5-18 魔法の訓練3
小石を掴んで魔力を流し始めた翔太だがもちろん失敗した。
だが翔太の手の中にある小石は、翔太が力を入れていないのにも関わらず割れている。翔太はそれを見ると魔力を流す量が多いと感じた。
蓮司も翔太と同じ方法で小石に魔力を流し始める。
さっきまで翔太の一連の行動を見ていた蓮司は、流す魔力を最小限抑えて流す。
すると蓮司は小石が暖かくなるのを感じると集中が途切れて、小石が割れてしまった。
「クッソ!駄目だ!少し休む!」
蓮司はそう言うと寝ころんだ。
「翔太もやりすぎない方が良いぞ」
「そうだけどさ。一か月後に実戦訓練だよ?ここで頑張らないとやばいでしょ」
「そりゃあそうだけどよ」
翔太は蓮司と話しているが、小石に魔力を流すのを止めない。
すると翔太の持っている小石に少しながら燃えるのを蓮司と翔太は見た。
「待って……今燃えたよね……」
「おう……一瞬だけど燃えたな……」
翔太は、また小石を握りしめ、先程と同じ方法で小石に魔力を流した。
(静かに、ゆっくりと、でもしっかりと流す)
すると翔太の持っていた小石が完全に燃えた。
「や、やったーーーー!!!」
小石が燃えたのを確認した翔太は嬉しさのあまり叫んでしまった。
「蓮司!見ろこれを!燃えてるぞ!」
蓮司も急いで翔太にやり方を聞き、小石に魔力を流し始める。
すると少し時間が掛かったが蓮司の持っている小石にも火が付いた。
「が……ガチで燃えてる……」
蓮司が燃えている小石を見ているとグネヴィアが走って寄って来た。
「どうした!?何かあったか?」
どうやらグネヴィアは翔太の叫びに驚き走って来た様だ。
「いや。小石に火が付いたのでつい嬉しくて」
「え?もう付いた?二人とも?」
「「はい」」
グネヴィアは翔太と蓮司の返事を聞くと少し笑った。
「クックッ……そうか……意外と筋が良いな……よし!本当は小石に火が付くまでやると思ったが案外早めに終わったから次の段階に上がるぞ」
グネヴィアはそう言うと収納魔法から剣を取り出した。
「訓練が終わるまでこの剣に魔法を付与してくれ。属性は何でもいいぞ。コツは大きめにやることだ」
グネヴィアは翔太と蓮司に言うと再び雪と梨花の方へ向かった。
「これにやるのか……大きくやるって……」
翔太は剣士の訓練で振り慣れている剣を掴んだ。
「蓮司が先にやってみてよ」
「お、オッケー」
蓮司は翔太から剣を渡され、小石に魔力を流した時と同じ要領でやり始める。
だが上手くいかない様で蓮司は汗を流し、剣を放した。
「クソ!駄目だ。なんかムズイ」
「そうなのか?俺も」
翔太は蓮司が放した剣を拾い魔力を流す。
だが蓮司同様上手くいかない。
「うーん……そうだ!翔太!今まで俺たちは小石が割れないようにように魔力を流してたろ?けどよ、これは大きいからもっと多く流しても大丈夫なんじゃないのか?」
「あ。確かに。それにグネヴィアさんも大きくやるってい言ってたしそうかも」
蓮司は翔太から剣を受け取ると魔力を流す量を意識しながら流し始める。
すると僅かながら剣に火が付いた。
「く……うぅぅ……っはあ!はぁ、はぁ、はぁ」
「蓮司!大丈夫か?」
蓮司は剣に火を付けることが出来たが、剣を放し頭を押さえた。
普通の魔力不足では似たような症状を雪と梨花で見てきたが、蓮司の場合は普通ではなかった。
「なんか……頭が痛い……」
「待ってくれ!グネヴィアさんを呼んでくる」
翔太はそう言うとグネヴィアの方へ走って行った。
「なに!?分かった!いまそっちへ向かう!」
と、グネヴィアの慌てた声が聞こえると二人分の足音が聞こえてきた。
「レンジ!大丈夫か?……魔力が少ない...レンジこれを飲め!」
グネヴィアは蓮司の様態を調べると収納魔法から液体の入った瓶を取り出し、それを蓮司に飲ませた。
すると荒い呼吸をしていた蓮司はいつも通りの呼吸に戻った。
「取り敢えずレンジはしばらく寝ていろ」
グネヴィアは蓮司に魔法を掛けると、蓮司は静かな呼吸と共に寝てしまった。
「あ、あの……蓮司は……」
「ああ。レンジは魔力欠乏になっていた。だがお前のおかげで早期発見が出来て、応急処置も出来た。レンジは訓練終わりまで寝かせるつもりだ。そうすれば魔力もある程度は回復する」
グネヴィアはそう言うと立ち上がり、翔太に蓮司に飲ませた瓶を渡した。
「もし気持ち悪かったらそれを飲むといい。それは魔力の回復を早める薬だ」
グネヴィアはそう言うと雪と梨花の所へ向かった。
しばらくしていると訓練の終わりの合図である鐘が鳴らされた。
グネヴィアの言う通り訓練終わりと同時に蓮司は目を覚ました。
「蓮司。体調はどうだ?」
「まだ気持ち悪いけどあの時よりマシだ」
蓮司と翔太が話していると、雪と梨花がやって来た。
「グネヴィア教官から聞いたよ。蓮司、大変だったそうじゃん」
「おん?なんだ梨花?煽りか?」
「違うよ。魔法も大変でしょ?」
「そうだな。想像以上に難しいわ。さてと久しぶりにみんなで食堂に向かうか」
蓮司はそう言うと立ち上がり四人で食堂へ向かった。




