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第113話 巨人、現る

『オラオラオラオラァァァアアアアア!!!』


 神速で放たれる無数の拳。

 腕に装備された腕輪、神具【戦神の円環】による肉体強化を最大限に発揮し、且つ、スキル

 【逆境強化】【肉体強化(極)】【一騎当千】【重複強化】【再生強化】の重ね掛け。

 更には【神化】した姿。スキル【武神化】まで発動し迫り来る100体の【完成された人間】を圧倒しているのは…。

 クロノフィリア所属 No.14 煌真だ。

 最大限に強化されたその拳が【完成された人間】の部位にめり込む度に、身体のパーツが吹き飛ばされていく。

 閃からの前情報として、【完成された人間】の弱点を予め聞いていた煌真。

 【完成された人間】は恐ろしく再生速度が速く、学習能力に秀でている。

 現に戦闘開始時に試した普通の拳で破壊した部位は瞬く間に再生し回復していたし、同じ箇所への攻撃は防御された。

 それを考慮し、全力を出すことを決めた煌真は【神化】し、全てのスキルを発動。【完成された人間】が認識できない神の領域。神速の拳と、打撃時に相手の身体に内効魔力を流し込むことで再生を防いでいる。

 内効魔力を流し込む技術は初めての体験であった煌真だったが、こと戦闘に関しては天才的なまでに勘と器用さが働く為、何となくやってみたら出来たを体現している。


『ちっ!キリがねぇな…。』


 内効魔力を流し込むことでの再生阻害も時間の経過で復活してしまう。【完成された人間】を完全に倒すには細胞の一欠片も残さずに消滅させるしかないのだが、100体纏めてとなると煌真にも厳しかった。

 煌真が奴らを消滅させるには神技を発動させる方法しかない。

 

『ちっ!神技で纏めて片付けたいが…絶対何体かは吹っ飛ぶだけだしな…他の奴等が戦ってる方向に飛んじまったら戦闘の邪魔をしちまうし…。』


 対人に優れた能力故に、大規模な殲滅戦になると手数が限られてしまう。

 良い考えが浮かぶまで拳の連打で時間を稼いでいるというのが現状だった。


『あらら、煌真は手詰まりかい?。』

『はっ?うるせえぞピエロ!てめえこそっ!とっととゴミ共を片付けやがれっ!。』


 煌真に近づく黄色い服を着たピエロ。

 クロノフィリア No.16 裏是流だ。

 紫音との戦いを幽鈴に任せ、自身の能力で生み出した【幻想獣】と2万以上の洗脳された観客達との戦いに参入した。

 現在、100体の【幻想獣】をスキル【幻想獣複合】により1体の合成獣を生み出し2万の軍勢を蹂躙している最中だった。

 この調子でいけば、後数分足らずで観客達は全滅するだろう。

 再生能力を持つ【完成された人間】とは違い再生も蘇生も持たない観客達では敵として役不足だった。まだ、彼等に意思と言えるものがあったのなら結果は変わっているかもしれないが…。

