表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/424

第125話 リスティナ

『ん?朝か?。』


 カーテンの隙間から射し込む朝日で目が覚めた。

 まだ、夢見心地を味わいながら徐々に記憶が甦ってくる。


『ああ…そうか…終わったんだ…。』


 それは昨日のこと。

 俺達、クロノフィリアと白聖連団とのギルド戦は俺達の勝利で終わった。

 白蓮との死闘を制し俺達は拠点へと帰ってきた。

 拠点の警備を任せていた美緑達出迎えてもらい事の顛末を簡単に説明した後、俺達は床についた。


『って…。はは…。どうりで動きづらいと思った…。』


 ベッドの上に居る俺を中心に、灯月、代刃、智鳴、氷姫、瀬愛、無華塁がしがみついて眠っていた。

 おいおい、半分落ちてるヤツまでいるぞ?。

 寝る前は全員が自分の部屋に向かって行った気がしたんだが…いつの間に忍び込んだんだ?。

 恋人同士になったコイツ等に対する部屋への侵入者警戒用に発動していた【気配感知】を解いてしまったからな…完全に寝入ってしまったら気付けない…。

 まぁ、こんな幸せそうに寝てるなら…別に良いか。

 てか、俺の知らないところで、どんどんハーレム計画が進んでないか?これ?。

 気持ち良さそうに寝息を立てている灯月達に自然と笑みがこぼれる。


『で?。そんな様子をニヤニヤ見ている…お前は…どういう状態なんだ?。』


 俺の頭上に浮いている存在に声を掛ける。


『なぁに。愛しい我が子とその嫁達を観察しておった。ふふ。随分と女子達に好かれておるな。息子が立派になってくれて嬉しいぞ。』


 そう答えるリスティナ。

 その姿は半透明でゆらゆらと浮かんでいる。

 本当に人間離れした美しさだ…【美】という字はコイツの為にあるんじゃないかと思えるくらいだ。

 美しい女性のようであり、可憐な少女のようでもある。誰が見ても、見る者が理想と思える姿をしているんだ。俺だって一瞬、見惚れてしまう。


『てか、何で浮いて?急にお前を見えるようになったんだ?。』

『簡単だ。妾の宝石を全て持っておるだろう?。』


 リスティナの宝石は白蓮から最後の1つを受け取ったことで7つ全て揃っている。今は俺のアイテムBOXの中にしまっているが。


『はぁ…だからお前が見えるのか…で?我が子って言うのが今一分からないんだよな。リスティナ。お前はいったい何者なんだ?。』

『それは、今日、皆の前で話す。暫し長い話しになるのでな。全員に説明した方が1回で済むし早い。』

『そうか…。』


 俺達の知らない情報を持っているリスティナ。現段階では、敵なのか味方なのかも分からない存在なのだが、不思議と嫌悪感はなかった。


『しかし、まぁ。随分と濃い女子達じゃな。』

『ん?どういうことだ?。』

『いやな。そこのお主の義妹。灯月と言ったか?その娘の心の中を覗いたんだがな。』

『おい!何勝手に…。』


 心の中を覗いた?。コイツにとってプライバシーって無いのか?。


『良いではないか!我が子の嫁達だ。つまりは妾の娘になるのだぞ?。その心の内を知らずして仲を深めることなど出来んではないか!。』

『いや…そんな荒気た声を出されても…。』


 そもそも、俺の母親ということすら、まだ疑心暗鬼の中にあることなんだが?。

 

