表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/424

第106話 決着 翡無琥と機美

ーーー翡無琥ーーー


 ギルド 紫雲影蛇の雨黒さんとの戦闘中、唐突に乱入してきた心螺さん。

 既に正気を失っていた彼から感じる気配は 殺意 で支配されていました。


『例のベルの影響か。完全に君を敵として認識しているようだが…さて、君はどうするのかな?。』

『………。貴方はこの方を元に戻す方法を知っていますか?。』

『…その方法は無い…と聞いている。そもそも、この現象は我々の創造主…いわゆる神と呼ばれる存在の能力…だそうだ。作られた存在である我々が抗う術はないよ。…まあ、1つ救える…とは言えるか微妙だが…命を奪えば彼は、この暴走状態から解放される。というがね。ふっ…救済か…不承不承か…難しいところだが…。』

『…そうですか。では、倒します。』


 それしか彼を止める手段が無いのなら仕方がありません。


『しかし、君は更に不利になった。2対1。悪いが此方にしたらクロノフィリアを始末できる千載一遇のチャンスなのでな。恨んでも構わんが死んでくれ。』

『お断りです。』

『クロノフィリアぁぁぁぁぁあああああ!。』


 私はアイテムBOXに入れた白杖を取り出し、居合い斬りを繰り返す心螺さんの斬撃を迎撃する。

 レベル150で放たれる斬撃は、試合の時とは比べ物にならないほど速く、重く、正確に強化されている。


『スキル【境界刀気】。』


 魔力を気に乗せて周囲の状況を知覚できるようにするスキル。また、境界の範囲内全てが私の居合いの射程範囲となる。

 雨黒さんへの警戒も忘れない。この方はまだ実力の底が見えない。2人の気配で位置を常に把握する必要があります。


『スキル【神速抜刀】。』


 通常の私の居合いを更に速くするスキル。

 手数と勢いで攻めてくる心螺さんを神速の抜刀で受け切り、雨黒さんへの牽制の意図を含んだ斬撃も忘れない。

 牽制だとしても、躊躇いなく雨黒さんの命を奪えるだけの剣圧を込めているのに、彼は容易くナイフで防いでくる。

 しかも、少しずつ間合いを詰めて来ている。


『バグは殺すぅぅぅううう!!!。』

『っ!そこです!。』


 心螺さんが僅かに隙を見せた。

 連続して放たれる居合い斬りの間隔が開き、距離を詰めようと足に力みが出たのでしょう。おそらく、自身の居合いを悉く打ち払われ続けたことに痺れを切らしたということでしょうか。

 私はそれを見逃さず、渾身の力と魔力を込めた居合いを心螺さんに向けて放った。

 狙いは首。彼が前進するために行った体重移動のその先を狙い打つ。


『させんよ!今度は君が隙を見せたぞ?。』

『っ!?。』


 警戒を緩めたわけではありません。

 けど、心螺さんへほんのコンマ数秒意識が傾いた瞬間に雨黒さんが私の間合いを侵略した。

 

 速い!?。


 雨黒さんの移動速度は私の抜刀のスピードを上回っていました。

 【神速抜刀】を発動している私の速さを超える動きで近付き、手に持つナイフで私を斬り付ける。


 駄目だ。避けられない。


 抜刀の動作中。完全に動きを読まれたタイミングでした。意識的に反応できても身体が反応できない。抜刀を止められない。


『その腕。貰うぞ。』

『うっ!。』


 私は斬られた。

 抜刀の際に刀を持っていた一瞬伸びきった右腕を。傷口からは大量の血が流れ出る。そして、何より致命的なのが斬られたことで親指と小指が曲がらなくなってしまったことです。


