1ー7 謁見
聖女シエラの馬車の護衛をして、そのお礼としてバルト王国の王との謁見をすることにした。
聖女に案内されたアルクは、王城の客間で待っていた。
「にしても冒険者が王様と謁見か」
冒険者が国王と謁見することはとても珍しく、最後に国王と冒険者が謁見した時は十年前だと確認されている。それもその謁見の内容としては[魔物大侵攻]に対する多大な貢献による褒章だ。
すると、アルクの居る客間の扉がノックされた。
「アルク様。謁見の準備が整いました」
と、声が聞こえた。
「分かりました」
アルクは客間を出てメイドについて行く。
「ところでアルク様。謁見の作法はわかりますか?」
と、メイドが聞いてくる。戦いばかりの人生だったアルクには勿論そう言った作法は全くと言っていい程無い。
「いや冒険者なのでそういうのは全く分からなくて」
「分かりました。謁見の間に着くまで必要最低限は教えますね」
メイドがそう言うと歩きながら、アルクに最低限の作法を教えた。
しばらくメイドに謁見の作法を教わりながら歩いていると、豪華な装飾が施されている扉が見えてくる。
「着きました。ここが謁見の間です」
「ありがとうございます。」
「いえ。これが私の仕事ですから」
と、メイドは言い持ち場に帰って行った。
そこでアルクはメイドから教えてもらった作法に従って扉をノックしてから入って行く。
謁見の間は様々な国の要人を迎える為なのか、金や宝石などで煌びやかな装飾が施されいている。そして、謁見の間の奥に髭を生やし、左目が切り傷を持っている男が居た。
謁見の間はとても重苦しい雰囲気だったが、アルクは作法通りに王様が座っている玉座へ行った後跪いた。
「冒険者アルク。ただいま参上いたしました」
と、アルクは言った。
「ワシの名前はバレルという。此度は我が娘シエラの護衛をしてくれて感謝する」
と、バレルは言う。
「いえ。ありがたきお言葉」
「報酬をやろうと思うが大金貨10枚で良いかな?」
するとアルクは驚きながら、
「大金貨10枚というのは流石に多すぎませんか?」
と、言った。
するとバレルは、
「いやシエラの話によるとグランドグリズリーを一太刀で倒し、さらには炎の上級魔法でサイクロプスを倒したと聞いている。それは2体の討伐額も入っている」
と、バレルは言った。
「それにまたお主にまた依頼がしたくてな」
「依頼ですか?どんな?」
「それはシエラの護衛だ」
と、バレルはとんでもない事を言った。バレルの言葉を聞いた大臣や騎士達は予想だにしない事態に困惑していた。
その時、謁見の間の入り口から、
「お待ち下さい、王よ」
と、通路の横で見ていた貴族が手を上げる。
「どうしたのかな?ダンク伯爵?」
「王よ!たかが冒険者に聖女様の護衛を依頼するのですか?」
と、ダンク伯爵が言った。
「確かに相手は冒険者だ。しかし実力はシエラのお墨付きだ」
「なんですと?しかし私はこの目で見たものしか信用しません」
「ならば決闘したらどうだ?」
「決闘ですか?」
「そなたが推薦するものと決闘をし勝った者をシエラの護衛にする」
「分かりました。おい冒険者これより護衛を賭けた決闘を行う!ついて来い」
と、ダンク伯爵が言いアルクはそのあとをついて行った先は闘技場だった。
「ヘルメス来い!」
とダンク伯爵が言いとある兵士が来た。
ヘルメスと呼ばれた兵士は黄色の髪をしており、身長は190cmはある。
「お前にはこれからこの冒険者と聖女様の護衛を賭けた決闘をしてもらう。いいか?」
「はい、ダンク様」
と、ヘルメスは言い今度はアルクに向かって、
「この決闘私の勝ちが確定した。まぁせいぜい足掻け」
と、ヘルメスは言い、闘技場へ向かった。