第126話 世界の真実①
ーーー閃ーーー
【人間】という種族の生物が存在しない?。
それは…どういう意味だ?。
リスティナの言葉に全員が虚を突かれ、口をあんぐりさせ面を食らっている。
『ああ~。すまぬ。やはり順を追って話すべきだった。』
『ああ…頼む。』
俺達の戸惑いと困惑を感じ取ったリスティナが改めて説明を始めた。
『まずは、妾ことの説明をしよう。』
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ーーーリスティナーーー
いきなり、人間についての話しは早すぎたようだ…。閃を含め皆の戸惑いを感じてしまった。仕方ない、順を追って話すか。
だが、この説明は彼等に 現実 を突き付けることとなる。果たして…彼等の選択は…何処へ向かうのか…。
『妾は、【リスティール】と呼ばれる星の神だ。』
世界とは、
【パラレルワールド】という全ての次元を内包する想像もつかない程巨大な空間。
幾つもの星の群団を内蔵する単体で確立された宇宙のことを言う。
パラレルワールドの内にある、世界の1つ。小さな宇宙の、小さな星。その1つが、私が世界から与えられたモノ。
それが【リスティール】。
そして、星は誕生した瞬間に自身の分身とする存在として神を生み出す。
リスティールも例外なく神を生んだ。
それが妾。【創造神 リスティナ】だ。
『どうだ!凄いだろ!。』
『いや…今一実感が…そのリスティールっていうのが…この…俺達が居る世界なのか?。』
『いんや。違う。まぁ、急かすでない。順に説明すると言ったであろう?。』
リスティールで妾は多種多様な生物を生み出した。閃達の知る【モンスター】と呼ばれているモノ達のことだ。
彼等の主とした生物を生み出した後、彼等の種は独自の成長、進化を繰り返していった。
それは…数億年単位で行われ、今では数えきれん数の生物が、生を謳歌しておる。
その生物達こそ、閃等が持つ【種族】というカテゴリで分類されているモノ達だ。
『へぇ…俺達にとっちゃ、ゲームのガチャみたいな感覚で与えられたんだが、本当に存在する生物だったってことか?。』
『そうじゃ。唯一、妾が生み出すことが出来なかった…いんや、進化の過程で出現しなかったのは【人間】という種族だけだ。』
『え?俺か?。』
『ああ。お主達の間ではハズレ種族と呼ばれていたようだがな、その実、激レア種族だったわけよ!。』
でだ、様々な生物で溢れていたリスティール。妾は生物が過ごしやすい環境を作り上げた。大いなる自然、豊かな環境など、生物が生を謳歌し、育む理想郷といっても良いレベルで楽園を繁栄させていったのだ。
『妾の姉妹達も生物を生み出そうとしたのだがな、結局、十 いる姉妹達の中で 多くの生物 を生み出すことに成功したのは妾を含め 二 だけだったのだ。えっへん!妾!優秀!。』
リスティールは巨大で光輝く恒星。まぁ妾の星の母親だな。妾は、その星の周りを周回する1つだった。
『ああ。太陽系みたいなモノだな。』
『そうだ。規模は、この閃達の住む星よりも大きいがな。』
そんな、ある日のことだ。
突然、妾の妹。生物を生み出すことに成功した、もう1つの星の神からの連絡が途絶えた。
他の星の神。妾の姉妹達も心配し妹の星へ偵察に行ったのだがな…。
『どうなってたんだ?。』
『星が…死んでいた…。生物は全て死に絶え、星はその内部で生み出される魔力のエネルギー【マナ】を根こそぎ奪い去られていたのだ。』
そうなった星は、やがて自らの重力に耐えられなくなり崩壊することとなる。
『お前の…その…妹は?。』
『星が死ぬということは、同体である神の死を意味する。既に遅かった。』
そして、その現象は妾の姉妹達を次々に襲っていったのだ。
何が原因なのかも定かでないまま、恒星である母を除き、妾の姉妹は全滅してしまった。星の生命エネルギーであるマナは些少の量すら残っていなかった。
最後に残った我が星の元に アレ が来るのに、そう時間は掛からなかったぞ?。
『あれ?。』
『あれは…そうだな…隕石だった。』
『隕石の落下が原因だったのか?。』
『いんや。それが始まりに過ぎん。』
大規模な爆発と共に地上へと降り立った隕石に似た何か。爆発は広範囲を巻き込んだ筈だが、思いの外被害はなかった。まるで、落下位置を計算したかのように生態系へのダメージは見られなかったのだ。
自身の眼で見るまでは信じられんかったがな…その 何か とは…隕石では無かった。
巨大な鉄の…全長は5kmを超える塊だったのだ。
『5kmの鉄の塊…。何だそれ?。』
『あれは…そうだな…宇宙船とでも言うべきモノだな。』