『がぁぁぁぁぁあああああああああ!!!』

『あぐぁ!?。』


 そして、間髪いれずに心螺さんの斬撃が私を襲った。斬撃は私の全身を問答無用に斬り付け衝撃で吹き飛ばされました。


『ぐっ!はっ!。』


 何度も地面に叩き付けられ、何メートルも転がりました。

 気配から2人から20メートルくらいかな…そんなに飛ばされたのですね…身体のあちこちに激痛が走ります…。


『反応が速いな…。』

『くっ…。』

『鞘から抜き放つ刹那。俺の接近にいち速く気が付き僅かに鞘の角度を下げることで抜刀の軌道を変更した。本来ならば腕ごと斬り落としたつもりだったのだがな…。』


 ゆっくりと私に近付いて来る2人。


『はぁ…。はぁ…。』


 目を閉じて、スキル【明鏡止水】と【思考加速】。

 乱れた心を落ち着かせ冷静を取り戻す。更に外効魔力の身体への巡回を加速させ痛覚の緩和と回復力の効果を高める。

 落ち着いた心で自分の身体の状況を確認。

 右腕の出血は止まってる。回復力の強化で治癒力を加速させたお陰だ。けど、まだ、時間が足りない…指を動かせるようになるには魔力も足りない…。後は、全身に切り傷。これも深くはない。出血も止めた。

 けど、貧血だ…血が足りない。頭がくらくらする。

 集中力の低下で気配を上手く感じ取れない。気配がブレてる。


『くっ!。』


 スキル【超広域気配感知】。

 魔力の波動を波状に飛ばし、ソナーのように他者の気配を感じ取る。

 森中感じる複数の気配。皆戦ってるみたい…けど、距離が離れてる。助けは期待できない…。

 スキル【弱所鑑定】

 相手の弱点を知るスキル。身体を纏う魔力の強弱を感じ位置を知ることが出来る。

 心螺さんは…やっぱり首ですね…。

 雨黒さんは…左胸、右腹部ですか…。

 今の身体の状態じゃ…彼等の弱点を突くなんて無理でしょう…刀も彼等の後ろに落としてしまいましたし…。


『はぁ…はぁ…。うっ…。』


 鞘の白杖を支えに立ち上がる。

 ダメだ…立つのもやっと…。とてもじゃないけど戦える状態じゃない…。

 かといって…逃げることも出来ない。私の足の遅さじゃあっという間に追い付かれてしまうし…。


『まだ、立ち上がる力が残っていたか?クロノフィリアというのは存分にしぶといな。だが、限界のようだな。俺は苦しませる趣味はない。一撃でその命を刈り取りたい…と思っているが…彼は、無理のようだな。』

『クロノ…フィリアぁぁぁあああああ!!!』


 冷静に私を観察する雨黒さん。

 対となるように駆け出し暴れ狂う心螺さん。


『………。』


 もう、私には 切り札 を使うしか残されていない、けど、使えば確実に…。


『殺してしまう…。』


 迫り来る心螺さん。もう時間がない。おそらく数秒しか発動できないけど…やるしか…やられる前に!。


『スキル【天眼女神化】。』


 目に巻いていた布が取れる。


『っ!?。』

『がぁっ!?。』


 私の異様な雰囲気を感じ取った彼等が警戒し足を止めた。

 クロノフィリアの皆さんは【限界突破2】の効果によって種族スキルの最上級スキル【神化】が使用できるようになった。

 それは、種族の特性を最高の状態で発揮できるというモノ。

 私の場合は天眼女神。種族【天真眼神族】の神としての能力は視ることに特化している。

 そして、視たモノに干渉することが出来る。


ーーー雨黒ーーー


 後、一撃。

 【リヒト】を服用し、身体能力、スキルが大幅に上昇した。本来の実力なら彼女の足元にも及ばない。あの居合いも見切れはしないだろう。だが、己の命を代償にしたのだ。実力が拮抗した程度では困る。俺は必ずクロノフィリアを殺すと心に決めたのだ。

