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番外編 閃のホワイトデー①

この小説を読んでくれている方々

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どうもありがとうございます


今回のストーリーは少し前に投稿したバレンタインの話の1ヶ月後の時間軸になります

バレンタインの時と同様にキャラクターの関係性などのネタバレを含みますので注意して下さい


これからも、読んでくれると嬉しいです

ーーークロノフィリア拠点 廊下ーーー


ーーー代刃ーーー


『あっ。灯月。』

『代刃ねぇ様。こんにちは。』

『うん。こんにちは。』


 廊下を歩いていたらタイミング良く灯月と鉢合わせした。灯月にしては珍しく表情が優れていない。

 ちょうど良いや。僕も聞きたいことがあったし。


『灯月。閃を知らない?ここ何日か会えてないんだよね。今日は部屋に居るかなぁって思って向かってるとこなんだけど?。』

『…そうですか。代刃ねぇ様もでしたか。私も、にぃ様に3日と7時間42分52秒会えていないんです。もう…寂しくて…悲しくて…。このままお会いできなければ禁断症状で全身痙攣の後、泡を吹いて倒れてしまうところです。』

『細かいしっ!そんな持病を持ってたの?…って、そうか。だから、暗い顔をしてたんだね。』

『ええ。最近のにぃ様は何やら忙しそうにしていたのは知っていたのですが、ここ数日、食堂や喫茶店にすら、いらっしゃらないので心配です。毎日、にぃ様の部屋に立ち寄るのですが戻ってきている形跡もなく…今も駄目元で部屋に向かっていたところなのです。』

『ああ、そうだったんだね。確かバレンタインの次の週辺りからだったよね。閃が忙しそうにし始めたの。』

『そうなのです。いったいにぃ様の身に何が起こっているのか…私は気が気ではありません。』

『とりあえず、部屋に行ってみようよ。』

『ええ。そうですね。参りましょう。』


ーーー閃の部屋の前ーーー


『着いたね。』


 閃の部屋はもう何度も入ったけど殺風景というか必要最低限の私物しか置いてないんだよね。けど、私物が少ないだけで物が少ないわけじゃないんだ。

 色んな娘がプレゼントした物が綺麗に整頓されて飾られてる。

 プレゼントをした側からすれば大事に扱ってくれてることが嬉しいよね。


『ええ。しかも扉が開けられた痕跡があります!にぃ様が戻ってきているのかも!。』

『えっ!?何で分かるの?。』

『この扉に私の羽を1枚挟んでおいたのです。そして今その羽は床に落ちている!つまり!。』

『閃が戻ってきてる!だね!。』

『はい!にぃ様ぁぁぁあああ!。お会いしたか…。』


 僕と灯月が扉を開けた瞬間、灯月は真顔になり動きを止めた。

 実際に部屋の中に居たのは閃ではなかった。

 何故か閃のベッドを挟むような形で睨み合っているリスティナとつつ美さん。

 僕と灯月は同時に言葉を失った。


『つつ美よ!そこをどけ!妾が先にこの作戦を思い付いたのだぞ!。』

『何を~。言ってるのかしら~。リスティナちゃん~?忘れちゃったのかしら~。貴女より~。私が先に~。閃ちゃんの~。部屋に入ったのよ~。』

『た、確かにそうじゃが…妾が閃の母親ぞ!。』

『それは~。私もよ~。産みの母より~。沢山の~。愛情を注いだ~。育ての母親の方が~。閃ちゃんには~。大事なの~。』

『………。』

『………。』


 暫く無言で睨み合う2人。


『譲らぬか?。』

『ええ~。もちろん~。』

『なら半分じゃ!それで譲歩せい!。』

『…ふぅ~。仕方ないわね~。それで良いわ~。』


 何かしらの結論が2人の間で出たのか、いきなり着ている服を脱ぎ始める2人。

 ええ…。何してるのぉ…あの人達?。

 そのまま、裸で閃のベッドに入っていく2人。

 灯月は静かに扉を閉めた。


『はぁ…行きましょう。代刃ねぇ様。年増2人の醜い争いです。』

『年増…なかなか辛辣だね…灯月。』

『大方…「閃ちゃんの~。ベッドに~。私の香りを残せば~。閃ちゃんは~。いつでもお母さんに包まれて~。幸せ~って~。思う筈よ~。」「妾の残り香を残せば閃はきっと母のことを思い出し、夜な夜な妾に会いたくなって妾のベッドに忍び込むだろう!。」とか言い出したのでしょう。』