『安心せい。今の妾の姿はお主にしか見えんし、声もお主にしか聞こえん。』

『へぇ…それも、宝石を持っているからか?。』

『そうだ。でだ。その娘、思考の9割がお主のことで埋まっておるぞ?。』

『ええ…。』


 9割…マジか…灯月…。


『残り1割の中に物凄く分割された大切なモノが順に刻まれておる…コヤツ…お主が仮に人を殺してこいと言えば、笑顔で実行するぞ?。』


 ええ…何それ…怖ぇんだけど。


『まぁ…辛うじて、次の大切なモノに自分を含めた仲間達が入っておるからな…仲間とは仲良くやっていけるだろう…。』


 リスティナもチラチラと灯月を見て冷や汗を流している。


『にぃ様~。』

『『ビクッ!?。』』

『エッチなことしましょ~う。』


 俺とリスティナは同時に跳び跳ねた。

 寝言。…ってどんな夢見てんねん!?。


『こほん…まぁ…コヤツのことは一先ず置いておこう。で、そこの代刃という娘だがな。』


 代刃は結構しっかり者だからな。

 灯月よりも安心だろう。


『………。』


 黙り込むリスティナ。


『どうしたんだ?。』

『いやな…この娘の心の中が…あまりにもピンク過ぎてな…。』

『ピンク?。』

『いわゆる、ムッツリスケベというヤツだろうか?妾は人間の営みにあまり詳しくないのでな。何せ創造神だ。有を作り出すのに手間はかけん。だがな。そんな妾でもコヤツの心の中の風景には思わず赤面してしまうな…。』


 いったい。どんなことが行われているんだよ…怖ぇよぉ…。


『この娘。男の姿になれるのだな?。』

『ん?。ああ、そうだ俺と逆の能力を持ってる。』

『最初はお主と普通に男女の関係を築いておったぞ?。』

『…最初は?。』

『次に逆転。』

『逆転!?。』

『次に女と女。』

『………。』

『次に男と男。』

『………。』

『最初に戻る。してな…その全てでコヤツが受けなのだ…お主…頑張っとるなぁ…。』

『記憶にございません。』


 代刃…俺達…まだ恋人じゃないんだぞ?。

 そんなにエロかったのかお前…。

 てか、代刃の見た目は俺の好みドストライクだ。代刃に迫られたら俺…簡単に落ちるぞ?。耐えられる自信がねぇ…。


『次は、そこの智鳴という娘だ。この娘は…何だろうな。普通だな。』

『普通?。』

『日がな一日。お主とずっと一緒に過ごせれば幸せなんだそうだ。普通に良い奥さんを夢見ておる。可愛いな。』

『そうか…。』


 ここに来て普通に癒された。

 彼女達に抱きつかれてなければ頭を撫でてやりたい。抱き締めてやりたいと思ってしまった…が…身動きが取れない。すまんな。智鳴。

 智鳴の顔を眺めていると僅かに笑い、尻尾が俺の足に絡まってきた。尻尾の先端が足の裏を刺激しくすぐったい。…何の拷問だろう…。

 こしょこしょこしょこしょこしょ…。


『そこの真っ白い娘は…氷姫だったか。ソヤツは…完全にお主に依存しておるな。心の中が閃でいっぱいだ。灯月と同じくらいお主が中心になっておる。閃に何かあれば壊れてしまうぞ?気を付けよ?。』

『まぁ…色々あったからな…。氷姫には幸せになって…いや、俺が幸せにしてやる。』


 俺の左腕にしがみついている氷姫。

 左腕だけ霜焼けが酷い…既に感覚がなくなっている。後で睦美に治してもらおう。

 余程、会えなかった期間が寂しかったのか氷の涙を流していた。


『ふふ。そうだな…。後は…その半分落ちとる娘か…無華塁だったな。』


 無華塁の心の中か…正直、ちょっと興味がある。


『閃とひたすら戦い続けておるぞ…。』

『ええ…。』

『様々なシチュエーションで…デートと称して戦闘を繰り返しておる…。』


 無華塁らしいが…何だろう…この気持ち…悲しいような…虚しいような…。

 