 そうすれば、神と名乗る奴らが蘇生させて貰える。

 だからこそ、全力で奴らを殺す。俺の全てを懸けて。


 そして、今。その一人を追い詰めた。

 後、一撃。それで確実に殺せる。

 …そう、もう少しだったのだ。


 その瞬間。俺は歩みを止め、立ち止まった。

 いや、正確には近付くことが出来なかくなったのだ。


 彼女が謎のスキルを発動した途端…彼女が目を覆う布を取り払った途端。周囲を取り巻く雰囲気が一変した。

 少女が着ていた衣服が変化し、身体を纏う魔力が白い光を放ち始め、僅かに宙に浮いている。

 何より…閉じていた彼女の瞳が開いたのだ。

 その虹色に輝く2つの眼が俺を見つめているのだ。ただ視られている。それだけなのに…近付けない…彼女から感じる雰囲気は人から伝わるモノでは無くなっている。

 神々しくも、この周囲を圧迫するような雰囲気は前に…どこかで…そうだ、神と名乗る存在に出会った時に…。その時と同じ…感覚だ…。

 近付けば死ぬ。俺はそう直感し踏み止まったのだ。隣にいる壊れた人形も彼女からの気配に動きを止めていた。

 本能で動く人形だ。俺以上に彼女の異様性に警戒しているのだろう。

 紫柄さん…どうやら、俺達では、ここまでしても…まだクロノフィリアの奴等に勝てないようだぜ?。おそらく、奴等もそれを理解している。


『はっ…白蓮の奴の言う通りだったわけだ。』


 それを奴は俺達よりも速く理解した上で…抗っていたのか…。


『駒か…。紫柄さん…。』


 あれは…俺の手に追えない…。


ーーー翡無琥ーーー


 視界が広がる。

 自分の目で見るなんて何年振りだろう?。普段なら視界に映るものは真っ暗な闇。何も見えなかった。何度も試した。何度も試みた。けど、結果は同じ、暗き深淵の闇の世界。最初は絶望した。何度も泣いた。何度も現実に直面した。その絶望から逃げる為に目に布を巻いた。

 久し振りに目に映った景色は、魔力の粒子が集まって人や植物、空気までを形作っている光輝く悲しい世界。

 これが、神様が 視ている 世界。

 そして、私は知った。

 この世界はとても綺麗で、とても儚げで…とても…脆い…ということを…。


『スキル【神眼】発動…行きます。』

『速い!?。』


 私はゆっくりと移動したつもりだ。けれど、私が動いたことで周囲の魔力粒子はその形を保てず風化する様に崩れていく。同時に先程まであった多くの木々の気配が消えた。


『がぁぁぁあああ!バグぅぅぅううう!!!。』

『心螺さん…安らかに、眠ってください。』


 私はただ手を翳すだけ。

 触れればそれは脆く崩れていく。

 心螺さんの持つ刀も服も身体も…魂さえも。


『がっ!?がぁぁぁあああああ!!!。』


 魔力の粒子となって消えていく。


『これが、神の力の一端です。』

『………。』

『まだ、続けますか?。雨黒さん?。私は無闇に命を奪いたくありません。』

『もちろん、続けよう。どちらにせよ、俺にはもう時間がない。【リヒト】を摂取し既にこの身体は死に体だ。』

『あの薬を…。』

『君は、俺の命を懸けた強化を物ともせず、更にその上を俺に見せてくれた。礼を言う。君なら…いや、君達なら 神との接触 にも対応できそうな気を抱かせてくれた。』

『神との接触…ですか。』

『ふっ…らしくないことを言った。さて、お喋りはここまで。行くぞ!。【自速倍加】!。』


 スキルを使用し移動速度を上げた踏み込み、けれど今の私にはただ移動しただけ。その速度も非常にスローモーションに見えています。移動だけで魔力の粒子が霧散していくのを視るに限界以上の速度で動いているのでしょう。


