第4話
温もりを感じて目覚めた。
あー………やっちまった。
責任取るじゃないけど、何らかの手は打たないとならないなぁ………。
「う………ん………」
彼女も、寝返りを打って、目で俺を捉え、羞恥で顔に赤みが差した。
「おはよう」
「………おはようございます」
「ちょっと、お風呂場、借りてくるよ。お湯はセルフで、って事だったけど、俺の魔法で何とかなる」
「はい。
………浴室に行けばよろしいですか?」
「うん。
今さら、羞恥する事も無いだろう?」
「あう………それはそれで、恥ずかしいと申しますか何と言いますか」
「そうか。なら、ナナさんが先に入ると良い。
俺はその間、門番でもやってるよ」
「良いのでしょうか?
私は別に、後でも」
「遠慮しなくて良いよ。俺は場合によっては入れ直せるからね」
「では………ありがたく」
「じゃあ、一緒に行って、好みの温度に調節するよ」
「あ、………はい」
何か誤解している気がしないでも無いけれど、とりあえず着替えて、一階に降りる。
店長さんに声を掛ければ良いだろうか?
「スミマセン、風呂場を借りたいのですが………」
「湯水はセルフで、井戸があるから、あとは使い終えたらキチンと排水しておいてくれ」
「はい、ありがとうございます」
当然、井戸の水など利用しない。
風呂場に入ると、浴槽の栓を閉めて、メソッドでお湯を5分目位まで入れて、温度を確かめる。………うん、俺的には適温。
「ナナさん、お湯はもう少し足すとして、手を入れて温度を確認してくれないか?」
「あ、はい」
ナナさんは何やら安堵した様子で浴槽のお湯に手を入れる。
「もう少し熱い方が良いのでは無いでしょうか?」
「ん?俺は入る時に調節するから、そこに配慮は要らないよ」
「はい、では、もう少しだけ温か目に」
「ラジャー。なら………このくらいかな?」
7分目まで、少しだけ湯温を上げて湯を入れる。
「コレでどう?」
「あ、はい。………丁度良いです」
「なら、俺は脱衣所の外に出てるから、どうぞごゆっくり」
「はい、ありがとうございます」
そう言って、脱衣所にバスタオルを置いて抜け出ると、店長さんが立っている番台のような場所の隣に出た。
「混浴すりゃ良かろうに」
「女性はデリケートなものだよ」
店長さんの言葉に、そう応える。
「旅人かい?」
「そんなところだ」
「簡単な交易ぐらいはやっているだろう?」
「………まあね」
「あまり、触れて欲しく無い、って事かい?」
「それもある」
「塩・胡椒、砂糖なんかを扱ってたら、欲しかったんだがね」
「………諸々の事情があって、出処なんかを問い詰めて来ないのだったら、塩・砂糖は取り扱える」
「幾らだい?」
「容器そっち持ちで、相場の半額でどうだい?」
「………この瓶にいっぱいで、共に金貨一枚ってところだろう」
そう言って番台に載せられた瓶は、共に1リットル程が入りそうなものだった。
「半額、先に受け取りたい」
「………ほら、金貨一枚だ」
「ありがとう」
そう言ってから、メソッドを展開して、それぞれ塩と砂糖を作って詰める。
「こんなもので良いだろ」
瓶からは、塩も砂糖も溢れんばかりだ。
「………味見して良いか?」
「勿論。
コッチが塩で、ソッチが砂糖だ」
一摘みずつ、味見をすると、「良いだろう」と言って金貨を差し出してきた。
「細かい事情は聞かぬが、相場を崩すほど売り過ぎるなよ?」
「こんだけありゃ、しばらく保つ」
代金の金貨2枚をカチャリと鳴らして見せ、懐に入れる。行き先は異空間だ。
それからしばらく世間話をすると、ナナさんが出て来た。
「あ、ありがとうございます。
こ、コレ………」
差し出してきたバスタオルを、彼女の頭に掛けて優しくも素早く髪を拭いてやる。
「髪が乾くまで、首にでも掛けてると良い。
首を冷やしたら風邪を引くぞ」
俺は俺の分を出して見せ、風呂場に向かおうとして──
「部屋に戻っててくれ。俺が上がったら、飯にしよう」
そう断って、風呂に入りに行った。
よろしければ、★★★★☆で十分ですので、評価して下さると助かります。
ブックマークとまでは言いません!有限のブックマークまでは!
よろしくお願い致します。