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5-7 食事会

 シエラの言葉を聞いたとき翔太は信じられなかった。


(あいつが?嘘だろ)


 また驚いているのは翔太だけでなく他の三人も驚いていた。

 

 だが翔太は熊鉄の事よりもこれからの事を考えていた。


「それでは皆様の寝室にご案内します。ショータ様はここですので、これからはここで寝てください。食事の際に声をまた掛けますので」


 シエラは三人の寝室に案内するために翔太の寝室を離れた。


「翔太。また後でな」


「おう」


 蓮司は部屋から出る前に翔太に声を掛け、寝室を出た。蓮司に続いて梨花と雪も翔太の寝室を出た。


 翔太は蓮司達が寝室を出たことを確認すると魔導士から渡された歴史書と魔法について書かれている本を取り出し、机に座った。


 しばらくすると寝室をノックする音が聞こえた。翔太は窓の外を見ると赤色だった空は完全に暗くなっていた。


「ショータ様。食事の時間です。食堂へ案内するので出てください」


「はい!今行きます!」


 翔太は寝室の前に居るシエラにそう言い寝室を出た。


「食堂へ案内します」


 シエラがそう言うと歩き始め翔太はシエラの後を付いて行った。


 食堂へ向かう途中で通路にある窓の外を見てみると白い服を着た男女が居た。


 それだけでなく皆膝を地面について同じ方向へ祈りらしき物をしている。


「この時間になるとミリス教信者はお祈りをするのです」


 窓の外を興味深そうに見ていた翔太に気付いたシエラはミリス教について話した。


「ミリス教……ですか?」


 ミリス教について何も知らなかった翔太はミリス教について話した。


「はい。基本的にこの世界ではミリス教が主流です。ミリス教とは皆、神が作った生物であり、どの種族でも平等です。ですが二ハル帝国と言うところでは人間至上であり、他の種族は劣等種と言うものです」


 シエラは他にもミリス教について翔太に教えた。


「おっと。食堂に着きましね。それではお好きな席へお座りください。私はこれで」


 シエラはそう言うとお辞儀をし、別の部屋へ入る。


 翔太は食堂の扉を開くとすでに蓮司、梨花、雪が長いテーブルに座っていた。


「翔太君!ここだよ」


 翔太を見つけた雪は翔太に手を振り、座席に誘導した。


「どうだった?翔太君」


 席に着いた翔太に雪が質問をした。


 雪の突然な質問に困惑した翔太だったが何を質問したのか分からなかった。


「何が?」


「この世界の事とか。私は私で調べたんだけど……」


 雪の質問の内容を理解した翔太は頷いた。


「大雑把にね。でも今は食事を楽しもう」


 翔太がそう言うと四人の前にある机に食事が並べられた。


 その並べられた食事の豪華さに四人は圧倒された。


 それもその筈だ。


 今まで自分たちが住んでいた日本や世界に存在しない食材や調味料がふんだんに使われている。


 すると食堂の扉が勢いよく開けられ、そこには熊鉄が居た。


「ああ。腹が減った!!」


 熊鉄は大声でそう言うと机に座った。


「おい!早く飯をよこせ!!」


 熊鉄はそう言うと給仕のミリス教信者が急いで熊鉄の前に食事が並べられる。


「おい!いくら何でも態度が悪いぞ!」


 翔太は熊鉄の態度にムカつきそう叫んだ。


「あ!?黙れガキ!殺すぞ!!」


「なんだと!?」


 翔太は熊鉄の態度や暴言に怒り熊鉄へ詰め寄った。


「翔太!落ち着け!」


 熊鉄へ詰め寄ろうとする翔太を蓮司は抑えた。


「なんでだよ!?」


「ここで暴れたらどうなるか分かんねぇぞ!」


「でも……」


「耐えるってのもありだぞ」


「……っく……分かった」


 蓮司に諭された翔太は席に戻った翔太は気不味い空気のまま目の前に出された食事を食べようとした。


「はんっ!!この弱虫がよ!!」


 結局何にもしてこなかった翔太にそう熊鉄は言ったが翔太は無視をした。


「みっ皆んな!これ美味しいよ!」


 気不味い空気をどうにかしようと雪は食事の話題を三人に振った。


「どれ?……ん!ほんとだ。美味しい!」


 雪が美味しいと言った食事は魚を焼いた物だったが、程よい辛味が効いていた。


「ほら!皆んなも食べな!」


 梨花はそう言うと出された食事に次々とスプーンをやった。

 

 翔太も梨花や雪を見習い鳥が丸焼きにされている皿はナイフとフォークをやった。


 翔太はそれを食べると暗くなっていた表情が一気に明るくなった。


「本当だ……うまい……」


 翔太は初めて食べる異世界の料理に驚愕した。


 蓮司や他の二人も翔太が明るくなったのを確認するとゆっくりのペースが次第に早くなった。


「蓮司。それとって」


「オッケー」


「翔太君。これも美味しいよ」


 少し前までは暗くなっていたとは思えない程明るくなり、顔を強張られていた蓮司も笑顔が自然に溢れ出した。


「私もご一緒して宜しいでしょうか?」


 すると今まで姿を表さなかったシエラが食堂は入り雪の隣に来た。


「シエラさん!隣いいですよ!」


 雪は快く承諾し、シエラを横に座らせた。


「シエラさん!これは一体どんな料理なんですか?」


 雪は見た事のない料理に興味を示していた。


「はい。それはガスパーのカリ煮です」


「ガスパー?」


「はい。ガスパーとは体内に毒の内臓を持つ魚ですが、その毒を取り除けばとても美味しいのですよ……ちなみにカリは煮ると旨味が一気に溢れることから良く調味料として扱われます」


「へぇ〜」


 雪はシエラの話をメモをとりながら聞いていた。


「相変わらず雪は料理が好きだな」


 雪は小さい頃から料理が好きでよく翔太に手料理を振る舞っていた。


 その後は特に何も起こる事なく楽しい食事を取る事ができ、各自自分の寝室に戻っていった。


 だが四人ともすぐに寝られなかった。それは皆んな不安なのだ。

 これからの事。地球に残した家族の事。戦いの事。


 全員冷静な態度をとっているが内心とてつもなく不安で、気を緩めれば不安で心が折れそうな程だ。


 それでも四人は明日や明後日の事を考え、眠りについた。


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