4ー2 誕生日会1
森の中で依頼を終えたアルクは冒険家ギルドに駆け込み、ガリウスが居るギルド長部屋へ向かった。
「ガリウス!」
「アルク。どうしたんだ?というかここは……」
「それよりも話を聞け!さっきコボルトの討伐依頼を受けたんだがすごい事が起こった。」
「すごい事?」
ガリウスはアルクの言っている「すごい事」を聞き終えると、ガリウスは部屋の天井を見上げる。
「アルク。もう一度聞くぞ。一体のコボルトが謎の黒い鉱石を食ったと思ったらコボルトがウェアウルフに進化した?」
「そうだ」
「それじゃあアルク。今その黒い鉱石を持っているのか?」
「いや、持とうとした瞬間黒い鉱石に転移魔法の魔法陣が生成されてどっかに転移した」
「マジか……信じられない話だが、こっちもいろんな冒険家に呼びかけておく。何か分かった事が有ればお前に知らせる」
「分かった」
アルクがそう言い部屋を出るとガリウスに声を掛ける。
「後もう一つ」
「なんだ?」
「ギルド長部屋に入る時は必ずノックと名前を言ってくれ。」
「ああ。分かった」
アルクはそう返事するとギルド長部屋を出てコボルトの討伐依頼を知らせた後、冒険家ギルドを後にした。
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黒い鉱石に関してめぼしい情報はないまま、コボルトの出来事から二週間も経つ。そこでアルクは正装の製作期間が一週間だったのを思い出し服屋に向かった。
「やぁ。来たね」
声を掛けたのは前に採寸をしてくれた店員だった。
「えと……正装は?」
「こっちにあるよ」
そう店員に言われた着いていくと綺麗な恵比寿服があった。
「これだよ」
店員がそう言うとアルクに試着するように促す。アルクは恵比寿服を受け取り試着した。 サイズは誰もピッタリだ。
アルクは恵比寿服を脱ぎ代金を払おうとした。
「代金なら前に受け取ってるからいらないよ」
そう店員が言うとアルクは採寸した時に代金を払ったのを思い出した。
「ありがとうございます」
アルクは服屋を出る時にお礼を言いスキンティア学院にある自分の寮に帰った。
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二日後の夜アルクは服屋から受け取った恵比寿服を着て待っていた。何故ならシエラの従者が迎えに来てくれるからだ。
しばらく待っていると寮のドアがノックされ、ドアが開くとメイドがやって来た。
「アルク様。迎えに上がりました。アルク様で間違いありませんか?」
メイドがそう言うとアルクは頷きメイドが付いてくるように促しメイドの後を続いた。
しばらくメイドの後に続いているとスキンティア学院の正門に出る。
するとそこには立派な馬車が2台あった。
一番前の馬車の扉が開きそこから出てきたのは純白のドレスを着たシエラだった。
「何?シエラ様に見惚れてんの?」
声を掛けられ、声のした方向を見るとメイド服を着たキアが居た。
「そういえばお前もシエラの護衛だったな」
「そういえばってなんだよ」
と、アルクとキアが話しているとシエラがこちらにやって来た。
「アルク様、キア。今日はよろしくお願いします」
シエラはそう言うとお辞儀をする。
「こっちもよろしく頼む」
アルクがそう言うとシエラは頭を上げる。
「にしてもお姉様は遅いですね」
「お姉様……あ!セイラさんの事か」
「私はここにいるぞ」
すると馬車の近くから声が聞こえる。
「ここだよ」
後ろにある馬車から声が聞こえると赤いドレスを来たセイラが出てきた。
「お姉様!いつの間に?」
「馬車が来てから居るぞ」
セイラの発言に3人とも驚いたが落ち着いたところで、キアとアルクとシエラは一番前の馬車、セイラは後ろの馬車に乗った。
「それにしてもシエラ様!誕生日会楽しみですね」
とキアが楽しそうな声で言った。
「誕生日か……俺はいつも一人だったなぁ」
「ひとり?」
アルクが小さな声で呟いたがシエラには聞こえていたらしく質問してきた。
「いや。俺は親が死んでから10年近く一人だったからな」
アルクがそう答えるとシエラは悲しそうな顔をした。
「そうですか……失礼なことを聞いてしまい申し訳ありません」
「いや、大丈夫ですよ」
「御三方。もうすぐで屋敷に着きますよ」
と、シエラとアルクとキアの3人で話していると馬車を操作してきた従者が教えてくれた。
「もうすぐですか…」
「どうしたんですか?シエラ様」
シエラが声を詰まらせているとキアが聞いてくる。
「そういえばアルク様とキアは私の誕生日会は初めてでしたね。」
「はい……」
「では教えます。毎年私の誕生日会になると婚約を結ぼうとする方々がいるんです」
と、シエラが言うとキアが殺気だった。
「シエラ様、そいつはどこの奴ですか?」
「キア。殺気を鎮めなさい。それに気にしなくて大丈夫ですよ。いつも断っていますから」
「ですが……」
「お取り込み中申し訳ありませんが会場に着きましたよ」
と、話していると従者が屋敷会場に着いたことを教えてくれた。




