4ー14 黒騎士カイルvsアルク2
カイルは目の前で大量の魔力を解放したアルクに驚いていた。
「凄いな……まさかここまでの魔力を有しているとは……」
「はっ!こっちはスタンピードの後だから魔力がカツカツなんだよ!ふざけんな!」
カイルは驚嘆の声、アルクは怒気を込めた声を上げ、アルクはカイルとの距離を詰め刀を振った。
アルクの身体能力は[独自身体強化術・羅刹]を発動した事により遥かに上がっているお陰で、アルクの斬撃はカイルに当たるようになっている。それどころか、カイルの鎧に僅かながらも傷を付けられている。
[炎魔――]
「させるか!」
カイルは魔法を放とうとしたがアルクはそれに気付き、カイルが魔法を放つ前に魔法陣を直接切った。
カイルはアルクの大幅な身体強化に思考が間に合わず距離を取ろうとする。だがアルクがそれをさせるわけも無く、地魔法でカイルの背後に壁を出現させ後退させるのを防いだ。
「ハアアア!」
アルクは力任せで後退に失敗したカイルの胴体に刀を振った。そして次の斬撃を入れようとしたがアルクの体から力が抜けた。
(魔力切れ?嘘だろ早すぎる)
アルクは内心そう思った。だが思い返してみれば当たり前の事だった。スタンピードの時に大量の魔力を使い、休憩も無しにカイルとの戦いに来たので魔力が少なかったのだ。
カイルのアルクの身体強化が切れるのを見逃さずにアルクを真上に蹴り飛ばす。
カイルは高速でアルクの上へ飛びアルクの胴体を切断しようとしたが、アルクは空中で身を捻り刀でカイルの斬撃を塞いだ。
だがカイルの攻撃の勢いでそのまま地面に落下した。
「かっ……ヒュッ……」
アルクはあまりの衝撃に肺から空気が抜け目眩がした。
(思考を止めるな。考えろ、考えろ。アイツに届く次の一手を考えろ)
アルクは目眩を気合で治しカイルを見つめた。思考を止めたら何もすることが出来ずに殺されてしまう。
(どうする?どうすれば奴に斬撃が届く……)
アルクは様々な方法でカイルを攻撃した。
刀に闇を纏ったり、高密度の炎を放ったり、闇魔法を使ったりした。
だがどれもカイルの鎧に傷が付くだけで中身には届いていない。だがアルクは諦めずに刀をカイルに振った。
すると突然アルクの視界が暗転した。
(魔力欠乏だ。まずい)
アルクはすぐさま視界が暗転した原因を知り収納魔法から魔力回復用の薬を出した。
「はあ!」
だがカイルはアルクの出した薬を蹴り飛ばし片腕でアルクの首を絞めた。
「アルクよ。お前はよく頑張った。ここで殺すのは惜しいが裏切者は要らない……死ね!」
カイルはアルクの首を持つ腕に力を入れアルクの首を絞めた。アルクはカイルの腕をへし折ろうと両手を伸ばすが力が入らない。
「カッ……ァア……ウ…ク……ソ……」
アルクは苦しみながらもカイルに刀を振ったが力が入らずカイルに当たる前に刀を落とした。
(クソ……まだ……死ねない……)
黒い魔物の状態ではまだ勝機が有ったが、黒騎士になったカイルには勝てないと薄々気づいていた。
カイルと戦っている最中でも脳裏に「逃げた方が良い」と言う思考がよぎったがアルクは戦いを選んだ。
アルクは次第に視界が薄れ、遂に目の前が真っ暗になった。
――――――――――――――
「シエラ。もう十分だ」
「……分かりました」
セイラがそう言うと汗だくのシエラが回復魔法を止めた。
「まだアルクの魔力を感じる……だがもう魔力が少ない早く行かないと」
セイラはそう言うと呪文を唱えた。
[顕現せよ。畏怖せよ。我が神聖なる光の前に悪しき者は要らぬ!]
そう唱えるとセイラの背中から翼が生えた。だがその翼は片方にしか無かった。
「やはりカイルのせいで……」
セイラは片翼しか生えなかったのがカイルの精神魔法の所為だと判断したが、お構いなく飛翔しアルクの元へ向かった。
「……っアルク!!!」
セイラがアルクの元へ辿り着いた時にはアルクの首がカイルによって絞められている所だった。
[聖剣流・七星剣]
セイラは飛んでる勢いでそのまま剣を振り七つの刃を飛ばした。カイルはセイラに気付きアルクを手から放し、セイラの攻撃を迎え撃った。
――――――――――――――
アルクが再び目を覚ますとまた黒い空間にいた。
「アレス!どこにいる!」
アルクが呼びかけるとアレスがアルクの元へ現れた。
「今すぐ俺を表に戻せ!」
「戻したってカイルには勝てないのは分かっているのか?」
「………」
アレスに言われアルクは返す言葉が無い。
「ほらな。何も言い返せない」
「でも翼が生えれば……」
アルクがそう言うとアレスはニヤついた。
「へぇー。お前あまり俺には頼らないんじゃ無かったか?」
「確かにあまりお前には頼りたく無い。あと俺は絶対とは言ってない。あまりと言った」
「はん!だがまぁ良いさ」
するとアレスの背中から黒い翼が生えた。
「お前には片方の翼をやる」
「片方?両方じゃ無いのか?あの時は全部くれたろ?」
「両方の翼をやっても良いんだがお前の体が耐えられるのか分からない。今のお前の器を見てせいぜい片方がギリギリだ」
アルクはまた言おうとしたが思い返してみれば翼が無い状態でもかなり力を解放していた。
「分かった」
「良し。じゃあお前に翼をやる……」
「なんだよ?」
「一つ警告をする。出来れば人前ではあまり翼を使うな……それは分かっているか」
「分かってるさ」
「そうか」
アレスは何か呪文を唱えると左の翼が煙になりアルクの体内に吸収された。
「……ありがとよ」
「珍しいなアルク。お前が礼を言うなんて」
「たまにはそういうのもあっていいだろ」
アルクがそうアレスに言うと表へ戻ろうと目を瞑った。