『物真似…上手だね。』

『まったく、にぃ様が夜な夜な忍び込むベッドは私のなのに…。』

『お~い!灯月~そうじゃないでしょ~。』

『あっ。そうでした。代刃ねぇ様も一緒ですよ。』

『それ…どういう状況?。』

『一緒にヤらしいことしましょう!。』

『し、しないよ!。』

『ふむ、まだ素直になりきれていないと………まあ良いです。それより、にぃ様は部屋に戻ってきていないようですね。次に行きましょう。』

『え?あ、うん。つつ美さん達は?。』

『放置です。にぃ様のベッドは後で綺麗に洗濯して私の身体で香りの上書きです。』

『……………。』


 やっぱり親子だぁ…。


『これからどうするの?閃を探す?。』

『う~ん。では、にぃ様大好きクラブの面々から当たってみましょう。もしかしたら、にぃ様が会いに行ってるのかもしれませんし。』

『え?何?その怪しい名前のクラブ?。』

『何を言っているのですか?会員ナンバー6番の代刃ねぇ様。』

『あれぇ?僕も入ってるの?そのクラブ?。』

『もちろんです。にぃ様の恋人は全員が強制加入となりますので。…因みに会員ナンバーは恋人になった順です。ついでに言うと、母様とリスティナ様は対象外です。あの方達は恋人ではなく母親なので。』

『あ…そこは括るんだね。灯月は何番なの?。』

『ナンバー2です。ですが、クラブ発足者として最高の権限を保有しています。』


 堂々と言ってのける灯月。自分が1番になるためにクラブを作ったのかな?本当に負けず嫌いだなぁ…。


『では、まずは会員ナンバー5の智鳴ねぇ様のところに行きましょう。この時間は自室にいる筈ですし。』

『うん。智鳴なら何か知ってるかもね。』


 僕と灯月は智鳴の部屋に向かう。と、言っても、目と鼻の先なんだけどね。


『見てください。扉が開いています!覗き込んでみましょう!もしかしたら、にぃ様とイヤらしいことをしているのかもしれません!。』

『いや…普通に換気してるだけじゃ…。』


 何でこの娘はそっち方面にしか考えないのかなぁ…。

 まあ、何だかんだで僕も覗き見てるんだけど…。


『ほら。掃除してるだけだよ。流石、智鳴だね。掃除が行き届いて部屋中がキラキラしてるよ。』

『はぁ…智鳴ねぇ様も禁断症状が発症してしまいましたか…嘆かわしい。』

『き、禁断症状?何の?僕には普通にいつも通りの智鳴に見えるけど?。』


 智鳴の部屋は、ザ 女の子って感じの可愛らしい部屋だね。智鳴は今、窓枠の汚れを丁寧に取っているところだ。特に違和感は無い…と思うけど。


『何を言っているのですか!代刃ねぇ様!良く見てください!智鳴ねぇ様が今雑巾で拭いている窓枠の色を!。』

『え?色?あっ!。』

『気付きましたか。』

『色が…雑巾で擦っている箇所の色が薄くなってるよ!?。』

『そうです!いったい何時間 あの部分 だけを擦り続けているのでしょうね!。』

『あ…良く見ると部屋の所々が周りの色より薄くなってるね。』

『智鳴ねぇ様は考え事や悩み事があると無意識に掃除をしてしまうのです!ですが、思考がそちらに集中しているため手だけが経験で動いて身体自体がその場に停止したままになってしまうのです!。』

