33:双子姉妹と同棲中(1)
ジャンプが合併号なので朝も更新します…
振られた課題を無事終えて、寮に着いたのは0時前。疲れた体を引きずりながら、なんとか部屋へと歩いて戻る。
やっと慣れてきた自室は通過。見慣れないドアにたどり着き、借りてる鍵を取り出すと。
「おーかえりなさーい!」
それを挿そうとする前に、ばーん! と大きくドアが開いて。
「今日もいちにちお疲れさま! お風呂にする? ご飯にする? そ・れ・と・も……ふゆちゃん?」
見慣れに見慣れた秋穂の顔が、にこにこ俺を出迎えてくれた。
「……はぁ?」
奥の部屋から聞こえてくるのは、これまた慣れた冷ややかな声。確認なんてするまでもなく、不機嫌がデフォな冬華の声だ。
「まだ起きてたんだな。いつ帰れるかわからないんだし、寝ててもらってよかったのに」
「わたしもそう言ったんだけど、ふゆちゃんがどうしてもってねー。あとはほら、『ノルマ』のことだってあるんだし」
「ノルマ……先生を疑うわけじゃないけど、本当に意味あるのかなあ」
「まあまあ、今のわたしたちはワラにもすがるしかないんだから。だからほら、観念しなさい! だよ!」
玄関の鍵を閉めたとたん、うふふ、と秋穂がにじり寄ってくる。言われたとおりに観念すると、遠慮なく顔が近づいてきて。
ちゅっ。
「えへへー。子どものころはよくしてたのに、やっぱりなんだか恥ずかしいねえ」
ほっぺに感じるやわらかさと、同時にはじけるそんな音。ぴょい、と小さく離れた秋穂は、真っ赤な顔して照れ照れだ。
なにをされたのかと言えば、もはや説明するまでもなく。
こう、あれですよね。秋穂のくちびるがね、俺のほっぺたにね。
いくらこいつとわかっていても、女の子からされるそれ。何度されても慣れるわけなく、俺の顔も真っ赤で熱い。自分の顔だし見えないんだけど、そうなってるのは間違いない。
「……スケベ」
いつの間にやら秋穂の隣に、ヤバいジト目の冬華さん。これまたいつものことなので、ビビることなく視線を受け止……いやいや怖い怖いマジで怖い視線で人を殺すつもりかお前はなんか痛いんだけど気のせいだよなこわい。
「ほらほら、次はふゆちゃんの番だよ! 心配そうに待ってたじゃない、おかえりなさいのぎゅー! からのちゅー!」
「し、心配なんてしてない……! 本を読んでて気づいたらこの時間だっただけ……!」
「ふゆちゃんねえ、3分に1回くらい端末を見てたんだよー? 課題終了の通知が来たらねえ、ほぉーって顔がゆるんでねえ」
「うるさいうるさいうるさい! ああもう! さっさとこっちに来なさいよ!」
口ではそう言いながら、近づいてくるのは冬華のほう。いつかみたいに腕を広げて、抱きしめられろと催促している。
「先生に言われてだからね! しかたなくだからね!」
毎朝毎晩聞いてる気がする、そんな言い訳を口にしながら。
目の前まで来た冬華がぎゅうっと、俺の体を抱きしめていく。
押しつけられるやわらかな体と、ほんのり香るいい匂い。意識するなと言い聞かせても、鼓動が早くなるのがわかる。照れくさいのと恥ずかしいのと、それをじっと感じていると。
「……はい! 1分! ノルマ達成! おしまい! 解散!」
「ダメだよふゆちゃん。言われてるでしょ、それじゃあダメだって」
「う、ううー! うー!」
「いいかげん慣れなきゃ……ううん、ふゆちゃんにはずっと、そのままでいてほしいな!」
「う……うるさいバカぁ! やればいいんでしょやれば!」
そうして冬華は背伸びをすると、涙目で俺をにらみながら。
「絶対目ぇつむってなさいよ! 開けたら!! 殺す!!!」
「そうだよね! キスの時は目を閉じるものだもんね!」
「ち、ちが……そうじゃなくて、だから、うー! ううー!」
その小さなくちびるを、俺の頬へと近づけていく。
幼なじみの双子姉妹から、1日2回のハグとキス。雑なラブコメみたいなことを、どうして続けているかというと――





