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第116話 閃VS白蓮②

ーーー閃ーーー


 白蓮の両翼から展開された、24にもなる【多重白聖翼結界】の内の2枚を破壊した。

 同時に白蓮の背中の翼も消滅。残りが22翼となった。


『ぐぁっ!。』


 痛みに耐え何とか着地する俺。

 結界を破壊したことによる代償で、拳と腕が悲鳴を上げている。骨は軋み、筋組織は断裂寸前。

 もし、今、別の方向から腕に負荷を加えられたら確実に壊れるだろう。


『なっ!にっ!?。』


 白蓮もまた、現状に驚きを隠せないでいた。

 レベル170。神の領域へと足を踏み入れた自分の結界をレベル150。20も低い者が破壊したのだから。

 ゲーム エンパシスウィザメントのレベルの差で発生するステータスは理不尽に近い。

 レベルが5も違えば、まず真っ向勝負での勝ち目が無くなる。肉体の強さ、スキルの強さ…あらゆる数値がレベルが1つ上がるだけで羽上がるからだ。


『そうか…君は…本当に僕の願いに応えてくれようとしているのか…。』


 【極 闘神化】

 正真正銘の俺の真の切り札にして奥の手。

 生命力を費やし魔力に変換。全身を廻る全魔力を肉体の出力向上にだけに集中し爆発的に肉体を強化する【神化】の強化スキル。

 生命力を消費する為、使用すれば当然寿命を縮め、肉体は崩壊へと向かっていく。


 エンパシスウィザメントでの俺の種族は【人族】。

 全ての種族で最弱と言われるハズレ種族だった。特に目立った特徴はなく最初から持っている種族スキルも無かった。

 俺に出来たことは思考を巡らせ勝ち筋を見出だし、肉体を強化して戦うことだけ。

 それが、最初期の俺だった。

 当然、スタートダッシュの時点で、他のプレイヤーとの差が生まれた。装備で弱さを補うことも、敵を罠にはめることもしたが、どの戦法も俺が納得いくモノとは程遠かった。

 やはり、真っ向勝負で敵を捩じ伏せる。互いに全力を出し切りギリギリの戦いのスリルを味わいたい。その一身で俺はレベルを上げスキルを磨いていった。

 俺の【刻斬ノ太刀】や【時刻ノ絶刀】は、クティナを倒した後に修得。それまでは【神化】一歩手前のスキル【極 人体強化】が俺の切り札だった。

 それがリスティナを…裏ボスを倒した後に変化したのが【極 闘神化】だ。

 ゲームシステムとしての効果は、常にHPが減り続けMPが回復し、永続的に肉体強化に使用される。

 それが現実で行われるんだ。

 全身が壊れていく音が聞こえてくる。


『まだだっ!。』


 左腕で追撃。


『ぐぁぁぁあああああ!!!。』

『くっ!?。』


 左腕に走る激痛。と、砕け散る2枚の結界。

 指先を動かすだけで痛てぇ…。けど…。


『まだ…動く…。もう…いっちょっ!らぁっ!。』


 拳を握るだけでも頭に響くような痛みが走るも、再び右腕で拳を繰り出す。


『がぁぁぁあああああ!!!。ぐっ…あっ…。』

『ぐっ!凄い威力の攻げ…ぬっ!?。』

『なっ!?。』


 結界を破壊した瞬間、白蓮の身体を介して召喚される獣。

 これは…【七大罪の獣】か!?。

 けど、この姿は俺の知っている獣ではなかった。

 その巨体は10メートルを越え、7体の獣の特徴を混ぜ合わせたような…その姿は、大きな口と目が複数ついたスライムのような塊に、6本の足。そして、翼を持つ人間の上半身が中心から生えた化け物だった。


