいづれ…。』

『ええ~。構わないわよ~。』


 話を仕切り直す。

 さて、何処まで話したか…。


『閃のチップには、妾の魔力が宿った。だが、このままでは、すぐ敵に気付かれてしまうと思った妾は、ちょっとした細工も施したのだ。』

『細工?。』

『ああ。閃と心を通わせた者に妾の魔力が伝達されるというものだ。その伝達された者から、新たな者へと次第に増えて拡大していくようにな。』

『まるでウイルスね…。』

『妾の魔力が一定以上広がるまで微々たる魔力すら外部に漏れんように細工しておいた。時間が経ち魔力が満ちた時、妾の分身が顕現できるようにな。そうなれば、分身で何かしらの嫌がらせが出来ると思ったんだ。』

『魔力が存在しない世界に魔力を発生させたのか。』

『そうだ。だが、微々たる魔力では対策されてしまうだろ?だから、妾が顕現した瞬間に魔力が世界全体に一気に解き放たれるようにしたのだ。わざわざ、魔力を持つ奴等が創り出した魔力の無い世界だ。何かしらの抵抗になるのではないかとな…苦肉の策だが、そう思ったわけよ。』

『結局、この世界がどんな意図で創られたのか、わからないってことか?。』

『ああ。奴等が何かの実験をしていた…くらいしか。』


 分身が顕現すれば、奴等の世界を破壊して多少の抵抗が出来ると思っていたんだがな…。

 奴等が本腰を入れ始める方が早かった。


『本腰?。』

『ああ。一通り機械の周囲を探っていたんだがな。更にその奥に巨大な扉があることに気付いたのだ。』


 その扉に穴を開け中に入った。そこには…。


『そこには?。』

『奴等が居たのだ。奇妙な液体が入れられた人工的なカプセル。その中を漂う存在達が。』

『ソイツ等が…クリエイターズ?。俺達の敵?。』

『クリエイターズを含めて…と言った方が良い。』


 そこには、15の生命体が居た。


『15…。』

『カプセルの中には7の肉体を持つ男女と、8の脳だけの存在が居た。カプセルに繋がれた様々なコードを張り巡らせてな。』

『7の男女と8の脳…。』


 扉の中は、建造物の中を映し出しすために配置されたモニターが壁一面に設置されていた。

 その時、戸惑う妾を余所に男女の声がスピーカーのような機械から発せられた。


「あらあら、侵入者がここまで来ていますよ?どなたですか?本日の監視係は?。」

「そんなものは、初めから居らんであろう?。しかし、我々に気付かれずにここまで潜入してこようとは…。」

「この星の神か…うむ…侮れん力を感じるのぉ…。」

「ほぉ…あの壁に穴を開け潜入したのか。大したものだ我々と同等の力を保有しているとは…。いや、待て。我々より上かもしれんな。」

「我が出るまでも無い。ソナタ達で勝手にせよ。」

「妾も同意見だ。ソナタ等全員で掛かれば相討ちには出来よう?。」

「嫌よ!そんなの!酷いですわ!。」

「俺も断る。」

「下のモノ達では相手にならんだろうしな…。」

「くくく。なかなかどうして上手く事を運んでいた筈がここに来て壁に当たるとは…。」


『などと妾をそっちのけで話し始めたのでな。おもいっきり魔力砲を叩き込んでやったわ!。』

『ええ…。』

『まぁ…しかし、ダメだったのだがな…。完全に奴に防がれた。』

『奴?。』


 並ぶカプセルに入った者達は、その並びで序列が存在したのだ。

 一番下に並ぶ肉体を持たない8つの脳。奴等が【クリエイターズ】【神兵】と呼ばれる存在だ。

 その上に並ぶ4つのカプセル。身体的に男女が2体ずつ。昨日、閃達の前に現れた女子がその1体だ。彼等4体は【神騎士】と呼ばれていた。

 更に、その上に2体の男女。【神王】と呼ばれていたな。あの2体は妾と並ぶ強さを有していた。若干だが妾が上だと思うが2体で動かれると、妾に勝ち目がないだろうな。


