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第101話 邂逅②

 周囲を見渡しても砂の足場が広がっているだけ。邪魔なモノが何もない…会場から北側へ少し離れた場所に閃と白蓮が居た。


 ここでなら、存分に戦える。


 そう言われ案内された場所がここだった。


『始まったようだね。』


 遠くから聞こえる戦闘音。

 爆発音、木々が倒れる音などが戦闘が既に始まっていることを教えてくれている。


『ああ。これでお前が望んだ形になったか?。』

『そうだね。最高のシチュエーションだ。感謝するよ。クロノフィリア。』


 嬉しそうに閃の質問に答える白蓮。その表情は難易度が高く、クリアするのが難しいゲームを、初めて自力でクリアした時のような表情だった。

 生粋のゲーマーなんだろうな。


『まさか、大会の最中に仕掛けてくるとは思わなかったぞ?てっきり、優勝者が決まったタイミングで来るもんだと思ってた。』

『ははは。僕も最初はそのつもりだったよ。まあ、大会そのものが君達を誘い出す口実だった訳だから、君達参加してくれた時点で大会は役割を終えていたからね。誤算…ああ、嬉しい方の誤算は、君達、クロノフィリアのメンバーが10人近く参加してくれたことだね。正直な話、2、3人参加してくれれば良いかなぁ。くらいの気持ちだったからさ。』

『へへ。驚いたろ?全員で乗り込んでやったぜ?嬉しいだろ?。』

『ああ。僕の考えを読んだ上での全面対決。流石だよ…クロノフィリアを僕の全力で倒す…それだけを願って…ここまで来たんだ。この状況が嬉しくない訳がない。』

『…お前はどうして、そこまで俺達に固執するんだ?。』

『…世界の真実を知ってしまったから…かな。』

『…真実…か。クリエイターズからか?。』

『そうだね。彼等から教えられた真実が僕の方針を確定付けたんだ。』

『いったい、何を聞いたんだ?。』

『…それは今は教えられない。僕に勝つことが出来たら…その時は嫌でも知ることになるだろうね。いいや。僕ではなく 彼女 から教えられるだろうさ。まあ、僕に何にしても僕に勝てたらだけどね。』

『彼女…ねぇ。成程…勝てたらか。なら、完璧に準備を整えているお前を真っ向から叩き潰せば全てが分かるってことだな?。』

『そういうこと。手加減は無用だよ?これは君と僕…どちらかが死ぬまで戦う殺し合いなんだからね。…来い!白聖剣!。』


 純白の刃と金色の装飾が施された剣が出現する。

 白蓮の持つ武装か、俺の拳のどちらが強いか。俺の武装。指無しのグローブは特殊な素材を使って作られ…柔軟で軽く硬く刃を通さない頑丈さを持つ。


『行くぜ!。』

『ああ!。』


 この瞬間、俺と白蓮の最初で最後の戦いが幕を上げた。


ーーー


『くっ…右腕が疼く。我に封印されし古の魔神が今になって暴れ始めたというのか!。』


 視界に入る周囲の風景には誰もいない森の中。そこに右腕に包帯を何重にも巻いた全身黒ずくめの青年が腕を押さえながら片膝をついていた。


『左目に宿した古の精霊が告げている。永い年月をかけ代替わりを果たした、新たな魔神が誕生したのだと…この腕の疼きはその影響だとでも言うのか?。』


 左目の眼帯をずらし、その下から左右で色の違う瞳が表に出た。


『ふん。曇りなき精霊を宿した瞳で見る外界は歪んでいる。この混沌を打ち払い…真の魔を倒すのは、我しかいない…ということか…。我ながら重荷を背負わされたモノだ。お前も、そう思うだろう?。』


 誰もいない空間に話しかける。


『ははは。お前もそう思うか。相棒よ。我は必ず新しく誕生した魔神を倒し、この魔神を封印した呪いの右腕を解放する。そして、今度こそ永劫なる平和を人間の世界に…。』


 また、視線は何も無い空間を見つめる。


『お前は、ついて来なくても良いのだぞ?これから先は魔神が支配する魔の領域。命の保証はない。…ふん。我のどこがそんなに気に入ったと言うのだ?。…はっ。そんなのではないさ。だが、ありがとう。お前が共に来てくれるのであれば心強い。』


