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第119話 無凱VS紫柄①

 僕は無凱。

 ギルド クロノフィリアのリーダーを任されている。まぁ、創設者という理由からだけどね。

 現在、白聖連団との全面戦争が行われ、僕は彼等が率いる、同盟ギルド、紫雲影蛇のギルドマスター 紫柄君と戦っている。

 僕の仲間達の何人かは既に彼等の仲間と決着がついたようで、気配から紫雲影蛇のギルドは紫柄君1人を残すだけとなった。

 戦場の気配から戦いは大詰め。僕と閃君の勝敗が実質、この戦いの終わりを告げるだろう。


 ノーモーションに近い拳が僕の頬を掠める。

 速い。速度も然ることながら、その正確さは感心よりも恐怖心を植え付けられる。正確無比の急所狙い。全ての指に取り付けられた金属の武器は、命中すれば的確に致命傷を与えるだろう。

 接近中の肉弾戦は今のところほぼ互角か。

 続く連打も、全てが予備動作がない状態から繰り出されるノーモーション。視界から直線で繰り出される拳と構えたままの姿勢から動かない胴体のせいで距離を錯覚してしまう。

 辛うじて見える腕の動きと培われた経験からくる勘を頼りに腕の側面をいなし、僅かに軌道を変えることに成功しているのが現状。

 厄介なことにカウンターを狙っている僕の心中を察しているのか、直線的な拳を囮に、手の形を変えた 本命 が時折混ぜられ、反撃を封じられている。

 

『はっ!。』

『おっと!?。』


 唐突に大振りの右腕を全身を反らして躱す。

 隙だらけ、常人ならそう見え判断しただろう。だけど、彼の狙いはおそらく…。


『ぐっ!はっ!。』

『おっ…マジかい!?。』


 対象を失った大振りの右腕は、横に立つ巨木の幹を掴んだ。

 5本の指先が幹にめり込み、彼の身体を支え巨木を支点に身体を捻った蹴りが飛んでくる。


『のぉっ!?危ない。』

『まだだ。』


 右腕だけで全身を支えた状態で逆立ちし、今度は左腕で地面を掴む。幹と同様、その驚異的な握力で地面に突き刺された指先。反動を利用した踵が振り下ろされる。


『くっ!。』


 体勢は不充分だが躱せる。

 脱力し彼の動きに逆らわず、地面を転がった。そのまま彼の踵が地面を抉る。


『危ないねぇ…。』

『安心するのはまだ速いぞ?。』

『っ!?。』


 成程、蹴りも囮か…。彼が巨木から指を放したのかバキバキッと途轍もない音を響かせて倒れた。

 気付いたのが遅かった…その彼は既に僕の背後に回り、僕の左腕を掴んでいた。


『貰うぞ。この腕。』

『しまっ!?。』


 人間離れな握力に左腕が引きちぎられ地面に転がった。

 噴き出す大量の血液が地面を赤く染めた。


『ぐっ!。ぬっ!。』

『むっ!?。』


 脳が激痛が認知する前に、紫柄君を蹴り飛ばし距離を取った。

 腕の痛みが徐々に広がっていく。


『やはり、流石だな。完全に不意をついた筈だったのだがな。これでは迂闊に近づけん…。』


 どうやら上手くいったようだね。

 僕は左腕を失ったけど、紫柄君は右腕を失った。


『スレ違いの際に、仕掛けたのか。噂には聞いていたが厄介な能力だな。それが 箱 か?。』

『そうだよ。空間を支配するスキルだ。』

『それに…腕に発動することで止血している。いや、能力を利用して失った腕の代わりに血液を循環させているのか…。応用も凄まじいな。』

『スキルに特化しているからね。色々出来るんだよ。』

  

 普段から【箱】と呼んでいる能力。

 神具【虚空神庫空間】。

 能力は、認識した空間に魔力の正六面体を作り出すというもの。

 出現には、その場所を一度訪れるという制約があるが一度でも足を踏み入れた場所にはいつでも作ることが出来る。

 作り出す箱に数と大きさの制限は無く、意思一つでいくらでも作り出せる。

 箱同士は中に入れたモノに対し、中身を入れ替えること、移し替えること、取り出すことなど実際の 箱 で出来ることが自在である。

 また、中に入っている対象には、読心、停止、能力無効などの効果を発動することも出来る。

 応用として、対象の身体の一部を箱の中に入れ別の箱に移し替えることでその部位を切断することも出来る。この場合、対象の防御力や頑丈さなどは関係ない。防御不能なのだ。


『君の腕だ。返しておくよ。』


 箱に入れていた腕を取り出し紫柄君へと投げる。


『貴方の本当に恐ろしいのは、能力発動までの速度と命中精度だな。俺の意識が貴方に集中した僅か一瞬で腕を持っていかれた…油断はしていなかったのだが…腕が切断されるまで気が付かなかった。』


 転がる腕を眺めながら、僕への警戒を更に強めたようだね。

 だが、僕にも彼に対して疑問に思うことがある。彼の能力は、単に握力と指の強さが異常というだけではないようだ。

 そう思う理由、それは…先程から、彼の周りで箱が作り出せない。

 周囲だけではない。彼の身体の中にも、一部にも箱自体が作れない。いや、作れないのではなく作る前に魔力構成が破壊されている?。

 

『実際に貴方の能力を体験したからな。もう、箱自体を作らせないことにした。』

『ああ。そういう能力かい。僕の天敵だ。もしかして視えているのかい?。』

『ああ。この眼は魔力の濃度と流れを視ることが出来る。【魔流眼】。貴方が箱を作り出す時、その場に魔力が空間に干渉した歪みが作られる。それがあまりにも自然で速いのが難点で、今までその場所から身体をズラすことで回避していたんだが、接近されれば意味が無いからな。だから…。』


 落ちている自分の腕を拾う紫柄君。


『その歪みを発生した直後に破壊することにした。』

『その腕をどうするんだい?。』

『ふっ。俺の能力がそれだけだと思うか?。』


 切断された腕が液体のように溶け出す。


『何!?。』

『まだ足りないな。………これも、貰うぞ。』


 倒れた巨木に触れると触れた部分が液体化する。そして…転がっている僕の腕も…。


『驚いたか?これが俺の能力。【溶解変換吸収】。触れたモノを液体化し体内に取り込むことでエネルギーに変換し傷を癒す。失った部位も…。』


 液体化した物体が彼の身体に浸透していき失った腕が生えた。あれは…再生だね。恐ろしい修復速度。戦闘中、特に乱戦中であってもあれなら問題なく発動できるだろう。

 明らかに実戦に近い戦闘経験を活かしたスキル構成だ。


『この通りだ。だが燃費が悪くてな。新たな部位を作るには、失った部位以上のモノを吸収しなければならない。』

『成程。腕を切断されても取り乱さなかったのは、そういう理由か…。』

『ああ。これで理解しただろう?貴方の能力では俺は倒せない。』


 紫柄君が手で銃の形を作り僕に向けた。


『それは?。何のつもりかな?。』

『気付いたんだろう?俺が貴方の箱を防いでいることに。最もそれはこのスキルの一端に過ぎない。俺の真のスキル…それは…。』

『ぐぁっ!?。』


 その瞬間、僕の右肩にヒビが入った。

 いや、これは僕の肩ではなく…空間そのものに穴が開いた。

 それに巻き込まれたせいで、僕の身体が損傷したんだ。


『【空間破弾】。俺は空間そのモノを破壊できる。』

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