4ー16 拘束
(な……なぜだ。なぜ誰よりも王に忠誠を尽くした私がなぜ裏切り者に負ける?)
カイルはアルクに負けた事を否定していた。
否定しなければ自分が負けたと認める事になりカイルが慕っている王に見限られてしまう。
(いや、私は王に忠誠を誓う者。ここで終わる訳にはいかない!)
[闇魔法・黒霧]
カイルは近づくアルクに目眩しの魔法を放つとカイルは全速力で逃げようとした。
「逃すかよ……[アレキウス神滅剣・神滅ノ刃]」
アルクはそう言うと抜刀の構えを取りカイルの胴体を今度こそ切断しようと勢いよく踏み込みカイルに目前まで迫った。
「嫌だっ……私は……まだ、まだここで……ッ!!!」
カイルは何か叫ぼうとしたが叫ぶ前にアルクによって胴体を切断された。
すると胴体を切断されたカイルは死体が消えずに塵となり少しずつ消えていこうとする。
だがカイルにまだ意識があると判断したアルクは消えつつあるカイルに質問をした。
「カイル。帰る前に答えろ。我が王とは闇の王か?」
「……………」
カイルは睨みながらアルクを見ていた。
「答えろ!」
アルクは叫んだがカイルは消える最後の瞬間まで答えずに遂に消えた。
「ッチ……答えなかったか」
アルクはそう毒づくと翼の顕現をやめようとした。だが、翼を解除する寸前に王城の方向から何者かに見られている視線を感じた。
アルクは警戒を怠る事なく刀を構え、いつでも戦闘が出来る体制を取った。
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アルクがカイルは討伐する一部始終を見た騎士団はざわついていた
「な、なんだこれは!」
「これが闇……やはり平和の為に闇は……」
「絶対に殺してやる」
「あいつらには味方意識はないのか?やはり野蛮だ」
ザワつく騎士団にルイは前を見ていた。
「お前達!もうすぐで戦場に着く!闇に遠慮は要らない!闇を生捕、もしくは討伐だ!最初から本気で掛かるぞ!」
「「「「「「おおーー!!!!」」」」」
「いくぞ!」
ルイがそう言うと騎士団は警戒をしているアルクを討伐、もしくは拘束する為に向かった。
[[[[光魔法・救済の槍]]]]
まずは魔法隊の騎士たちが光魔法をアルクに放った。
魔法に気付いたアルクは向かってくる魔法を刀で捌いたが、捌いている途中に横と後ろから騎士が周りアルクを攻撃した。
[アレキウス神滅剣・大龍輪尾]
アルクは周囲に広範囲の斬撃を放ち、騎士たちの攻撃を塞いだ。
すると左から重い衝撃を感じ、アルクは左を見るとそこには翼を顕現させた女騎士が居た。
「ようやく……ようやく仇を取れる……」
するとアルクの周囲に翼を顕現させた騎士たちがアルクを取り囲んだ。
「ま……マジか……」
アルクは想像より騎士たちが多い事に動揺し逃げようとした。
[[[光魔法・聖域]]]
魔法隊が光魔法を唱えると広範囲に光の壁が出現し、アルクの逃げ場を塞いだ。
(こいつら……ここで俺を殺すつもりだ……)
アルクは事の重大さに気づいたアルクは急いで逃げようとした。
[闇魔法・黒の穴]
アルクは光の壁に穴を開けて逃げようとしたが、アルクが魔法を発動させるより早く騎士たちがアルクを攻撃をした。
[[王国剣術・連戦剣戟]]
アルクに女騎士ともう一人の騎士が息ぴったりの攻撃をアルクに放った。
「クッ……」
アルクは二人の攻撃を塞ぎきれずに右脇腹、左肩、太腿の他に至る所に切り傷が付いた。
[闇魔法・地獄炎]
アルクは周囲に黒い炎を出現させ二人の攻撃を強制的に辞めさせた。
[光魔法・天の光]
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
魔法隊の一人が魔法を放つと空から光がアルクに刺し、アルクが焼かれ始め激痛が全身を襲った。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
魔法が収まり全身を焼かれたアルクは地面に伏せた。
「死ね!世界の敵よ!」
余りの痛さに動きが取れなかったアルクに女騎士は首を斬ろうと距離を詰めた。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
身の危険を感じたアルクは無差別に周囲に闇を解き放ちその隙に傷を回復しようとした。
