4ー21 逃亡
「おい!闇の使徒が谷から出てきたぞ!」
アルクが谷外に出たことに気付きそう叫んだのは一人の騎士だった。
叫んだ騎士の声にいち早く反応し攻撃を仕掛けようとしたのは光翼騎士団副団長のルイだった。
[光魔法・光の十字]
ルイの放った十字の光の光線がアルクに迫る。
[闇魔法・闇の壁]
アルクは闇魔法で闇の壁を出現させルイの放った魔法を防いだ。
[王国剣術・五式・断魔]
ルイに続いた女騎士だアルクとの距離を詰め、アルクを切ろうと剣を振ったがアルクはその女騎士の剣を見切った。
[王国剣術・三式・連戦剣戟]
女騎士はアルクに連続且つ素早い攻撃を放った。
しかしアルクは女騎士の剣を素手で折り腹を蹴り吹っ飛ばした。
[[[[光魔法・聖域]]]]
騎士たちは広範囲に光のドームを出現させた。一度アルクを閉じ込めた魔法だ。
[闇魔法・黒の穴]
アルクは[聖域]に黒い穴を出現させ逃げようとする。
[光魔法・光の鎖]
だが逃げようとするアルクの左足首に光の鎖が巻き付いた。アルクは収納魔法魔法から[黒赤刀]を取り出し光の鎖を切った。
「逃げるな……遠くに逃げても地獄に逃げても……必ずお前を殺す」
アルクに憎しみの言葉を放ったのは蹴り飛ばした女騎士だった。
アルクはそんな言葉を気にせずに[聖域]に開けた[黒穴]を通り王国を出ようとする。
するとアルクのすぐ横を炎の玉が通る。
「お前たち!闇の使徒を絶対に逃がすな!」
「「「「はい!!!!」」」
アルクのすぐ後ろには光翼騎士団が追いかけてきた。
アルクは[汎用魔法・飛行]の魔力の出力を上げ、速度を上げた。
すばらく光翼騎士団から逃げていると何人かがその場に止まった。
[顕現せよ。我が翼よ]
アルクは危険を感じ翼を顕現させた。
するとアルクの予想通り何人かが止まった上空に魔法陣が出現した。
[光上級魔法・光線の雨]
魔法陣が輝き、その魔法陣から大量の光線が天高く放たれた。
アルクは嫌な予感がし左に避けると、先程までアルクの居た場所に光線が落ちた。
アルクは上を見ると大量の光線があった。
アルクは光線を避け続けたが余りにも光線の量が多く体中に当たってしまった。
それに加えて斬撃も飛んできて本格的に避けるのが難しくなった。
[独自身体強化術・羅刹]
アルクは急いで身体強化を施し、騎士団との距離を広めようとした。
「お前達翼の使用を許可する!!」
「「「「「はい!!!」」」」
指揮官の声と共にアルクの後ろにいる騎士団は翼を顕現させ開き始めていた距離を詰め始めた。
一人の騎士がもう少しで手が届きそうなほどに近づいた時指揮官に命令された。
「……クッ……お前達ここまでだ……」
「なんでですか!もう少しですよ!」
「いや。もう終わりだ。奴は国境を越えた」
「そんな……」
光翼騎士団はあくまでもバルト王国の騎士団。国境を越えるのにも正式な手続きがないと不正入国となってしまう。
国境を越えたアルクを追いかけようとする者は居なく、アルクはそのまま飛び続けた。
しかし今まで感じていなかった体の痛みを感じた。
(クソ……あの大量の光線。痛すぎるだろ)
アルクは痛みを我慢して出来るだけ遠くに逃げようとしたが遂に視界がぼやけ、それに加えて血が流れ始める。
アルクは飛行中に流れた血が目に入り飛行体制を維持する事が出来ずにふらつき始めた。
(クッ……まずい……っ!)
アルクは視界が悪くなり前方不注意により鳥にぶつかりそのまま森の中に落ちてしまった。
――――――――――――――
「団長!闇が……闇の使徒が逃げてしまいました!」
騎士がレイラーの居る部屋に入るとレイラーにそう言った。レイラーは喜びたかったが、それを悟らせない様に、椅子に項垂れる。
「なん……だと……」
(逃げたか。良くやったアルク)
レイラーはアルクの脱出に相手に気づかれない様小さく拳を握りしめた。
「クソ……しくじったか……」
「それともう一つ連絡が」
「なんだ?」
「闇の使徒が逃げた件についてのこれからの話し合いをする為の日時の組み合わせを……」
「そうか。そちらに合わせると伝えておいてくれ」
「分かりました」
騎士はそう返事すると部屋を出た。
(アルク良く逃げてくれた。いつかまた会おう。いずれ来る崩壊の日に……)
レイラーはそう思いつつ書類の処理に取り掛かった。
――――――――――
「陛下。予想通り闇の使徒アルクが逃げた様です」
初老の執事は自室の椅子に座って酒を飲んでいるニュアック5世の前に膝跨いだ。
「良くやった。お前に後で褒美をやる」
「ありがたき幸せ」
「それで?この後の予定はどうする?」
「前に言った通りバレル王に闇の使徒が逃げた責任を押し付け例の土地を奪えば良いです」
「そうかじゃあその件はお前に任せる。朕は残りの奴隷達を可愛がる」
ニュアック5世は隣に居る獣人の娘を側に抱き寄せるとベットに押し倒した。
執事は頭を下げニュアック5世の居る部屋から出ると執事は微かに笑っていた。
『お前達。あの能無しは上手い事我らの予想通りに動いてくれていますよ』
執事は念話を飛ばすと男の声が聞こえた。
『エビル。良くやった。やはりあの能無しの側にお前を置いて正解だったな』
『ありがとうございます。貴方について来て正解でしたね』
次に聞こえた声は子供の声だった。
『それで?次はどうするの?僕はもっと凄い魔道具作りたいんだけど』
『マシュ。それは後だ。やる事が終わったら好きなだけ作ればいい』
『分かったよエビル』
『カリナ様。この後の予定はどうするのですか?』
『この後は世界に散らばっている因子と仲間を集める』
『わかりました』
『はーい』
エビルとマシュが返事すると念話が閉じるとエビルは通りかかったメイドに会釈をして仕事に取り掛かった。
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