表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/271

5ー5 決断

 翔太は突然の事に混乱していた。


(訳がわからない……何が起こっている……)


 激しい光が収まるとそこは見慣れた駅前の交差点ではなく、見慣れない地下と聞いた事のない言語を話す人達だった。


 すると少し高い所に居た白い服を着た老人が下にいる若い男に何やら命令をした。


 命令を受けた若い男は頷くと、混乱している翔太達の下に近づき何やら呟いた。


 しばらくすると若い男が持っていた杖が光、翔太達を照らした。


「召喚者方々。私達の言葉は通じますか?」


 若い男が翔太達にそう言うと、翔太達は頷いた。


 それを若い男が確認すると、後ろを振り返り白い服を着た老人に目配せをした。


「こほん!召喚者達。よくぞ召喚に応じてくれた。わしのーー」


「まっ待ってください!」


 白い服を着た老人が話を続けようとしたが翔太が話を遮った。


「貴様!教皇様に誰の許可を……」


 白い服を着た老人の横に立っている中年の男性が叫んだが、白い服を着た老人が止めた。


「こちらの司祭がが話を遮って申し訳ない召喚者。そなたの名はなんだ?」


「翔太。神谷翔太です」


「ショータよ。何か気になる事はあるのか?」


 教皇と呼ばれた老人は翔太にそう聞いた。


 するとーー


「何かじゃねぇ!!ここはどこなんだよ!説明しろジジイ!」


 翔太の少し後ろに居た不良が教皇にそう言った。


「貴様!!教皇様に!」


「うるせぇ!こっちはいきなりなんだよ!ちゃんとした説明をよこしやがれ!!」


 不良はそう叫ぶと、教皇は納得したような顔をした。


「それもそうだ。それではシエラ様。まずは召喚者達を食堂に案内してください」


 教皇はそう言うと後ろに控えている白い女性にそう言った。


「分かりました……それでは召喚者方々。ここからは私に付いてきてください」


 シエラと呼ばれた女性がそう言ったが誰も返事をしなかった。


「待ってください!少し友達と話し合わせてください」


「分かりました。終わりましたら、私の声を掛けてください」


 シエラはそう言うと翔太は後ろにいる蓮司達と今初めて向き直った。


「みんな。髪の毛どうしたんだ!?」


「それはあんたも……いや今はそれじゃない」


 翔太は蓮司達の髪の毛の変化に驚いていたが梨花は髪の毛の話について遮った。


「そうだ翔太。どうするんだ?」


 蓮司は小さな声で翔太に話した。


「取り敢えず付いて行った方が良いと思う」


 蓮司の質問に梨花はそう答えた。


「雪はどう思う?」


「私も梨花ちゃんの言う事に賛成する」


「分かった……あの……あなたは」


 翔太はいつの間にか立っていた不良に声を掛けたが、翔太の声に答えなかった。


「翔太。無視でいいよ」


「……分かった」


 翔太は上で待っているシエラに声を掛けた。


「僕たちを食堂に案内して下さい」


「分かりました」


 翔太は上に居るシエラにそう言うと、シエラは下に降りた。


「まずは自己紹介ですね。私はシエラ・スキルニング。シエラとお呼びください」


「えと。僕はーー」


 シエラが自己紹介をした後、翔太もシエラに続いて自己紹介をしようとした。


「いいからさっさと案内しろよ~~」


 不良は翔太の自己紹介を遮り、食堂への案内を急かした。


 翔太は軽く不良を睨んだが、不良は気にも留めず欠伸をかいた。


「わ、分かりました。それでは私に付いてきてください」


 シエラがそう言うと翔太達はシエラの後に続いた。


 シエラの後をついて行くと地下特有の湿った空気からカラッとした空気が流れるのを感じた。


「す、すげぇ……」


 地下から出た蓮司の最初の言葉は感動だった。


 それは広い広場だったが目の前には金の細工が施された巨大な大聖堂があった。


「ここはミリス大聖堂と言い、普段は司祭や教皇、聖女しか立ち入る事が出来ない神聖な建物です。」


 シエラは立ち止まって見ている翔太達に声をかけた。


「やっぱりここは異世界なんだ……」


 梨花がそう呟くとシエラは前は進み五人はその後を慌ててついて行った。


――――――――――――


 大聖堂の横にある建物に入り食堂と書かれた看板があった。


 食堂はとても広く、百人は入れるほどの広さがある。


「食堂につきましたのでお好きな席にお座りください」


 シエラがそう言うと翔太達の四人組はシエラとの距離が近い席に座り、不良は離れた席に座った。


「それでは召喚者の皆様。こちら側の勝手な都合により召喚してしまい申し訳ありません」


 シエラはそう言うと頭を下げた。


「まぁ最初は自己紹介をしません?」


 蓮司の提案に梨花と雪は頷いた。


「そうですね。名前が分からないと不便なのでお願いします」


「僕はもうやったから蓮司からでいいんじゃないのか?」


「そうだな。俺は蓮司。伊藤蓮司っていいます」


 蓮司はそう言うと頭を下げ、梨花に目配せをする。


「次は私だね。梨花。鈴木梨花です」


「えと。私は(かんなぎ)雪って言います」


 雪が言い終わると四人は離れた所に座っている不良を見た。


「チ……熊鉄だ」


 不良がぶっきらぼうに言うと翔太はシエラに向き直った。

 

