第1話
ミッドナイトから、アレなシーンを問題ないように加工して、引っ越して参りました!
よろしくお願い致します。
俺は、その千尋の谷から馬車ごと落ちた時には、死を覚悟した。
結果論、俺は死ななかった。
でも、死の足音は徐々に近付いていた。
動けない。
こんな時に、魔法の一つでも使えたらと、そうは思うが、俺の魔力はゼロだ。逆に珍しいと言われる。
だから、俺は魔法など使えないのだろうと思っていた。
走馬灯が走る。………ん?何かおかしいぞ?
プログラミング言語?未来の俺の前世が持っていた知識!?思い込みから構成される世界!
だからといって、今、ソレが何の役に………そうか!
今現在、未来の俺の前世が………って、ソレ、来世って言うんじゃないの!?とは思ったが、どうやら前世らしい。
その知識が、物理法則とかもある程度心得ていた。そして、何より、今現在、ソレらの法則が定められて居らず、思い込みを書き換えれば、プログラミング言語で魔法の真似事が出来るのでは無いかと思えた。
早速だが、詳細は未来の知識から設定するとして。
メソッドを展開!インスタンス、俺!引数、俺!
『パーフェクト・ヒーリング』
「うおおおおおおお!」
回復して分かった。俺、馬車から投げ出されていたらしい。
お蔭で、押し潰される事態には陥らなかったらしい。
そして、上空を見上げると。
「あー、吊橋が壊れて落ちたのか」
だとすると、他にも被害者が居る可能性がある。
俺の乗っていた馬車の御者は………ダメだった。
他にも、もう一台の馬車があったが………。
「………ダメそうだな。全滅していそうだ」
そう思って口にした直後。
──うっ………。
「!
誰か居る!何処だ!?」
前世の俺、どうやらゲームのプログラミングを仕事にしていたらしく、ファンタジー世界での便利系の魔法は一通り記憶が戻った。
メソッドを展開!引数を馬車に!
『パーフェクト・リペア』
元に戻った馬車の中に足を踏み入れる。
どうやら、奴隷商の馬車だったらしく、奴隷紋の入った死者が複数居る。
「こりゃヒデえ」
恐らく、生き返す事も可能だと思えたが、止めた。奴隷に落ちて絶望し、ようやく死ねた彼らを、生き返すのは酷く残酷な事に思えて。
それでも、魔力の消費無しに回復出来るのだから、先程の呻き声が聴こえた人を助ける為に、回復魔法は掛けてゆく。
そして、一人の女性奴隷が、回復魔法を掛けた結果、生きている事を確認したので、馬車の外に運び出し、平らな地面に横たえた。
………あ!奴隷紋も回復しちまった!
「………まぁ、良いだろう」
奴隷商らしき男の死体も発見したが、奴隷紋の回復の件を考えると、生き返すのは得策ではあるまい。
元奴隷女性には、毛布があったので掛けておいて、死者の方は埋めて弔う。
金銭、食糧とかは、いただいてしまっても良いだろうか?
ただ、収納には困って、硬貨大の石を一つ拾い、術式を施す。
メソッドを展開!引数に石を!魔法陣を書き込み!
コレで、この石は『異空間物質収納器』と化した。
荷物を次々と収納して行く。
「………う………ん──」
どうやら、女性は目が覚めたようだ。様子を見に行く。
「──あ………」
「こんにちは」
まずは挨拶。そして名乗ろう。
「俺はゼロ。旅人をしている。
君の名は?」
「………ナナ」
「そうか。
因みに、君は既に奴隷から解放されている」
「………え?」
訳が分からないのかも知れないが、事実を伝えると、左の手首を見て、奴隷紋が無いことを確認していた。
肌の浅黒い女性だ。髪は朱い長髪をアップに束ね、瞳も朱い。ただ、身に纏う物は襤褸だ。
「君は自由だ。
どうとでも生きるが良い」
「………つ──」
「『つ』?」
「連れて行って、貰えませんか?」
「構わないよ、ナナさん」
「『さん』は要りません」
「おやおや。君はもう奴隷じゃないと教えた筈だけど?」
「それでも、『さん』付けされる立場にはありません」
「俺が君を『さん』付けして呼ばないと、俺は傍目には無礼者に見えてしまうのだけれど?」
「あ──そう、ですか」
「ね?必要でしょう、『さん』も。ね、ナナさん?」
「はい。えーと………」
「俺の名かい?ゼロだよ。『ゼロさん』と呼んでくれたら嬉しいな」
「はい、ゼロ様」
「んー………」
どうやら、立場が対等とは思って居なかったらしい。
「『様』付けも要らないよ。
根性から奴隷になっているんじゃ、折角解放された意味が無いよ」
「では………ゼロさん」
「うん、何か質問は無い?」
「他の人達は………」
「残念ながら、俺たち2人しか助からなかったようだ。
生き返す事も可能かと思ったけれど、どうも、気が乗らなくてね。
奴隷として生きる筈だった人達が、死によってようやく解放されたのに、生き返すのも可哀想だと思ったし、奴隷商人は、生き返すと再び君を奴隷としての所有権を求められたら面倒だと思ってね。
皆、埋めてあげたよ。
………もしかして、生き返して欲しい人でも居た?」
「いえっ!ただ………本当に生き返せるのですか?」
「今度、機会があったら試してみるよ」
さて。何はともあれ。
「とりあえず、食事にしようか」
幸い、魔物の気配もしない。
火を熾して調理をしても大丈夫だろう。
薪も回収してあるし。
腹が減っては戦が出来ぬ。
………ん?なら、腹を満たすだけの食糧が無ければ、戦が無くなる?
そんなわけが無い。
腹が減ったら、他から奪って食べるのだ。
腹が満ちれば戦用無し、とでも言った方が正しいのでは無かろうか?とは、恐らく、俺の欺瞞なのだろうな。