『リスティナと同じ強さか…。』


 一度、裏ボスとして戦ったことのある閃達が驚いている。安心せよ。妾を倒したお主達も間違いなく強いぞ。


『そして、その上に…奴がいた。』

『奴…。』

『星が生み出す神の頂点が妾。【創造神】だと話したであろう?。実は、その上が居るのだ。』


 星が生み出す分身体の神。それが、創造神だ。だが、世界には更に上の存在がいる。

 それは、星を生み出す神。【パラレルワールド】に存在する数多ある【宇宙】。その各宇宙に1柱のみ存在する【星を生み出した神】。

 それが【絶対神】だ。


『絶対神…。』


 本来は宇宙の誕生と同時に発生した【最初の星の神】であり、その星を基盤に宇宙を膨張させ星を増やしていく役割を持つ神なのだ。

 だが、奴は何故か自ら星を捨て…あの巨大な機械の建造物で星を滅ぼしていた。


『そ…ソイツの…目的は?。』

『わからぬ。そもそも、存在の次元が違うのだ。奴は妾の力を軽く超えている。おそらく、下位の存在達も奴が創造したのだろうな。』


 奴も肉体を得ていた。

 カプセルの中で妾を観察していたのだ。

 目が合っただけで気付かされた。妾では…この星を守れんとな…。


『良く無事だったな…そんな奴を前にして…。』


 奴の圧に妾が怯み、身体が硬直していた時だ。周囲の機械から魔力の波が妾に向け放たれたのだ。


『それって…。』

『ああ。奴等は妾の情報まで手に入れおった。』


 暫くすると波の放出が止み、目の前に出現した存在。

 妾の情報を元に奴等が作り出した存在こそが【クティナ】だ。


『クティナ!?。』

『そうだ。流石の奴等も【創造神】である妾を完全に再現することは出来なかったようでな。幼子に近い形で誕生した。』


 クティナは妾の情報を獲得していた。【創造神】としての力を…だが、クティナは予想を裏切り【創造の力】を上手く扱いきれないようだった。結果【創造の力】は逆転し【破壊の力】として現れた。


『クティナが持っていた【崩壊】系統のスキルだな。』

『そうだ。奴等はクティナを妾にけしかけたのだがな…不思議なことに、あの娘は何故か優しかったのだ。』

『優しい?。』

『妾の勘違いでなければ、奴は妾を逃がすために攻撃してきたように感じたのだ。事実、妾は、奴等の建造物から逃げ果せておる。』


 妾は逃げた。少しでも早く皆の元へ戻り事の顛末を伝えねばならなかったからな。

 【絶対神】がいる限り妾達に勝ち目はない。

 【絶対神】の前では、恒星である母が動いたところでどうしようもない。むしろ、母が殺されるようなことがあれば、それこそリスティールが死に星となってしまうからな。

 妾に出来る最善策は、少しでも命あるモノが生き延びる術を話し合い、模索することしか残されていなかったのだ。


『………。』

『だが、奴等の追撃…いんや。妾達にすれば追い討ちか。次の奴等の一手で妾達の世界は絶望に陥れられることとなった。』

『何を…されたんだ?。』

『そうか…それが…僕らか…。』


 無凱がボソリと呟いた。

 流石だな。今の説明でそこを結び付けるとは。その観察力と考察力、思考力に閃達を纏め上げていた統率力と最早感服するしかない。

 閃。お主は良い仲間を持っておるな。


『そうだ。察しが良いな。無凱よ。お主達が娯楽として行っていた遊戯。【エンパシスウィザメント】。それこそが【侵略行為】そのものだったのだ。』

『やっぱり…そうだよね…。』

『未知の兵器、未知の能力。妾達は対応できずに劣勢状態から更に追い込まれていった。まさに【異世界が現実に侵略してきた】のだ。』

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