『じゃあ、今智鳴には悩み事があるんだね?何だろう?僕で良ければ相談に乗るのに。』

『それは難しいでしょう。』

『え?何でさ!僕だって悩み事を聞くことぐらい出来るよ!。』

『いいえ。違います。代刃ねぇ様が悩み相談を受けられないのではなく、智鳴ねぇ様の悩みが私達が今、現在直面している問題だからです。』


 僕たちが?…あ。


『…つまり、閃に会えてないってこと?。』

『イエス!オフコース!。』

『灯月…テンション高いね…。』

『私達…にぃ様大好きクラブの会員は皆、にぃ様にお会いできない期間が続くと禁断症状が出てしまうのです!そう定められているのです!。』

『ええ…初耳なんだけど…。』


 何、その設定…。


『現に見てください。あの心ここにあらずな智鳴ねぇ様の痛々しいお姿を!智鳴ねぇ様はもう4日もにぃ様にお会いできていないのです…。可哀想に…。ですが、心配してもいられません!明日は我が身!私も既に3日もにぃ様に会えていないのです…明日の私はきっと智鳴ねぇ様のように虚ろな眼差しでエッチなことをしてしまっているかもしれません!。』

『智鳴は掃除してるだけだよぉ!あと!女の子がそんなこと言っちゃダメだよ!。』

『さて、ここにもにぃ様は居ませんね。次へ行きましょう!。』

『聞いてない…。』


 閃の気持ちがちょっと分かったかも。


『次は、会員ナンバー3の氷姫ねぇ様の部屋です!。』

『隣だね。』


 氷姫は部屋の中に居るのかな?普段から静かな娘だから物音がしないね。

 そ~っと部屋の中を覗き込む。何か変態みたいだよ…。

 氷姫の部屋は小さな書斎って感じだね。本棚が沢山並んで色んなジャンルの本が沢山並んでる。

 窓際の陽が当たる所には小さなアンティーク風のテーブルと椅子が置いてあって、そこで本を読む氷姫の姿はきっと凄く絵になるだろうな。


『あっ。氷姫ねぇ様が居ますね。にぃ様は居ないようです。』

『だね。読書中だ。邪魔したら悪いし早く次に行こう。』


 氷姫は椅子ではなく床にクッションを敷いて、そこに座って優雅に本を読んでいた。

 読書が本当に好きなんだね。


『はぁ…。あれのどこが読書中ですか?氷姫ねぇ様も既に禁断症状が出てしまっていますよ。』

『え?そうなの?いつもと一緒に見えるけど?。』

『良く見てください!氷姫ねぇ様の読んでいる本と、横に積まされている読み終わったであろう本の向きを!。』

『向き?…あ。逆さまだ。』

『そうです!あれでは読めません!しかも、ページは普通にめくられている!仮に読めたとしても物語の中の時間は逆行していくだけ!どんなタイムマジックですか!殺人モノの推理小説なら絶望的。犯人が分かったまま犯行のトリックが逆順で解き明かされていき、事件の全貌が分かった時点で殺人が起こるんですよ?…何が面白いのですか?それ?。』

『ぼ、僕に聞かれても…。』


 でも、そうかぁ…氷姫も閃と会えないと、こうなっちゃうんだね。

 もう、閃は何をやってるんだよぉ。

 彼女がこんなに寂しがってるのに…。


『次です。次は、にぃ様の精神安定剤!睦美ちゃんの所に行きますよ!。』

『確かに、閃にとって睦美は甲斐甲斐しく尽くしてくれる若奥様って感じだけど…その言い方…。』

『うぅ…羨ましい立ち位置ですね。流石、会員ナンバー1ですね!私にとって眼前に聳え立つ絶壁の如く強大な存在ということでしょうか!あっ。でも、あの控え目なお胸がにぃ様を安心させるのでしょうか?。』

