1ー6 王都
タルバンの街を出たアルクは何故か聖女の乗っている馬車に座っていた。
「私とアルクさんは一歳しか変わらないのにもう働いてるんですね」
と、聖女が聞いてきた。
それもそのはずだ、通常の人は17歳から働くのに対してアルクは16歳で働いている。
「はい、親は10年前に他界しましたから働かないと生きていけないです」
「そうなんですか……えっと……すみません」
シエラは無神経は発言をしたと思ってしまい、急いで別の話題を話そうとする。
「ところでアルクさんは何属性の魔法が使えますか?私は治癒魔法と光魔法が使えます」
「炎魔法なら一通り使えますよ」
「上級魔法もですか?」
「はい」
この世界では炎魔法、水魔法、岩魔法、風魔法、雷魔法、氷魔法、光魔法、そして闇魔法がある。
人々は自分に合った魔法を使える。しかし、闇魔法を扱う者は世界と敵と判断され、殆どが捕まり処刑されてしまう。
「そう言えば魔法の腕はどのぐらいなんですか?さっきの戦いでは魔法陣を構築してましたが詠唱はしていませんでしたね」
「師匠に教えて貰ったんです。魔法は詠唱を極めれば魔法陣を構築する必要も無いうえに詠唱を省略出来る。逆に魔法陣を極めれば詠唱を破棄出来るんです」
魔法について答えると、シエラは真面目に答える。確かに詠唱か魔法陣のどちらかを極めれば今よりも回復魔法の腕が更に上がる。
「ところでなんで俺も馬車にいるのでしょうか?」
すると聖女は、
「年の近い人と話をするのは久しぶりで。いつもは宣教師や祈りに来る人しか話をしませんから。それに学問や祈りも合わせると1日のほとんどがなくなりますから」
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学問
それは15歳から18歳まで高等教育を受ける施設でこのバルト王国には学院が存在している。またそこを卒業した者は大臣や騎士になる者が多い。
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その時だ、
「サイクロプスが出たぞ!総員戦闘準備!」
聖女の護衛隊長の声が聞こえた。
サイクロプスそれはランクCの一つ目の巨人で豪腕かつ皮膚が硬い。
アルクは隊長の声が聞こえると馬車から素早く降りて戦闘準備をする。
(こんなところにサイクロプスが出るとは、今の俺で切れるか……いや、切れないな。こうなったら魔法を使うしかない)
アルクは今持っている剣でサイクロプスを切ることが出来ないと判断して、魔法陣を構築する。その魔法陣の完成度に近くに居たシエラは見惚れてしまう。
[終焉の業火で燃え尽きろ・炎ノ怒]
とアルクは唱えた瞬間頭上に高密度の魔力が出現する。
「あれは炎魔法の上級魔法プロミネンスか?まさか詠唱無しで発生させるとは」
上級魔法は魔法についての理解度や魔力量、そして長い詠唱を必要とする。
アルクが出現させたプロミネンスがサイクロプスに直撃する。すると、たちまちサイクロプスは炎に身を包まれる。
(さすがのサイクロプスもこれをまともに喰らえば消えるだろ)
アルクの予想通りサイクロプスは消し炭になった。
またこの出来事は兵士やを驚かさせる。
何故なら上級魔法は長い詠唱を必要とするのだからアルクはそれをオリジナル詠唱で使ったのだ。
「すごいです……まさかオリジナル詠唱で使えるとは……」
と、聖女も驚いている。
「さあサイクロプスの魔石を回収して王都に向かいましょう」
とアルクは言い魔石を回収し再び出発した。
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バルト王国王都
それはバルト王国の中心でタルバンの街より賑やかで城壁と道路がしっかりしている。
また、王都には王国内最大で世界トップ3のうちの一つであるスキンティア学院が存在している。
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三日後、馬車に揺られながらもバルト王国の王都に着く。
「やっと王都に着いた。それでは俺はここで失礼します」
と、アルクは言ったが
「まだ報酬を渡していませんよ?アルクさん」
「という事はまさか国王に?冗談でしょ?」
「冗談ではありませんよ。さぁ!お父様の所に行きましょう!」
アルクは国王との謁見を断ろうとしたがシエラの静かな圧に負けてしまい頷いてしまった。
という事でアルクは国王を謁見する事になった。