第99話 開戦
【ギルド戦】
自身が所属するギルドと他のギルドとの間で戦い、勝敗を決める大規模な戦闘方法。
ゲーム エンパシスウィザメントのギルド戦の内容は、プレイヤーが自由にルールを決めることが出来、ギルド同士が互いに設定し同意した内容で行われた。
設定とは、戦闘方法や勝敗の方法などが上げられる。様々なルールを決める必要がありギルド戦を行う場合、そのルールを決め互いに納得し合えるようになるまで数ヶ月の時間が掛かる場合もあった。
戦闘方法も多種多様なモノがある。
例えば、互いに拠点を設定し、そこに配置された旗の奪い合い。簡単なモノだと、ギルドマスター同士の一騎討ちなどがあった。
そして、今回のギルド戦。
クロノフィリア 対 白聖連団のルールは極めて簡潔。
相手のギルドメンバーを全滅させたら勝ちという単純なルールだ。それ以外にルールは無く戦える者がいなくなるまで続けられる全面戦争。
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『始めよう!この世界で初となる頂点のギルドを決める戦いを!。』
白蓮が放ったその言葉を皮切りに観客席の意思無き操り人形達が一斉に中央のリングにいる俺達、クロノフィリア目掛けて雪崩れ込む。
その雄叫びは落雷のように大気を揺らした。
敵の数は5万の観客と100の完成された人間。白蓮が手を結んでいる緑龍と赤蘭と紫雲の幹部達25名。数では圧倒的に此方が不利だ。
だが、そんなことはゲーム時代から何も変わらない。伊達にこの人数でゲームを制覇していないからな。
『動いているのは観客だけか?他はまだ様子見か?。』
『みたいだね。閃君が指揮してくれて良いよ。』
『おーけー。じゃあ早速!灯月、矢志路、賢磨さん!結界を頼む。』
俺は3人に指示し結界での敵の接近を防ぐ。
『分かりました!にぃ様!スキル【死魂吸絶結界】!。』
『了解だ!アニキ、全員俺の糧にしてやるぜ!【呪血吸収結界】!。』
『閃君の指揮で動くのも久し振りだね。【重過圧障壁】。』
触れたモノの魂を喰らい尽くす死の結界。
同じく触れたモノの血液を吸収する結界。
そして、何倍もの重力がのし掛かる壁。
それらの結界で大方の敵は近付けないだろう。
『無華塁。全力で神技撃つのに何秒掛かる?。』
『30秒。』
『分かった。基汐、煌真、春瀬、白!結界抜けてきた奴の対処頼む!』
『ああ!任せろ閃!。』
『ははは!どんどん抜けて来いや!。』
『分かりましたわ!閃さん!。』
『了解ッス!先輩!。』
接近戦が得意な奴等を前面に配置。結界張ってる奴と後衛組に敵を近付けさせない。
『光歌、豊華さん、機美姉は遠距離攻撃!敵の数を減らしてくれ!。』
『メンドイけど~。りょうかい~。』
『任せろ!閃!【第5の魔弾】!。』
『わわ、分かった!がが、頑張るね!。』
広範囲で攻撃出来る3人で近付く前の敵を迎撃する。
暴走し操り人形と化した観客達は、この布陣で押さえ込めるだろう。
そして、そろそろ無華塁の準備も…。
『閃。準備。出来た。』
『よし!皆散るぞ!近くにいる奴のフォロー宜しく!。』
『『『『『了解!。』』』』』
『無華塁!やっちまえ!雑魚を蹴散らせ!。』
『うん。神技。【極 天地震界破局】!。』
広域範囲を巻き込む最大級の大地震。大会会場、更にはその周辺に至る全てを崩壊させた。
建物の崩壊に巻き込まれる観客達と完成された人間達。白蓮達がいたVIPルームも崩落していく。
俺達は全員地震に巻き込まれない範囲まで跳躍し自分達の能力が最大限に活かせる場所へ移動する。
おそらく、敵も同じ事を考えているだろう。
さて、誰にエンカウントするか…。
ーーー神無ーーー
私の能力が活かせる障害物が多い場所ということで近くの森林の中に移動した。他に何人もこの辺りを選んだようだけど、近くには誰もいないわね。
『おやおやおや。私の相手はお嬢さんかな?。』
『っ!?。』
不意に声を掛けられた…と同時に顔面にナイフが飛んできた。
あぶなっ!?。
『何すんのよ!いきなり!。』
『ははは。すまない。すまない。ちょっとした挨拶だよ。』
挨拶でナイフ投げるとか…。
というか、左目の眼帯、咥えタバコにスーツとコート…この男…紫雲の…。
『お初にお目にかかる。ギルド【紫雲影蛇】所属の異熊だ。お嬢さんの名前をお聞きしても?。』
『クロノフィリア、No.23 神無よ。』
『おお、やはり敵だったのだね?では、早速。』
にこやかに笑いながら投げられる手投げナイフ。
本当にこの男、平気な顔で気軽にナイフ投げてくる…しかも、的確に急所を狙ってきて!。
『神具!【操影蛇刀】!』
飛んでくるナイフを捌く。
今度はこっちの番よ!。スキル【瞬影】。
影の残像を残して高速で移動するスキル。一瞬で異熊の背後に回り込み一撃で喉元を切り裂く!。
