4ー3 誕生日会2
「わかりました。」
シエラがそう言うと馬車を降りようとした。
「シエラ。馬車を降りたらあんたのことをなんて呼んだらいい?」
「お好きに呼んでかないませんよ」
「分かった。じゃあ好きに言う」
アルクがそう言うとキア、アルクの順番に馬車を降りる。
シエラの誕生日会をする場所は城よりは豪華じゃないが、とても眩しく綺麗な屋敷だった。
また、屋敷の入り口から続く道は綺麗なレッドカーペットが続いていた。
「アルク。早く馬車の左側に」
アルクが屋敷の綺麗さに驚いているとキアがそう言い、アルクは我に帰り馬車の入り口の左側に立つ。
すると時を見計ったように屋敷にいた参加者達がレッドカーペットの横に並んだ。
「それでは皆さん。お待たせしました。今パーティーの主役、バルト王国第二王女聖女シエラ様の登場です!」
と、司会らしき男が言うとレッドカーペットの並んでいた参加者達は拍手をした。するとその拍手に合わせシエラが馬車から降りてくる。
「凄い。あれが聖女シエラ……とても美しい」
「本当だ。このパーティーの参加して良かった」
参加者達は様々な視線でシエラの事を見る。ある視線は純粋に誕生日を祝っている目線。ある視線は欲にまみれた視線。アルクは邪な視線からシエラを守る為に、シエラの前に立つ。
しばらくしているとシエラは左手を上げる。
アルクは事前の教えて貰った通りに右手でシエラの左手を持ち屋敷の入り口へ歩き、その後にセイラ、キアの順番で続いた。
しばらく歩いていると屋敷の入り口に着いた。
すると扉が自動で開き中に入ると広大な部屋に加えて天井には綺麗で大きいシャンデリアが飾ってあった。
「皆さんお待たせしました!これよりシエラ様の誕生日会を始めたいと思います。今従者達が盃を配りますからお手に持ったら持ち上げて下さい」
と司会が言うと盃を持ち次第、飲み物が入った盃を持ち上げた。
その中にはシエラにも盃を渡された。アルクは解析魔法で毒が入っていないか確かめる。
(毒は入ってないな)
「皆さん。宜しいですか?それではシエラ様の誕生日を祝いまして乾杯!」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
参加者達が言うと飲み物が入った盃を口に運んだ。
「それじゃあアルク。私は食事を運びに行くからシエラ様をお願い」
と、キアはアルクにそう言うとキアは厨房へ向かった。
しばらくはシエラも食事もし安全だと判断したアルクはバルコニーに向かう。
「あれ?アルク君。どうしたんだい?」
アルクがバルコニーに出て風に当たっていると声を掛けられた。声を掛けられた方向を見るとそこにはセイラが立っていた。
「いや。こんな賑やかなパーティー初めてなもんで」
「そうか……」
と、セイラが言うとアルクの隣に寄る。
「ところでアルクは父様と母様に会ったことはあるのか?」
「いや。バレル王には会ったことはあるが王妃には会った事がないな」
「そうか。なら今日母様に会うことが出来るぞ」
「それはどういう……」
すると屋敷の中からシエラの声が聞こえ、セイラに軽くお辞儀をシエラの所へ向かった。そこには男が数名とシエラがいた。
「シエラ様。僕と婚約を」
「いえ。その話は結構です」
「なぜ?」
どうやら馬車で話していた、婚約を求める者だ。アルクは慌てて男とシエラの間に立った
「失礼ですが、今日はお嬢様の誕生日会でお見合いの場ではありません」
アルクがそう言うと男はアルクを睨んだ。
「なんだ?たかが従者の分際で貴族の息子である僕に意見があるのか?」
「そうだ!カサマ様に意見するのか?」
「そうだそうだ」
シエラに婚約を求めていたカサマがそう言うと、取り巻き達がカサマの言葉に同調した。
「凄いのは貴方ではなく貴族の爵位を持っている親ではないでしょうか?」
「なんだと?」
「第一貴方は貴族の爵位を持っている親のお陰でシエラ様の誕生日会に参加できているのです。しかし、貴方に貴族の爵位を持っているいた場合は別の話ですが貴方には貴族の爵位を持っていない。ですがシエラ様にはバルト王国第二王女といった身分を持っています。それにここは誕生日会です。お見合いの場ではありません」
「なんだと?たかが従者の分際でこの僕に……」
「そこまでです!」
アルクとカサマが討論していると屋敷の奥から綺麗な女の人が出てきた。
「お母様……」
どうやらこの人がシエラの母親レイナだ。
銀髪で深い青色の目をしている。
「カサマ。何をしている」
と、レイナの後ろに居た貴族がカサマに声をかけた。
「父上。丁度よかった。今ここにいる礼儀知らずの従者をどうにかしてください」
カサマは自分の父親にそう言い、アルクを一眼見ると顔を青ざめ、カサマの頭を叩いた。
「アルク殿。私の息子が申し訳ない」
カサマの父親が頭を下げるとカサマは驚いた声を出す。
「父上!?何故この礼儀知らずの従者なんかに頭を下げるのですか?」
「馬鹿者!アルク殿は国王に直接シエラ様の護衛を頼まれている人なんだぞ!」
カサマの父親がそう言うと、カサマは顔を青ざめた。
「いや。お……私に謝るよりまずはシエラ様に謝って欲しい」
「それはそうだな」
アルクがそう言うとカサマの父親はシエラに頭を下げた。
「シエラ様この度は私の息子が無礼を働いてしまい申し訳ありません」
「いえ。私は気にしていませんよ」
「そう言ってもらえると助かります」
すると今度はアルクに向き直った。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。王国軍第二部隊補佐カルマ=ガリマです」
そうカルマが言うと握手を求めてきた。王国軍第二部隊とは城下町の治安を守るために組織された部隊。他には王都の外の治安を守る第三部隊。貴族区画の治安を守る第一部隊がいる。
「君のことはいろんな人から聞いている。あのヘルメス殿を倒すぐらいだ。きっと強いのだろう」
「カルマ様。そろそろ宜しいですか?」
アルクとカルマが話しているとレイナがカルマに声をかけてきた。
「アルク様。シエラの護衛をよろしくお願いします。」
最後にレイナがアルクにそう言うとパーティーの席に戻った。
「くそっ!今日はこのぐらいで許してやる!だが今度は……」
「今度は……なんだ?」
カサマが何か言いかけるとカルマがカサマを屋敷の外に追い出した。アルクは嵐のように去っていったカルマとカサマ、レイナの後を呆然と見ていた。
するとシエラが声を掛けてきた。
「アルク様。先程助けていただきありがとうございます。」
「いや。まさか本当に誕生日会で婚約の話を持ってくるなんて意外だな。いつもこうなのか?」
「はい。ですが通常の誕生日会で婚約の話を持ってくるのはなかなかありません」
「そうか」
と、アルクとシエラはまた再び分かれ、誕生日会を楽しんだ。
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その頃アルクとシエラが誕生日会を楽しんでいた時、王都へ向かう道に一人の冒険者は馬を走らせていた。
「早く……早く知らせないと……[魔物大侵攻]を知らせないと……」




