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5-15 シエラとの対話

 訓練が終わった四人は食堂の席にうつ伏せていた。


「梨花と雪の方の訓練はどうよ?」


 蓮司は今にも消えそうな声で魔道士の訓練について聞く。


「体の方はまあまあ疲れるけど……一番疲れるのは………なんというか……心の方……頭が痛い…」


 梨花と雪は訓練の際に走り込みをするせいで体力は地味に削れる。だがそこは大して問題は無い。


 しかし魔法を使う為に大量の魔力を使った事により梨花と雪は魔力欠乏の一歩手前まで追い込まれた。


 頭痛がするのは魔力欠乏の一歩手前までの証だ。


「蓮司君と翔太君の方はどうなの?」


 雪は剣士の訓練について聞いた。


「体がひたすら疲れる。本当に……何も考えたくない」


 剣士の方の訓練はひたすらに体を使う。そのせいで怪我をする訓練兵は毎日の様に出る。


「そうなのね……お互い大変なのね」


 梨花はそう言うと頭を再び机に伏せた。


 するとそこへシエラがやって来た。


「皆さんお疲れ様です」


 シエラはそう言うと雪の隣に座った。


「シエラちゃん……うん……すっごい疲れた」


 雪はそう言いながらも机に伏せている頭はそのままだ。


「ふむ……[回復魔法・鎮痛(モルヒ)]」


 シエラは魔法を使うと雪と梨花に感じていた頭の痛み、翔太と蓮司の感じていた疲れがいきなり消えた。


「どうですか?」


「どうですかって……あれ?疲れが感じない……」


 蓮司は今まで感じていた体の疲れが消えた事に驚いた。


「私も……頭の痛みが……もしかして魔法を使ったの?」


 梨花は体の不調が治ったのをシエラに尋ねた。


「はい。私の魔法で一時的ですがリカさんとユキさんの感じていた頭の痛み、ショータさんとレンジさんの感じていた体の疲れを消しました」


「ほんとに魔法って凄いですね」


「いつか皆さんも扱える様になりますよ」


 シエラがそう言うと突然食堂にバルナとグネヴィアが入ってきた。


「ここに居たか」


「ん?教官どうしたんですか?」


 翔太は何か嫌な予感を感じた。


「これから1ヶ月後に魔道士見習いとの共同訓練がある」


「共同訓練ですか?」


「そうだ内容は「ここからは私がやるわ」」


 内容を説明しようとするバルナにグネヴィアは割って入る。


「訓練内容はここから歩いて2時間ぐらいの森でやるわ。そこは低ランクの魔物が出現する」


「まさか……」


「そう実戦訓練よ」


 グネヴィアがそう言うと話を聞いていた四人は頭を抱えた。 


 いつかは実戦訓練はするかもしれないと考えていた四人だが、まさかこんなにも早く実戦訓練をするとは思わなかったのだろう。


「何。心配するな。俺達が1ヶ月後に向けてある程度は戦える様に指導する」


「それに低ランクの魔物だから弱いわよ。まっ舐め腐って挑んだら大怪我はするけどね」


 グネヴィアの「大怪我」と言う単語を聞いた四人はさらに深刻な顔をした。


「取り敢えず今日はこれぐらいだ。ゆっくりしていけな」


 バルナがそう言うとグネヴィアはそのまま瞬間移動で自分の部屋に戻り、バルナはそのまま食堂の扉を抜けた。


「いや〜本当に参ったな」


「ええ。まさかこんなに早くやるとは思わなかったわ」


「ま、まぁ頑張るしか無いよ」


 蓮司と梨花は突然の実戦訓練に参ったのか更に落ち込んだ。


「良し!皆さん!ご飯を食べましょう!そうすれば元気が出ますよ!」


 シエラの言葉に四人は渋々頷き出された料理に手をやった。


――――――――


「ところでシエラさんは学校とか無いんですか?」


 翔太はふとシエラに対し、質問をした。


「はい。しばらくは学園自体が休学で……」


「なんかあったの?」


「はい。実は……」


 雪と翔太の質問にシエラは口を開いた。


 魔物大侵攻(スタンビート)について。闇の使徒、アルクが生まれた事について、シエラが覚えている限りの事を四人に話す。


「そんな事があったんですね……でもだったらなんで王都でなくここで?」


 蓮司がそうシエラに質問した。


 もし本当に王女だったら教会にいるより城にいた方が安全ではと思った。


「はい。私も最初は城にいました。ですが勇者召喚や闇の使徒に受けた穢れを落とす為にミリス皇国に居ます」


「そうなんですね……安心してください。僕達がやりますからシエラさんは安心してください」


「そうだよ。シエラちゃんは安心していいからね」


 翔太と雪の言葉にシエラは涙を流しそうになったがシエラはグッと我慢した。


 そのままいい雰囲気で食事を終えた五人はそれぞれ自分の自室に向かい、夜も遅かったので眠りについた。


「ん~……ふぅ。寝れない」

 

 翔太は眠りにつこうとしたがシエラの魔法が斬れたのか訓練の影響で体に痛みを感じ始めた。


(少し外を歩こうか)


 翔太はそう思うとベットから離れ外套を羽織り外を歩いた。


 しばらく外を歩いていると吹き抜けの廊下に出た。そこにはお祈りをしているシエラが居た。


「シエラさん……熱心ですね」


 お祈りをしていたシエラは、翔太の声に気付きお祈りを辞め翔太の方向を向いた。


「ショータ様。眠れないのですか」


「はい。体が痛くて」


「魔法が切れたのでしょうか。また魔法を掛けますよ」


「大丈夫です。にしてもシエラさん、気になる事があって」


「なんでしょう?」


「食事の時にシエラさんは闇の使徒について教えてくれましたね」


「はい。それが……」


「闇の使徒について何か知ってのるですか?」


「なんでそれを?」


「いやちょっとね。あの時のシエラさんは何か寂しい顔をしていたので」


「良く……分かりましたね」


「人の感情を読むの得意なんで」


「そうですか……そうですね。確かにあの時、寂しい感情はありました」


「なんで……」


「実は闇の使徒アルクは一時期、私の護衛を務めていたんです」


 シエラの衝撃の一言に翔太は絶句した。


 聖女であるシエラの護衛が闇の使徒であった事。


「だったらなんで……」


「はい。確かにあの人は闇の使徒です。ですが闇の使徒がばれるまではちゃんとした護衛でした。

 実際あの時まで、闇を使ってる所は見たことも感知も出来ませんでした」


「あの時?」


魔物大侵攻(スタンピード)の時にアルクだけでなくもう一体闇の使徒が居たのです。ですが二人は協力するどころか、アルクを裏切者と呼んでいたのです」


「裏切者?闇の使徒アルクがですか?」


「はい。でも私は何も分からずにアルクがもう片方の闇の使徒を殺して、その後にやって来た光翼騎士団に捕まって知ったのです。

 あとは食事の時にお話しした続きです」


翔太はシエラの言っていたアルクと教会が言っていたアルクについての話が食い違っていることに気が付いた。


 教会側ではアルクは光の聖女であるシエラを殺す目的があると聞いていた。


 だが翔太は、アルクは本性を隠していたのではないかと考えた。


「そんな事があったんですね……やっぱり自分達が考えてたより事態は複雑なんですね」


 翔太はそう言うとシエラは立ち上がった。


「それじゃあ私はお祈りを続けます」


「そうですか。それじゃあ自分も部屋に戻りますね」


 翔太はそう言うと立ち上がり自分の部屋に戻った。

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