第111話 カナリアとナリヤ
このストーリーを読んでくれている方々、
どうもありがとうございます。
すみませんが、今回のお話はいつもより短いです。
良ければ、これからも読んでくれると嬉しいです。
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閃と白蓮の死闘を遥か上空から眺めている少女。その表情は期待に満ち、瞳はキラキラと輝いていた。
そして、そんな彼女を遠く離れた森の中から草木に身を隠しながら観察している男女の2人組がいた。
彼女等は…いや、主に彼女の方だが、彼女は代刃、春瀬、白の3人に接触し、【リスティナの宝石】がある場所を伝え、その後、同じく修行中の無華塁に近づき宝石の場所を案内、暫く行動を共にした経歴を持つ。神と呼ばれる存在だ。
『な…何で…アイツが…この中に居るのよ…。』
そんな彼女の頬を冷や汗が流れる。
超遠距離望遠レンズに映る。その先にいる少女を見て…。
彼女にとってあり得ない事象。
天災と同じなのだ。先読みなど決して出来ない。予知不能な大災害の予兆。それが目に映る少女という存在だ。
クリエイターズと呼ばれているメンバーの1人であり、絶賛、仲間を裏切り最中の彼女からすれば、この場で絶対に会いたくなかった奴の1人である。
少女は、彼女からすれば上位の存在で決して敵対してはいけない。
下手をすれば自分の行動の全てが無駄になってしまう。それ程の絶対的な存在なのだ。
『ふむ。このままどうする?カナリア。今、奴に接触するのは危険すぎると思うが?。』
『もちろん逃げるよ!ナリヤ君!あんなのの相手なんてしてたら命が幾つあっても足りないもん!。』
会話の間、カナリアは片時も視線を少女から外さない。一瞬でも目を離し、少女が何かしらの行動を行えば最悪何の抵抗も出来ずに殺される可能性もあるから。
『この中のことは任せるって言ってたのに、何で…ここに来てるのよ…肉体は?放置ってこと?。』
『彼等は基本自由だ…何でも出来る故にな…おそらく今回の侵入もアイツの独断だろう…大方…遊びに来たとかではないか?。』
『かもしれないし…違うかもしれ…。あ、まずっ!。』
少女を覗くカナリアの目と少女の目が合致する。重なり合う瞳。少女の真紅の瞳はカナリアの心情を見透かしているようだ。
『ナリヤ君…ヤバい…バレてるわ…。』
『…そうか…やはりな。奴の力は我々8人が力を合わせたとしても敵わない。今、この中で最も強いのはアイツだろう…。』
『だね。どうしよう…めっちゃ目が合ってるんだけど…ああ~。笑ってるし~。怖いよ~。って!?あれ!?。』
『ん?どうした?。』
『なんか…手を振ってる。唇が動いてる…えーっと。バイバイ、また会いましょう。だって。あっ…そっぽ向かれた。』
『ふむ。どうやら我々には興味が無いようだな。今は、助かったと見るべきか。』
『そうだね。今はこの場所を離れるしかないよ。』
『クロノフィリアへの接触はどうする?。』
『アイツがここに来たなら早めにしたいね。凄く急ぐ必要があるよ!この戦いを見届けて、その後に会おうと思ってたのにぃ!!!。』
『…では、この場は退くぞ。』
『うん。仕方ない。クロノフィリアの人達…頑張って…。』
カナリアとナリヤ。クリエイターズを裏切った2人は姿を消す。
再びクロノフィリアとの接触を計るために。
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『な~んだ。近くに居たんだ。けど、残念。私は今、アレの戦いを見るので忙しいのよ。バイバイ、また会いましょう。』
少女はカナリアの存在にいち早く気付いた。
しかし、閃と白蓮の死闘の方に興味を持っていかれている今、カナリア達など全く興味の無い存在として少女の中で処理された。
『はぁ~。なんて激しいのかしら!これが戦いってヤツなのね!初めてナマで見るわ!何て言ったかしら…えっとー。あっ!そうそう!映画ってヤツで視たのよ!』
少女は 戦闘 というモノを知らない。
少女の圧倒的な能力は他を寄せ付けず戦闘にすらならずに勝敗を決することが出来たからだ。
そんな中、退屈を持て余した少女がハマったモノが 人間 の生み出した 映画 だった。
長い時間…何年、何十年、何百年、何千年、何万年、何億年…少女は長い時間をジャンルを問わず、面白さ問わず、回数も問わずに楽しんでいたのだ。
その少女が特にお気に入りだったのがアクション映画だった。特に実力の拮抗したもの同士の戦いには心奪われた。
圧倒的な能力を持つが故に味わったことの無い緊迫した戦いの緊張感は、まさに少女が見つめる先で行われている閃と白蓮の死闘そのものだったのだ。同時に、少女が求めているモノでのある。
『はぁ…もっと早く入って来れば良かったわ~。こんなに盛り上がってたなんてね~。でも、何でアレ等って…あんなに必死になってるのかしらね?。』
少女は閃と白蓮が戦っている理由を知らない。更に付け加えると、少女は六大ギルドやクロノフィリア、スキルなどの情報を全く知らないのだ。
『コレのメモリーを覗いても全然理解出来なかったのよねぇ…ギルド?クロノフィリア?何よそれ?良く分からない単語ばっかり出てくるのよねぇ…まあ、良いわ。もっともっと私を楽しませて貰うだけだし!。』
キラキラした瞳で死闘を眺める少女。
この戦いの末に誰が勝ち残ろうと、少女が介入してきた時、人間の意思など関係無く世界が動くことになるだろう。