5-16 魔法の特訓
翔太達四人が眠りについた頃バルナとグネヴィアは何やら話している。
「バルナ……本当に1ヶ月後に実戦訓練をするのか?」
グネヴィアは1ヶ月後に行われる予定の実戦訓練についてバルナに聞く。
すると、
「するつもりだ。安心しろ。ちゃんとアイツらとは分かれてやるつもりだ」
「どうするんだ?」
「俺とお前の訓練兵は合同でDランクの魔物がいる森でやる予定だが、召喚組はEランクの方でやる。
それは理解しているか?」
「それはちゃんと理解しているよ」
「そこでだ……ショータとレンジに魔法を教えてもらいたい」
「あの二人にか?」
「そうだ。いくら前衛で戦うといっても召喚組は唯一闇の使徒を倒せる存在だ。
そいつらが魔法をある程度使えなかったら負担が増えると思うんだ」
バルナがそう言うとグネヴィアは思わず頷いてしまった。
「でもあの二人に魔法を教えてしまったら近接も疎かになるんじゃあ……」
「ん?何言ってんだ?だからお前に頼んでるんだろ?」
「あ~。そう言う事?」
「そうだ。まぁ、アイツらは前衛で戦う事になるから[付与魔法]を教えてもらえたら助かる。お前、[付与魔法]得意だろ」
「分かったわ。体の動かし方とかは、あんたがちゃんと教えなさいよ」
「分かってる。明日の午後にお前に渡しに行く」
「分かったわ。でも明日訓練が終わったら酒を奢りなさいよ」
グネヴィアはそう言うとバルナは笑い始める。
バルナが笑い終わり、召喚者について聞いた。
「召喚者はどうだ?」
「どうって?」
「筋が良いかって事だ」
「筋ねぇ。私程では無いけど良いわよ。そっちは?」
「こっちもまあまあ良い方だな。俺が命令した訓練も嫌な顔をしながらもこなしていく。こりゃあ1ヶ月後には化けるぞ。まぁ魔法の方は心配だがお前がいれば大丈夫だろ。心配な奴はいるがな」
バルナは召喚者との訓練が始まり2日経つ。翔太と蓮司はバルナの出した訓練内容を次々とこなしていく。
だが問題は熊鉄だ。
熊鉄は不定期に訓練に参加し、訓練兵やバルナに戦いを挑む。
「どうする?私の催眠術で言うこと聞かす?」
「いや、そこまでする必要はない。そもそもアイツは闇の使徒との戦いをしないしな」
「でも四人は……」
「それはあくまでも、ショータ、レンジ、ユキ、リカの決定だ。アイツらは友人らしいが、クマテツは他人だしな」
「そうなのね……私は自分の部屋に戻るけど、酒を奢るの忘れないでよね」
「分かったからさっさと出てけ」
バルナはそう言うとグネヴィアは手を振りながら瞬間移動で自分の部屋に戻った。
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翌朝、翔太と蓮司はバルナの言う通り、午前はいつも通りの訓練をし、午後からはコムの案内のもとグネヴィアのいる訓練所は向かった。
「グネヴィア先生。召喚者を連れてきました」
魔道士の訓練場の扉にコムがそう言うと、扉が勝手に開く。
「ここからは、お二人に行った方がいいですね。おそらくこのまま真っ直ぐに行けば、グネヴィア先生のいる部屋に着きますので。それでは」
コムはそう言い残し、軽く走りながら剣士の訓練場に帰って行った。
翔太と蓮司はコムの言う通りに、訓練場の廊下を真っ直ぐ進んだ。
しばらく進んでいると紫色の扉が見えたので、ノックをする。
「入って良いぞ!」
紫色の扉の奥から女性の声が聞こえ、入るとグネヴィアが居た。
「やあ。三日ぶりだね。これから君達に魔法を教えることになった」
「魔法ですか?」
「そうだ。えっと...…ショータ君。と言っても攻撃魔法ではなく補助魔法だがね」
「補助魔法ですか?」
「そうだ。例えば...…こう!!」
グネヴィアは収納魔法から剣を取り出し、魔力を流すと剣は炎に包まれた。
「この補助魔法を人は皆[付与魔法]と言う。私やバルナ、他の兵士や冒険者も使っている。まぁ習得難易度は高いが一度使えるようになれば後は簡単だ」
グネヴィアは取り出した剣をしまうと指を鳴らし、梨花と雪が魔力を感じるために居た訓練場に瞬間移動した。
「ここで魔力を感じて出してから[付与魔法]を覚えさせる。ユキとリカもここで二人と同じことをした。本を渡すからそれを読みながらやった方が早いだろう。頑張ってくれ。私は見習い達の方へ向かう」
グネヴィアはそう言うと再び指を鳴らし、瞬間移動をした。
「なぁ翔太。これを一から読めばいいのか?」
「そうじゃないか?...…ほら。ここに魔力の使い方が乗ってある」
「え?ホントだ...…どうする?競争する?」
「そうだな。負けた方は水を持ってくるで良いか?」
「オッケー」
翔太と蓮司はそう話し合うとグネヴィアから渡された本を読み始めた。
しばらくすると翔太は魔力を感じるために本に書かれた通りの手順で始める。
翔太は集中するために目を瞑り、体の中にある物を感じようとした。蓮司も翔太の後を追うように目を瞑り集中した。
すると翔太の中で弾ける何かを感じることが出来た。それを感じた瞬間真っ黒な空間に居ることに気付いた。翔太は弾ける何かを掴もうとしたが磁石の様に弾かれて掴むことが出来ない。
反対に蓮司は水が流れる音を感じることが出来た。だが翔太とは違い緑色の空間に居た。
それを感じることが出来た蓮司は水のような物を掴もうとしたが手を透けて掴むことが出来ない。
だがしばらくすると先に蓮司に異変が起こった。
それは感じ方だ。
ついさっきまでは何も感じなかったが次第に水の様な物が冷たく感じたのだ。
蓮司は今の感覚を忘れぬうちにまた触れようとすると、今度は少しばかりか水の様な物をすくう事が出来た。
すると今まで緑色の空間から訓練場の景色に戻った。
蓮司は翔太の方を見ると、翔太はまだ終わってない様だ。
「ふむ……以外と早いな」
後ろから声が聞こえ、後ろを見るとグネヴィアが居た。
「グネヴィアさん。もうそっちの訓練の方は終わったのですか?」
「何を言っている?もう夕方だぞ」
グネヴィアがそう言うと蓮司は急いで窓の外を見た。
外はグネヴィアの言う通り空が赤色に染まっている。
「ん?どうやらショータ君もコツを掴んだ様だな」
すると翔太の周りに小さい火花が鳴り始めると翔太は目を開けた。




