5-22 実戦訓練3
コムは鍋を取り出すと、メルナに何か言った。
するとメルナは最初に討伐したワイルドボアを取り出し、コムに渡した。
「皆さん。これから夕食にしますが姉さんと一緒に必要な素材を取って来て欲しいです」
コムは紙にペンを流し、メルナに渡す。
「姉さんと言ってほしいですが出来れば三人組で組んでほしいです。姉さんとその他二人は素材集め、残りの三人はここの警戒をしてほしいです」
コムはそう言いながら、ワイルドボアの皮を剥ぎ、解体を進めていく。
しばらく誰が行くか話し合っていると、雪と蓮司がメルナと共に素材集める。
翔太と梨花、熊鉄はコムと共に設営したテント周辺の警戒となった。
「それじゃあ、ユキ、レンジさんは私に付いてきてください。ある程度、場所は分かりますので。それと素材に毒があるか無いか区別の仕方も教えるから」
メルナはそう言うと二人は返事をし、森の中に入って行った。
一方、コムと翔太、梨花、熊鉄は、コムの指導の下、警戒の仕方とメルナたちが集まるまでの説明をしていた。
「そんなことはどうでもいいからよぉ!腹が減った!」
と、コムの説明に割って入るように、熊鉄は文句を言う。
「そうですね。協力をしてくれれば夕飯も早く出来るんですが……」
「ッチ。分かったよ。周りを見ればいいんだろ?」
熊鉄はそう言うと、テントの周りを見始めた。
「もし魔物にあったら無理せずに僕に言ってください!!」
コムはそう熊鉄に言った。
そして、翔太達に向き直り再び説明を始めた。
「まず魔物に出会ってしまったら無理せずに僕に言ってください。その都度、僕が対応しますので」
コムはそう言うと、再びワイルドボアの解体を始めた。
説明を聞き終えた翔太と梨花は、熊鉄と同じようにテントの周りを警戒した。
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そざいを集めるためにテントから離れたメルナは、蓮司と雪に食べれるものや毒がある物を定めながら、素材を集めていた。
雪はメルナから教えてもらった内容を必死に紙にメモし、蓮司は周りを見ていた。
「蓮司君もちゃんと聞いた方が良いよ。もしかすると役に立つかもしれなし」
「そうだな。気が向いたらな」
「それは絶対にやらないやつじゃん」
雪と蓮司がそう話していると、メルナは静かにするように伝えた。
「二人共。恐らく近くに魔物がいますので、慎重に行動しますよ」
「「はい」」
二人はそう返事すると、蓮司は剣を腰から抜いて構え、メルナと雪は杖を取り出した。
三人の周囲は、一般的な森になっているが茂みが所々にあるおかげである程度魔物がどこに隠れているかが予想はついている。
しばらく警戒していると、メルナは蓮司の前に出て、魔法を唱えた。
[水魔法・水の槍]
魔法を唱えたメルナは、右手にある茂みに向かって魔法を放った。
そこに魔物はいなかったのか特に何も起こらなかった。
だが、メルナが魔法を放ったせいか後ろにある茂みから何かが飛び出してきた。
始めは警戒していた三人だったが、茂みから飛び出してきた者を見て蓮司と雪は驚いた。
なぜならその正体は雪の如く真っ白で、目が赤い蜘蛛のような魔物だったからだ。
だが体の至る所に傷が走っていた。
「これは……ホワイトスパイダー!?」
メルナがその蜘蛛を見るや否や驚いた声を上げた。
「ホワイトスパイダーってこれのことですか?」
雪はメルナの言っていたであろう魔物について質問した。
「あ……すみません。つい興奮してしまいました。そうですね……ホワイトスパイダーについては治療をしてから話します」
メルナは傷ついたホワイトスパイダーに躊躇せずに回復魔法を使おうとした。
ホワイトスパイダーはメルナの意図を汲み取ったのか、無駄な抵抗はせずに、大人しくしていた。
すると、メルナの回復魔法が発動し、ホワイトスパイダーに出来ていた傷が回復していった。
「ふぅ……これぐらいで良いでしょう」
ホワイトスパイダーの傷を殆ど治したのを確認したメルナは、回復魔法をやめた。
「えっと……二人にこの子の事を説明しなければなりませんね」
メルナはホワイトスパイダーについて二人に話し始めた。
ホワイトスパイダーは他の魔物と違い戦闘能力が低く好戦的ではなく臆病だ。
それに加え、ホワイトスパイダーの目は赤く輝いているため宝石と同じ、それ以上の価値がある。それ故に一昔前ではホワイトスパイダーは冒険者や密猟者に乱獲乱猟をされてしまい、絶滅仕掛けたことがあった。
それを問題に思った冒険者協会本部では、好戦的ではなく大人しい為ホワイトスパイダーの討伐や捕獲を禁止した。
今はある程度ホワイトスパイダーの個体数は増えた為、禁止は解除されだ。だがある程度の冒険者は今でもホワイトスパイダーを見かけたら、討伐や捕獲はせずにそのまま見逃すことがある。
メルナの説明が終わるのと同時にホワイトスパイダーは立ち上がり、森の中に消えた。




