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4-23 龍と教皇

 とあるきれいな花畑に一人の男が居た。


「この魔力は……さてはアルクだな」


 地面に座っている男は酒を勢いよく飲む。


「あんたはどう思う?」


 男はそういうと、男の上空から何かが降りて来る。


「そうね……この独特な魔力は……あの子しかいないわ」


 声の主の正体は眩しいほどの白い龍だった。


「やっぱりお前さんもそう思うか?」


「ええ。それにこの不快感……闇を解放したらしいわ」


「ほう。あいつが闇を解放しないと勝てない相手か……戦ってみたいな」

 

 すると花畑の奥から白い髪をなびかせて一人の少女が走って来る。


「お母さま!師匠!この気配は何なのですか?」


 白い少女は急いで走って来たのか膝に手を置き息切れをしていた。


「そうか……そうだったな。お前にとってこの魔力は感じ取ったことがなかったな」


「イレナ。この魔力は正体は後で教えてあげます。今はただ来る時のために力をつけなさい」


「……分かりました。師匠。私にアレキウス神滅剣をもっと教えてください」


「今日もか?いやだ。わしはこのまま酒を飲みたいだが……」


「駄目です!さあ来てください!」


 イレナは師匠と呼ぶ男を立ち上がらせ手を引っ張った。


ー------------


「ただいまー!」


 イレナは師匠との訓練が終わると巨大な木の前に立った。


 すると巨大な木に穴が開きそこから扉が出現する。


 イレナは扉をくぐり木の中に入るとそこは巨大な空間と椅子と机があった。


「お母さま!お腹がすきました!」


 イレナがそういうと白龍が上から降りてきた。


「そうですね。では晩御飯を食べた後に座学をしましょうか」


「え?で、でも今日は師匠との訓練を頑張ったし」


「いえ。今日もしますよ。第一学んでおいて損はありません」


「ほんとに?」


「ええ。あなたの兄弟子は座学と訓練を両立させていましたよ」


 すると白龍の体から光が溢れ出し、光が収まるとそこには白い髪と金の目を持ち、身長が2メートルある綺麗な女性がいた。


「ところで、お母さま。私の兄弟子とはどういう者なのですか?前に師匠に聞いた時普通の人間と聞きましたが……」


 イレナがそういうと白龍は頭を抱えた。


「確かに見た目はどこにでもいるような普通の人間ですね。でも……」


「でも?」


「彼は私でも驚くような魔力量と戦いの才能がありました。そうイレナ。あなたよりも」


 白龍がそういうとイレナは驚いたような声を発した。


「私よりも?真なる龍の一匹である私よりも魔力量と戦いの才能があるのですか?」


ー---------


 真なる龍

 それは世界に初めて出現した龍。

 ワイバーンとは比べ物にならないぐらい強く、とある古文書では真なる龍の怒りを買った王国が一夜にして文明ごと滅んだ記録がある


ー---------


「ええ。彼がその気になればいつでもあなたを倒すことが出来ます……さ!もういいでしょ。座学をしますよ」


「その気になれば私を倒すことが出来る」


 イレナは白龍の言葉を小さくオウム返しした。


「今日はサバイバル術について勉強しますよ」


 白龍は本を収納魔法から二冊取り出し、一つをイレナに渡した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「クソ!クソ!」


 とある大聖堂で一人の男が騒いでいた。


「教皇様!落ち着いてください!」


 教皇サハルは机に置いてあるコップや皿など地面に落とし机を叩いた。


「落ち着いてください?シエラ様……これが落ち着いていられますか?闇が……世界を混沌に陥れる闇が逃げてしまったのですよ!?」


「そうですが……」


 シエラと教皇サハルが話していると大聖堂の扉を開け一人の男がやって来た。


「教皇様。闇が逃げたと聞きましたよ」


「司祭殿。それを言いに来ただけですか?」


「いえ。私に良い考えがあります」


「司祭殿。何か良い考えがあるのか?」


「はい。」


「それは何だ?」


「はい。それは勇者召喚です」


 司祭がそういうと教皇サハルより早くシエラが反応した。


「いえ!司祭様、教皇様。勇者召喚はしてはいけません。」


「なぜでしょう?どの文献でも闇が出現し、手に負えない場合は勇者召喚を行っております。」


「ですが……わざわざ違う世界の人達をこの世界に呼ぶ必要はありません」


「いえ。もう緊急事態なのですよ」


「ですが...召喚した人たちも向こうの世界にも大事な人がいるのですよ!」


「それは重々承知です。だが召喚するのはほんの五人。もし闇を止められずに惨殺されるであろう人たちが増えるよりはまだマシです」


「それは……「良いでしょう。」……教皇様!?」


「司祭殿。すぐにとは言いません。ですが早めに人員と召喚道具の準備をしてもらいたいです」


「分かりました。それでは」


 司祭は頭を下げると大聖堂を出た。


「教皇様……どういうおつもりですか?」


 シエラは教皇や司祭への怒りを押し込み、教皇サハルに声をかけた。


「すまない。だが……司祭殿の言っている事も一理あるのだ。闇を放置して数万人が死ぬより、五人を犠牲にした方がいいのだ……」


 シエラは自分が何も出来ないことに悔しく、拳を握り始めた。


「……分かりました……ですが約束があります」


「はい……」


「召喚者達を手厚く扱いなさい。彼らを無下に扱うことを許しません」


「それはもちろん心得てます。では」


 教皇サハルはそういうと大聖堂を出、自分の部屋に向かった。


(アルクさん……あなたは一体何を考えているのですか?)


 シエラはアルクに対する疑問を思いながらも、もう夜も深いため寝るようにした。

 

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