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『メンヘラ性悪のクズ女に騙された童貞が、最後にとった行動とは……』

・1コマ目


【ナレーション】


大学三年の俺はろくに講義も出ず、無駄な日々を送っていた。


(校内で陰キャっぽい友達らと談笑)



・2コマ目


(バイト先のスーパーにて)


【ナレーション】


どうにも気が弱い、二一歳童貞。


店長「村田ぁ! これ出しとけって言ったろぉ!」

村田「す、すみません」



・3コマ目


【ナレーション】


おどおどとしている俺は嘲笑の的だ。


バイト仲間達「無能かよ」











・4コマ目


【ナレーション】


他人の目を恐れ、何もできない……。

そんな俺にも出会いが訪れた。



・5コマ目


【ナレーション】


レジ係の明美。18歳で、可愛い顔のどこかに影がある。



・6コマ目


【ナレーション】


ある日突然、俺に声をかけてきたのだ。


明美「一緒に帰りませんか?」


村田「え? いや、大丈夫だけど」



・7コマ目


(12コマ目まで帰り道。明美と二人)


【ナレーション】


初めての出来事に、俺は浮かれていた。


村田「今日も忙しかったね……」

明美「そうですね」







・8コマ目


【ナレーション】


女性の目も見れない俺だが、明美は話しやすかった。


村田「どうして俺に声をかけたの?」


明美「優しそうだから。他の人は皆……恐い」



・9コマ目


【ナレーション】


色々な話を聞いた。家庭での虐待。いじめによる高校中退。

それにより精神を患ったこと。

 


・10コマ目


【ナレーション】


会う度毎に、明美を守りたくなった。

明美を守れるのは俺だけだと本気で思った。






・11コマ目


(駅にて)


村田「な、なぁ、明美。俺と……付き――」

明美「うちに来ない?」

村田「えっ!? で、でも……」

明美「大丈夫だよ。一人暮らしだから」








・12コマ目


村田「ひ、一人!?」

明美「うん、村田君ならいいよ」


(意味ありげに暗い微笑を浮かべる明美。

それに気づかず、突然の提案に赤面してキョドる村田)



・13コマ目


【ナレーション】


一駅先の明美のアパート。ドアを開けると良い匂いがした。


村田(だ、駄目だ。緊張する……)



14コマ目


【ナレーション】


1DKには衣類が散らかり放題だ。


明美「こっちの山が洗濯するやつで、こっちが着れるやつなんだ」(わざとらしく挑発するように)

村田(うわっ……下着とかも……)



・15コマ目


【ナレーション】


しばらくは他愛のない話をしていたが……

女の部屋の独特の空気、いつもと違う明美の姿。俺は頭が真っ白になり、

気付くと明美に覆いかぶさっていた。


「お、俺は明美が……!」



・16コマ目


(上気する村田とは全く対照的に、覆い被さられながらも冷然と暗い表情の明美)


【ナレーション】


こんな状況なのに、まるで俺など見えないかのように語り始めた。


明美「私ね、親に捨てられたんだ。家賃だけは払うから、もう二度と帰ってくるなって。お前みたいな失敗作のゴミは恥だからって消えろってね」




・17コマ目


【ナレーション】


話しながら明美の表情が変わっていき、ついには号泣しだした。

突然の涙に、成す術がない。


(そのとき、ものすごいリストカットの跡も見てしまう)


村田「うっ……だ、大丈夫?」






・18コマ目


明美「ごめんね、精神が不安定で。だからバイトも上手くいかない。でも、家賃以外は稼がないとだから」


村田「っ……」











・19コマ目


明美「もう限界。……死んじゃいたいよ」

村田「お、俺が力になるから!」

明美「ホントに? 村田君は優しいね……」

明美(本当に馬鹿だなぁ)←見えないように微笑



【ナレーション】

その日は終電間際まで話を聞いた。



・20コマ目


【ナレーション】


次の日


(LINEみたいなアプリの画面)

明美「店長にバイト辞めるって言った。どうしても辛くて(泣 

次のバイトが決まるまで、生活費もどうしよう」


(LINEみたいなアプリの画面)

村田「大丈夫。俺が力になるから!」



・21コマ目


【ナレーション】


明美を支えたい。その思いだけに動かされ、

俺は盲目になってしまった。








・22コマ目


【ナレーション】


俺はバイトを増やし、学校からは足が遠のいた。

バイトが終わると明美に呼ばれ、二人で過ごすことが楽しみ

だった。




・23コマ目


【ナレーション】


時には


(夜、明美のアパートにて)


村田「今日も疲れたぁ」

明美「こんな時間に何? 迷惑」




・24コマ目


村田「そ、そんな。明美が来いって言うから」

明美「いいから帰れよ!」



・25コマ目


【ナレーション】


だが、翌日には


明美「昨日はごめん……。薬でパニックになって」(大泣きしながら)

村田「良いんだよ。大丈夫だから。な、泣かないで」

明美「うぅ……ごめんね」










・26コマ目


【ナレーション】


明美は新しい仕事を探そうとはしなかった。


明美「今日は二回吐いちゃったの……死にたい」


(おろおろする村田)





・27コマ目


(家電量販店にて)



明美「独りの時、静かだと不安なの。テレビ欲しいけど、今は

お金ないし……」


(そんな良いテレビ要らないだろうと思わざるを得ない、4K 43インチ液晶ディスプレイ UHD PCモニターぐらいの上物 64980円を潤んだ目で見つめる)


村田「お、俺が買ってあげるよ!」





・28コマ目


(またある日)


明美「水道光熱費が払えない。仕事も見つからないし、ホントに

自分が嫌になる。死にたい」


(各料金の支払い催促状に記された金額……水道3102円  電気代7890円   ガス5003円

(それぞれが、女性の一人暮らしの平均的な料金の約1.5倍。男がいることを示唆)


