17:面談は進む ~とある生徒との一幕~
お正月休みが嬉しいので朝も更新します。
――3人との面談のあと、とある生徒と面談中のおはなし――
「先生に聞きたいんですけど、弱い異形に襲われて異能に目覚めた人は、強い異能者にはなれないって本当なんですか?
「あー、そんなことを言う人もいるね。やっぱり、そういう話は気になるものかな」
「気になるというか、異形や異能のメカニズムに興味があるんですよね。戦いが得意じゃないのは自覚してますし、将来はサポートというか、研究方面に進もうかなとも考えていまして」
「なるほど、そういうことならええと……簡単な図を書いてみるとだよ」
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「これが健康な人の魂をゲージで表したものね。そもそもだけど、異形が人間を襲う理由は知っているのかな」
「人を殺して魂を食べる……自分たちを強化する糧にするためですよね?」
「そうそう。だけどね、殺されなくても襲われることで魂は削られて……」
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「こんな感じで減っちゃうわけさ。異形に襲われた人って、軽傷でも数日寝込むでしょ? それはこのせいなんだよね」
「それって平気なんですか? あたしもそうだったんですけど、魂が減ってるなんて初耳です。もしかして、寿命や健康に影響しちゃったり……?」
「大丈夫だよ。減った部分を補うために与えられた魂の力、それこそが異能だからね。そうして眠っている間に、魂は回復していくんだけど……」
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「異能のほかに、襲った異形の因子も少しだけ混じっちゃうんだよ。特に悪さをするものではないんだけど、それが異能や魂に影響を与えていない、とは言い切れないみたいでさ」
「強い異形の因子が入ったほうが、より強い異能者になれる……?」
「そう思っちゃうのは自然だけど、経験上はそうでもないかな。3級に襲われて異能者になった六歌仙、1級に襲われたけど異能者としては三流って人。僕は両方知ってるしね」
「うーん……でも、だったらですよ? こういうふうに……」
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「ギリギリまで魂を削られたあと、不死鳥のように復活を果たした異能者は強いってことになりません? 魂における異能の割合が大きいってことじゃないですか」
「残念ながら、それは机上の空論になっちゃうかな。魂の量は生きる力そのものだからね。そこまで削られちゃったのなら、回復する前にあの世行きだよ」
「あー……まあ、そうですよね」
「結局のところ、強い異能者っていうのは自分の異能を理解し、使いこなすことができる人間のことだからね。自分で選んだ異能なんだ、きちんと向き合えば、必ずそれは応えてくれるよ」
「自分で選んだ……? 異能って、自分の意思とは関係なく得てしまうものですよね……?」
「ん? ああ、ごめんごめん。自分の意思で学院に来たんだから、そう言いたかったんだけど、完全に言葉選びを間違えたね」
「それじゃあ、結論としてはあまり関係はないってことですね! じゃあじゃあ、異形が現れる仕組みについてなんですけど、あたしが思うに――だから――」
「ええと、それはね――というわけで――」
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「また貴方は……知られてはならないことを軽々に……」
「あはは、ごめんごめん。ここのところ何度も真理の森に行ってたし、ついついね。目標をきちんと持った子だったし、ちゃんと応えてあげたいじゃない」
「私にはよくわかりませんが、そういうものなのでしょうか」
「それよりほら、六哉たちのことだよ。神前が襲いかかってたなんて、先に言っておいてくれたらよかったのにね。他の有象無象はともかく、十三忌以上の因子を持っているなら話は別。成長すれば『なにか』が起こるのは間違いないんだから」
「そのうえ、実神さんは半年近い昏睡期間を経てもなお、異能者として生還しています。貴重に貴重を重ねた器、くれぐれも壊すことのないように」
「この場合、人を相手に『壊す』は使わないよ、春待」
「……そうでしたね。失礼しました」
「とにかく、秋穂、冬華、それに六哉。彼らの扱いだけは、きちんと考えなきゃいけないね。もちろん、他の生徒をないがしろにするつもりはないけどさ」
「来たるべき時に備えて、ですね」
「というわけでこの3人には、いちど修羅場を経験してもらっておこうかな。ちょうどほら、よさそうな相手がここにね?」
「……壊さないでくださいね?」