 そんな裏是流は【幻想獣召喚】のデメリットで召喚中は移動距離に制限が掛かる為。丁度近付いてきた煌真に声を掛けたのだった。


『こっち片付いたら手伝ってあげるよ。それまで時間稼ぎよろ~。』

『はぁ…貧乏クジか?これ…はぁ…はいはい。分かりましたよ~。ちっ!折角、強敵と戦えると思ったのによ…。』


 肩を落とすも、飛び出した1体の【完成された人間】の顔を握り潰し放り投げた。


『はぁ…こんなのじゃ、すぐに再生するしなぁ…旦那の所に行きてぇなぁ…。』

『邪魔しちゃダメだよ。閃さんは今大事な戦いなんだから…。』

『てめぇ…人の独り言にいちいち入ってくんじゃねぇよ…てか、てめぇは、てめぇの戦いに集中しろや…。』

『いや、僕の友達が頑張ってくれてるし、僕は動けないからさぁ~正直、あの人形さん達じゃ僕の友達には勝てないよ!という訳で暇なのさ。』


 そんな真剣さの感じられない2人の会話が数分続く。


『よし、最後の一体っ!。』


 数多くの死体の上で雄叫びを上げる召喚獣。


『おう!ならこっちを手伝ってくれや!お前ならアイツ等の再生を止められるだろう?。』

『出来るよ。まぁ待って、友達解除しないと、そのスキル使えないから。』 


 指を鳴らすと召喚されていた合成獣がその姿を消した。


『さぁて。じゃあ結界張るよ!って…ねぇ。なんかアイツ等…止まってない?。』

『はぁ?あ…マジだ。』


 【完成された人間】の全てがその動きを停止していた。


『これは、これは。やはり、ただの人形では貴方方の相手にはなりませんね。』


 パチパチと軽い拍手を響かせながら1人の男が物陰から現れる。

 白いスーツでオールバックの金髪。

 異様に歪んだ形をした柄を持つ刀を持っていた。


『はぁ?誰よ、てめぇ?。』

『君、紫雲だよね?。』

『おお、私ごときをご存じとは…はい。私は紫雲影蛇の鳥越(トリゴエ)と申します。お二人の相手をするために馳せ参じた次第です。』

『へぇ…おもしれぇな。そう言うことならもう良いよな?。』

『ちょ!?ちょっと!煌真!?。』


 強化された肉体を最大限に活かした踏み込みと全身の力を込めた拳が鳥越へ打ち込まれる。


『おやおや…せっかちな人だ…。行動以上会話以下ですか…では、私からも1つ。スキル【斬魔死操刀】…一の太刀。』


 交差する煌真と鳥越。


『っ!?。ちっ。』

『煌真!?。』


 煌真の突き出した右腕が斬られ、傷口から血が滴る。


『強化された俺の腕に傷を付けるとはな…。』

『ふむ…私の刀で切断出来ないとは…成程、成程…噂通り想像以上と言ったところでしょうか。』

『やるじゃねぇか。』

『光栄です。ですが。今の攻撃で貴方の強さを再認識しました。私以上神以下と言ったところ…。』

『じゃあ?どうする?尻尾巻いて逃げるか?。』

『いえいえ。言ったでしょう?貴方方、2人の相手をしに来たと。』

『………。』

『煌真…気をつけて。アイツ何かやる気だよ。』

『分かってる。てめぇこそ。引き締めろ。』


 煌真と裏是流が警戒した理由。

 それは、鳥越の持つ異様な刀が異常な魔力の放出を始めたからだ。その魔力は、鳥越本人よりも強力で禍々しいものだった。

 おそらく、装備強化にスキルスロットの大半を使用したのだろう。


『貴方方に勝つには、こちらは死力を尽くさなければなりません。死力以上命懸け以上。スキル【斬魔死操刀】…二の太刀。』


 鳥越は刃を回転させると魔力の波が周囲に広がる。

 波の波動を受ける会場を含め、全ての観客達の死体が立ち上がる。

 【完成された人間】の身体にも波動が包んだ。


『そして、スキル【斬魔死操刀】…三の太刀。』


 続いて、鳥越は刀を地面に突き刺した。

 その瞬間、更に異様な光景を目の当たりにする。

 突き立てられ刀に引き寄せられる人形と【完成された人間】。

 刀に触れた者は肉体の形が泥のように液体化し混ざり合っていく。刀の影響を受けた液体に触れたモノが続々と混合され、その影響は【完成された人間】にも及ぶ。

 3万以上の人形と化した観客達と100体の【完成された人間】が1つの巨大な液体へと姿を変えた。

 全長30メートルの【完成された人間】へ。


『ふふふ。驚いたでしょう?でも、これで終わりではありませんよ?。さあ、最後の仕上げです。スキル【斬魔死操刀】…四の太刀。』


 ゆっくりと【完成された人間】へ近づく鳥越は、その身体に取り込まれ吸収された。


『ふふふ。どうです。これでこの身体は私の思うがままです。これで君達とも互角以上実力以上で戦えますよ。』

『はっ!長々とした割に巨大化しただけじゃねぇか!。』

『試してみますか?。』

『たりめぇよ!。』


 飛び上がる煌真。

 強化された全身の魔力を極限まで集約し右腕で放つ神技。


『神技【神殺ノ神拳】!。』


 神技が命中。発生した衝撃波が互いの背後に走る。


『受け止めやがった!?。』

『煌真!戻って!。』

『はぁ?。』


 巨人を睨み付け。舌打ちをした後、悔しげに裏是流の元に戻る煌真。

 煌真の冷静さは失われていないことに安堵する裏是流。


『ふふふ。強いでしょう?言ったでしょう実力以上と。この巨人のスキルは、私のスキルを得て最強の存在となりましたよ。』

『…聞いても良い?。』

『ふふふ。良いですよ。私のスキル【大以上小無効】です。自身より身体の大きいモノの攻撃、含めスキルの全ての干渉を無効化します。この身体にダメージを与えるにはその身体を30メートル以上にする必要があるということです。』

『うん。無理だね。』

『速ぇな…諦め…。』


 真顔で首を横に振る裏是流。


『だって、干渉を無効化するとか…無理じゃん。30メートルとか。そんなこと煌真出来るの?。』

『無理に決まってるじゃねぇか…。』

『煌真の神技も無効化してたしね。』

『うるせぇ…。』


 打つ手なし。

 巨体を見上げる2人はどうしたものかと思考していると。


『やれやれ。どうやらこっちを選んで正解だったみたいだね。』

『む?援軍ですか?。』


 煌真と裏是流の後ろから現れる人物。

 クロノフィリア副リーダー No.20 仁だった。


『仁さん。』

『どうしてここに?。』

『援護に来たよ。メンバーが手に終えない事態に陥った時の保険としてね。現にあれ…君達じゃ、ちょっと厳しいだろう?。』

『悔しいが…まぁな。』

『うん。打つ手なしだよ。』

『叶と賢磨と相談して手分けしたんだが、ここに来たのが僕で良かった。あの2人でも、彼の相手は厳しいそうだ。』


 前に出る仁。


『初めまして、紫雲影蛇所属の鳥越です。貴方は?。』

『クロノフィリア副リーダー。No.20。仁だ。悪いが、あの2人に替わり君の相手をさせて貰うよ。』

『ほぉ。副リーダーとは…願ってもない。宜しくお願いします。』

『こちらこそ。じゃあ。早速。行こうかな。』


 仁と鳥越の戦いが始まった。

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