『無駄です。』

『くっ!?ダメか…。』


 ナイフ、素手、蹴り、肘打ち、膝…雨黒さんが私の身体に攻撃を加える度にその部位が崩れ消えていく。


『さようなら。』

『ふっ…ああ。…頑張れよ。』


 横を通り過ぎる。交差するだけで彼の存在は失われていった。


『はぁ…はぁ…はぁ…。』


 戦いは終わった。

 襲ってきた2人は消失。【神化】のスキルを解除し、その場に膝をつく。

 視界は光を失い、再び暗闇に包まれた。

 魔力も体力も集中力も尽きかけている。


『少し…無理をし過ぎました…。ちょっと、休みます。』


 私はそのまま意識を失いました。


~~~~~~~~~~


 どれくらい、気を失っていたのでしょうか?

 身体から感じる違和感。仰向けに横になっている身体、頭の下から感じる柔らかな感触。膝枕?それに良い匂いがします。


『あら~。目が覚めた~。翡無琥ちゃん~。大丈夫~?。』

『つつ美さん?。』


 声と気配で、膝枕をしてくれていたのがつつ美さんだと分かった。近くに矢志路お兄ちゃんの気配も感じます。


『良く頑張ったね~。見てないけど分かるよ~。』

『…はい。頑張りました。』

『ふふふ~。うん~。私が見ててあげるからね~。もう少し寝てて良いよ~。』


 私の頭を撫でながら、つつ美さんの優しい声が安心させてくれる。

 気付けば私は意識を手放していた。


ーーー


ーーー機美ーーー


『クロノフィリアぁぁぁあああ!殺す!カルガミサイル!!!。』


 巨大ロボット【カルガディス】に乗り込んだ夢伽ちゃんと儀童君。

 紫雲影蛇の兎針に操られ、命を削る薬【リヒト】と謎のベルによって、私達…クロノフィリアを殺すことだけが目的の人形のようになってしまった。

 とても良い子達だったのに、こんなことになってしまった…仲良くなれそうだったのに…あんなに怒っている智鳴ちゃんを見たのは初めてだったかもしれない。


『あの子達のことお願い。助けてあげて…。』


 智鳴ちゃんの悲痛なお願い。

 彼女は勘がとても良い。良い人や良い子を見分ける力が特に優れている。

 そんな彼女が認めた良い子達を救えなかったんだ。凄くショックだったんだろう。

 私も…凄くショックだったんだ。智鳴ちゃんはそれ以上に思ったんじゃないかな…。


『智鳴ちゃん。私はあの子達を助けるよ!。』


 こうなってしまった以上、薬の副作用。死ぬ未来は変えられない。なら、せめて意識だけでも取り戻させてあげれれば…。

 

 翼を得た【カルガディス】と空中戦が続く。

 飛んでくるミサイルを同じ量のミサイルで迎撃。そのまま、更にバイクの速度を上げる。


『このまま戦い続けても埒があかないからね。本気で行くよ!スキル【重装機甲女神化】!。』


 神具【重装機甲ホイール】を複数のパーツに分解。それを装甲として身体に纒い、機械の神として顕現する。

 それが私の【神化】だ。


『カルガビーム!。』

『それは既に見ました。』


 極大ビームを背中に装着された翼からのブースターで回避する。


『【圧縮光学刀 レーザーソード】!。』

『カルガソード!。』


 高速で移動しながら、すれ違う度に斬り合う。

 この光学刀で斬り裂けない硬度の剣…レベル150が2人分だとロボット自体の武装も大幅に強化されているようですね。


『囲みます。』


 翼の下に装着された遠隔操作型の魔力砲、六機。

 【カルガディス】を取り囲み包囲。四方八方から魔力砲を発射する。

 そして、全身の魔力を胸元に集め巨大な魔力球を発生させる。


『チャージ完了。発射!。』


 遠隔操作型の砲台で身動きを封じ渾身の魔力球で【カルガディス】を破壊する。


『無駄無駄だぁぁぁあああ!。』

『カルガシールド!。』

『っ!?。』


 六機の砲台からの砲撃も魔力球さえも完全に防ぎ切る。それは、【カルガディス】の肩に装着されたバリア発生装置からのシールド。


『カルガキャノン!。』

『カルガレーザー!。』


 肩のハッチが開き中から放たれる大型の弾丸と目から発射されるレーザー砲。

 多彩な武装が次々に私に向かってくる。


『カルガパンチ!。』

『カルガカッター!。』


