4ー1 黒い鉱石
「それでシューラン、アイツの準備は大丈夫か?」
黒髪黒目の男が座っている男に尋ねる。
「タミカ。俺を誰だと思っている?」
そう返事する黒髪黒目の男。
「そうだったな。なんだって『狂人』と呼ばれた男だ。頭の回転は俺らより速いもんな」
「おちょくるな……にしても研究者はすごい物を作ってくれたな」
「本当だ」
そうタミカが言い部屋の隅に置いてある物体に目を通す。
するとシューランは部屋の隅に置いてある物体に魔力を通した。
『マリョクヲカンチシマシタ。キ動シマス』
物体がそう言うと立ち始めた。
見た目は全体的に黒く足は長く腕は普通だが両手にはでかい鉤爪がある。
背中にはコウモリの様な翼があり頭は人の頭をしている。
『指示ヲオネガイシマス』
そう言うとシューランに膝跨いだ。
「素晴らしい。」
「ジューラン。もうすぐで我々の願いは叶う。」
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アルクがゴブリンの集落を潰してから三週間が経った。
シエラの誕生日会まで残り九日となった。そして今になって王族の誕生日会に行くに相応しい服を持っていないのを思い出した。
このままだと拙いと思い、アルクは服を作ってくれる所に向かった。
「ごめんくださーい」
アルクは訪れた店は式典などに用意をしてくれる、少し高い店だった。アルクがそう言うと店の奥から女性の人が出てくる。
「友達の誕生日会に招待されたんですけど……」
アルクがそこまで言うと服屋の店員は意図を汲み取った。
「正装ですか?」
「はい」
アルクが返事をすると服屋の店員は、アルクを服屋の奥に案内した。
「それでは、採寸をするのでじっとしてくださいね」
店員にそう言われた。
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採寸をすること10分が経った。
すると服屋の店員は採寸を終えてアルクにこう言った。
「それでは、服が完成するのに一週間は掛かりますが大丈夫ですか」
シエラの誕生日会まで九日の猶予があるのでアルクは安心した。むしろ一週間で作れることに驚いた。
「大丈夫ですよ」
「それでは一週間後に受け取りに来て下さいね。それで値段何ですが……銀貨80枚になります」
アルクは言われた値段を服屋の店員に渡し、服屋を後にした。
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服屋を後にしたアルクは冒険家ギルドに向かい依頼を受け取った。
「さてと今回の依頼はコボルト5体の討伐か」
アルクはそう言うとコボルトが住んでいる森へ向かった。
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アルクが森に入って30分程経ったが、まだアルクはコボルトを見つけていなかった。
(流石にそう簡単に居ないか)
アルクがそう思うと東の方からコボルトの声が聞こえ、アルクがそこに向かうと10体程のコボルトの群れを見つける。
アルクは近くに木に降り、コボルトを観察した。よく見ると一体のコボルトの手に黒い鉱石を持っている個体が居た。するとそのコボルトは黒い鉱石を突然食べ始めた。
確かに魔獣には鉱石を食べる個体も居るが、どう見てもコボルトは鉱石では無く肉を食べる個体の筈だ。
アルクは、コバルトの異様な行動を驚きながらも観察していた。
黒い鉱石を食べ終えたコボルトは苦しがりうずくまると体が徐々に大きくなる。
『ワオオオオオオオオオオン』
と、コボルトは遠吠えをした。
すると木の上に居るアルクと目が合う。
アルクは悪寒を感じ収納魔法から『黒赤刀』を出したが、コボルトはアルクより速く跳躍し距離を詰めた。
アルクはコボルトの予想外の動きに対応しきれず木から落ちた。するとコボルトは地面に着地するとアルクを睨んだ。
アルクも体勢を立て直しコボルトに視線を向けた。そこでアルクはコボルトの正体がウェアウルフという事に気付いた。
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ウェアウルフ
コボルトの上位に当たる魔物でコボルトとは比べ物にならないぐらい凶暴で素早い。
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だがアルクはワープを仕込んであるナイフを様々な場所に置き、ワープを何回も繰り返す。
ウェアウルフを錯乱させ、最後にワープし首を切った。ついでに近くに居たコボルト達も討伐した。
アルクは黒い鉱石の正体を探るため、ウェアウルフの死骸に近づき腹を裂き、先程食べた謎の黒い鉱石を取り出した。
だがアルクがそれを掴もうとした瞬間黒い鉱石に魔法陣が展開した。アルクにその魔法陣に見覚えがあった。
「転移魔法!?」
アルクがそう言うと黒い鉱石は転移魔法で何処かに消えた。




