4ー7 黒い生物
「アルクー!!」
ハリスはグラニュートの爆発に巻き込まれたアルクを探していた。
するとグラニュートが爆発し、煙が発生している所からナイフがハリスの脇腹を掠め地面に刺さる。
そこへアルクはワープした。
「アルク!」
「おお。ハリス。どうした?」
「どうしたじゃねえよ!俺がもうちょい左にずれていたら俺の腹にナイフが刺さってたぞ!」
「すまん……ハリスの声が聞こえて、反射的に投げた。悪気はない」
「ったく……気をつけろ」
アルクはグラニュートに目をやった。
「アルク。本当にグラニュートは死んだのか?」
ハリスは未だにグラニュートが死んでいるのかを疑っていた。
「絶対に死んだ」
アルクがそう言うと風魔法で煙を一気に掻き消した。
そこには真っ黒になり体があちこちに飛散しているグラニュートの死体があった。
「ほらな」
「こりゃスゲェな。もし何事もなく[魔物大侵攻]が終わればB、いやAランクまで上がる事が出来るぞ」
「ぐぎゃあああ」
そうハリスがアルクに話していると突然ゴブリンの叫び声が聞こえた。アルクがゴブリンの声が聞こえた方へ行くと、さっきまで共に王都に侵攻していたオークとゴブリンが争っている。
「どうやら元の状態に戻ったらしいな」
とハリスはつぶやいた。
通常オークとゴブリンは常に仲が悪く、常にナワバリ争いをしている。
「グラニュートが死んだお陰で魔物の統率がバラバラになっているな」
「ああ。後は残りの魔物を狩るだけだ」
ハリスはそう言うとアルクから借りたナイフを返して、魔物がいる方へ向かった。それから暫くして周りに居た魔物は少なくなり、完全に消えた。
「終わったー」
アルクは東城門にワープすると仰向けになった。
「いやー。報酬が楽し……み……?」
アルクは何か違和感を感じる北の空を見た。
するとそこには黒い尾を引いた彗星が通っていた。彗星自体は珍しい事は無く、十年に一度のペースで彗星が降る。だが、いつもの彗星は青い尾を引いているが、今回は違う。
「魔力がある……なんだあれ?」
黒い彗星が王都を通り過ぎると思えば王都の中心に急停止し、暫く停滞する。
アルクは黒い彗星を見てから嫌な予感を感じていた。するとアルクの予感が当たったように突然王都内に黒い彗星が落下した。
「落ちた!?……あそこは……まずい!」
アルクが黒い彗星を落下した地点を確認した。そこはなんと王城だった。アルクはすぐに王城にナイフを投げた。
――――――――――――
アルクが腐敗竜を討伐すること前に遡る。
アルクが東城門に向かった時シエラとセイラは王城にある程度離れている自分の部屋にセイラと共にいた。
「まだ心配しているのか?シエラ」
セイラはソワソワしているシエラに声を掛けた。
「当たり前です……」
「大丈夫だ。だって私を追い詰めたあのアルクだぞ?」
「そうですが……」
「アイツの強さは私が一番知っている」
「分かりました……」
シエラとセイラの話が一旦途切れるとセイラは「おっ!」と言う声を上げた。
「どうしたんですか?」
「いや。私の千里眼の眼で見ていたのだが……」
「え!?お姉様、千里眼をもっているのですか!?」
「あれ?言ってなかったか?」
「言っていません!」
千里眼とは例え離れていても所有している者が強く願えば見えて来る。
「で、どうしたんですか?」
「アルクがグラニュートを討伐した」
「グラニュート……グラニュートってあの?」
「そう。あのグラニュートだ」
「凄い……」
「だから言ったろ?アイツは強いって」
「そうですね」
セイラとシエラが話しているとセイラは突然窓の方を見た。
「何か来る……」
「何かって?」
「分からない……っ!あれは……」
セイラが外を凝視してシエラも気になり窓の外を見る。
するとそこには黒い尾を引いてこちらに向かっている黒い彗星があった。
「シエラ。防御魔法を……早く!」
セイラがそうシエラに言いシエラはすぐに防御魔法を展開した。
すると黒い彗星はシエラとセイラのいる部屋へ落下した。
「……さ……ま……お姉様!」
「……っ!シエラは大丈夫か?」
「はい。なんとか」
シエラがそう言いセイラが当たりを見渡す。
ほんの数分前までは部屋だった場所が完全に壁などが消え、外から丸見えになっていた。
「シエラ。あの黒い彗星は?」
「それならあそこに……」
シエラが指を刺した方向には黒い岩があった。セイラは彗星が落ちてきたのかと思ったが、一瞬でその考えが吹き飛ばされた。
何故なら彗星かと思った岩からは魔物の魔力を放っていたからだ。
「っ!シエラ離れろ!あれはただの岩じゃない!生物だ!」
セイラがそう叫ぶと黒い塊の周りに魔力が溢れ出した。




