5-14 訓練4
石の詰まったバックを背負いながら走ること15分。二人は膝をついてしまった。
「おい、まだ休憩の合図は出してないぞ…走れ!」
バルナは疲れ切っている翔太と蓮司を無理矢理立たせ走らせた。
だがそんな二人とは反対に熊鉄は走っていた。熊鉄は熊鉄で疲れているのか訓練兵集団から離れている。
さらに10分が経つ頃には訓練兵でも疲れる者が現れ、何人かが集団から離されている。
「休憩だ!ちゃんと水を飲めよ!」
バルナがそう言うと訓練兵達は地面に寝転んだ。翔太や蓮司も訓練兵同様に地面に寝転び休憩をした。
しばらくすると翔太は立ち上がった。
「水取ってくる」
「はいよ」
翔太は蓮司にそう言うと水を取りに離れた。
「大丈夫ですか?」
「コムさん……まぁはい。大丈夫です」
「そうですか。それは良かった……ショウタさんは?」
「あいつなら水を取り……戻って来たな」
蓮司がそう言うと水筒を三つ持って戻ってきた翔太がいた。
「ほらこれは蓮司ので……これがコムさんの」
「わざわざありがとうございます」
コムはそう言うと翔太から水筒を受け取る。
「にしても皆さんは毎日訓練してて凄いですね!」
蓮司はコムにそう言った。
「いえ、私達も最初はとてもきつかったんですが流石に3年もいると嫌でも慣れますよ」
「そうなんですか?」
「はい。きっと二人も今はきついですがしばらく訓練してると慣れますよ」
コムがそう言い終わるのと同時にバルナの次の訓練の合図が出た。
「これが終われば昼ご飯で、その後は朝の訓練をまたやります」
「お前達!これが終われば昼飯で、午後は朝やった訓練をやって終わりだ。根性入れろよ!!」
コムの言う通り、これが終われば昼飯だ。
昼飯と言う単語を聞いた翔太と蓮司は腹がなった事を誰にも言えなかった。
その後は木刀を持って打ち合いをし、昼飯を食べ、午後は朝と同じ訓練をした。
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メルナは二人を連れて別の部屋に案内すると座る様に促した。
「今からお二人には魔法について教えたいと思います。よろしくお願いします」
メルナがそう言い頭を下げると座っている梨花と雪も反射的に頭を下げた。
「それでは魔法について教える前に……ユキさん。魔法とはどんなイメージを持っていますか?」
突然話を振られた雪は驚きながらも口を動かす。
「えっと……手から火を出したり空を飛んだり?」
「そうですか……リカさんは?」
「私も雪と同じイメージを持っています」
二人の魔法のイメージを聞いたメルナはメモを取っている。
「確かにお二人のイメージ通りの魔法があります。他にも家を作ったり道を作ることも出来ます。
ですがこれから魔法を覚えるに置いて一つだけ…魔法は殺しの手段である……です。繰り返して下さい」
「「魔法は殺しの手段」」
「これからお二人には魔法を覚えます。つまり魔法を覚えてしまったらいつでも人を殺せる事になります」
メルナの言葉を聞いた梨花と雪は全身に鳥肌が立つのが分かった。
実際梨花と雪は、この世界では『人を本当に殺すのか?』と言う疑問があった。
だがメルナの説明を聞いてく内に『人を殺す』事が確実になった。
「ですからお二人には正しい魔法の使い方を教えます」
するとメルナは収納魔法から少し古びた本を二冊取り出し、二人に渡した。
「これには炎、水、氷、地、風、光、回復の魔法が書かれています。これからは初めて魔法に触れる物に比較的優しい水魔法を教えます」
メルナは手から水の魔法を出して見せた。
「これを皆さんに覚えてもらいます。それでは行きますよ。魔力に関しては昨日教官に教わったと思いますのでそこは省きます……が一つ質問が。魔力を使いすぎると人はどうなりますか?」
メルナがそう言い終わると梨花と雪は同時に手を挙げた。
「それじゃあリカさん。どうぞ」
「はい。魔力を使いすぎると魔力欠乏になってしまい最悪の場合死んでしまいます」
「はいその通りです。なのでお二人にはこれを持ってもらいます」
メルナはそう言うと二人に水晶が付いた指輪を渡した。
「これは?」
「それは魔力計です。これを付けたら魔力を測り、魔力欠乏に近づくと赤く光って知らせてくれます。それでは174ページを開いてください」
メルナがそう言うと二人は急いで指輪を付け、渡された本のページを開いた。
「このページには水初級魔法の[水球があります。早速ですが本に書いてあるやり方通りにやってみてください」
梨花と雪はメルナに言われた通り、本の内容を見た。
本の内容は水を出す方法とその応用が書いてある。
(最初は魔力の玉を出して...水をイメージ?)
梨花は本の内容通りにすると僅かながら水が発生した。するとすぐに梨花に続いて雪も掌から水を発生することが出来た。
「これが水球ですか?」
「それはただ水を魔法を使って出しただけですね。水球はこのような物ですね」
と、メルナがそう言うとサッカーボール程の水の玉を発生させた。するとメルナは水球を地面に落とすと跳ね返り、メルナの手に戻った。
「これが水球です。簡単な魔法ですが…お二人は確か魔法の無い世界にくらしていたのですね?」
「「はい」」
「じゃあ少し難しいかもしれませんが頑張って下さい」
メルナの指導の元、魔力の使い方を学びながらも一日中掛かったが二人はなんとか[初級水魔法・水球]を使える事が出来た。