『君の迫力に…ついスキルを発動してしまったよ。【七大罪の獣】…7体の獣が【大罪獣合神】により1つの姿になった獣神をね。』

『獣神…か…。ふふ。』

『っ!。凄いな…君は…。』

『ん?何が?。』

『君の右腕はもう粉々だ。左腕もあと…1、2撃で限界だろう。それでも、君は笑ってる。楽しそうに…。』

『まだ、両足もある。左手も拳を握れる。てめぇの結界、絶対全て破壊してやるよ。まぁ、その前に倒さなきゃいけない奴が増えたみたいだがな。』


 獣神を睨み付け、拳を作る。


『ぐっ…。』


 痛い。が…。まだまだだ。

 ゲーム時代のボス戦を思い出す。強敵との死闘。恐怖よりもワクワクする気持ちが勝っている。


『がぁぁぁぁぁああああああああああ!!。』


 俺を敵として認めたのだろう。

 獣神の、その巨体が突進してくる。


『おもしれぇ!。』

『ちょっとゴメンよ。』


 俺と獣神との間に割って入る男。

 軽々と獣神を蹴り飛ばし、俺の前に着地する。って、賢磨さんじゃん…。

 獣神は遥か遠くに吹っ飛んでいった…賢磨さんの重力操作か…。


『閃君。無茶しすぎだ。』

『いや、こんなもん、まだいけるさ。』

『はぁ…相変わらずだね。叶。』


 溜め息をする賢磨さんの後ろから現れる叶さん…。


『2人して何してるんだ?。戦闘は?。』

『凄い魔力を感じたのでね。閃君が心配で来てみたんだよ。生憎、誰にもエンカウントしなかったモノでね…。』

『やれやれですね。閃君のこんな姿を彼女達が見たら発狂してしまいますよ…。【救済の福音】。』


 叶さんの回復スキル。

 俺の身体の損傷が癒されていく。粉々に砕けた右腕も、減った体力も魔力も回復した。

 再び魔力が全身から放出される。


『ありがとう。叶さん。』

『いいえ。当然のことですよ。』


 その様子を眺めていた白蓮が近付いてくる。


『仲間が駆け付けてくれたか。さて。これからどうするのかな?僕は3対1でも構わないよ。ああ、獣神を入れれば3対2だね。』


 余裕を崩さない白蓮。

 俺は、賢磨さんと叶さんに視線を向けた。

 俺の考えを読み取った賢磨さんは困った顔を、叶さんは小さく笑う。


『はぁ…分かったよ。白蓮君。僕達はあっちの獣と戦わせてもらうよ。元々、閃君と君のタイマンだ。いくら君の能力で生み出したとはいえ、獣を使うのは少々違うんじゃないかな?。』

『確かにね。それは僕も同意だよ。元々使う気はなかったんだ。彼の気迫に圧された僕の弱さが原因だからね。貴方の指示に従おう。』

『助かるよ。そういうわけだ。閃君。あの獣は僕と叶に任せて、君は白蓮君との戦いに専念してくれ。』

『ああ。助かる。』


 そう言うと軽く笑い賢磨さんと叶さんが獣が飛んで行った方向へ歩いて行った。


『さぁ。白蓮。仕切り直しだ。今度こそ残りの結界を破壊する!。』

『大人しく破壊される程、お人好しではないよ!。』


 【極 闘神化】が発動している状態。

 一気に距離を詰め、白蓮へ殴り掛かる。


『ならば、そちらの土俵で戦おう!。』


 今まで受けに回っていた白蓮も肉弾戦を仕掛けてきた。


ーーー

ーーー?ーーー


 閃と白蓮の戦闘を上空から眺める少女。

 その楽しげな雰囲気とは裏腹に、その瞳は真剣に2人の男の戦いに注がれていた。


『アレが使ってる技?私達のに似てる…それにアレの纏ってる魔力…どうして、あの方と…似てるのかしら?。』


 その視線の先には閃が映っている。

 神を名乗る存在の1つ上。その絶対的な存在の少女ですら、閃に対して疑問が尽きないようだ。


『ああ~。分からないわ~。何故なのかしら~。アレ等からは、あの女の魔力を感じるし~。どういうわけなのかしらね~。』


ーーー


ーーー閃ーーー


『ぐっ…。はぁ…。はぁ…。』


 最後の結界を破壊した。同時に両腕と右足が使い物にならなくなったな…。


『へへへ。やってやったぜ。』


 全身が悲鳴を上げている。

 痛い以外の感覚がなくなっている。だが、まだ、左足が残っている。魔力もギリギリだが残っている。


『君は本当に凄いね。両腕と片足は既に死んでいる。魔力も回復に回せる程残っていない。そんな状態でも…勝ちを諦めていない。君の目は一切の弱さを映すことはなく。輝きが強いままだ。』

『へっ。褒めるじゃねぇか。だが、手加減しないぜ?。』

『ははははははは。そういうところが最強プレイヤーの証なのかもしれないね。だが、現実を受け止められないのはいけないなっ!。』


 白蓮が駆ける。


『ちっ!。』


 そのまま白蓮が俺の懐に入り込んだ。

 目では動きを追えているのに、ダメージを負い傷付いた身体では反応できない。

 白蓮の肘鉄が俺のみぞおちに突き刺さり、身体が吹き飛んだ。呼吸が止まり、視界が暗転する。

 これがレベルの差…白蓮の覚悟か…。

 命を投げ、あらゆるものにすがり付いた男が手にした力。

 レベルなんて関係ない。

 白蓮の攻撃から伝わるモノ。それは奴の今までの苦悩や絶望。おそらく、神との接触によって知らされたことへの足掻きなんだ。


『ちくしょう…。』


 白蓮に応えてやりたい。

 奴の全てを真正面から受け合える。そんな強さが欲しい…。


ーーー


 視界は暗闇。

 自らの身体が大海の深淵を漂っているような感覚。

 この感じは、前に夢の中で…。


『これ!目を開けんか!妾の 息子 よ!。』


 聞き覚えのある女の声。

 エンパシスウィザメントをクリアした瞬間に耳に残った彼女の呟き。


 ソナタたちならば、アヤツの企みを阻止できるやもしれんな。


 そう言い残した彼女。

 そして、夢の中で現れクリエイターズという存在を知らせてくれた存在。

 そうだ。俺は…彼女を…。


『リス…ティナ…。』

『おう!閃!久し振りだな!こうして会うのは2度目だが元気そうで安心したぞ!。』


 満面の笑みで笑うリスティナ。

 その笑顔は、まさに女神と呼ぶに相応しい神々しいモノだった。

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