『意味が分からないけど、とりあえず嫉妬だね。あと、睦美は控え目じゃなくて平均的だから!君ら親子が異常なの!。』

『あら?そうなのですか?勉強になります。』

『って、僕の胸を見ないでよ!。』

『いえ、何気に、ご自身のお体を自慢してるなぁ…と。』

『してないよ!?。』


 そんな調子で灯月にツッコミを入れてたら、いつの間にか食堂に着いていた。

 睦美は料理が趣味だからね。よく厨房で皆の為にお菓子や、小腹が空いたときのちょっとしたモノを作ってくれるんだよね。しかも、とっても美味しいんだ。

 厨房を仁さんから任されてるガドウさんも睦美に対しては自由に使って良いって笑顔で了承してくれてるみたいだし。

 やっぱり、信頼って大事だね。

 隣を歩く灯月は少し前に厨房にあった食材を全部使って閃のお弁当を作ったせいでガドウさんから警戒されて許可が無いと厨房に入れなくなってるから…。

 流石のガドウさんも灯月の暴走を止められなかったんだね…。


『あっ。やっぱり居ました!にぃ様は…居ないですね…。』

『だね。って凄いことになってるけど?。』


 厨房で睦美は料理をしていた。

 身体はテキパキと淀みなく動いているのに目は虚ろで手元を見ていない。

 って、何でそれで料理できるの!?。

 しかも、次々に完成していく料理が厨房にあるテーブルの端から、どんどん並んでいってるし…。

 あっ!良く見たらガドウさんが厨房の床でエプロンの裾を噛み締めながら踞って泣いてる。

 筋肉ムキムキのスキンヘッドが泣いてる姿は…何とも言えない雰囲気が…怖い…。


『旦那様…旦那様…旦那様…旦那様…旦那様…。』


 睦美の口から小さな声で聞こえる呟き。

 これが睦美の禁断症状?。智鳴や氷姫と同じく虚空を見つめて、うわ言のように呟きながらも、料理を作るスピードは変わらない。

 普段のしっかり者な睦美は何処に行っちゃったんだろう…。


『何か…厨房の中が全体的に怖いんだけど…。』

『仕方ありません。最近の睦美ちゃんは、にぃ様にお仕え出来ることが至上の喜びとなってしまっていました。朝から晩まで、にぃ様の生活全てを支え、常に側に控える姿勢。くぅ…何で睦美ちゃんは着物に割烹着姿なのですか!メイド服姿、絶対似合うのに!私と並んで、にぃ様にお仕えして欲しい!今度、光歌ねぇ様と豊華ねぇ様に頼んでみましょうか?…ああ、話が逸れました。それで、苦楽を共にすることに全力を捧げていた睦美ちゃんが、そのにぃ様に会えていないのです。ああなっても仕方がないかと。』

『噛まずに…よくそんなに長く喋れるね。あとそれ睦美は依存とも言えるよね?。』

『古き良き理想の女性像ですね。素晴らしいじゃないですか!。』

『閃が居ない時は、結構さばさばした性格なのにね。』

『そのギャップがまた素晴らしいじゃないですか!はぁ…今度押し倒してしまいましょうか?。』

『灯月って…絶対女の子もイケるよね…。』

『はい!勿論ですよ!そうでなければ、にぃ様のハーレム計画など提案しませんよ!。』

『ああ…そうだね…もっと早く気付くべきだったよ。』

『今度一緒にお風呂入りましょうね。』

『この会話のタイミングで入浴に誘うとか身の危険しか感じないんだけど。』

『はい。覚悟してください。最高の思い出にしますので。』

『しかも隠さないし…何されるの僕は!?。』

『ふふふ。』


 こ、怖いよぉ…。閃…。


『さぁ!次ですよ!次は会員ナンバー9、10、11の美緑ちゃん達です!最近、にぃ様と恋人同士になった3人で会員としては新規の方々です。まだ日が浅いので禁断症状は少ししか発症していないと思います。』

『ああ、美緑と砂羅と累紅だね。』

『3人は、きっと一緒に居ると思いますし部屋に行ってみましょう!。』

『そうだね。僕、あんまり話しことないんだよね。』

『人見知りは治した方が良いと言っているじゃないですか!それに同じクラブのメンバーなんですから自分から動いて距離を縮めないと!人と人の繋がりは出来ないんですよ!互いに互いを理解して初めて強固な繋がりが出来るんですから!。』