次に、リスティールへと落下した巨大な鉄の塊は、外壁を切り離し始めた。
その内部から現れた巨大な禍々しい建造物。
それが、悠然と妾の星に聳え立ったのだ。
『ソイツがお前の姉妹を?。』
『ああ。最後に残った妾の星を狙っての侵入だった。』
未知の物体。敵なのは明白だったのだが。如何せん情報が少ない。妾は知恵持つ種族を集め、建造物の様子を窺っておった。
暫くすると、その建造物の天辺から魔力の波が放出された。その波は、星全体へ広がっていき次第に治まっていった。
『その波の正体は?。』
『奴らは、妾の星の生命体のデータを集めたのだ。』
『データ?。』
『魔力の波は、お主達が会得している【情報看破】を更に強化したような代物でな。波に触れた生命体の生体に関わる情報を取得していた。』
そして、奴らは動き出したのだ。
取得したデータを元に作られたクローン体を大量に投入し、星に暮らす妾が生み出した生命を蹂躙していきおった。
『そんなことが…出来るのか?。』
『妾の姉妹達を滅ぼした奴らだ。造作もないだろう。』
生憎とリスティールは広いのでな。知恵ある種族を集結させ妾は、建造物から離れた星の反対側に避難したのだ。
『だが…それはきっと…。』
『ああ。ただの時間稼ぎだ。』
倒しても、倒しても、新たなクローンを投入される。ジリ貧な戦いが続いたぞ。
様々な種族が減らされ力尽きていく。食料も、魔力も、戦力も底をつきかけた…そんな、ある日、妾は決心したのだ。
『決心?。』
『ああ。敵を知らねば。対策のしようも無いだろう?。だからだ!妾は乗り込んだ!。』
『乗り込んだって…敵の…建造物の中にか?。』
『ああ。このままでは1年と持たずに星の生命は全滅。妾の星は再生不可能なダメージを負うだろう。敗けが見えたのでな。博打を打ってみたのだ。妾の最後の足掻きだった。』
『すげぇな…。ああ…行動力がな。』
『妾1人なら何とかなるかと思ってな。もちろん、気配は消しての潜入だ。万が一にも敵に気付かれる訳にはいかんからな。』
中に通じていそうな入り口か、隙間を探すも、それらしいモノは見つからなかった。クローンは特殊な転送装置から召喚されている。
仕方なく妾は神の力を使い外部装甲の構造を解析し穴を開けて潜入したのだ。
『それ…敵に気付かれてないか?。』
『………うん。結果的に妾は敵の手のひらの上でコロコロよ!。』
『………。』
潜入に 成功! した後、探索を開始した。
が…不思議なことに謎の機械で作られた通路が伸びているだけだったのだ。
部屋もなく、生物もいない。何の気配も感じない通路をただ進んで行った。
そして、暫く歩いた後、妾は建造物の最深部。中心の広い空間へたどり着いたのだ。
『そこに…いったい、何が?。』
『ああ…あの時は驚いたぞ。』
この先の事実は…閃と仲間達にとってショックを与えてしまうことだろう。
真実を知り、どの様な結論を出すか…。妾は…見守るしか出来んが…前に…未来に向かって進んでもらいたいというのが、妾の願いだ。
『そこには、一際巨大な球体状の機械が2つ浮かんでいた。』
『機械?。』
『ああ。そして、その周囲には、その球体の半分くらいの大きさの球体が8つ。全部で10の球体機械が浮かんでいたのだ。』
『それは…何の?。』
『妾は早速、魔力を流した。俗に言うハッキングというヤツだ!奴等には、此方の生物達をコピーされた恨みがあったのでな!仕返しとばかりに情報を盗み見てやったわ!。』
その結果、妾は知ることになる。
『…何を…知ったんだ?。』
『巨大な2つの球体。その1つの機械の中には1つの世界があった。』
『せ、世界!?。』
妾が見た世界。
【人間】という種族が地球と呼ばれる世界を支配していた。
魔力は無く、科学と呼ばれる技術が発展した高度な生活水準を持つ世界が…。
『まさか…。』
『気付いたか?。そうだ。今、閃や妾が居る、この世界こそが、その機械の中にあったのだ。』
更に追い討ちのように話しは続く。
『…周囲に浮かんでいる8つの機械の内の6つには、お前達の言葉で言うところの…えーっと。おお!そうだ。そうだ。極小の 人工知能 が内蔵された機械が接続されていた。その数…100億くらいだ。』
『人工知能?しかも、100億って…。』
『妾が調べた時には、その全てが機能していた訳ではないようだったがな。』
『………。』
妾の話を察した者が数人いるようだな。流石だ。だが、妾は現実を突き付ける。
『その人工知能が組み込まれた機械の1つ1つが…お主達だ。』
ストーリーを読んでくれている方々。
いつもありがとうございます。
次回の投稿は22日の木曜日を予定しています。
これからも読んでくれると嬉しいです。