1ー8 決闘
決闘は厳粛に行われるバルト王国内で唯一許される殺し合いの場。バルト王国内で禁止されている殺しも決闘だけは唯一許可されている。勝者には褒賞を与えられ敗者には死か屈辱を味わう。
ダンク伯爵の提案により決闘することになったアルクは決闘の準備をしていた。
するとそこにヘルメスがアルクに近づて来る。
「お前みたいな冒険者がこの私と戦える事を光栄に思うんだな」
と、ヘルメスが言った。今のヘルメスには冒険者相手に負ける事はあり得ないと思っていた。
準備を終えた二人はそれぞれ、決められた配置につく。
「これより冒険者アルクと聖女親衛隊副隊長ヘルメス様との聖女護衛を賭けた決闘を行います。翼の顕現は禁止とします」
と、上空から審判らしき人がルール説明をし始める。
ー----------
翼の顕現
それは翼戴冠で神から得た翼を顕現する事だ。
翼を顕現出来た者は飛行能力が向上し魔力、筋力と共に上がる。
ー-----------
「それではお互い全力出して頑張って下さい……では始め!」
審判がそう言った瞬間、決闘場へ続く扉が開き、アルクとヘルメスが入ってくる。
あたりを見渡してみるといつの間にか兵士や貴族が集まっていた。
「なぁ、この戦いどっちが勝つと思う?俺はヘルメス様に賭ける」
「そうか。じゃあ俺は冒険者に賭ける」
観客が何か話しているのをヘルメスは無視をして、アルクに話しかける。
「冒険者よ、お前には我が愛槍を見せよう!」
ヘルメスは己の力を周りに見せる機会だと思い、元気よく収納魔法を開く。
「来い、[ハマル]!」
と、叫ぶと収納魔法から青い槍が出てきた。
「あれがヘルメス殿の愛槍ハマル、オリハルコンで出来た青い槍……」
と、一人の兵士が言った。
オリハルコンは世界で3番目に硬い鉱石だ。
「では俺も見習うか」
アルクはそう言うと収納魔法を開く。
「来い、[黒赤刀]」
と、言い収納魔法から黒い刀身の刀が出てきた。
「あれがグランドグリズリーを切ったと言われる剣か……」
すると、決闘に眺めていた観客は突然騒ぎ始めた。観客が騒ぎ始めた理由はすぐに分かった。
「普段決闘を見ない聖女様が来るとは」
観客が騒いだ理由は、聖女シエラが来たからだ。シエラは観客席よりも高い王族専用の観客席から覗いていた。
するとヘルメスが、
「聖女様見てて下さい。私はこの冒険者に勝ちあなたの護衛になります」
と、観戦席から見ている聖女に言う。
「今日という日に感謝しよう。喰らえ、槍術-絶一閃」
ヘルメスがそう言うと素早い槍の突き技が来た。アルクはそれを黒赤刀でいなした。
「なんだと?俺の絶一閃をいなしただと?」
と、ヘルメスは驚いていた。
「別に難しい事じゃない。迫って来る槍をいなすだけだ」
「そんな事出来るはずがない。これまでに決闘した相手はいまので終わるはずだ」
「じゃあなんで俺はここにいるんだ?」
「舐めるなよ冒険者風情が」
ヘルメスが言うと呪文を唱える。
[雷よ我が槍に宿り神速を与たまえ・付与魔法・雷光]
ヘルメスが呪文を唱えると、槍に雷が纏った。
「これがヘルメス殿の魔法か」
「流石に冒険者負けるんじゃないか?」
と観客が言ってきた。
だが、アルクは、
[付与魔法・火炎]
と、呪文を唱え黒赤刀に炎を纏わせた。
「は?エンチャントを無詠唱で発動させただと?」
驚いているヘルメスに向かって炎の斬撃を飛ばし、ヘルメスがそれを防いでいる間に詰めて腹に峰打ちで叩いた。
しかし炎を纏っているので多少は火傷をするはずだ。
「貴様!冒険者風情が調子に乗るな!」
ヘルメスはそう言うと、アルクとの距離を詰め突きを放つ。
アルクはそれらをすべて見切りヘルメスの懐に潜り、[黒赤刀]で峰打ちをした。
「貴様……舐めるなよ!冒険者風情が!」
減るメルはそう言うと、魔法を唱え始めた。
[雷帝よ我が問いに答え我が力となり敵を滅ぼせ 上級魔法雷ノ怒]
と、雷の上級魔法を唱えた。
しかしアルクエンチャントを解き、刀を地面に刺した
「どうした?負けを認めたか?」
ヘルメスはアルクの奇行に油断した。
だが、
[抜刀術・地・地切り]
と、言い刀に魔力を宿し地面からヘルメスに向かって振り上げテンペストを切った。
その瞬間、大きな爆発が起こったがアルクは勘でヘルメスに近づき、ヘルメスの首を峰打ちで叩いた。