4ー4 魔物大侵攻1
シエラの誕生日会が始まってから3時間が経ち退出する参加者達が増えていったところでお開きになる話が出た。
すると一人の兵士が屋敷に入ってきた。その兵士は泥が付いており、貴族達はゴミを見るような目をしていた。
「皆さま!今すぐ避難をしてください!」
と、兵士が言った。
「何事だ?まずは状況を説明しろ」
貴族の男が言うと屋敷に入ってきた兵士が話した。
「実はほんの30分前に一人の冒険者が王都へ来たんですが……その……」
「なんだ?早く話せ」
「実は[魔物大侵攻]が……」
兵士がそう言うとさっきまで賑やかだった屋敷が静かになった。
「今……なんて言った?」
「ですから[魔物大侵攻]が……」
兵士がそう言うとパーティーの参加者達は急いで退出していった。おそらく荷物をまとめて避難する準備をしているのだろう。
「シエラ様も避難を……」
アルクがそう言うとシエラは首を横に振った。
「いいえ。出来ません。」
「何故ですか?」
「聖女たる私が傷ついた兵士や冒険者を癒すためです」
「ダメです。おそらく傷ついた人達を癒すと言うことは城門まで来ると言うことです。いいですか?[魔物大侵攻]を起こっている時は、例え城門の上にいようとも死ぬ恐れがあります」
「それは知っています」
「もし貴方が魔物や冒険者、兵士の流れ弾に当たってしまったら、さまざまな人が悲しみ、戦っている者達の士気にも大きく関わります」
「ですが……」
「大丈夫……大丈夫だから」
アルクがそう言うとシエラは渋々頷いた。
「セイラさん。」
アルクがセイラを呼ぶとバルコニーからセイラが来た。
「どうした?」
「俺は、[魔物大侵攻]に参加します。その間シエラ様を……」
「分かった」
アルクが言い切る前にセイラはアルクの意図を汲み取る。そしてアルクは貴族達に質問攻めにあっている兵士に声をかけた。
「魔物大侵攻迎撃の集合場所はどこだ?」
「は……はい。場所は東城門です」
兵士がそう答えるとアルクはお礼をして東城門へ向かった。
――――――――――――
アルクが東城門に着いた時、東城門は兵士や冒険者が大勢集まっていた。
「おい!アルク!」
と右肩を叩かれて右を見るとハリスが居た。
「ハリス……まさかあんたも魔物大侵攻迎撃に参加するのか?」
「当たり前だ。なんだって5年前の魔物大侵攻に参加することが出来なかったからな」
「そうか……」
「兄貴!こっちを待つのを手伝ってくれ!」
とハリスの入っている鷹の爪団団員がハリスに手伝いを求めた。
「分かった。今行く……アルクまた会おう」
アルクにそう言うとハリスは人混みの中に紛れた。
ー---------------
魔物大侵攻
それは大量の魔物が通常じゃありえない群れをなし人が住んでいる所を襲う。また魔物大侵攻では種族や魔物の危険度に関係なく、様々な魔物が集まる為、大量の武器や人が必要になってくる。
このバルト王国にも5年前に魔物大侵攻が発生したが防ぐことが出来た。だがその魔物大侵攻を防ぐことが出来ずに滅んだ国はいくつもある。
ー-----------ー--
「注目!!!!」
東城門の上から大きい声が響き渡り、騒がしかった東城門は静まり返った。
「これより魔物大侵攻迎撃を行う……と言いたいが魔物達が王都に着くのは明日の早朝になる。なので軽く今回の作戦を説明しておく。まずは魔物の姿が見え次第魔法の使える者は魔物に魔法を撃て。それでも魔物があまり減っていなかったから大砲を打つ……」
アルクは作戦の内容を聞き、時間の無駄だと感じた。
何故かと言うと魔物大侵攻が起きている時、作戦通りに進まない事が多い。
作戦の内容を聞き終えるとアルクは魔物大侵攻に備える為、武器の手入れや道具の準備をして眠りについた。
――――――――――
アルクが起きた頃はまだ空は暗かった。
アルクは外の様子を見るために東城門の上に登ろうとしたが兵士に止められた。
「いや、外の様子を確認したくて」
「ダメです」
「でも……」
「通してやれ」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、後ろを見るとガリウスが居た。
「そいつは俺の知人だ。通してやれ」
「分かりました」
兵士がそう言うと東城門上に続く道を開けてくれた。
アルクが上に登るとガリウスもついて来る。
「にしてもあんたがここにいるなんてな」
「当たり前だ。仮には元Aランクだ。不足の時に備えてだ」
「そうか……」
アルクとガリウスが東城門上に着くとアルクは端に座る。冬に入ったのか風は冷たく、息は白くなっていた。
「今回も成功するかな?」
「分からん。お前が5年前と同じように魔物の4分の1を殲滅してくれたら成功するな」
「んー、頑張ってみる」
「てか、今回の発生源はどこなんだ?」
「ああ。それならアハマの谷からの発生らしい」
アハマの谷はバルト王国で一番大きい谷でありそのに住む魔物はCからBランクで毒を使う魔物が多い。
「アハマの谷と言うことはサイクロプスはいないと言うことか?」
「嫌。そもそも魔物大侵攻と言う物は気まぐれだ。もしかしたら巨大な魔物がいる可能性がある」
「そうか……」
アルクとガリウスが魔物大侵攻について話していると東の空が明るくなり始めた。
すると東城門上から大きい鐘の音が鈍くなり始めた。
「おい。ガリウス」
「なんだ?」
「俺の見間違いかもしれないが一様確認する。あのでかいのは魔物であっているよな?」
アルクに言われたガリウスは目を細めた。すると地平線の彼方に黒く蠢く物と大きい体を左右に鳴らしながらこちらへ歩いてくる物体を見つけた。
「いや、アルク。どうやら見間違いじゃないぞ」
とガリウスがアルクに言うと、近くに居た兵士も大きい体を左右に鳴らしながらこちらへ歩いてくる物体を見つけた。
「おい!早く他の奴らにも知らせろ」
ガリウスは近くに居た兵士に怒鳴ると我に帰ったように頷き、他の兵士や下にいる冒険者に知らせに行った。
「ガリウス……こりゃ激しくなりそうだ」
「ああ。そう……だな」
アルクの声にガリウスはかろうじて返事をした。
どうやら、アルクとガリウスは黒く蠢く集団が魔物の集団だということも気づいた。
「注目!!!!」
と指揮官らしき兵士が言うと、まだ眠そうな顔をした兵士や冒険者の眠気が一気に飛んだ。
「魔物の群れを確認した。これより魔物大侵攻迎撃作戦を行う。魔法を使える者は大至急東城門上に集合せよ」
指揮官がそう言うと魔法を使える者は続々と集まった。
「ガリウス。俺も行ってくる」
アルクがガリウスにそう言うと、アルクも指揮官の元は向かった。
「ふむ。まあまあだな。」
指揮官の兵士は集まった魔導士と冒険者を見て言った。ある冒険者はこの世の終わりの様な顔をしている者や、手柄を立てるチャンスだと考えている者が居た。
「指揮官。全員集まりました。」
「分かった……よく集まってくれた。ここにいる者は、もう分かるかも知らないが奥に魔物の群れがいる。私の合図次第魔法を撃ってくれ。」
指揮官の兵士が言い合えると、魔導士と冒険者は城門上に横一列に並んだ。城門下の様子を見ると近接系の兵士や冒険者が並んでいた。
「これより魔物大侵攻迎撃を行う!皆、必ず帰ってくるように!」
指揮官がそう言うと東城門の扉が開き始める。