 ロケットパンチと翼からの斬撃。

 次々に飛んでくる飛び道具を躱しながら【カルガディス】へ近付いて行く。だが。


『カルガクラッシュ!。』


 【カルガディス】の身体に装備された全ての武装が放たれる。

 ミサイル、弾丸、レーザー、ビーム、斬撃、パンチ。その圧倒的な物量が私の接近を妨げる。


『最後!トドメ!だぁぁぁあああああ!必殺ぅぅぅううう!!!。』


 【カルガディス】の赤と黒の身体が黄金に輝き始めた。

 これは!?。

 全魔力が胸の魔力石に集まっていく。正真正銘、最強の武装が使用されようとしている。


『なら、こちらも。』


 翼を広げ、全エネルギーを胸元に集束させる。両手に装着された大型ブレードの先端が割れ砲撃用の砲身へと変形する。

 目の前に重なるように展開する複数の魔方陣。


『くらえぇぇぇぇぇえええええ!カルガブラスターぁぁぁぁぁああああああああああ!!!。』

『神技【極光破断裂神閃】!!!。』


 衝突する魔力エネルギー。

 生じた余波だけでも周囲の木々が燃え上がっていく。両者全力を注いだ魔力のぶつかり合い。

 夢伽ちゃんと儀童君、2人分の魔力を放出する【カルガディス】。レベル150が2人分のため私の砲撃よりも高密度の魔力エネルギーが放たれている。

 僅かずつだけど押され始める。


『死ねぇぇぇえええ!クロノフィリアぁぁぁあああ!!!。』

『くっ!けど…まだ!。』


 ダメ押しと言わんばかりに出力を上昇させる【カルガディス】。瞬く間に私のエネルギー砲は飲み込まれた。


『ははははは!勝ったぜ!殺したぜ!俺の【カルガディス】がぁぁぁあああああ!!!。』

『私達の、よ!ははははは!!!。』


 勝ちを確信し喜び合う姉弟。精神が汚染されていたとしても姉弟の仲の良さを感じ嬉しくもあり悲しい気持ちになる。今解放してあげるから。

 砲撃形態の両手に装着された大型ブレードを大剣形態へ変形させ砲撃の中を斬り裂きながら突き進む。


『やぁぁぁあああああ!!!。』

『何ぃぃぃいいいいい!!!。』

『砲撃の中を!?。』


 もう少しで本体に届く。

 大剣の先端が砲撃の熱で溶け始めた。


『くっ!?来るなぁぁぁあああ!!!カルガシールドぉぉぉおおお!!!。』

『カルガフィンガーレーザーネット!!!。』


 【カルガディス】の10の指から網状のレーザーが照射され私を囲む。

 また、再び先程まで展開していた両肩のシールドで壁を作り出した。


『まだぁぁぁあああああ!!!。』


 翼の先端から細い魔力砲を放出し続けながら身体を回転させ、網状のレーザーごと貫いた。

 

『なっ!シールドが!。』

『駄目!突破された!?。』

『これで!終わり!。』


 私の回転しながらの突進は【カルガディス】のコクピットを貫通し、姉弟を抱き抱え【カルガディス】から引き離した。

 空中で大爆発を起こす【カルガディス】。魔力で繋がっていた【カルガディス】が破壊されたことで、使われていた大量の魔力が姉弟にフィードバックされ姉弟は気絶してしまった。


『勝った…。』


 私の腕の中で可愛い寝顔を見せてくれている姉弟の身体が指の先から砂のように崩れ始めている。


『あっ…。』


 自然に涙が流れた。

 出会ってそんなに経っていないのに、私と智鳴ちゃんの心の中に刻まれた姉弟。


『お姉ちゃん…。』

『お姉さん。』


 私の涙が頬に落ちたことで目を覚ました2人。私を呼ぶ姉弟の顔は笑顔だった。


『夢伽ちゃん…儀童君…。ごめんね。守れなくて…。』

『ううん。』

『お姉さん達のせいじゃないわ。』


 腕に感じる重さがどんどん軽くなっていく。


『あのお姉ちゃんにも伝えて欲しいの。』

『もちろん。お姉さんにも伝えたい。』

『うん。うん。必ず伝えるよ!。』


 笑顔は変わらない。

 けど姉弟は涙を流しながら…。


『『ありがとう。』』


 と…そう言って、この世界から去っていった。


『うん。必ず伝えるからね…うわぁぁぁあああん…。』


 重さが消え、代わりに自分の身体を抱き抱えながら私は泣いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