[光よ。闇を焼き晴らせ]
そう呪文が聞こえると周囲に解き放った闇は一瞬にして消え去った。
アルクは先程の呪文を唱えた者を探すと一人だけ解き放っている光が格段に高い騎士を見つけた。
アルクはそいつが指揮官だと判断し、その指揮官に闇魔法を放とうとしたが周りの騎士達がアルクを攻撃し魔法を放たさせる隙を与えないようにした。
騎士達の攻撃を防いでいると視界がぼやけるのを感じた。
[[[光魔法・光の鎖]]]
騎士達はそんなアルクの隙を見逃さずに光魔法で拘束しようとしたがアルクはその魔法を切ろうとする。
だがアルクの振った刀は指揮官と思われる者の剣に受け止められ、魔法がアルクの体を縛った。
「ル……ルイ!違う!アルクは私とシエラを助けてくれた……」
すると光魔法の外に居たセイラが指揮官をルイと呼び事の説明をした。
「しかしセイラ様。こいつは我らを殺す闇です。闇は即刻処分しなければなりません」
「だが……」
「これはもう決定事項です」
セイラの説明に耳を貸さないルイは拘束されているアルクに剣を振った。
「ルイ……待て」
するとどこからともなく声が聞こえた。
「騎士長……なんでしょうか?」
「そいつはまだ殺すな。そいつに聞きたい事がある一度生きて連れてこい」
「……分かりました。」
ルイがそう返事し剣を収まると騎士達に声をかけた。
「お前達!その闇を一度連れて帰り尋問をする」
しかしアルクに憎しみの言葉を掛けた女騎士がルイに反論する。
「ルイ様!御言葉ですが今ここで闇を殺すべきです。もしもの時があったら…」
ルイは殺気を漏らし女騎士に殺気を向けた。
「なんだ?上の命令に逆らうのか?」
「……わかりました」
ルイの殺気により怖気付いた女騎士は黙り、ルイはアルクを気絶させた。
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目の前でアルクが気絶するのを見たセイラはアルクの元へ駆け寄ったが、騎士達がアルクの元へ駆け寄ろうとするセイラを止めた。
「お前達邪魔をするな!そいつは私とシエラの命の恩人だぞ!」
セイラがそう言うとルイがセイラの元へ寄った。
「セイラ様。確かにこいつはセイラ様とシエラ様を助けた恩人かも知れません……」
「だったら――」
「ですがどんな結果があろうともこいつが闇である事には変わりありません。」
「だったらこれからどうするつもりだ?」
「これからはこいつから情報を聞き出し裁判にかけます」
「裁判が起こったら……こいつは……アルクはどうなる?」
「最悪死刑、軽くても谷への追放かと……」
ルイがそう言うとセイラの顔が曇り始めた。
「ルイ様。こちらは準備できました。」
するとアルクを運ぶ準備が終わった騎士はルイに知らせるとルイは頷きセイラは向き直った。
「それではセイラ様。後で会いましょう」
ルイがそう言うと騎士達と共に王城へ向かった。
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魔物大侵攻から4日だった。
今の王城や城下町では闇の発生の話で持ちきりの状態だ。
また様々な噂が飛び交っていた。
「なぁ聞いたか?実はあの魔物大侵攻は――」
「ねぇ。この前の闇の使いは冒険者だったらしいの――」
など闇の件で住民が話していたが一人だけその中でも信じない者がいた。
それはハリスだ。
ハリスはギルドの椅子に座って仲間と話していた。
「あいつが……アルクがあいつと同じ闇とは思わなねぇ」
「でも隊長……」
「でもじゃねぇよ。だってよ前に一度だけ一緒に依頼を受けた時よ。良い感じの男だったじゃねぇか」
「でもそれが演技だとしたら……」
「誰が何と言おうともあいつは無差別に人を殺すような奴じゃねぇ」
ハリスはアルクの潔白を心の中から信じていた。
するとギルドの職員が受付の奥から出てくるとギルドに居る冒険者にとある報告をした。
「これから1週間後に闇を裁く裁判が始まる。裁くのはもうみんなの知っている通りアルクだ。裁判に対する情報が一つでも欲しい。この紙に書いてカウンターの端にある箱に入れてくれ。」
ギルドの職員がそう言うとアルクに対しての情報を書く為に冒険者達がギルド職員の持っている紙を受け取り書き始めた。