 虚空に話しかけ笑顔を浮かべる青年。


『あっ…カラコン、ズレた。』


 色つきコンタクトレンズを正常な位置に戻し再び、ある一点を見つめる青年。

 そこには、頭の上から爪先までの全てが真っ白な少女が立っていた。


『もう、良い?。』

『ああ、その純白の姿、人間離れした美しさ。人ならざるものとお見受けするが?。』

『クロノフィリアの氷姫。』

『クロノ…フィリア…。ほぉ、古の魔神の残党か。まさかこんなところで相見えることになろうとはな…これも運命か…。』

『貴方の名前は?。』

『やれやれ、数多くの魔物を屠ってきた我も、まだまだ…ということか。魔神の配下にすら顔を覚えられていないとは…。』

『魔神?何それ?。』

『ほぉ。自らの王の存在を忘れたのか?いや、代替わりの影響か。前神の記憶を持っていれば謀反の恐れもあるだろうからな…。流石は新たな魔神だ。知謀な戦略家…と言ったところか。』

『もしかして…。』

『ほぉ。何か思い出したか?貴様の記憶は失われた訳ではない。暗き深淵たる深海の如く。心深に沈んだだけのこと。』

『貴方…中二びょ『シャラーーーーープ!!!。』………。』

『その言葉を発してはいけないよレディ。その言葉は言霊に刻まれた古の精霊に語りかける呪文。一度口にすれば最後…どのような呪いが貴女に降り注ぐことになるか…考えるだけで恐ろしい。』