『う…うん。そうだよね。頑張るよ!。』

『その調子です!代刃ねぇ様!。』


 何だかんだで面倒見が良いんだよね…灯月は。


『ちょうど良いです。この機会に話してみましょう。』

『え!いきなり!?。』

『思い立ったが吉日ですよ!。』

『そ、そう?分かった。』


 美緑達は部屋に続く通路の途中にある共同スペースに集まってお茶をしていた。でも、3人とも何処か暗い顔をしてる。これも禁断症状?。


『こんにちは。美緑、砂羅、累紅。』


 まずは当たり障りのない挨拶から。


『あっ!こんにちは。代刃さんに灯月さん。どうかしましたか?。』

『うん。ちょっと3人に聞きたいことがあったんだけど…暗い顔をしてどうしたの?。』


 暗い表情の理由は多分だけど、閃に会えてないんだろうなぁ。


『はい。お恥ずかしいのですが。閃さんに最近会えていなくて…少し…寂しいなぁ…と思いまして。』


 ああ、やっぱりそうだよね。


『美緑ちゃんも私も、累紅も閃様の恋人になれたばかりなんです。閃さんは、たいへんおモテになる方ですから、色々な女性に声を掛けられて忙しいのだと思い…控えていたのですが…。』

『ここ何日か姿すら見えないの。もっとイチャイチャしたりしたいのに。』

『側に居るだけで幸せだと思っていたのですが、いざ恋人同士になったらやっぱり触れ合いたいと思ってしまって。』


 分かるなぁ。その気持ち。やっぱり、沢山の想い人がいると何処か遠慮しちゃうよね。

 でも、自分の中では恋人同士でしか出来ないことも色々したいって欲も出てくるし…恋って苦しいよね。

 って、この状況が普通ならあり得ないんだけど…。


『何を我慢しているのですか!。』


 今まで黙っていた灯月が叫んだ。


『ひ…灯月さん?。』


 美緑達も驚いてる。


『皆さんは、にぃ様に認められて恋人になられたんですよ!それに、にぃ様大好きクラブの会員なのです!このクラブに入っている以上、我慢はダメです!ちゃんと自分のしたいこと、して欲しいことをにぃ様に伝えられるように発足したのですから!どんどんにぃ様とイチャイチャしてください!私達に遠慮してはいけません!。』

『…そ、そういうクラブだったのですね…。』

『私、てっきり閃君を取り合わない為の順列を明確にするクラブなのかと思ってたよ。』

『それでは、皆さんが幸せになれないではないですか!このクラブに加入している以上!私達は貴女方の仲間で理解者です!遠慮なんてしないで行動してください!相談でも何でも皆で話し合いましょう!皆で幸せになるんです!。』

