1ー4 決着
グランドグリズリーを退治した後、アルクは馬車の護衛の兵士と話していた。
「にしてもなんで冒険者しかいないタルバンの街にきたんですか?」
と、アルクは兵士の一人に尋ねた。こんな冒険者だらけの街に来るには何かしらの理由がある筈だ。
兵士はアルクの問いに小さな声で答える。
「グラル様はどうやら聖女様に求婚するらしい」
と、言ってきた。
「グラル様ってさっき馬車にいた?」
「ああヤバイだろ?」
聖女はバルト王国内で非常に有名である為、様々な貴族から求婚されることがある。だが、求婚される度に聖女は断っている。それは聖女である立場もあるが、一番の王女である立場を気にしている。
しばらく兵士と話してるといつの間にかタルバンの街に着いた。そこで兵士たちと別れ、眠りの宿屋に戻った。
馬車の短い護衛を終えたアルクは、ある程度の依頼が終わったことを報告し、夕飯を取ろうと眠りの宿屋に戻る。
「ただいま」
「お帰りなさい、アルクさん。どうでしたか?」
「見つけたけど逃げられちゃったから明日また行くよ。それよりも腹が減ったな」
アルクが眠りの宿屋に着いたときには完全に日が沈み夜となっていた。
「そう言うと思ってもう準備しました思う存分食べて下さい」
と、ルカは言った。
夕食を食べた後アルクは眠りについた。
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翌日
アルクは再び森へ向かった。しかし今度は街道付近の森に待機している。
(昨日のグランドグリズリーが腹を空かしてる場合またここに来るだろう)
すると予想通り2体のグランドベアを引き連れたグランドグリズリーが来た。
その逆方向では白く、金で装飾された豪華な馬車が進んでおり、守りの兵士たちは昨日の2倍近くはいる。
(あの馬車……見た事が……)
グランドグリズリーは馬車を確認すると魔法で石弾を作り兵士たちに放つ。
しかも大量に。
兵士達は突然の襲撃に反応出来ずに直撃し半分近く気絶してしまう。
それを見計らいグランドベアたちが馬車に突撃してきた。
「まずいグランドベアだ戦闘準備!聖女様を守れ!」
なんとグランドグリズリーが狙っている馬車は聖女が乗っている馬車だったのだ。
先頭に居た隊長らしき兵士がそう叫んだが、それに反応出来た兵士は数人しか居なかった。それに加え、兵士の持っている槍がほとんど折れている為、戦えるものが少ない。
そうしている間にもグランドグリズリーは馬車に近づいていく。
アルクはこのままだと危険だと判断し、剣を抜きグランドベアを迎え撃った。
アルクは後ろから近づき、右のグランドベアの首を切り左のグランドベアの心臓に目掛けて剣を刺す。
この攻撃でアルクの持っている鉄剣にヒビが入ってしまった。
アルクの持っている剣はこれだけである。
しかし、アルクは剣にヒビが入っていることに気付かずグランドグリズリーの首を切ろうとしたが、その時に剣が砕けてしまった。
グランドグリズリーはその瞬間を見逃さずに、アルクを攻撃したがアルクはギリギリで避けた。
「これだけは使いたくなかったが……仕方ない!」
アルクは言い収納魔法を発動し剣を出した。
しかしその剣の形が特殊で沿っている。そして、その剣は黒と赤色と珍しい色をしている。
「あれは刀か?」
と、後ろにいた兵士が呟いた。
刀でアルクは再び首を切ろうとしたが首が切れない。
当たり前だグランドグリズリーの首は岩よりも硬い。
「付与魔法・火炎」
と、アルクは言った瞬間刀が燃え始める。
「エンチャントを詠唱省略しただと?」
と隊長らしき男が言ったが無視し再び首を切った。
すると先ほどの硬さが嘘のように簡単に切れた。そして、グランドグリズリーは力無く地面に倒れる。
「すげぇ……グランドグリズリーの首を切りやがった」
「助かった……」
兵士達はグランドグリズリーが討伐された事を知り、安堵したように地面に倒れ始めた。