『やっぱり、中二病だね。』

『………。』

『名前。教えて。』

『あ、はい。俺は紫雲影蛇の悪楽(アクラ)です。』

『じゃあ。始める?。』

『そうですね。殺し合いますか…。』


 クロノフィリア No.3 氷姫。

 紫雲影蛇 悪楽。


『神具。【氷華白霊杖】。』

『はぁ…さて、テンション上げますか!顕現せよ!我が神より授かりし魔神を滅ぼす神剣!邪神滅殺混沌招来深淵終末漆黒黙示録断罪慟哭虚無幻想共鳴天啓剣!!!!!。』

『おお。名前が長い。カッコいい。』 


 悪楽が取り出した黄金の剣を見て僅かにテンションが上がる氷姫だった。

 実は氷姫。中二病の考えに理解ある女だった。


ーーー


『なあ。光歌よ?。』

『なぁに?豊華姉は?。』

『噂には聞いていたが…本当にロボットみたいだな。』

『みたいね。こっちの声にも反応してないし…はぁ…ハズレ引いちゃったなぁ…。』


 光歌と豊華の前に立つ緑龍絶栄の八龍煌皇の獏豊、多言、徳是苦。

 先程から『バグを殺す』とうわ言のように呟き続ける3人を見て2人は対応に困っていた。


『てか、私達2人とも後衛なんだけど?どうするの?。』

『光歌は獣人化すれば前衛で戦えるであろうが!ウチは根っからの後衛職だ!光歌に任せる!。』

『ええ…こんな序盤で使いたくないし…。』

『ええい!駄々をこねるでないぞ!。』

『じゃあ、白が頑張るッス!。』


 白が木の枝から飛び降り華麗に登場した。


『白ぅぅぅううううう!やっぱり白は良い子だわぁぁぁあああああ!。』


 白の登場に抱き付く光歌。


ーーー


 木々を掻き分け森を歩いていた春瀬の前に1人の青年が鎮座し瞑想していた。


『私を待っていて下さったの?。灰鍵さん?。』

『もちろんだ。春瀬。約束を果たして貰おうと思ってな。俺自らが出向いた訳だ。どうだ?案外早かっただろう?再戦の時は?。』


 目を開け春瀬を見る青年は、数時間前に大会で行われた試合で春瀬に倒された灰鍵だ。

 ゆっくりと立ち上がる灰鍵が纏う雰囲気に、試合の時とは明らかに違う 凄み を感じる春瀬。

 この凄みは、灰鍵の 覚悟 の現れ。文字通り灰鍵はこの戦いで命を燃やそうとしているのだ。


『ええ。そうですわね。身体は大丈夫なのですか?。』

『なぁに。心配無用だ。むしろ心が高ぶっていてな。今なら悔いの残らぬ死合が出来そうだ。』

『ええ。約束ですから。今度は私も最初から全てを出しましょう。』


 灰鍵がリヒトを取り出し服用する。


『貴方…それ…。』

『ああ。これで後戻りは出来ない。』


 薬の効果なのか、灰鍵の纏う魔力が明らかに変化した。試合の時とは最早別人だ。


『風が…。』


 微風から強風へ。強風から台風に…。


『これが…レベル150の世界か…。』


 風が灰鍵の身体を包み、その身体を宙に浮かせる。


『では、私も。【聖光玉】輝きなさい!。』


 鎧に埋め込まれた5つの宝玉が輝き出し春瀬自身の魔力がはね上がる。


『ははは!それだ!本気の君と戦いたかった!。』

『私もです!本気の全力ですわ!。』


 風を纏いし双剣と光を纏いし聖剣がぶつかる。


ーーー


 赤蘭煌王の夢伽(ムトギ)儀童(ギドウ)の2人が智鳴と機美の前に立ちはだかった。


『ちょっと何それ!?聞いてないよ!?。』

『大きすぎるよぉ!。チートだ!チート!。』


 怯え抱き合う2人の前に仁王立ちする黒と赤の巨大ロボット。

 20メートルはあるだろうか?。


『ははは!どうだ!これが力だ!クロノフィリアなんて俺の【カルガディス】で全員踏み潰してやるぜ!。』

『ちょっと!俺のじゃなくて 私達 のでしょ!あんただけの能力じゃないんだから!。』

『でも!デザインしたのは俺だぜ?。』

『動かせるようにしたのは私じゃない!。』


 巨大ロボット カルガディス の中で喧嘩を始める姉弟。

 手始めに振り下ろした拳は智鳴と機美の眼前に巨大なクレーターのような穴を開けた。

 ただの喧嘩は周囲の全てを破壊していく。


『き、機美姉…どうする?。』

『や、やるしか…ないよね…。』


 逃げ腰の2人。


『はぁ…情けないわよ。貴女達!せっかく閃様が任せて下さったのだから!あんな木偶の坊くらい軽く捻り潰しなさい!。』


 2人の様子を見かねて智鳴の口から出る裏智鳴の言葉。


『うん!そうだね!閃ちゃんが任せてくれたんだもんね!私、頑張るよ!【重装機甲ホイール】!。』

『私達も行くわよ!智鳴!『うん!【天炎陽扇】!。』』


 各々の神具を取り出し戦闘態勢に移行した2人。夢伽と儀童に遭遇して15分。ついに戦闘が開始した。


ーーー


『くっ!。』


 剣を支えに膝をつく白蓮。

 その身体は既に全身傷だらけだった。


『素の状態ならこの結果は分かっていただろ?レベルの差は絶対だ。それはゲーム時代から変わらない。』

『はぁ…はぁ…そうだね。ちょっと試してみたかったんだ。僕と君の実力の差をね。』

『俺達は運が良かったんだ。偶然、レベル150になる機会が与えられた。実力じゃないさ。』

『…そうか。真実を知らないとそういう認識なんだね。君のその力は偶然じゃない。運命だったんだよ。彼女…リスティナの手によって作られたね。』

『…リスティナか…。』


 白蓮はリスティナのことを知っているようだ。おそらく、俺以上に。


『さて、遊びは終わりにしようか。素のままじゃ、どう足掻いても君には勝てそうにないからね。』

『何をするつもりだ?。』

『ふふふ。僕の人生の集大成さ。』


 よろよろと剣を杖代わりに使い、俺から距離を取る白蓮。


『まずは【リヒト】だ。』


 命を削る薬を服用。

 白蓮の魔力が上昇していく、レベルも150へ上がっている。


『そして、ここからが僕でも何が起こるか分からない!未開の禁忌だ!。』

『なっ!それは!?リスティナの!?』


 白蓮が取り出したリスティナの宝石。

 俺達が見付けられなかった最後の1つ。予想はしていたが、やはり白蓮が持っていたのか。


『さあ!僕に力を寄越せ!。』


 宝石を体内に無理矢理埋め込む白蓮。全身が破壊され作り替えられていくようだ。


『まだ…まだ…クティナもだ!。』


 次に取り出したのは、大会の優勝賞品であった【クティナの宝核玉】。あれのアイテムとしての効果は、種族をクティナと同じ【天地創世終末神族】へと変え、ステータスの向上、そして、クティナの持つスキルを全て使用可能になるというモノだ。


『そして、これで最後だ!。』


 懐から取り出した小さなベル。

 あれはさっき観客を操り人形にしたアイテムか!?。

 そのベルを白蓮が破壊し、直後ベルから眩いばかりの光が周囲を照らした。


『まさか…馬鹿な!?。』


 光の輝きは白蓮へと集束し、光の中から現れた白蓮の姿は、先程までの姿ではなく神話に登場するような神々しいモノへと作り替えられていた。

 片翼12枚。合計24枚の翼。上半身の服は胸元を大きく開き、胸には大きな目と7つの宝玉が光る。

 何よりも俺を驚かせたのは、そのレベルとステータスのスキル欄に出現した新たなスキル。


・レベル 170

・スキル 【限界突破3(仮)】


『白蓮…お前…。』

『さあ。始めよう。僕の命が尽きる前に。』

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