『お兄ちゃん…。』

『ん?。』


 俺の胸に上に乗っている瀬愛が寝言で俺の名を呼んだ。


『その娘は…辛い過去の出来事で生まれた心の穴をお主で埋めておるな。閃なら自分に酷いことをしないと信じておるぞ。』

『…ああ。瀬愛は俺…だけじゃない。皆で守るさ。黄華さんも頼りになるからな。』


 瀬愛は実の親に化け物と罵られ捨てられた。

 それがトラウマになっているんだろう。


『いつか、自分自身の過去と向き合って、乗り越えられるまでな。』

『ちゃんと考えておるのだな。皆がお主を頼るのも分かる気がするぞ。母として誇らしいな。』


 俺の本当の母親か…。

 育ての母親は、つつ美母さんだ。とても大事に思っているし母親として家族として愛している。それは変わらない。

 リスティナ…が産みの親…。なのか…。


 コンコン。

 控えめなノックが響く。


『旦那様。睦美です。起きていますか?。』


 ノックの主は睦美だったようだ。

 起こしに来てくれたようだ。


『ああ。開いてるから入って来て良いぞ。』

『あ、はい。失礼します。旦那様。』


 扉を開け入室してくる睦美。


『おはようござ…。』


 睦美が部屋の光景…いや、俺の周りにいる灯月達を見て目を丸くして驚いている。


『な…何をしておるんじゃぁ~~~。』


 あ、久し振りに聞いたな。その口調。


『おい!灯月よ!閃に対する勝手な干渉はしないと言っていたではないかぁ!。ワシだけか?ワシだけが除け者か!?。』


 その後、睦美により叩き起こされた面々は正座の後、朝食抜きになったとか…。


 着替えを済ませ、喫茶店へ向かう。

 灯月達は、一度自分の部屋に戻った。


『仁さん。おはようございます。』

『やあ、おはよう。閃君。良く眠れたかい?。』

『…まぁ…はい。』


 朝の出来事を察してくれた仁さんにコーヒーを出され受け取る。

 喫茶店には、既に無凱のおっさんと黄華さん、柚羽。赤皇達や黒璃達が居た。


『あ…あの…閃さん。』

『ん?。ああ、美緑。おはよう。』

『おはようございます。…あの。色々とありがとうございました。緑龍の方々のことも…。』

『いや…昨日も話したが俺達は救えなかった。むしろ謝らなければいけない。』

『…いいえ。命を奪うことでしか彼らを救えなかったんですよね…。なら、皆さんは、彼らを救ってくれました。端骨の呪縛から…。だから、やっぱり…ありがとうです。』

『そう言ってくれると俺達も助かるよ。ありがとう。美緑。』


 端骨という男に操られていた緑龍のメンバーのことは美緑達に昨日の帰省後に全て話した。実の兄と、かつての仲間、彼らの最期を告げられた時の美緑は酷くショックを受けていた。同時に、最悪の予想もしていたのだろう。まだ完全に立ち直ってはいないようだが、昨日の今日で美緑の瞳には力強さが戻っていた。


『強いな。美緑は…。』

『はい。兄さんや仲間達の無念は私が晴らします。』


 美緑は一度頭を下げると奥の席へと戻っていった。

 暫くすると、続々とクロノフィリアのメンバーが喫茶店に集まってきた。

 俺達、クロノフィリア。奥の席に各ギルドの面々。主要メンバーの全員が喫茶店に集結した。


『さて、皆揃ったね。』


 周囲を見渡し無凱のおっさんが立ち上がる。


『そろそろ始めようか。閃君。』

『ああ。』


 皆にはこれから行うことを伝えてある。

 即ち、リスティナを呼び出し、全てを聞く。

 俺達の知らない世界の真実を…。


 テーブルの上に置かれたアイテム。

 【クティナの肉体】

 【クティナの宝核玉】

 そして、【リスティナの宝石】を7つ。

 その全てが揃った時、各々が呼応するように喫茶店の中を眩いばかり輝きが包み込んだ。

 その激しい光の放出に全員が手で目を覆う。

 これは…。いったい…。


『ふぅ…これが、肉体か。久しぶりの感覚だな。』


 光が徐々に集束し、その中から現れる絶世の美少女。


『綺麗…。』


 誰かが呟いた。


『リスティナ。』

『ああ。我が息子よ。こうして会えるのを首を長くして待っておったぞ。良くやったな。』


 俺を抱き締めるリスティナ。

 少し離れた位置に居るつつ美母さんが頬を膨らませていたが見なかったことにしよう。


『さあ、リスティナ。教えてくれ。俺達の知らない秘密を。』

『むぅ。口惜しいな。もう少し親子の再会を感じていたかったのだが…。』


 リスティナを離し椅子に座らせる。


『はぁ…仕方がないな。約束だからな。話そう。』


 こほんと咳払いをするリスティナ。

 その姿は、ゲームの時と変わらない。裏ボスとして俺達の前に立ちはだかった彼女が今…真実を語る。

 全員が息をのみ、リスティナの言葉を待っている。


『まずは、結論の1つから話すか…。』


 リスティナの瞳が全員を流し見る。


『現実世界には…お前達の認識している【人間】という種族の生物は存在しないのだ。』

『………………………………………は?。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