48:代償
「……ッ! 実神さん! 冬華さん、秋穂さん!」
異界が解けた先、暗い小道で待っていたのは、先生じゃなくて春待さんだった。俺たちの姿を確認するなり、慌てた顔で駆け寄ってくれて。
「よく……よくご無事で……!」
「……すみません、だいぶ無茶しました。あとできちんと謝りますから、今はそれより」
「ふゆちゃんを、ふゆちゃんを助けてください! お願いです! お願いですから!」
「これは……わかりました、必ずこちらに戻してみせます」
「わたしにできることならなんだってします! だから! だか――」
冬華を預けたそのあとで、秋穂の体ががくりと揺れる。慌てて彼女を抱きとめると、その顔色は真っ青で。
「……気を失ったようですね。学院の医療班が控えていますので、秋穂さんはそちらに。私は冬華さんの処置に入ります」
「ふたりとも、何度も俺を助けてくれたんです。よろしくお願いします」
「実神さんもですよ。自覚しておられないようですが、傷だけを見れば最も重傷なのは貴方です」
「いや、俺は――」
言いながら、秋穂を職員の人に預けたときだった。
どくん。
「がっ……!?」
まるでハンマーで叩かれたみたいに、心臓が強く脈打った。
「実神さ――」
春待さんの声が途切れる。周りから音が消えていく。
なにも聞こえなくなったあと。
景色が真っ暗に変化して。
手足が、頭が、体中が引き延ばされる強い痛みが。
【お疲れさま。さあ――報いを受ける時間だよ】
そんな声だけが、はっきりと頭の中に響いた。