『『『灯月さん…。』』』


 3人の目のキラキラの輝きが灯月へと注がれる。

 うん。言ってることは素晴らしいし良いことだと思うんだけど…さっきの灯月の会話を思い出すと素直に喜べないんだよなぁ…。


『ですが、残念です。にぃ様にここ最近会えていないのは私達も同じ。会員達も悉くにぃ様に会えていないようですし。』

『え!?そうなのですか?。』

『はい。何やら忙しそうにしているようなのですが。ここ何日かは特に姿をお見せにならずに…。』

『お身体でも壊されたのでしょうか?。』

『3日前…最後に会えた時は元気そうでした。』


 閃…何かしてるのかな?。


『それでは、私達はこれで。にぃ様を探してたので。』

『分かりました。私達も閃さんに会えたら灯月さん達のことを伝えておきますね。』

『宜しくお願いします。』

『またね。美緑、砂羅、累紅。』

『はい。また、代刃さん、灯月さん。』


 美緑達と別れ通路を歩いていく。


『美緑達も閃に会えてないんだね。』

『困りましたね。あれ?。何でここに?。』


 何かを発見し立ち止まる灯月の視線の先を辿ると宙に浮いて丸まって寝ているクティナが居た。

 いつもは閃の影の中に隠れて出てこないのに…どうしてこんな場所に?。


『聞いてみましょう。クティナちゃんならにぃ様の居場所を知っているかも。』

『そうだね!。』


 僕達はクティナに近付いていく。


『クティナちゃん。』

『クティナ。』


 僕達の声にクティナが反応し目を開けた。凄く眠そうだね。


『ん?。灯月。代刃。こんにちは。』

『こんにちは。クティナちゃん。』

『こんにちは。クティナ。』

『私に。何か用?。』


 目を擦りながら聞いてくるクティナ。見た目の幼さと相まってとっても可愛い。


『にぃ様を探しているのですが、クティナちゃんはご存じですか?。』

『閃?わかんない。』

『クティナが閃から離れてるなんて珍しいね。』

『うん。閃が。用事が終わるまで。一緒にいれない。って言ったから。』

『用事?どんなのかわかる?。』

『わかんない。でも。忙しそうだった。』

『そうですか。急に声を掛けてしまってごめんなさい。』

『ううん。大丈夫。また。声。掛けてね。』


 そう言ったクティナは、また丸まって寝むりについた。

 早い…もう寝てる…。

 リスティナが言ってたけどクティナは生まれたての子供みたいな感じなんだっけ?。


『クティナちゃんでも分からないなら、手詰まりでしょうか?。』

『う…ん。そうだね。皆知らないんじゃ…。』

『あ。灯月と代刃。こんにちは。』


 ふと、僕と灯月に声を掛けて来たのは無華塁だった。

 無華塁は僕の次に閃と恋人になったんだ。


『無華塁ちゃん。こんにちは。』

『こんにちは。』

『どうかしたの?。こんなとこで?。』


 無華塁はスポーツウェアを着て、タオルで汗を拭き取っている。

 またトレーニングをしてたんだね。


『ああ、閃を探してるんだ。無華塁は知ってる?。』

『閃?知らない。最近会ってない。』

『そうか…無華塁も会ってないんだね。』

『代刃も?。』

『そう。全然会えないから寂しくてさ。』

『うん。私も。寂しい。あ、でも。ママなら。知ってるかも。』

『ママって黄華さん?。』

『うん。何日か前。閃がママに。会ってるの。見た。』


 閃が黄華さんに?。


『これは有益な情報ですよ!代刃ねぇ様!。』

『そうだね!黄華さんを探そう!。』

『ありがとうございます。無華塁ちゃん!にぃ様にお会いできたら無華塁ちゃんの所にも向かって頂けるように伝えておきますので!。』

『うん。閃に会いたい。待ってる。』


 無華塁と別れた僕達は急ぎ足で黄華さんを探す。黄華さんが居そうな場所を手当たり次第に探し回り、ついに辿り着いた。

 って、ここは…つつ美さんがよく居る庭園じゃん。

 様々な花が咲き誇る暖かな庭園に黄華さんが居た。瀬愛と翡無琥も一緒だ。3人で花の冠を作って遊んでいる。


『あ…灯月お姉ちゃんと代刃お姉ちゃんの気配です。』


 流石、翡無琥だね。いち早く僕達の接近に気が付いた。


『あら?どうしたの2人して?。』

『灯月お姉ちゃん見てぇ。頑張って作ったよ!。』

『あら~。可愛い冠ですね。瀬愛ちゃんにぴったり!凄く似合ってますよ!。』

『えへへ。』


 翡無琥ちゃんの言葉に黄華さんも僕達に気付いた。

 瀬愛ちゃんが灯月に近付いて作ったばかりの花の冠を見せてくる。瀬愛を膝の上に乗せる灯月は、花の冠を頭に乗せた瀬愛を優しく抱きしめる。

 うん。ここだけ見ると、灯月は本当に良いお姉さんなのになぁ…何ですぐ暴走しちゃうのか…。


『閃を探してるんだけど知らない?無華塁が黄華さんなら知ってるかもって教えてくれたんだけど?。』