村田「ひとまず払うから」











・29コマ目


【ナレーション】


頻繁にパニック発作が起きる


(往来にて)


明美「ああぁぁ! もう死にたい! 辛い!!」


(道路に転げまわり、手首を掻きむしる明美)


村田「明美!」


(通行人の奇異の目を少し気にし、赤面しつつも介抱する村田)



・30コマ目


(ここも往来)


村田「大丈夫だから。俺がついてるから……」


明美「離せよデブ! 触んじゃねえよ! あああぁああ!!」


(往来の真ん中で明美を抱き寄せる村田)








・31コマ目


(雨天の中、ぐったりとした明美に肩を貸し、アパートに向かいながら。村田の顔は傷だらけ)

(明美のリストカット跡は爪で掻きむしり、齧り、血まみれ)


【ナレーション】


辛くないと言えば嘘になる。でも、明美には俺しか

いないんだ。初めて俺なんかを頼ってくれた娘を、見捨ててたまる

か。





・32コマ目


【ナレーション】


明美は俺が支え続けてみせる。


そう思っていたのだが


(明美のアパートに行くと、部屋から知らない男と明美が出てくる。男は小奇麗な

イケメン。いかにも金持ちそうで村田とは大違い)


(村田は明美にやられた傷で酷い顔になっている)


明美「あっ……」


男「誰?」







・33コマ目


村田「どういうことだ。説明してくれ!」

明美「何が?」



・34コマ目


明美「村田君は彼氏じゃないし……関係ないでしょ。良い人だけど、清潔感がなくてキョドってるし」(立ち去ろうとする)



村田「そんな! 待ってくれよ!」(村田が逆上し、去ろうとする明美に追いすがろうとする)



・35コマ目



男「何なんだテメェは!」(男が村田をぶっ飛ばす。歯が折れ、地面に叩きつけられて頭を打つ)



・36コマ目


明美「ストーカーにはならないでね」(男と立ち去る)


(さらにボロボロで路上に伏し、惨めな村田)


【ナレーション】


本当は分かっていた。明美にその気がなく、俺は利用されているだけ

だと。全てから目を逸らして自分に酔っていただけなんだ。







・37コマ目


【ナレーション】


しばらくは死んだように落ち込んだが、明美と離れたのでバイトも減り、

大学も行くようになり、徐々に元気を取り戻していった。



・38コマ目


【ナレーション】


自分を見つめなおす時間も増えた。明美は憎いが、別れ際の

言葉には思う所がある。



・39コマ目


【ナレーション】


変わろうと決意した俺は勉学に励み、コミュ力を磨き、ジムで身体を鍛え、お洒落の研究もした。挫けそうになる度、あいつらの姿を思い出しながら。







・40コマ目


【ナレーション】


五年後。俺は別人になっていた。見た目は勿論、仕事では

出世頭。かつてない程の自信に満ち溢れていた。

(バリっとしたスーツ。コンタクト。引き締まった体型。清潔感のある髪型など)








・41コマ目


【ナレーション】


今なら分かる。明美は世間を生き抜くため、弱さを武器にした。反面、俺は弱さと優しさの区別もつかない馬鹿だった。正しかったのはアイツなんだ。




・42コマ目


(繁華街を威風堂々と歩く村田)


【ナレーション】


順風満帆な日々を送っていた、ある日


村田「……ん?」


【ナレーション】


見覚えのある女がゴミ捨て場に転がっていた。明美だった。










・43コマ目


【ナレーション】


服は破れ、髪は乱れ、顔は傷だらけ。通行人が遠巻きに見て笑っている。


(意地悪っぽい感じで明美を見下ろす村田)


村田「よう、何してんだよ」





・44コマ目


【ナレーション】


聞くまでもない。明美の生き方にも、限界が訪れただけだ。


明美「……まさか、村田君……? 信じられない……凄く変わったんだね」


村田「お前もな」




・45コマ目


明美「笑えるでしょ。人を裏切ってきたツケが回っちゃった……」


村田「当然の報いだな」(残酷な笑み)








・46コマ目


明美「私ね……これでも変わろうとしたんだよ。病気を言い訳にしないで、人を騙すのもやめてさ……。でも……過去は消えないよね。仕返しされて……この様」


村田「……当たり前だ」(ぶっきらぼうだが残酷さは消えた物言い)






・47コマ目


明美「そうだよね……。さんざん他人を使い捨てて、今更変わっても幸せになる資格なんかない。私はもう、ここで――」


(明美の言葉を遮るように恋人が登場。仕事できる風) 

由紀「村田君じゃん。こんな所でどうしたの?  ……この人は?」(怪訝な表情)




・48コマ目


村田「良い時に遇ったな」


(言いながら由紀の肩を抱いて引き寄せる。明美をいっそう見下し、)


村田「婚約者の由紀。仕事でもプライベートでも、最高のパートナーだ」



【ナレーション】

そして、明美と出会わなければ、決して縁のなかっただ。



・49コマ目


【ナレーション】


明美は変わったのだろう。だが、それ以上に俺も変わった。

この微かな感傷は、優しさではなく弱さだ。


村田「行こう……由紀」(明美の写真などを撮る野次馬の嘲笑の中、背を向ける二人)


明美「……」(その背後で明美がよろよろと立ち上がりかけ、二人に向けて手を伸ばそうとする)



・50コマ目


【ナレーション】


もう二度と、お前のために生きることは出来ない。俺はこれから、強さを武器にして幸せになっていくんだ。お前とは全く違う世界で。


(明美が力尽き、ゴミに顔を突っ込んで倒れる)

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