06:実神六哉は護りたい(6)
異形の驚きに重なる、俺の渾身の叫び声。
……どさり、と。巨大な腕が落ちた音。
「はぁ……はぁ……」
それを引き金にするみたいに、割れるような頭痛が襲いかかってきた。視界がほとんど真っ白で、足にも力が入らなくて。
なにかの限界なんだろうけど、まだだ。
まだ、俺は目の前の異形を、倒せては。
「おしまいか? 小僧」
「……んなわけあるか。ここからだよ」
「よせよせ、俺にはわかる。無理をすれば死ぬぞ?」
「しなくても殺すんだろ?」
「そのつもりだったんだがなァ。残念、次の機会だな」
すると異形は構えを解き、落ちた左腕をむんずとつかむ。涼しい顔のまま、やれやれと肩をすくめて。
「なんのつもりだ……?」
「助けが来るまで耐えれば退く、約束は違えんさ」
「たす……け……?」
「この速さ、『逃げ足』の異能でも持っていたのかねェ。とにかく、今日はここまでだ……よっと」
腕の切断面を合わせ、ふむ、と確かめること数秒。
「……待てよ。ズルいぞおい」
「年の功、というやつだな」
あれだけ苦労したというのに、異形の腕は元通り。なんの支障もないとばかりに、5本の指が動いている。
身構えるけど、相手に敵意は感じられない。むしろ、楽しそうに笑っているくらいだ。
「小僧、名は」
「……六哉。実神六哉」
「覚えたぞ。次に会うのが楽しみだなァ」
「覚えんな2度と会いたくねえ」
「嫌われたねェ。それじゃァ、こちらの名乗りを締めとしようか!」
ひときわ大きく言葉を張ると、異形は強く地面を踏みこみ。
「異形を統べる『十三忌』が一、白槌! 次は本気の殺し合い、この名を胸に刻んでおけよォ! 実神六哉ァ!」
高く夜空に跳び上がると、俺たちの前から姿を消した。
「助かっ……ぐぅっ!!?」
ほっと息を吐いた瞬間、胸がズキリと刺すように痛む。頭のほうはとっくに限界、視界がなんだかぐるりと回って。
「六哉!」
「ろっくん!」
体はまったく動かないし、なんだか息も苦しいけれど。
なんとかふたりに、一言だけでも。
そう思って、無理矢理に息を吸って。
「冬華も秋穂も、無事で、よかっ――」
……それを言い切ることは叶わず、俺はそのままぶっ倒れて。
「……あれ? ここ……どこ?」
気がつけば、俺はどこかの部屋の中にいた。
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