『おお。速い速い。危うく見失うところだったよ。』
『なっ!?。ちっ!。』
私の短刀をナイフで止めた?。
距離を取るために木を壁に見立て蹴りながら移動するも私の動きを追跡するように無数のナイフが投げ込まれる。
その正確無比な投擲は私が蹴った木々に深々と突き刺さる。
『おやおや。全然当たらないね。流石はクロノフィリアのお嬢さんだ。105本も投げたのにねぇ。掠ることもないとは…おじさん。自信無くなるな~。』
言葉とは裏腹に余裕の態度を崩さない異熊。
『そう?随分と余裕そうに見えるけど?。』
『そうかい?いや、何、今まで殺してきたターゲットは大体20本も投げれば死んでくれたのだがね。お嬢さんは、悉く躱している。自分の技術がまだまだだと再確認したまでさ。』
『………。』
この男がナイフを投げる動作を私は目で追えていない。気付いた時には既に此方に向かっているナイフを視認しているのだ。しかも狙いは正確。105本のナイフを躊躇いもなく投擲し続けてるし、投げ終わったナイフを拾う素振りも見せない。数の上限は無いのかしらね…。
私の動きも追えてるみたいだし、この男…強いわ…。
ーーーつつ美ーーー
『相変わらず~。無華塁ちゃんの~。神技は~。凄い威力ね~。』
広い森林の中には味方と敵が半々くらいかしら?。魔力が拡散してるせいで正確な位置までは分からないけど…。
会場周辺には、まだ壊れちゃった観客達と白蓮ちゃんや端骨ちゃんの幹部クラスがバラバラに行動してるわね。
逆に他のメンバーは殆どが森の中ということ。クロノフィリアのメンバーも散り散りね。
あら?近くに誰かの気配?。
大きな木を回るとそこに1人で立っている男の子がいた。あら?この子、確か大会で閃ちゃんに倒されてた…。
『へへへ。当たりみたいだな!あの銀髪の女じゃなかったのは残念だが、これまた上玉じゃねぇか!。』
ああ~。思い出したわ~。火車ちゃんね~。
『初めまして~。クロノフィリア~。No.17~。つつ美です~。宜しくね~。』
『赤蘭煌王のギルドマスター 火車だ!。』
あらあら~。私のこと色々~。見てるわね~。
『なぁ、あんたはギルドマスターのスキル特典を知っているのか?。』
『もちろん~。知ってるわよ~。ステータスのアップでしょ~。』
『おうさ!ならよ?俺と戦えば無事では済まねぇのも理解できるよな?強化された俺の能力を防げるのは同じギルドマスターだけだ。あんたはギルドマスターじゃねぇ、ならよ?ここで俺と戦うのが得策じゃねぇってことぐらい理解できるだろう?。』
あらあら?閃ちゃんに負けても何も学ばなかったのかしら?。
『ねぇ~。1つ~。聞いても良い~。』
『おっ?何だ?。』
『限界突破2って~。スキル~。知ってる~?。』
『限界突破2?知らねぇな。何だそれ?。』
あらら。誰も教えてくれなかったのね~。可哀想に~。
『何でもないわ~。つまらない事を聞いて~。ごめんね~。』
『はあ…よく分からねぇが、俺と戦うつもりか?。』
『う~ん。そうね~。ふふ。じゃあ、ちょっと頑張っちゃいましょうか~。』
『マジか?手加減しねぇぞ?。』
『ふふ。私の種族はね~。【聖淫魔神族】なの~。ちょっと質問させてね~。』
ふふふ。スキル【思考同調】。
『貴方は~。何歳くらいの~。女の子が~。好み~?。』
『はぁ?いきなり何だ、その質問は?。』
『ああ~。そうなのね~。18歳くらいね~。』
スキル【外見年齢操作】。
『なっ!?姿が!変わっただと?しかも、俺の考えを読んだ?。』
『外見は~。どんな~。感じが~。好み~。髪は~?。背は~?。胸は~?。お尻は~?。足は~?。顔は~?。…………………………。』
色々な質問をすることで、彼の頭の中には理想の女の子のイメージが想像される。
私はそれを読み取って自分の身体を操作していく。
スキル【肉体操作(女性)】
あらあら。荒々しい性格なのに物静かで清楚系の娘が好きなのね。自分の思い通りに言うことを聞かせたいのかしらね?。
『ふふふ。どう~?貴方の~。好みの姿に~。なれたかしら~?。』
『ああ。やばぇな。あんた。最高だ。…だがな、そんな姿になっても俺が優しくするなんて考えてるなら間違いだぜ?。』
ふふふ。やっぱりね。
『良いわよ~。戦いましょう~。貴方が勝ったら。私のこの身体を~。好きにして良いわ~。』
『へへへ。勝ったらか…そう言う訳にはいかねぇな!あんたは俺に無理矢理犯されるんだよ!精々、可愛く泣きわめきな!。』
『あらあら。優しくは~。してくれないの~。』
『してやらねぇよ!。』
嬉しそうに笑う彼の目はギラギラ。私の肢体を舐め回すように視姦して、呼吸は荒くて、発汗もしてるわね。
私は彼に妖艶に笑うと、聞こえない小さな声で言う。
『ふふふ。貴方…。とっても美味しそうね。』
私の中で種が発芽する。