4ー6 魔物大侵攻3
アルクが東城門上にワープした後、自分がいた所を見ると緑色の煙は地面に落ち、そこに居た魔物を一瞬で溶かした。
もしアルクが東城門上にワープしなかったら、アルクもあの魔物達と同様に溶けていた筈だ。
「おい!あの魔物は何なんだ!?」
アルクが呆然としていると東城門上の魔導士がアルクに声を掛けてきた。
「あれか?あれはAランクに指定されているグラニュートだ」
「グラニュート……グラニュートってあの?」
「そうだよ」
アルクがそう答えると魔導士達は騒ぎ始める。腐敗竜は発見例がとてつもなく少なく、アルクですら始めて見る腐敗竜に困惑している。
「慌てるな!まずはグラニュートより他の魔物を優先に魔法を放て!」
騒ぐ魔導士達を鎮めるように指揮官は声を張り上げ命令し、魔導士達は再び隊列を組み直した。
アルクも少しでも魔法が魔物に当たるように魔法防壁を展開している魔物を優先に倒していった。
「アルクー!!」
アルクが魔物を倒しているとハリスの声が聞こえた。やはり、この防衛は王都内のすべての冒険者が参加している様だ。
「アルク。あのデカイ奴はどうする?」
ハリスの言うデカイ奴とは腐敗竜の事だろう。
「どうするも何も……まずは魔物をやってからじゃないと話にならない」
「そうだ……な!」
アルクとハリスは戦いながらお互いの情報を共有した。
「それじゃあ俺も[魔法防壁]を貼っている魔物をやればいいのか?」
今回の防衛線で一番厄介なのは魔防壁を張っている魔物達だ。そのせいで本来当たる筈の魔法が防がれ、魔物が減りづらくなっている。
「そうだ……あ、ついでにハリス。これも持っていけ」
アルクがそう言うとハリスにポイントワープを仕込んでいるナイフを渡す。
「距離を詰めたい時や距離を取りたい時に使えば良い」
「ああ。ありがとよ」
と、ハリスが言うと二人は別れ、魔法防壁を展開している魔物へ向かった。
しばらくして広い範囲に魔法が届くようになると、アルクは腐敗竜を見た。
(さっきは頭を一つ潰しても再生した……じゃあ今度は4ついっぺんに潰すか)
するとアルクは前と同じように空中にナイフを投げワープし、炎の斬撃を4つの頭に向かって放った。
上手い事腐敗竜の4つの頭に当たり、頭を切り倒す。
(これでどうだ!)
すると腐敗竜は何事も無かったかのように潰れた4つの頭を治した。アルクの冒険者人生で再生する魔物を見たことはあったが、これ程までの再生力を持った魔物は知らなかった。
「嘘だろ!?」
「ニュアアアアアアアア!!」
アルクは驚きの声を上げると、腐敗竜は叫びアルクに向かって4つの頭からそれぞれ四種の毒煙を吐いた。
[初級風魔法・渦風]
アルクはそう唱え息を吐いた。
するとアルクの吐いた息は魔力と合わさり巨大な渦を発生させ、腐敗竜の吐いた毒霧を相殺する。
しかしグラニュートの一つの頭がアルクに襲い掛かった。
[獣人拳法・鎌鼬]
するとアルクを襲った腐敗竜の頭は切り落とされた。アルクは[鎌鼬]が放たれた方向を見るとそこにはハリスが居た。
アルクは急いで腐敗竜との距離を取りハリスの方へ走った。
「おい!アルク。あいつはどうすんだ?」
「分からない……頭を全部潰しても再生した……」
「じゃあどうする?」
「あの図体だ。恐らくあいつの内臓や心臓は体内にあるはず」
「つまり?」
「あいつの体を吹き飛ばす。そうすれば確実に死ぬ筈だ」
アルクはそう言うと刀に纏っている炎のを一旦消し、最大火力の炎を圧縮し刀に再び纏わせた。心臓を潰されても生きている魔物は居ない。
「ハリスもお前の仲間も魔物に対しては大丈夫か?」
「アルク。誰に言っている?大丈夫に決まっている。なぜなら俺が率いる鷹の爪団だからな!」
ハリスがそう言うと腐敗竜の前に立ち塞がっている魔物を思いっきり吹き飛ばした。
「ハリス。俺がグラニュートの体に刀を刺したら一様離れた方がいい。爆発に巻き込まれる」
アルクはハリスが頷くのを確認すると、再び空中にナイフを投げワープした。
アルクは腐敗竜の胴体を確認すると、腐敗竜に向かってナイフを思いっきり投げる。するとナイフは上手く腐敗竜の首の間を抜け、腐敗竜の体にナイフが刺さった。
アルクは腐敗竜に刺さったナイフにワープし、最大火力の炎を纏っている刀をに刺した。腐敗竜
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
すると腐敗竜は巨大な咆哮をした。
アルクは腐敗竜の咆哮を聞き、弱点である事を確認し、腐敗竜の体内に大量の炎を送る。
[内部爆発]
グラニュートの体内に送った行き場のない大量の炎は出口を探し、腐敗竜の口から炎を吐いた。
「燃えろおおおおおおおおおお!!」
グラニュートの胴体は次第に膨らみ容量を超えたように巨大な爆発をし、周囲に大量の炎を撒き散らしながら絶命した。




