第7話
ムゥ………ほとんど一睡も出来なかった。
もぞもぞと動くナナさん。どうやら目が覚めたらしく、真っ赤になった顔と目を合わせてお互いに「おはよう(ございます)」の挨拶をする。
朝は、飯時の報せが無い。早朝に金属音を鳴らされるのは、流石に迷惑だ。それを避けての対応だった。
着替えて一階に降り、食堂で朝飯を食べる。正直、味が分からん。
でもそれなりに腹を満たして、出立の準備を整える。
預けていた馬車を引き取り(代金は前払い)、貴族様たちが住む街の、商店街を目指してパカパカと馬車を歩ませる。
途中、3頭の馬鹿に襲われたが、メソッドを展開して迎撃し、その肉は捌いた。勿論、メソッドで。
確か、『馬鹿みたいに高い』と聞いたから、その肉が高かろうかと思っての事だったが、試しに食べたら美味かったので、コピペで増やして俺たちの食用にも回した。
後に売ってみたら、さほど高い訳では無かったので、慣用句的に言われている言葉だろうと思ったのだが、ソレは卸値の話で、試しに馬鹿肉を食べられる店に行って、注文する前に値段を確認したら、確かに馬鹿みたいに高かった。
どうやら、お貴族様の食べる食材なのだろう。
当然、他の安めのメニューを頼んだのだが。
ん?金貨をコピペ出来るんだから、なんぼでも高い食べ物を食べれば良かろうと言うのか?
バレない為には、小出しにした方が良かろう。
金の価値がダダ下がりする事態になったら、価値が低くなるんだし。
それに、生活レベルを上げるのは容易いけれど、生活レベルを下げるのは、物凄い忍耐が必要なんだぞ?!
でも、俺は知っている。
世の中ってのは、皆が、『お前のやりたかった事、代わりにやっておいたぞ』と言わんがばかりにマウント取って自慢するのが好きな奴が山程居るんだ、って事を。
俺のやりたかった事?もう分かんねぇんだよ!欲を捨て去ったら、夢も希望も何一つ持たずに生かされているっていう事実は、どうやっても覆せない。
せめて、昔の俺のようだった人を救いたいと思ったら、世の中からの返事は、『うっせぇわ!』っていう事実。
俺が思うより健康だって?なら、何故世の中にこんなにも沢山の自殺者が居るんだ?
誰か説明してくれよ!俺はどう生きるべきかって!
どうせ返事は分かっている。『死ね』のたった2音。
なら、安楽死の制度でも導入してくれよ!
俺だって、死にたい気持ちを捨てきれずに、ただ、自殺はもう辞めると決めただけなんだ!
もしかしたら。万が一?いや、違う。グラハム数に一つ、あるかどうかのチャレンジだ。
絶望的というレベルを遥かに上回る可能性のあまりの低さに、笑いも込み上げて来ない。
成功の可能性は、不可説不可説転に一つも無いと、『Lana』からの指令で宣言させられた。
もう、ほぼゼロとイコールなんだよ!
だから、俺の名はゼロなんだ。可能性の無い絶望の彼方。
俺は、頭が『悪い』んだ!学校の成績なんかじゃ測れない!ただ、自分の人生の主人公は、誰でも自分なんだと思って生きていただけなのに!俺は、俺の人生の悪役だったんだ!
自分で自分に呪いを掛けて、世の中に『呪い』が実在する証明もしたよ!
そして、第7感で悟ったんだ。近い内に世界が滅亡する可能性があるって。
その事実から回避する為に、過去の自分に情報を送って!神技に等しい事をして、それでも破滅の可能性を回避出来るかどうかは分からなくて!
分かっているのかよ!?最早、世界中が力を合わせて回避しないと、危ないかも知れない可能性を!
戦争?やってる余裕があると思って居るのかよ!?滅亡した世界に、自国による支配の事実だけ遺して、そんな虚しい事の為に戦争やってる余裕があるなら、先に滅んでくれよ!神様、そのくらいの天罰だって、ホントは下せるんだろ!?
………そうか。自国領だけじゃ滅ぶからって、自国領を広げようとしているのか。
それで?滅びる範囲が広がるだけじゃないのか?それとも、世界をこの機に征服して、滅びるのを世界の全てにするというのが目的なのか?
そろそろ、世界の全てを征服しても良いだろうとでも言いたいのか?!
頭がイカれてるんじゃないか?否、頭が怒れてるから、サタンと化して、世界の全てを支配しよう、って事か。
りゅうおう!ちゃんと仕事しろ!この九頭りゅうおう!
それとも、成敗されてしまったのか?この、龍の片隅にも置けぬ野郎め、頭が『良すぎた』のか!?
さては、世界の半分を売り渡したか!
馬鹿が、世界など、そもそも誰も所有していないのに!!
あ、◯井竜王には、是非とも8冠を取るまで頑張っていただきたい。
ああ、俺は、何をどうすべきだろう?
世界の支配から世界を解放する為なら、公開処刑をも覚悟していると言うのに!!
………そうか。『俺』の『公開処刑』をすれば良いのか。
分かった。明日にでも、ソレを執行するとしよう。
この『物語』の世界の主人公たる俺が、果たして簡単に死ねるのか、甚だ疑問だがな!