第3話
馬と馬車、俺とナナさんとで、空を翔んで崖の上まで移動する。街に着いたら、吊り橋が落ちた事を知らせないとな。
馬車は馬を2頭立てにして、俺が御者をする。ナナさんは何を好き好んでか、俺の隣に座っている。
ま、御者の経験が無いから、メソッドを展開しているんだけどね!
しばらくは、問題無く道を進んでいた。でも前方に、何やら揉め事の様子が見れる。
どうやら、『馬鹿』という名の魔物に、馬車の、主に馬が襲われているようだ。
『馬鹿』は、馬と鹿の合いの子で、午年や10月に産まれた場合、強い魔力を帯びて魔物化する可能性があるらしい。特に午年の10月産まれという条件が重なった場合、ほぼ100%、『馬鹿』化するらしい。あと、両親共に『馬鹿』である場合も、かなり確率が高いようだ。
コチラの馬も狙われるか!?と思ったが、2頭とも牡馬のせいか、見向きもされていない。
馬鹿の数は、4頭。コレなら、始末出来そうだ。
マルチスレッド!メソッドを予約、スタック!リピート12回!
「斉射!!」
1頭につき3発の、石の飛礫を打ち込む!
「『石礫十二連射』!!」
『馬鹿』が次々と死んでゆく。1頭も討ち洩らしは無かった。
「無事か!?」
「助かった!」
前方の馬車が止まったので、俺も馬車を止める。
「いやぁ~、助かりました」
馬車から、金髪碧眼の白人が降りてきた。そして俺の黒い髪と瞳、やや黄色い肌、ナナさんの朱い髪と瞳、浅黒い肌を見て、笑顔を消した。
「ご苦労であった」
その一言を残し、彼は馬車に戻り、発車させた。
「あ~あ」
俺は彼が立ち去った後にボヤいた。
「この先は山賊が出るから、警告しようと思ったのになぁ~」
「………警告しなくて良かったのですか?」
「いやぁ~、あれだけ上から目線なら、知っているんだろ。
俺達は、空でも駆けて行こうか~」
そうして、俺達は馬と馬車も浮かせて、馬車を襲う山賊が出る辺りを飛び越えて、街道に戻り、街へと向かった。
俺は、魔法に目覚める前は、迂回路を回るつもりでいたのだが、迂回路を回るルートは既に通り過ぎていたのだ。
ああは言ったものの、あの白人は初めてこのルートを回るのだろう。
報酬を貰えるなら、助けても良かったが、無償で人助けした上に見下されるのを我慢するほど、聖人君子じゃない。
空から襲われている場面は見えたものの、山賊の数は数十人に及ぶ。魔法初心者の俺には、骨の折れる数だ。善意だけでは救えない。ミイラ取りがミイラになるのが目に見えている。
街へと着いたら、襲われていた事を報告しておいたが、助けは間に合うまい。ついでに、吊橋が落ちた件も報告する。
ただ、山賊狩りは行われるだろうが、戦闘経験の無いであろうナナさんを連れても残しても行けない。だから、俺は参加しない。
街へと着いたら、まずは宿を探して取った。
「ツインの部屋で」
そう、風呂場のある宿を取ろうとしたら、ナナさんが食い気味で。
「ダブルの部屋で良いです」
彼女はそう頼んだ。
その夜の事は、ヒ・ミ・ツ♪