「それじゃあまずなんで召喚されたのか説明をして欲しいです」


 雪がそう言うシエラは頭を上げ「そうですねと」言った。


「皆様を召喚した理由は一つ。闇の使徒を倒し、闇の王の復活を止めてもらいたいです」


 シエラはそう言うと翔太達は顔を見合わせた。


「待って下さい。話が壮大すぎて全く分かりません」


「そうですね。まずはこちらの歴史を見て頂いたら分かるかもしれません」


 シエラは収納魔法から手の平サイズの水晶を取り出し、机の上に置いた。


「この世界はアルマダという世界で最初は天空大陸、暗黒大陸の二つしかありませんでした」


 シエラはそう言うと水晶から光が現れ、映像のような物が流れ始めた。


「こ、これが天空大陸と暗黒大陸ですか?」


 蓮司は目の前で起こった事に驚きながらも、水晶に映し出された映像について聞いた。


 空には神秘的な大陸が浮かび、対照的に暗黒大陸は不気味な雰囲気を出していた。


「はい。レンジさん。その通りです。これが太古の昔に存在していた大陸です。それぞれには王がいて、天使大陸を纏め、光を放ち続ける光の王。暗黒大陸を纏め、闇を放ち続ける闇の王が居ました。」


 シエラがそう言うと天空大陸と暗黒大陸を映していた映像が変わり、天空大陸と暗黒大陸が炎で包まれる映像に変わる。


「最初はお互い互角でしたが圧倒的な物資量と人数を誇る暗黒大陸が次第に優勢になっていきました。ですが突然天空大陸が崩れ、暗黒大陸に居る闇の王諸共消え去り、今の世界になりました」


 シエラがそう言い終わると雪が手を上げた。


「なんでしょう?ユキさん」


「その時代に生きていた人々はどうなったんですか?」


「ほとんどが死んだと言われますが、生き残った人々が国を再建しました」


 次が梨花が手を挙げた。


「さっき闇の王諸共消えた言ってたけど、闇の王は死んだって言う事でいいの?」


「いえ。闇の王が消える直前に自身の闇を世界中にばら撒き復活の時まで眠っていると言われています」

  

 梨花は引き続き気になる事をシエラに質問した。


「なんで光の王と闇の王は争っていたの?」


「はい。それは天空大陸は比較的安全で貴重な資源が取れますが領土が小さいです。

 ですが暗黒大陸は領土が大きい反面、闇の王が放ち続ける闇によって強化された魔物が暴れています。そしてお互いはお互いの領土を欲した為に起こった戦争です」


 蓮司、梨花、雪は話の規模の大きさに驚いていた。


「じゃあ、僕からもいいかな?」

 

「はい。なんでしょう?」


「二つ質問があります。一つ目この世界の人達でその闇の使徒を倒す事は出来ないのか?二つ目に闇の使徒はなんで闇の王を復活させる力があるのか、です」


「はい……悔しい事に闇の使徒は闇の王の加護を持っており私達では倒す事が出来ません。ですが召喚者には神の加護が宿っている者が多いです。」


「つまりこの世界ではその神の加護を持っている僕達が闇の使徒を倒す事で出来るってこと?」


「はい……」


「二つ目は、闇の王の復活条件は世界中にばら撒かれた闇を集める事」


 シエラの返事に翔太は少しの間黙った。


「それじゃあもう一つ。元の世界に戻る方法はありますか?」


 翔太はシエラに元の世界に戻る方法を聞いた。


「申し訳ありません。現段階では元の世界に戻る方法はありません」


「そんな……」


「それじゃあ俺らはずっとここで暮らす事になるのか?」


 翔太達は元の世界に戻る方法が分からないと聞いて落ち込んでいた。


「ふざけんなよ!!勝手に呼んでおいて戻る方法はないだと!?調子に乗んなよ!このクソガキが!!」


 熊鉄は元の世界に戻る方法が無いことを聞くと激怒し、シエラに近づき殴った。


 しかし、熊鉄の拳はシエラに届く寸前に止まった。


「おい。なんだよ……これ……」


 シエラの前には薄い光によって熊鉄の拳はが止められていた。


「こちら側の勝手な都合により巻き込んでしまって申し訳ありません。」


 シエラ再び頭を下げた。


「ですが。どうか私達の世界を救って下さい!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