『え!?閃君?しし…知らないかなぁ?。』


 ええ。何その、絶対何か知ってますみたいな反応。


『何か隠してる?。』

『なな、何にも隠してないよぉ…。お願い。これ以上何も聞かないで!私…嘘つけないから…お願い!。』


 黄華さんが、もの凄い勢いで頭を下げる。

 う…ん。知ってるけど言えないってことかな?。


『でも、安心して、もう少しすれば閃君も戻るから!それまでは内緒にしてって言われてるの!。』


 ああ、閃の指示なんだね。


『なるほど、分かりました。因みにですが。少しとはどれくらいの時間なのでしょうか?。』

『え…っと、明日…かな?ごめんなさい。これ以上は本当に勘弁して…。』

『はい。黄華さんを困らせたくありませんし、ここは潔く去ります。』

『そうだね。ごめんね。黄華さん。困らせちゃって。』

『え!?うん。分かってくれたら良いんだけど?。』


 余りにも僕達の諦めが早かったことに目を白黒させながら唖然とする黄華さん。

 隣にいた瀬愛も翡無琥も首を傾げている。


『さて、にぃ様は明日戻って来るそうですね。』

『何か知ってそうだったけど?。』

『はい。ですが良いのです。にぃ様が無事で、そして、明日会えるのですから。一晩、寂しい思いをするだけですから。』

『そうだね。明日…閃に会える…。うん。頑張れそう。』

『ええ。独りの夜は寂しいですから。』


 凄く寂しそうな顔をする灯月。

 ああ、でも1つ気になることがあったんだった。


『ねえ、灯月?。』

『はい。何でしょうか?代刃ねぇ様。』

『禁断症状の話だけど。灯月はいつもと変わらないね?若干テンションが高いくらい?。』


 智鳴も氷姫も睦美も閃に会えないことでいつもと違う様子だった。その中でも1番禁断症状が出そうな灯月が余りにも普通なことに違和感しか感じない。


『ああ、そのことですか。もちろん私も禁断症状は出ていますよ?。』

『え?そうなの!?。』

『はい。ですが、それを必死に抑え込んでいるだけです。僅かにテンションが高くなっているのもそれが原因ですね。』

『我慢してるってこと?ち、因みに…我慢をやめたら?。』

『それはもちろん禁断症状が表に出ます。』


 気になる。どうなっちゃうんだ?。好奇心が抑えられないよ。


『見ますか?。』

『え!?良いの?。』

『恥ずかしいですが。誰にも言わないのでしたら…。』

『うん。言わない。』

『じゃあ、数秒だけ。我慢を解きます。』


 そう言って俯く灯月。

 静かになった途端、小刻みに震え出した。


『灯…月?。』

『う…。』

『う?。』

『うぁぁぁぁぁああああああああああん!お兄ちゃぁぁぁぁぁああああああああああん!独りは寂しいよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!。』


 突然、その場に膝から崩れて大泣きし震える声で閃を呼ぶ灯月。

 って、ガチ泣き!?。しかもお兄ちゃん呼び!?。

 その悲痛な嘆きは30秒くらい続く。やっぱり灯月も我慢してるんだね。寂しいよね。大好きな人に会えないのは。


『お、お恥ずかしながら、こんな風になります。皆さんには内緒にしてくださいね?。』

『うん。言わない。ていうか、言っても皆信じられないよ。』


 何か…初めて灯月が年下なんだなって思った。


『ねえ、灯月。』

『ん?何でしょうか?。』


 腫れぼったい目の涙をハンカチで拭いながら立ち上がる灯月。


『今日は一緒に寝ようか?僕の部屋においでよ。』


 僕はお姉さんとして、その寂しさを紛らわすことしか出来ないけど。閃が戻るまで灯月が独りで泣くのは可哀想過ぎるしね。


『良いのですか?。』

『もちろん。いっぱいお話しようよ。』

『え!エッチなことも良いですか?まさぐって、こねくりまわしても良いのですか!。』

『それはやめて…。』


 やっぱりいつもの灯月だね…。

 はぁ…閃。

 早く戻って来てぇぇぇえええ。


ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーにぃ様大好きクラブ会員ーーー


 設立者 灯月


ーーー会員ーーー


ナンバー1   睦美

ナンバー2   灯月

ナンバー3   氷姫

ナンバー4   瀬愛

ナンバー5   智鳴

ナンバー6   代刃

ナンバー7   無華塁

ナンバー8   翡無琥

ナンバー9   美緑

ナンバー10   砂羅

ナンバー11   累紅


ーーー候補ーーー


 クティナ


ーーー決して入会出来ないーーー


 つつ美   リスティナ

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