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閑話 <街歩き>

「リコラス、少し付き合ってください」

「はっ!?なんだ、リリーか……って、ここ男子棟だからな!?」


 少し用事があり従者棟に行くと、いつも通り無表情な侍女……そして、俺の恋人であるリリーが声をかけてきた。

 廊下を歩いている途中で、突然だ。

 俺にすら気配を悟らせない姿は、底知れなさを感じさせる。

 一体何者なんだ……と、おおよそ恋人に対するものではない考えを浮かべていたが。


「街歩きに行きましょう」

「……デーt」

「街歩きです。いいですか」

「……リリー、デートが恥ずかしいのか」

「そうですか。ではこの話はなかったことに」

「いえ!街歩き!!行かせていただきます!!」


 ☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+


 恋人になったと言えども、二人はあまり話せる機会がない。

 そして、そもそも長い間話していたこともない。


 しかし、そんな二人の共通の話題と言えば……


「リコラス。貴方の主人のせいで、ローズ様がダメ人間になってしまったのですが」

「……すまん。俺もあいつの暴走を止めることはできん……!」

「最近は、『アシュガ様はぁ、私に何度でも愛を伝えてくれるのですってぇ』と、ずっと言ってきます」

「うわああああああ、申し訳ないっ……てか声真似うめぇ……」


 手の掛かる主人とお嬢様のことである。


 これでは、どちらかと言うと同僚の会話だ。


「……あ、少しいいですか」

「ん?……あぁ、ここか」


 リリーが足を止めたのは、リコラスにも見覚えのある店だった。


「ご存知でしたか」

「ローズ嬢がアシュガと共に来ていたな」


 外にいても感じるバターの香り、清潔な窓から覗く様々な種類のクッキー。

 ここは、ローズ御用達のクッキー専門店、『フロス・クッキー』である。


「いらっしゃい!――ああ、リリーちゃんかい!」

「ごきげんよう。新作のクッキーはありますか」


 いつも通りの無表情で尋ねると、店主はにっこりと笑って言う。


「えぇ、えぇ、あるよ。ちょうど昨日からの新作だよ」

「それを4枚ください。それと、ジンジャーマーブルクッキーも4枚お願いします」

「ここで食べていくのかい?」

「はい。お願いします」


 慣れた様子で注文するリリー。

 それもそのはず。


 お嬢様のせいで何度も何度もここに通う羽目になっているからだ。

 ……そして、何を隠そうリリー自身も、この店のクッキーの熱狂的なファンである。


「ローズ嬢、クッキー好きだもんな」

「そうですね。よく毎日毎日飽きずに食べられるなと思います」


 相変わらずの毒を吐くリリーだが、本人も毎日毎日飽きずに毒見して(食べて)いる。

 ただし、リコラスがそれを知るのはまだ先になりそうだ。


「はいはい、お待たせ。こっちが新作、こっちがジンジャーマーブルだよ」


 テーブルに置かれたクッキーは、片方は緑色、片方はマーブル模様が美しいクッキーだ。


「いただきます」

「いただきます!」


 リリーはジンジャーマーブルクッキーを手に取り、リコラスは緑色のクッキーを手に取った。


「……これは、なんだ?ピスタチオか?」

「そちらも食べてみます……そうですね。ピスタチオとマッチャです」


 マッチャの風味に、ピスタチオの食感が楽しい。

 リリーは、マッチャ好きのお嬢様のために買って帰ろうと決めた。


「マッチャ?」

「外国のお茶の一種ですね」


 普段あまり甘いものは食べないリコラスだが、たまには悪くない。と考える。


 ……それより、甘いものを食べているリリーは、いつもより少しだけ表情が緩い気がする。

 かわいい。


 などと考えて見ていると、リリーがこちらを見て、クッキーを飲み込んだ。


「そういえば、リコラス。明日は学園祭があるようですが、護衛はどうなっていますか」

「あぁ、そういえばリリーもローズ嬢の護衛を務め……」


 ニヤニヤしたアシュガから伝えられたのはこうだ。

『リコラスとリリーは、少し離れてついてきてくれ。二人で学園祭の参加者のふりをしながら』

 ……しかし、護衛? リリーはやはり何者だ?


「わかりました。では明日もよろしくお願いします」

「お、おう。」


 その後、リリーは武器屋でやたらじっくり暗器コーナーを眺めていたり、本屋に寄って『外国の最新兵器』という本を購入していた。

 ……リコラスの疑問は深まるばかりだった。

 しかし、学園の授業が終わる時刻になり、従者棟へ帰らなければならなくなった。


「今日は楽しかったです」


 と、全く楽しくなさそうな表情で言うリリー。

 こんな時でも表情が変わらないのは同じ……いや、気のせいかもしれないが、ちょっとだけ表情が緩い?


「俺も楽しかった。ありがとな」


 楽しかったのは本当だ。

 少し怖くもあったが。


 そんなことを考えていた刹那、リリーの顔が近付いてくる。


 相変わらず表情は変わっていないが、リコラスにはわかる。これは、キスを仕掛けてきている!!


(いつも突然だな……)


 リコラスは内心笑う。

 今回は!リリーからはさせない!!


 そう考え、リリーの後頭部へ腕を回そうとした。

 ……回そうとした(・・・・・・)


 バチンッッ!!


 と、派手な音を立てて腕を叩き落とし、勝利したのはリリーだった。


 今回もアシュガに泣きつくことになるのは、言うまでもない。

アシュガ「なんというか……ローズとリリーは、似ているのだn」

リリー「……アシュガ殿下。この間の……」

アシュガ「冗談だ!!それより、次回投稿は、あし__」

アザミ「もらったあぁぁぁ!!!!明日、7/31の23時よ!」

アシュガ「ロ、ローズ。私だって知らないわけではないのだからな……?」

ローズ「アー、ワカッテマスワカッテマス。」

アシュガ「ローズ!?本当だから!!」

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